2010年09月

合理的市場という神話

金融市場が合理的に動かない、というのは金融危機のあとで出る本としてはさほど新鮮な洞察とは思われないが、本書はそれが強欲な銀行家のせいではなく、ノーベル賞を受賞した世界最高の知性の作り出した神話によるものだと主張する。現代の金融理論のコアである効率的市場仮説(EMH)には厳密な理論的基礎がなく、現実にも例外だらけだ。

しかしEMHもCAPMもブラック=ショールズ公式も、過去の多くの危機を生き延びてきた。それは現実の市場データに合致しているからではなく、市場がどうあるべきかを示しているからだ。複雑で予想しにくい市場では、トレーダーは取引の基準を求める。彼らがCAPMに従って取引すれば、CAPMに合致した価格がつくのは自明の理である。それは「太陽の黒点活動が活発になると景気がよくなる」という理論でも同じだ。

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ハリウッド化するIT産業

日本のIT産業がだめになっている一つの原因は、ソフトウェアの生産性が落ち、世界に通用しなくなっていることだ。その原因を中島聡氏はこう説明する:
米国のソフトウェアビジネスにとってのソフトウェアエンジニアは,球団経営における野球選手のような存在。ストックオプションなどを駆使した魅力的な雇用条件を提供して優秀な人材を集め,スポーツ施設や無料のレストラン,広い個室などの心地良い労働環境を提供して,彼らの生産効率を上げることが,ビジネスを経営するうえで最も大切なことの一つである。
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中国が世界をリードするとき

中国が世界をリードするとき・上:西洋世界の終焉と新たなグローバル秩序の始まり
本書はイギリスのジャーナリストが書いたもので、タイトルはいささかセンセーショナルだが、内容はまじめなものだ。今回の事件との関連でおもしろいのは、中国が西洋世界の「法の支配」に挑戦しているという話だ。通説では、西洋が近代化によって中国を追い抜いたのは、財産権や契約などのガバナンスがしっかりしていいて市場や株式会社などの人的関係に依存しない組織ができたからで、中国も成熟すれば西洋化すると西洋人は考えているが、著者はこれに異を唱える。続きを読む

スーパーWi-Fi対ワンセグ?

FCCが、UHF帯のホワイトスペースを利用するスーパーWi-Fiの利用規則を決定した。注目されるのは、これまでホワイトスペース利用の条件とされてきた信号検知システムではなく、位置情報を使ったgeo-location機能を義務づけている点だ。これによってIEEEで標準化されている幅広いWi-Fi技術がgeo-locationデータベースを付加することで利用可能になり、最大で現在のWi-Fiの20倍の出力をもつアクセスポイントが使えるようになる。

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冤罪を生む検察の完璧主義

大阪地検の検事による証拠偽造事件は、事実とすれば弁解の余地はないが、これは一検事の特殊な事件ではない。こういう事件を生み出す背景を考えたほうがいい。

以前の記事でも書いたように、日本の刑事裁判の有罪率は99.9%と異常に高いが、これは起訴率が63%と低いためで、有罪件数/検挙件数でみると国際的な平均水準に近い。逆にいうと日本の検察は、絶対に有罪にできる事件しか起訴しない点が国際的にみて特異だ。

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ソフトバンクはなぜつながりにくいのか

私はiPhoneとiPadを使っているが、このごろ(おそらくiPhoneが増えたせいで)非常につながりにくくなった。きょうも夜8時ごろ、山手線で東京から品川までつながらなかった。山奥やビルの中でつながりにくいのは「電波の飛ばない2GHz帯しか使えないからだ」というソフトバンクの説明も成り立つが、山手線でつながらないのは、海部美知氏の指摘するように、基地局の設備投資をケチっているからとしか考えられない。

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アゴラ連続セミナー 「パソコン1台で始めるAndroid入門講座」

米国では既に出荷台数でiPhoneを上回ったAndroid。日本でも年末から来年にかけて、数多くのAndroid搭載機種が発表されます。またAndroidアプリも倍々に数が増えています。と同時にAndroidマーケットも活況を帯び、来年には大きなビジネスと飛躍していくものと思われます。

今回の連続セミナーでは初心者の方を対象に、ご自身のノートパソコンをお持ちいただき、ハンズオンで、そのAndroidの概要とアプリケーション開発の基礎を学びます。

Androidアプリ開発を通じて、起業し、ビジネスとして成功することを目的にぜひとも受講ください。続きを読む

飛び級のすすめ

ツイッターで外交官試験の「大学中退」の話を書いたら大きな反響があったので、少し補足しておこう。昔の外交官は大学3年で合格したら中退しても入省できたので、外務省のエリートには中退が多い(今は外交官試験が廃止されたので普通の公務員と同じ)。

同じように企業もどんどん青田買いをして、3年生で内定を出したら中退で入社させれば、大学を悩ませている就活の繰り上げ問題も解決する。就職が決まった学生には、4年までの授業料を払えば卒業の資格を与えればいいのだ。授業が必要な場合は、企業が残りの期間の奨学金を出して通学させればいい。

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「円高」の空騒ぎ

先週の為替市場は「非不胎化介入」で大騒ぎだったが、そもそも今の水準は円高なのだろうか。次の図は、1995年と現在を比べたものだ。確かにドル/円レート(赤)は15年ぶりの高さだが、各国の物価水準などを勘案した実質実効為替レート(青)でみると5年前の水準に戻った程度で、15年前に比べるとまだ3割以上低い。

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名目為替レート(ドル/円 左目盛)と実質実効為替レート(2005年=100 右目盛)

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小沢一郎氏は「壊し屋」か

hirano第2次菅内閣は、予想どおり「小沢排除」色の濃いものになった。きのうはライブドアのインタビューで、小沢一郎氏の側近として知られる平野貞夫氏(元参議院議員)に話を聞いた。

注目される小沢氏の動向については「しばらくは様子見だ」といっていた。「今回はグループに押される形で無理して(勝算なしで)出たので、負けたら干されることは覚悟の上だった。党を割るとか新党をつくるとかいうことは考えていないと思う」とのことだった。国会議員だけなら勝てたが、今回は党員・サポーター投票があったので、世論調査を見た中間派が勝ち馬に乗ったという。

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