「週刊ダイヤモンド」で、もう7年も書評をやっている。おまけに、来年からは「アスキー・ドットPC」でも書評をやることになってしまった。池尾和人さんには「日本一の書評の達人」とほめてもらったが、うれしいようなうれしくないような・・・

というわけで、今年もなかば義務でたくさん本を読んだが、他人にすすめられるものは本当に少ない。今年このブログで紹介したものの中からリストアップしてみた。ただし私の専門的な興味に片寄っているので、あまり一般向けではない。
  1. コルナイ・ヤーノシュ自伝
  2. The Theory of Corporate Finance
  3. Institutions and the Path to the Modern Economy
  4. セイヴィング キャピタリズム
  5. ロングテール
  6. Microeconomics
  7. 行動経済学
  8. ヒルズ黙示録
  9. Who Controls the Internet?
  10. 開発主義の暴走と保身
1は20世紀の歴史を経済学の目で語った、文句なしの名作。2は、経済学の研究者には必読の企業理論のスタンダードだ。3は、日本社会のムラ的構造を考える役にも立つ。4は「市場原理主義」を攻撃する通俗的な議論が既得権の保護にしかならないことを歴史的に実証する。6は、学生にはおすすめできない非正統的なミクロ経済学の教科書。8は、その後の村上=ライブドア事件を予告するようなルポルタージュ。10の「開発主義」という言葉にはちょっと引っかかるが、当ブログでいう「集権的国家」の破綻を金融の側面から論じたもの。

こう並べてみると、日本人の書いた本が下位に3冊あるだけということに気づく。ここにあげた本は、みんな著者の訴えたいことが伝わってくるのだが、日本の専門書(特に経済学)は最近テクニカルになるばかりで、著者のメッセージがない。時代は大きな転換期にあるのに、それを社会科学が正面から受け止めていないのだ。『国家の品格』のような幼稚な間違いだらけの本(もちろん今年のワースト1)が200万部以上も売れるのは、日本人が国家について真剣に考えてこなかったおかげだろう。