ガソリンエンジンが電気自動車(EV)に置き換わるかどうかは、日本の産業の今後を左右する重要な問題である。日本電産の永守会長の発言が、大きな反響を呼んでいる。


これは技術的には正しい。ドライバーの9割は航続距離30km未満なので、1000kmも走る車のマーケットは小さい。そういう特殊な車を除外すれば、今ある技術で十分で、大量生産すればコストは下がる。これは日本電産のようなモーターの市場では明らかだ。

これに対して賛否両論が湧き上がった。今のEVは、内燃機関にはるかに劣る。燃費だけ考えても、10万km走行まではハイブリッド(HV)のほうが効率的だ。次世代の主流がHVになることはすべてのメーカーのコンセンサスだと思うが、そこから先は意見がわかれる。
  • 全面的にEVに移行する
  • HVと混在する
  • HVが主流になる
EVとHVが混在するのは、ゲーム理論でいうと「混合戦略均衡」だが、一般論としてはむずかしい。これは一定の混合比率がずっと続かないといけないからだ。これは自動車によく似ている通信の経験を思い出すとわかる。

ハイブリッドは持続可能な均衡ではない

私が日経新聞の「経済教室」で「次世代ネットワークのイメージ」として"everything over IP"の図を描いたのは、1998年だった。

48541c6cbadf79d9
次世代ネットワークのイメージ

同じ時期、NTTは"everything over ATM"による「情報流通企業」構想を掲げた。ここではIPはATM(非同期転送モード)交換機で行われるサービスの一つであり、NTTのミッションは「ベストエフォート」のインターネットを脱却しで帯域保証を実現すり、その中核技術はIP over ATMだった。

しかし世界の流れはIPになり、NTTもNGNのような中途半端なネットワークをあきらめてオールIPになった。その次のパラダイム転換は固定通信網から携帯への変化だった。

NTTも携帯電話会社(ドコモ)をもっていたが、「無線屋」は傍流だったので、メインは光ファイバーだという意見が強かった。その影響で、民主党政権ではNTTを水平分離する「光の道」という時代錯誤の構想が出てきたが、世界の流れがあっという間に携帯に変わったので立ち消えになった。

こういう経験から考えると、EVと内燃機関の戦いはIPとATMのようなもので、HVはIP over ATMのようなものだから、長期的には勝ち目がない。ただEVに100%置き換わるかというと、そうも行かない。内燃機関は光ファイバーのようなバックアップのインフラとして残るのではないか。