誤解のないように断っておくが、私は今回のNHK問題の原因となった「女性国際戦犯法廷」を擁護する気はまったくない。というよりも、これは滅びゆく左翼イデオロギーを「ポストコロニアリズム」と衣替えして延命するイベントにすぎないと思っている。

本橋哲也『ポストコロニアリズム』(岩波新書)は、その見本だ。内容のほとんどが他人の本の引き写しで、最後に「日本にとってのポスコロ」として、問題の「戦犯法廷」が登場する。女性で韓国人で人身売買となれば、法廷に参加した日本人はみんな「加害者」として懺悔しなければならないわけだ。

こういうレトリックの元祖は、マルクスとフロイトである。表面的な物語の「深層」にイデオロギーやリビドーなどの「本質」を発見する。ポスコロやカルスタは、そのパロディみたいなものだ。この種の「脱構築」のトリックは、「お前は潜在意識では差別している」といわれると、「していない」と反論しにくいところにある。「あなたはセックスに執着している」という精神分析と同じで、それ自体が物語にすぎないのである。