このところのケータイ業界の話題はiPhoneで持ち切りだが、日本で今ひとつ盛り上がらないのは、それが電話として使えないからだろう。「アジアでは2008年に発売」となっているが、これは日本と韓国を除くアジアという意味だ。日本で使うには3G(W-CDMAかEV-DO)をサポートしなければならないが、今のところ"3G iPhone"は噂の域を出ていない。

アップルが3GではなくGSMを採用したことに驚いている向きもあるようだが、グローバルな企業としては、この選択は当たり前だ。世界の市場シェアをみれば、GSM/EDGEが83%あるのに対して、W-CDMAとEV-DOは合計しても12%しかない。特にiPhoneはWi-Fiを搭載しているので、ブロードバンドのサービスはインターネットでと割り切れば、携帯電話はGSMで十分だ。ジョブズは「将来は3Gもサポートしたい」と言ったそうだが、過剰品質の日本で使えるようにするには数年かかるという見方もある。

しかしアップルが、世界第2の市場である日本でiPhoneが使えない状態を続けるとは思えない。そのためには、3Gとのデュアル端末を開発するよりも簡単な方法がある。日本の携帯キャリアがGSMをサポートすればいいのだ。

そんなことできっこない、という人が多いだろうが、実はソフトバンクの端末はすべて(海外ローミング用に)GSMとのデュアル端末になっており、ドコモにもそういう端末が増えてきた。問題は、基地局がGSMをサポートしていないことだが、これも解決策がある。1.7GHz帯の帯域のうち、ソフトバンクに割り当てられた5MHzは、同社がボーダフォンを買収した際に返却し、空いたままになっている。これがiPhoneも使える世界共通のGSM帯なのだ。

基地局でGSMをサポートするには、それほど大きな設備投資は必要ない。既存の基地局のラックにGSMの基板をさすだけである。これによって世界中のGSM端末が使えるようになるので、外国人ユーザーの需要も見込めるし、端末メーカーも世界共通規格の機種を開発することで競争力を高めることができる。GSM端末の原価は数十ドルなので、SIMロック・フリーにして通話料金を大幅に下げることもできる。

最大の問題は総務省が免許を出すかどうかだが、貴重な帯域をいつまでも空けておくわけにもいくまい。免許を取れる至近距離にいるのは、端末でほぼ100%GSMをサポートしているソフトバンクだろう。iPhoneをローカライズしたいという引き合いは日本の各キャリアからアップルに行っていると思うが、ソフトバンクが「改造なしで使える」という条件を出せば、孫社長とジョブズとの関係から考えても、勝てる可能性は高い。

日本の携帯電話メーカーが「パラダイス鎖国」で国際競争から落伍していることは、総務省も経産省も深刻な問題と受け止めている。裁量的な産業政策よりも、電波の開放による国際競争の導入こそが究極の競争力強化策だ。ソフトバンクも、既存のビジネスモデルの中で消耗戦を続けるより、SIMロック・フリーにして、GSMとiPhoneで一発逆転をねらってはどうだろうか。