ウォルフォヴィッツ世銀総裁が、辞任することが決まった。WSJが批判するように、今度の愛人スキャンダルは総裁を更迭するような事件ではなく、ブッシュ政権に反感を抱く欧州諸国のイジメである。しかし、いじめられている彼をブッシュ政権が助けようとしなかったことも事実だ。彼の権力基盤が、もう崩壊していたからだ。

ウォルフォヴィッツはブッシュ政権内のネオコンの代表と見られていたが、もともと主流ではなかった。彼は国務省のポストを望んだが、パウウェルは彼を拒否し、国防総省ではラムズフェルドがすべてを決めた。ワシントンポストも指摘するように、リベラルの牙城とみられていた世銀に出されたとき、今度のような事態は予想されていた。この事件の前にも、世銀の幹部が連名で彼を批判する質問状をFTに出している。

だから今度の事件は、彼の個人的スキャンダルというよりは、ブッシュ政権を動かしてきたネオコンの政治的敗北だ。しかもその発端になった愛人が、中東出身のフェミニズム運動家だというのは皮肉である。当ブログでも論じたように、ネオコンの元祖はトロツキストや民主党左派であり、彼らは左翼の遺伝子を受け継いでいるのだ。

アメリカ的な自由と民主主義を普遍的な価値と信じ、それを暴力に訴えてでも世界に布教しようとするネオコンの発想は、革命を世界に輸出しようとしたトロツキーと同じ「ユートピア社会工学」だ。それは20世紀にいろいろな形で試みられ、多くの悲劇を生み出した。ウォルフォヴィッツとともに終わるのは、こうした「革命の時代」である。