2006年11月

同和のタブー

5年間にわたって「長期休暇」をとっていた奈良市の元職員が、職務強要の容疑で逮捕された。この事件の本質は、問題の男が部落解放同盟の支部長だったという点につきる。一方、同和事業をめぐる不祥事があいつぐ大阪市では、関市長が「(部落を)特別扱いはしない。過去のやり方とは決別する」として同和事業の大幅な整理を打ち出した。この種の事件を黙殺してきたメディアも、この問題を取り上げるようになった。ようやく同和のタブーが破られはじめたのだろうか。

関東に住む人には、なぜ解放同盟がそんなに強いのか想像できないかもしれないが、関西に住む人にはたいてい何か思い当たる経験があるだろう。私の出身は京都で、高校の学区の中には日本最大の被差別部落があったので、校内で解放同盟と対立組織の乱闘が起こったり、教師が生徒の面前で「糾弾」されるなどの事件は珍しくなかった。

メディアの差別語を作り出した責任も、解放同盟にある。あるときNHKのニュース解説で「片手落ち」という言葉を使ったのはけしからん、と部落解放同盟の地方支部の書記長がNHKに抗議にやってきた。協議の結果、この言葉は放送で使わないことに決まった。ところが、この年の大河ドラマが忠臣蔵で、赤穂浪士が集まって「吉良上野介はお咎めなしで大石内蔵助だけを切腹させるのは片手落ちだ」と言う有名なシーンがあった。そのときすでに収録は終わっていたが、撮りなおすことになり、「片落ち」という言葉で代用した。ドラマでは、浪士が次々に立ち上がって「片落ちでござる」と訴える珍妙なシーンが放送された。

関西で起こる大型の経済事件には、たいてい同和か在日がからんでいる。最近で有名なのはハンナンの浅田満元会長で、彼は解放同盟の地方副支部長だった。イトマン事件の主犯だった許永中も、同和対策事業に食い込んだことが裏社会でのし上がるきっかけだった。そしてこうした事件には、組織暴力がからんでいる。かつて山口組の構成員の7割は被差別民だといわれた。

しかし差別によって正業につけない人々が、こういうやり方で生活を支えようとしたのは、ある意味では自衛手段だった。問題は、それに対決することを避け、金でごまかしてきた役所の事なかれ主義である。2002年に「部落問題は基本的に解決した」として国の同和対策事業が打ち切られた後も、自治体では同和利権が存続し、奈良のように解放同盟が土木事業などを仕切ってきた。これは解放同盟が組織を維持するために差別語キャンペーンのような形で新たな問題を作り出し、行政がそれに迎合してきたからだ。しかし解放同盟の政治力の源泉だった社民党が凋落した今、同和事業の見直しは不可避である。

メディアも、この問題から逃げてきた。ほとんど解放同盟のいいなりに差別語が追加され、「カトンボ」や「四つ足」(いずれも一部の地域で部落民を示す隠語)まで放送禁止になった。「片手落ち」や「足切り」のみならず、最近では「身体にかかわる比喩はすべて禁止」という状態だ。このタブーを見直すと同時に、同和利権の実態を明らかにすることが彼らの責任だろう。

追記:NHKは、就職差別で有名だった。私が就職したころも身元調査をしており、実家の近所の家まで興信所が行って、奥さんが驚いていた(今は禁止)。人事担当者は「NHK職員には部落出身者はひとりもいない」と誇らしげに語っていた。メディアの側にもこういうやましいことがあるから、解放同盟に対決できないのだ。

ヒルズ黙示録・最終章

大鹿靖明

朝日新書

このアイテムの詳細を見る

村上=ライブドア事件の捜査にも影響を与えたといわれる『ヒルズ黙示録』の続編。冒頭で、ライブドアがソニーの買収を考えていたことを明らかにして驚かせるが、本書の最大の価値は、堀江・村上被告などの公判をフォローして事件と捜査の全容を明らかにしたことだろう。

