梅田望夫『ウェブ進化論』(ちくま新書)が、ベストセラーになっている。アマゾンでは、あの『国家の品格』を抜いて、総合で5位だ。私もきょう買って読んだが、はっきりいって電車のなかで気楽に読めるのが唯一のとりえである。

「本当の大変化はこれから始まる」と銘打っているが、その中身はといえば「インターネット」「チープ革命(ムーアの法則)」「オープンソース」の三大法則だという。こんな話を今ごろ聞いて、感心する読者がいるのだろうか。グーグルがすごい、としきりに書いてあるが、出てくるのは「アドセンス」などのよく知られた話ばかり。その根拠として持ち出してくる"Web2.0"の意味もよくわからない。

要するに、ここ1,2年のIT業界の流行をおさらいして、キーワードを並べただけだ。たとえばロングテールの話などは、ウェブの数学的モデルとして重要な意味があるのだが、それもアマゾンやグーグルなどの事例を並べるだけ。話が横へ横へと滑っていって、ちっとも深まらない。

著者はシリコンバレーに住んでいて、こういう情報が現地でないと入手できないと思っているのかもしれないが、IT業界では、もう日米の距離なんてほとんどないのだ。まあブログもウィキペディアも知らないおじさんが入門書として読むにはいいかもしれないが、当ブログの読者には退屈だろう。