以前のSIMロックについての記事には、当ブログ始まって以来のアクセスがあったが、今週あらたな展開があった。警視庁は、L&Kが「窃盗団の一味だ」という偽情報を毎日新聞に書かせたものの立件できず、陸社長だけが商標法違反と不正競争防止法違反の略式命令で罰金80万円、あとの社員は不起訴で、全員釈放されたのである。

その捜査の過程で、驚くべき事実が判明した。常岡浩介さんのブログによれば、捜査官は逮捕された陸社長に「おまえは自分がなぜ捕まったか分かっているか?SIM Lockを解除した携帯電話が出回ったりしたら、オレオレ詐欺が増えるじゃないか」と言ったそうだ。

もちろん、これは180度まちがっている。プリペイド携帯電話がオレオレ詐欺に使われるのは、その利用者が同定できないからだ。今回の場合には、端末をいくら変更してもSIMカードにアカウントが残るので、身元を隠す役には立たない。捜査官がどこでこういうでたらめな知識を仕入れたのかはわからないが、それが警視庁の捜査会議で了承され、裁判所も逮捕令状を出したのだから、日本の捜査当局の知的水準の低さは恐るべきものだ(検察だけがまともだったらしい)。

前の記事には「ボーダフォンの陰謀だ」というコメントがあったが、これは違う。キャリアも、日本の端末コストの高さと販売経費の負担には困っているのだ。ドコモは今年から海外の端末を導入してベンダーを競争させようとしているし、ボーダフォンもインセンティブは下げたいのが本音だが、これまでの販売店との骨がらみの関係があって、下げるに下げられないのである。総務省も「新競争促進プログラム」で、SIMロックを解除させる規制を検討している。これはインセンティブを廃止して通信料金を引き下げるとともに、端末の国際化を促進して日本の携帯電話メーカーの国際競争力を高めるねらいがある。

今回の別件逮捕は、こうしたビジネスの現状も競争政策も知らなければ、初歩的な技術的知識もない捜査官の行った重大な人権侵害である。警視庁は、SIMロックの解除は犯罪ではないことを公式に明らかにし、陸社長に謝罪すべきだ。警察の偽情報に踊らされて彼を犯罪者扱いしておきながら、不起訴処分は報じないマスコミ各社も無責任だ。彼らも訂正記事を出すべきである。