公判の過程でもっとも驚いたのは、宮内亮治・中村長也被告が1億5000万円あまりを横領していたという疑惑だ。弁護側も指摘するように、検察がこれを隠すことと引き換えに彼らに検察の「堀江主導」説に沿った供述をさせていた疑いは強い。一種の「司法取引」といえばいえなくもないが、横領や特別背任は証取法違反よりも重い犯罪であり、これは本末転倒の取引である。

しかし被告側の戦いも拙劣だ。特に「逮捕前会見」でインサイダー取引の容疑を進んで認めた村上被告が、逮捕されてから無罪を主張しはじめたのは支離滅裂で、彼が「プロ中のプロ」ではないことを露呈してしまった。ライブドアの被告も分裂しており、このままでは堀江被告の完全無罪はむずかしいだろうと著者は予測する。

著者がもっとも強く批判するのは、「初めに筋書きありき」の杜撰な見込み捜査で事件を作り出した検察である。日本経済をだめにした銀行の兆単位の粉飾には目をつむり、それに挑戦するベンチャー企業の数十億円の粉飾を大々的に摘発する検察は、既得権の用心棒だといわれてもしょうがない。今回の事件の根幹にあるのは、派手な事件の摘発で地盤沈下を食い止めようとする検察首脳と、それに迎合した東京地検の大鶴特捜部長の出世主義だという見立ては辛辣だが、私も同感だ。

ICPFセミナー「経済産業省はWeb2.0にどう対応するか」

最近、官民共同で検索エンジンの研究開発を行おうという「情報大航海プロジェクト」が設立され、「日の丸検索エンジン」として話題になっています。 Web2.0と呼ばれるインターネットの新しい動きに日本企業が立ち遅れていることは明らかですが、これによって日本は立ち直れるのでしょうか。このような政府主導の産業政策はもう時代遅れだという批判もありますが、経済産業省は日の丸検索エンジンというのは誤解だといっています。

日本のIT産業を活性化するために政府は何をすべきなのでしょうか? また何をすべきでないのでしょうか? 経産省の政策の真の狙いはどこにあるのでしょうか? 11月の情報通信政策フォーラム(ICPF)セミナーでは、情報大航海プロジェクトを進めている経産省の久米孝さんをお招きし、IT産業と政府の役割について議論します。

スピーカー:久米孝(経済産業省 商務情報政策局 情報政策課 課長補佐)
モデレーター:原淳二郎(ジャーナリスト)
日時:11月30日(木)18:30~20:30
場所:「情報オアシス神田」    
    東京都千代田区神田多町2-4 第2滝ビル3F(地図
入場料:2000円 ICPF会員は無料(会場で入会できます)
申し込みはinfo@icpf.jpまで電子メールで氏名・所属を明記して(先着順で締め切ります)

イタリアのsocial capital

先週は、出張のためにブログの更新が滞ってしまった。といっても、普通は出張先でもウェブが見えるので、環境はほとんど変わらないのだが、今回は後半、ローマに入ってからまったくインターネットが使えなくなった。ホテルには「Wi-Fi完備」という表示があり、最初はつながったのだが、3回目から何度アクセスしてもつながらない。どうもWi-Fiを接続しているテレコムイタリアのプロクシサーバが容量不足かダウンしたようで、ローマ中で同じ現象が起きているはずだから、そのうち修復されるだろう・・・と思ったのが甘かった。1日たっても直らないのだ。おまけにダイアルアップもつながらない。

現地で仕事を手伝ってもらったミカさんによれば、こんなことはイタリアでは日常茶飯事だという。日本ではNTTのIP電話が止まったら大騒ぎになるが、イタリアではだれも驚かない。ホテルや電話会社に抗議しても、何もしないことがわかっているので、みんなあきらめて自衛策をとる。私も、ホテルのモーニングコールが当てにならないので、警戒してラジオのタイマーと二重にかけたが、両方とも鳴らなかった(危険を感じて目が覚めた)。

しかし世界の中で見ると、こういう事件に普段まったく遭遇しない日本のほうが例外である。今回も最初のワシントンのホテルでは、Wi-Fiがつながったりつながらなかったり不安定だったし、ダレス空港では荷物が迷子になった。当たり前のことが当たり前に動くありがたさに日本人は気づいていないが、こういう社会的な信頼性の高さ(取引費用の低さ)が日本の製造業の高い効率を支えているのである。

