フラット化する世界 [増補改訂版] (上)
この本にリンクを張るのは、「おすすめ」するためではない。こういう本もあると紹介するだけである。もしもあなたが、「ブラウザ」とはどういうもので、「モザイク」というソフトウェアが世界をどう変えたかについて、10ページ以上にわたって懇切丁寧に教えてほしいとすれば、この本をおすすめする。それ以外の人にとっては、本書の記述は、その題名のように平板だろう。

本書の原著は、Freakonomicsと並んで、発売から1年以上たっても、まだAmazon.comのベストテンに入っている。たしかに、グローバリゼーションがいかに進んでいるかを、それぞれの現地へ行って取材し、具体的に記述したレポートとしては、本書にも一定の価値はある。コラムを書くという条件さえあれば、会社の経費で世界のどこへでも行けるジャーナリストは、限られているからだ。

しかし皮肉なことに、彼がNYタイムズの多額の出張旅費を使って取材したことのほとんどは、フラット化した世界では、グーグルを使えばだれでも知ることができる。今ごろ『共産党宣言』がグローバリゼーションを予言していたことを知って驚くのは、米国人ぐらいのものだ。