ウィキペディアの私に関する項目が、何度も削除されているらしい。いま残っているのは数行の経歴だけだが、これすら間違っている。私は「経済評論家」などと呼ばれたこともないし、名乗ったこともない。私が博士課程を中退したのは、1997年である。

前の記事でも書いたように、私は日本のウィキペディアの品質には疑問をもっているので、このブログでもほとんどリンクを張らない。大部分は英語版の質の悪いダイジェストで、日本語版オリジナルの項目には事実誤認や個人への中傷が多い。西和彦さんの項目などは、学歴や職歴まで間違いだらけで、本人が怒って編集し、大バトルが繰り広げられた末、大部分は削除されて保護されてしまった。

このようにウィキペディア日本版の質が悪い原因は、ウェブで匿名が当たり前になっていることが影響していると思われる。歌田明弘氏によれば、アメリカのブログの8割は実名だが、日本の9割は匿名だという。日本でこれほど匿名性が強い原因は、実名で発言すると会社ににらまれるとか、友人にきらわれるなど「評判」が傷つくことを恐れているからだろう。

だから2ちゃんねるは、日本社会の汚物みたいなものだが、排泄物を見れば健康状態がわかるように、そこには社会の裏面が映し出されている。匿名の世界では会社などの「ムラ社会」の抑圧から解放されるため、そのストレスを悪口や民族差別で解消する。「他人志向」で自我が弱く、何かを主張するよりも他人の評判を傷つけることに快感を覚える。自分の意見というものがないから、一方的な悪口ばかりで論争や相互批判が成立せず、議論の客観性をチェックする習慣がない。

こういう「匿名文化」のなかで言論への責任意識が希薄になっているため、ウィキペディアまで2ちゃんねる化しつつある。日本人の品質管理を支えているのは、ムラの中で評判を守る恥の意識だが、それが機能しない匿名の世界では、質を維持するインセンティヴがないのだ。私についての項目のようないい加減な記述を表示するのは「百科事典」の恥である。もっとチェック体制を強め、一定の基準を満たすまで掲載しないなど、品質管理をきびしくすべきだ。

追記:問題の項目が修正された。現職(上武大学)が抜けている点など、おかしなところはあるが、大筋では間違っていない(12/28)。

追記2:匿名IPでしつこくいやがらせを書き込む人物がいて、保護されてしまった(12/31)。日本では、匿名IPを禁止したほうがいいのではないか。