こうした社会的インフラを社会学でsocial capitalと呼ぶが、イタリアはそのショーケースとして有名だ。同じ国の中でも、ミラノなど北部は信頼性が高く工業化が進んでいるが、南部のシチリアなどは今でもマフィアが地域を支配し、産業も立ち遅れている。この原因は、中世にスペインがイタリア南部を支配下に置いたとき、住民の反乱を防ぐため、地域を分断して住民を互いに反目させたことにあるという。その結果、イタリアでは統一国家の成立が遅れ、「私的な警察」としてのマフィアが登場したのである。彼らにとっては、治安サービスの「需要」を作り出すために犯罪を起こし、社会の信頼性を破壊することがビジネスになるわけだ。

これは旅行者にとっては笑い話ですむが、ローマに住んでいるミカさんにとっては深刻な問題だ。インフラが当てにならないので、同じ仕事をするにも日本の倍ぐらい手間がかかる。他人が信用できないため、借金は家族や親戚からしかできず、大企業が成立しない。賄賂や地下経済も蔓延しているが、裁判所が機能しない(ちょっとした裁判も10年ぐらいかかる)ので、だれも不正をただそうとしない。欧州でも他の国との経済格差が拡大して、こういう腐敗の親玉であるベルルスコーニは政権から追放された。

・・・などと書くと、イタリア人は不幸な顔をしているみたいだが、レストランは果てしなくおしゃべりする人々で満員だ。みんなコンピュータなんか使わないで、人生を楽しんでいるのである。私もWi-Fiと格闘して疲れたあと、近所のレストランで安いスパゲティを食ったら、今まで食ったスパゲティのなかで一番うまかった。「貧弱な通信インフラとうまいスパゲティ」と「高速の通信インフラとまずいスパゲティ」のどちらをとるかと問われたら、私も前者をとるような気がする。

踊る恐竜

WSJによれば、VerizonがYouTubeと提携して、携帯電話やテレビでクリップを配信するという。Verizonといっても日本ではなじみがないが、AT&Tが分割されてできた地域電話会社(ILEC)が合併をくり返してできた社員21万人の巨大企業である。だからこのニュースは、日本でいえばNTT東日本が2ちゃんねると提携するような、ちょっと考えられない組み合わせだ。

この記事が出た7日、ちょうど私はワシントンでVerizonのエコノミストと話していて、このニュースを彼から聞いた。私が「YouTubeは訴訟まみれになるのではないか?」と質問すると、彼は「RIAAと当社の(P2Pをめぐる)訴訟を覚えているかい?あのころ音楽・映画業界とわれわれは敵同士で、ディズニーの首脳が『Verizonはナチだ』と発言したんだよ」と笑った。「そのディズニーが今や当社の最大のパートナーだ。問題は訴訟ではなく、ビジネスなんだよ。訴訟を起こすのは弁護士ではなく顧客なんだから」。

VerizonはFiOS TVという光ファイバーの映像配信サービスを去年から始めたが、この業界では全米の視聴者の8割がケーブルテレビを見ており、ILECは挑戦者だ。ケーブルと同じ番組を流してもだめなので、ビデオ・オンデマンドやダウンロードなどのメニューを用意して、ロングテールの部分にコンテンツを広げようとしている。YouTubeは、そういうILECのねらいに合致したのだ。そしてハリウッドも、ケーブルより高画質で多くのチャンネルの流せる光ファイバーに商機を見出している。

「しかしYouTubeはハリウッドの敵になるのでは?」と聞くと、彼は「いや違う。ハリウッドにとって大事なのは、作品であってパイプではない。プロデューサーの評価は、一つの作品からいかに多くの収益を上げるかで決まるので、パイプはいくらあっても足りないのだ」という。「ケーブルはたかだか300チャンネルしかないが、インターネットには無限のチャンネルがある。ハリウッドはネットを選ぶだろう。彼らは強欲すぎてYouTubeを殺すことができないのだ(They are too greedy to kill YouTube)」。彼は具体的には語らなかったが、「コンテンツの送り手が合意すれば、著作権なんて障害ではない」と、ILECとハリウッドの間でP2Pのときのような「取引」が進行していることをにおわせた。

