米国の大統領選挙は、また土壇場まで混乱した。今回はさいわい民主党の「大人の判断」で何とか収まったが、あの奇妙な選挙制度が諸悪の根源だ。2000年のときは、ヒラリー・クリントンが直接投票で大統領を決めるという憲法改正を提案したが、ほとんど話題にもならなかった。それは、これがUnited Statesという米国の根本理念にかかわるものだからである。

もともと米国が独立戦争に勝ったあと、どういう憲法を作るかについては、意見がわかれていた。とくに大統領については、直接投票で選ぶべきだという連邦派の意見と、連邦議会が選ぶべきだという議院内閣制に近い意見がわかれ、両者の妥協として各州が独自に選挙人を選ぶ奇妙な方法が採用されたという(阿川尚之『憲法で読むアメリカ史』PHP新書)。

米国は、実は「最古の憲法」をもつ民主国家である。英国には(成文)憲法がないし、欧州の憲法は革命や戦争のたびに変わって、フランスなどは「第5共和制」だ。これに対して、米国憲法は(18世紀に表現の自由などを定めた修正条項が付け加えられた以外は)200年以上、ほとんど改正されていない。

この18世紀から引き継がれる「遺伝子」が、よくも悪くも米国の性格を決めている。独善的な単独行動主義も、銃による「自衛」も、そのDNAの一部だろう。あれほど大失敗をやったブッシュ大統領が再選されるのも、彼がそのDNAを持っている(ように見える)からではないか。

しかし司法や地方政府の権威の高さなど、このDNAには学ぶべきものも多い。なんとか「遺伝子組み換え」で、日本にもそういう面を導入できないだろうか。