ヤフーとMSの合併話は不調に終わったようで、グーグルの独走態勢はしばらく続きそうだ。ヤフー失速の責任は、この6年間CEOとして同社をミスリードしてきたテリー・セメルにある、とEconomist誌はきびしく批判している。

ヤフーの創業者ジェリー・ヤンがタイム=ワーナーで名経営者として知られたセメルを引き抜いたのは、ITバブル崩壊後に経営を再建するには、ハリウッドのようなメディア企業になるべきだと考えたからだった。セメルは、その方向で映画会社などとの提携を進め、ハリウッド支社までつくったが、こうした路線は成果を上げなかった。彼が2002年にグーグルの買収を断ったのは、数十億ドルという価格が高すぎると考えたからだが、今のグーグルの時価総額は1450億ドルだ。

これに対してグーグルは、旧メディアとまったく違う情報流通のチャネルをつくった。そのコンテンツも、従来の映画や番組ではなく、「ユーザー生成コンテンツ」だった。これはウェブがメディア産業に発展するというセメルの見通しとは逆に、初期のインターネットのようにユーザー同士が直接に情報を交換するE2Eに戻るという発想だった。ヤフーに移籍するまでEメールを使ったことさえなかったセメルとは違って、グーグルの創業者やCEOは、インターネットの本質をよく知っていたのである。

「通信と放送を融合」させてメディア企業をつくろうとする試みは日本でも多いが、成功したことがない。そこで当てにしているコンテンツは在来メディアのものであり、彼らは「知的財産権」という名の既得権を手放さないからだ。USENのGyaOのようにテレビ局をまねるビジネスモデルでは、利益の大半を電通に持って行かれるだけで、決して既存メディアを超えることはできない。

新しいビジネスモデルは、既存モデルの模倣ではなく、中央に鎮座するメディアが大衆に複製をばらまく工業社会型のパラダイムを超えるところからしか出てこないだろう。今のところグーグルがその先陣を切っていることはたしかだが、まだ新しいパラダイムの全貌は見えない。だから日本にもチャンスはあるが、「知財立国」や「日の丸検索エンジン」などの政策は、そうした変革を阻害する効果しかない。