「通信と放送の融合」といえば、日本では地デジのIP再送信を認めるとか認めないとか石器時代みたいな話をしているが、アメリカでは「滅びゆく恐竜」とバカにされていたILECが、すっかりネット企業に変身しているのには驚いた。「象が踊れないと誰がいったのか」というのは、IBMを倒産の危機から救ったルイス・ガースナーの回顧録の原題だが、株式市場からプレッシャーをかけられると、恐竜も踊り始めるのがアメリカ資本主義のおもしろいところだ。

フィッシング(?)にご注意

当ブログを丸ごとキャッシュしたサイトがあらわれた(アクセスすることはおすすめできない):

http://blog.goo.ne.jp.tz.mine.nu/ikedanobuo

ヤフーのブログ検索で当ブログを検索すると、トップにこのキャッシュサイトが本物と並んで出てくる(14:20現在)。この偽サイトからリンクをたどると、驚いたことに外務省からヤフーやウィキペディアに至るまで、あらゆるサイトが、このZettAgentなるサイトにキャッシュされている。ところが、このサイトにトップページはなく、グーグルでもヤフーでも、ZettAgentはまったく引っかからない。非常に新しいのかもしれない。

大規模なフィッシングの疑いがあるが、IE7のフィッシング検出機能では(かなり考えている様子があるが)引っかからない。この.nuというドメインは、怪しげなサイトに使われているようだ。グーグルの検索広告がリンクされているが、本物かどうかはわからない。危険なので、クリックしないほうがよい。もちろん、この偽ページにコメントやTBをつけてはいけない。

少なくとも当ブログの記事と、そこからリンクを張った記事は、すべてキャッシュされているようだ。ここで言及された人は、チェックしてみてください。念のため、サイトで使っているパスワードは(他で使っている場合も)変えたほうがよい。私のページでは、管理者画面まではキャッシュされていない(偽ヤフーにリダイレクトされる)が、パスワードを取得したことを隠していることも考えられる。

アドホックに検索した限りでは、ITMediaがキャッシュされているがCNETはなかったり、梅田望夫さんのブログはさっきまでキャッシュされていたが消えたりしている。ヤフーが検索結果から削除している最中かもしれないが、偽サイトそのものが残っている限り、いずれ他の検索エンジンでも出てくるだろう。この記事を読んでいるブログ管理者と運営企業は、早急に対策を講じたほうがよいと思う。

追記:この記事を投稿した直後にリロードすると、もう偽サイトもアップデートされている! しかも偽リンクもすべて張られている。

追記2:コメントで教えてもらったが、これはDynamic DNSを使って同一のIPアドレスにドメインを二重に登録しているらしい。サイトを登録しているのはNIFTYのユーザーで、国内の有名なブログの多くに偽サイトができているようだ。HTMLファイル自体は本物なので、フィッシングに使われるおそれはないようだが、NIFTYはこのサイトを削除すべきだ。

追記3:サイトが削除されたようだ(13日01:00)。


河野談話は見直しが必要だ

安倍首相は、「侵略戦争」を認めた1995年の村山首相談話や「慰安婦」について謝罪した93年の河野官房長官談話を認めるなど軌道修正が目立ち、「自虐史観」を批判する支持者から批判を浴びている。他方、下村官房副長官が河野談話について「事実関係を研究し、客観的に科学的な知識を収集して考えるべきではないか」とのべたことが野党の反発を呼んでいる。しかし、これは靖国参拝のような「心の問題」でなはく、検証可能な歴史的事実の問題であり、政治的配慮で封印するのはおかしい。

