総務省は、1.7GHz帯で30MHzを第3世代携帯電話(3G)に割り当てる方針だという。ソフトバンクの行政訴訟を避けるために、「800MHz以外にも空きはありますよ」といいたいのだろう。

しかし、そのやり方は依然として書類審査による「美人投票」である。電波有効利用政策研究会が「オークションはやらない」という結論を出してしまったからだ。これまで日本で美人投票が機能してきたのは、申請してもどうせ電話会社しか認められないという暗黙の合意があったためだが、プロ野球をみていると、そういう合意は崩れはじめている。ソフトバンク以外に多くのベンチャー企業や外資が申請してきたら、どうするのか。

80年代の米国でも、「金のなる木」である電波を求めて多くの会社が殺到したため、くじ引きでやったら逆に何万社も申請して大混乱になり、結局オークションになった。欧州でもオークションが原則であり、北欧やフランスは美人投票で3Gの周波数を割り当てたが、結果的には新規参入が阻害され、参入した業者も免許を返上したりして、失敗というのが一般の評価だ。

今年2月、ジュネーブで行われたITUの専門家会合でも、「第2市場」を創設して財産権でやるか、免許不要の「コモンズ」でやるかの論争が繰り広げられているところに、日本の総務省だけが「市場活用型美人投票」を提案して、みんな唖然としていた。

誤解のないようにいうと、今の電波部のスタッフは、竹田部長をはじめとして良心的であり、新たな帯域の開放に努力している。しかし、これは絶対主義の時代に「啓蒙専制君主」が善意でお抱えの商人に貿易の免許状を与えたようなものだ。問題は、そもそも貿易に政府の免許が必要なのかということなのである。