また台風が来た。台風情報では、暴風雨圏とまぎらわしい「予報円」というのが表示されるが、こんな曖昧な進路予測を出すのは日本だけである。

台風の進路は、最近はスーパーコンピュータでかなり正確に予測でき、海外の予報では進路は線で表示される。ところが日本では、かつて進路予測の精度が悪かったとき、長崎で漁船が沈没して、国会で気象庁長官がつるし上げられた。予報円ができたのは、それ以来である。要するに、これは気象庁の責任逃れのためのものなのだ。

気象庁の予報官会議を取材したことがあるが、その内容の大部分は、ピンポイントで出てくるスパコンの予測をどれぐらいぼかすかという議論である。こういう役所も悪いが、予測が外れたといって国会で追及する国民も悪い。役所の予測を無条件に信用しないという大人の常識を身につけることが最良の防災対策である。