私は、かつて慰安婦騒ぎがつくられた現場に立ち会ったことがある。1991年にNHKの終戦関連企画で、私は強制連行をテーマに、同僚は慰安婦をテーマに取材した。韓国で数十人の強制連行経験者に取材したが、軍が連行したという証言は得られなかった。強制連行とよばれるものの実態は、朝鮮半島で食い詰めた人々が高給にだまされて日本の炭鉱や軍需工場に出稼ぎに行き、ひどい条件で労働させられて逃げられなかったという「タコ部屋」の話にすぎない。慰安婦も、売春でもうけようとする民間の業者が、貧しい農村の女性をだまして戦地に連れて行った公娼であり、「従軍慰安婦」という言葉も当時は使われなかった。

河野談話のいうように「甘言、強圧による等、本人たちの意思に反して集められた事例が数多く」あり、軍がそれに関与したことは事実だが、公権力で徴用した事実はない。談話でも「官憲等が直接これに加担した」という表現にとどめている。実をいうと、私も当初は軍の強制の証拠をさがしたのだが見つからなかったので、戦争ものとしてはインパクトの弱い番組になってしまった。ところが、ほぼ同時に放送された慰安婦のほうは「私は慰安婦だった」と韓国女性が証言し、その後、日本政府を相手どって訴訟まで起こしたため、国際的にも大きな反響を呼び、政府が謝罪するに至った。

私は、最初からこの「証言」には疑問をもっていた。証言者を連れてくるところから話の中身まで福島瑞穂弁護士がお膳立てし、彼女の売名に利用されている印象が強かったからだ(のちに彼女は社民党から出馬して参議院議員になった)。実際には、元慰安婦の証言以外には、軍が連行したという証拠は当時も今もない。しかし史実に忠実につくった私の番組よりも、センセーショナルに慰安婦問題を暴いた同僚の番組のほうが「おもしろかった」ため、話が次第に一人歩きし、演出が事実になってしまったのである。

河野談話の根拠とされたのは、「軍が済州島で慰安婦狩りを行った」と証言する吉田清治氏の『私の戦争犯罪』(三一書房)という本だが、この内容は捏造であることが後に判明した。これについて、安倍氏は97年に「河野談話は前提が崩れている」と国会で質問し、その見直しを迫った。これと首相答弁の矛盾を追及されると、彼は「狭義の強制には疑問があるが、その後広義の強制に議論が変わった」と苦しい答弁をしているが、公権力を執行していないのに政府が謝罪するのは無原則である。これは安倍氏の政治家としての矜持にかかわる問題だ。

事実関係に疑問があるのに、閣議決定を継承するという手続き論で「科学的な知識の収集」も許さないのはおかしい。もちろん韓国と友好的な関係を結ぶことは重要だが、誤った歴史認識のもとで一方的に謝罪しても、真の友好関係は築けない。日本軍がアジアで行った侵略行為について政府が謝罪するのは当然だが、事実でないことはそう指摘するのが、成熟した日韓関係の基礎だろう。中韓の反日教育の実態もひどい。靖国という「非問題」がようやく後景に去った今、日中韓が率直に対話して、客観的に歴史を検証する必要があるのではないか。

Jajah

無料VoIPシステム、Jajahが携帯電話からも使えるようになった。Symbianの入っている携帯なら、Jajahのホームページにアクセスしてソフトウェアをインストールすれば、メンバー同士であれば世界のどこでも無料でかけられる。

もちろん固定電話でも使える。Skypeより便利なのは、ヘッドセットなしで使えることだ。発信する電話番号を登録してJajahからかけると、こちらと相手の電話を呼び出し、受話器をとれば、あとは普通の電話と同じように通話できる。通話品質はSkypeよりよい。料金は、相手がメンバーでなくても、アメリカにかけて1分3円ぐらい。クレジットカードでいくらか料金を前払いする必要があるが、最低額の250円でも1ヶ月は使えるだろう。

ちょっとあやしげな感じがあるが、収入源はグーグルの検索広告で、別にあやしいものではない。スパイウェアの類の問題もない。私の職場では半年以上使っているが、たまに切れたり音質が落ちたりする以外は、何もトラブルはない。これが携帯電話からも使えれば、パケット料金だけで通話できる。固定電話の市場は、すでにVoIPによって急速に縮小しているが、これからは携帯電話の市場も、こうした無線VoIPによって縮小するだろう。

