ロバート・W・クランドール

NTT出版

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アメリカの1996年電気通信法ができて10年になる。当初は、通信業界の規制を緩和すると同時に「ネットワーク要素のアンバンドリング」によって競争を促進しようという目的でつくられた法律だが、10年たった今、その成果はほとんど上がっていない。ネット・バブルの時期には多くのCLEC(競争的地域通信事業者)が参入したが、そのほとんどの経営は破綻し、アメリカはブロードバンドでは大きく立ち後れている。

その原因は、本書も指摘するように、規制によって競争を作り出すことはできないということに尽きる。特に通信設備はILEC(既存地域通信事業者)の私有財産であるため、ILECがアンバンドル規制を「財産権の侵害だ」とする訴訟が相次ぎ、多くのケースでFCCが敗訴したため、規制の実行はきわめて困難になった。結果的には、FCCはアンバンドル規制をほとんど放棄し、現在アメリカのブロードバンドのインフラのうちILEC以外の業者によって供給されているのは1%程度にすぎない。

本書の主要な結論は、FCCの意図した階層別の競争はうまく機能せず、成功したのは携帯電話やケーブルテレビとの設備ベースの競争だけだったということである。この例外は日本と韓国だが、日本の成功はいろいろな偶然の重なった「競合脱線」のようなものであり、他の国に一般化することはできないし、もう一度おなじことが起こるとも期待できない。

ところが日本では、ボトルネックではない光ファイバーにもアンバンドル規制が課せられ、総務省の通信・放送懇談会でも「NTT完全分割論」が出てきた。これに対してNTTは、いっさい制度に手をつけさせないという方向で自民党にロビイングを行ったため、結果的に通信改革はすべて先送りになってしまった。今月、竹中総務相は「通信・放送の総合的な法体系に関する研究会」を立ち上げたが、今度は通信・放送懇談会のような素人談義にならないようにしてほしいものだ。