携帯電話の悪魔的ビジネスモデル

一昨日の「プリンタのカートリッジはなぜ高いのか」という記事には、「携帯電話こそ悪魔的だ」というコメントがたくさん寄せられた。もちろんその通りだが、いわずもがななので少ししかふれなかった。ただ最近のソフトバンクをめぐる不当表示騒動について、いささか疑問を感じたので、少し補足しておく。

ソフトバンクの「0円キャンペーン」に不当表示の疑いがあることは確かだが、それを他社が非難できるのか。ドコモやKDDIの端末も「0円」と表示して売っているし、料金体系が複雑でわかりにくいのも似たようなものだ。もちろん消費者の負担はゼロではなく、端末価格の割引分は販売店へのインセンティブとしてキャリアが負担し、それを月々の通話料金に転嫁しているのである。

このしくみが消費者側からみて問題なのは、第一に端末の価格が本来よりも安く見せかけられ、しかも通話料金への上乗せはどの機種でも同じだから、過剰機能の端末が売れる傾向が強いことだ。その結果、キャリアの負担が大きくなって、結局は料金が高くなるのである。

第二に、長期間使う消費者ほど損することだ。端末1個あたりのインセンティブは平均4万円ぐらいだといわれるが、これは料金に上乗せして1年半ぐらいで回収される。その後は、ユーザーは高い料金だけを負担することになり、それが他の端末のインセンティブの財源になる。いいかえれば、長期ユーザーから短期ユーザーへの所得移転が数千億円規模で行われているのである。

実はキャリアにとっても、販売費用は大きな負担になっている。特に最近、彼らが困っているのは、デジタルカメラを買う代わりにカメラ付携帯を安く買ってすぐ解約する新規即解約という現象が広がっていることだ。これだとインセンティブは無駄になるばかりか、こういう「ただ乗り」を奨励する結果になる。そもそも端末の割引は、新規ユーザーには意味があっても、買い替えユーザーには必要ないのに、買い替えにも漫然と適用されている。

ベンダーも、キャリアが開発から流通まで支配するしくみには不満をもっている。前の記事のコメントにも書いたが、日本の携帯端末に国際競争力がないひとつの原因は、端末メーカーがキャリアの「下請け」になっているため、最終財市場の国際競争が働かないことだ。キャリアの側もコスト意識がないから過剰品質を求め、1端末に100億円といった異常な開発費がつぎこまれ、世界に通用しない超高機能・高価格の端末ばかり開発される。

これに比べれば、ソフトバンクが「新スーパーボーナス」で打ち出した割賦販売のほうが透明性が高い。これは端末の正規の価格を表示し、月々の分割払い分を通話料金から返済するものだ(*)。初期負担を「0円」にする点は従来と同じだが、端末の種類によって返済額が違う。さらに重要な違いは、端末を販売店が値引きするのではなく、分割払い分をソフトバンクモバイルが負担することだ。これなら販売店にインセンティブを出す必要はない。

割賦販売に移行したら、SIMロックもやめるべきだ。27ヶ月以内に端末を変更すると、割賦販売の残額を支払わなければならないのだから、端末を物理的に拘束する必要はない。むしろ積極的にSIMカードをアンバンドルして海外の端末が使えるようにすれば、ラインナップも一挙に増える。ソフトバンクの最終兵器は、こうした「流通革命」をしかけることだろう。それは消費者にとっても歓迎すべきことだ。

(*)いうまでもなく、この返済分を差し引く前の料金が端末価格を織り込んでいるので、「ソフトバンクが端末価格を負担する」ように見えるのもトリックである。

上武大学サテライト大学院

私の勤務している上武大学が、来年4月から東京駅の前に社会人向けのサテライト大学院を開校する。ビジネスの現場で活躍する人々を教授に招いて、学問とともに最新の情報を伝えるのが特長だ。私もコーポレート・ガバナンスなどの講義を担当する。

願書の受付は今月14日(火)まで。くわしいことはホームページで。






記事検索


月別アーカイブ
QRコード
QRコード
Creative Commons
  • ライブドアブログ