国債バブルって何?

世界的にインフレになる中で、各国の中央銀行が金利を引き上げる動きが出ていますが、日銀は国債を買い支える指し値オペを宣言しました。これはバブル状態になっている国債を買い支えようということでしょうが、よい子のみなさんにはむずかしいので簡単に解説しましょう。



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利上げできない日銀が「悪い円安」をもたらす



アメリカのCPIが7.5%と予想外に高く、長期金利が2%台に乗った。これを受けて日銀は、10年物国債の金利を0.25%で無制限に買い入れる指し値オペの発動を発表した。これはテクニカルな話にみえるが、かなり大きな局面の転換である。

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日本経済新聞より

債券価格の指し値というのはピンと来ないが、次の図のように今年の初めから10年物国債の価格はゆるやかに低下しており、これに歯止めをかけるのが日銀のねらいだろう。0.25%はYCC(イールドカーブ・コントロール)の上限なので、これは予想されていたことだが、ここで止まるかどうかはわからない。

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Zerohedgeより

短期金利は中央銀行が決めるが、長期金利は市場が決める。FRBは政策金利を来月0.5%上げ、今年中に2%になる可能性もあるので、日米の金利差は大きく開き、円安になる。ドル/円は116円に乗った。このまま日銀が動けないと120円以上に上がり、資源価格の上昇とあいまって輸入インフレが進むだろう。

円安を止めるには利上げ(YCCの放棄)が必要だが、それは量的緩和路線の失敗を認めたことになり、黒田総裁の任期(来年4月)のうちにはできないだろう。これは参院選を控えた岸田政権にとっては悪い兆候である。ガソリンがリッター170円になっただけであわてて元売りに補助金を出す政権が、このような悪い円安を放置するとは思えない。

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信用創造って何?

このごろ万年筆マネーが話題になっています。今年の大学入試の共通テストには「信用創造」についての問題が出ました。これを「大学入試センターが万年筆マネーを認めた!」と喜んでいる人がいますが、これは昔からある理論です。

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大学入試共通テスト

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バブルという戦争体験

先週、メタ(旧フェイスブック)の株価は1日で25%も暴落し、時価総額で2000億ドル以上を吹っ飛ばしたが、その後も回復しない。その原因はいろいろ取り沙汰されているが、構造的な問題はハイテク株が過大評価されていることだ。

アゴラで増田悦佐氏も指摘するように、GAFAとかFAMANGとか呼ばれるハイテク銘柄の株価は、それ以外の株価に比べて突出して高く、それ以外の銘柄(S&P496)の上昇率はTOPIXとほとんど変わらない。この格差が是正されるのは、時間の問題である。

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バブルというのは、同時代に生きた人しかわからない戦争体験のようなものだ。後から「あれは愚かだった」というのは誰でもいえるが、その最中に「これはバブルだ」といった人はほとんどいない。大恐慌以来、バブルが崩壊する順序は決まっている。
  1. 投資ブームで過剰債務が積み上がる
  2. 株価が暴落する
  3. 銀行の資産に評価損が発生する
  4. 取り付けで金融システムが崩壊する
歴史に残るのは、1929年の「暗黒の木曜日」のような2の株価暴落だが、それ自体は問題ではない。株主の損失は自己責任なので、会社がつぶれて株券が紙切れになったら終わりだ(ドットコムバブルがそうだった)。

本質的な問題は3である。今回はもともと過剰債務が積み上がっていたところに、コロナで政府債務が激増した。これは普通なら金利上昇に結びつくが、2020年には需要不足も大きかったので、金利はそれほど上がらなかった。政府のばらまいた給付金のほとんどは貯蓄されたからだ。

しかしさすがにアメリカでも日本でも、金利が上がり始めた。それはインフレ抑制には必要だが、これがバブル崩壊を誘発する。判断がわかれるのは、そこからである。

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地球温暖化の始まった原因は農耕だった?

人類と気候の10万年史 過去に何が起きたのか、これから何が起こるのか (ブルーバックス)
2年前に紹介した本が話題になっているので、ちょっとテクニカルな問題について補足しておく。

本書は福井県の湖の地層から過去15万年の気候を推定したもので、地球は長期的には地球の公転運動で寒冷化し、氷河期だったが、1.2万年前から温暖化が始まった。世の中では地球温暖化は「産業革命以後」の出来事と思われているが、図1のように温暖化のトレンドはそれよりはるかに早くから始まり、1万年以上続いているのだ。

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図1

1.2万年前に温暖化が始まった原因は太陽活動や地球の公転周期の変化と考えられるが、8000年前から、それまでにないパターンの温暖化が始まった。その一つの原因は、大気中の温室効果ガス濃度が増えたことだ。図2のようにメタン濃度は5000年前から増え始めた。

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図2

CO2は図3のように、8000年前から増え始めた。

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図3

この温室効果ガスのデータはおおむね正しいとされているが、問題はその濃度がなぜトレンドから外れて上がったかだ。その原因は、人類の始めた農耕と森林伐採だったというのが、本書の紹介しているラディマン仮説である。

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天皇制って何?

共産党の出したリーフレットで「天皇制は廃止しません」と書かれたことが、ちょっと話題になっています。これは立憲民主党との選挙共闘でよく問題になるので、共産党としてはちょっと歩み寄ったんでしょう。



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コロナ後の高金利・ハイリスクの世界

日本の長期金利(10年物国債)が、6年ぶりに0.2%になった。世界的なインフレの中で、FRBが3月に利上げすると見込まれ、ECBも年内に利上げする見通しだ。日本の長期金利も上がるのは当然だが、政治的には大きな方向転換となる。

同じような金利上昇は、2010年代初めの金融危機からの回復のときも起こったが、今回はピッチが速い。その原因としてEconomist誌は3つの変化をあげている。
  1. コロナ直後の投資激減からの回復:これは巨額の政府支出に主導された一時的な投資ブームであり、長期的には平時の水準に復帰する。

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    コロナ後の投資の変化(Economist)

  2. 無形資産への投資:アメリカの民間投資の41%は知的財産(無形資産)への投資だった。これはリモートワークによるネットワーク需要が大きいが、暗号資産や仮想現実などのバブル的な投資も含まれる。
  3. 脱炭素化の投資:グローバルな非化石燃料への投資は昨年、全世界で7550億ドルにのぼり、その半分が再エネに投資された。電気自動車への投資は2020年から77%増えた。
これらの投資にはリスクも大きい。特に脱炭素化投資は「ネットゼロ」を実現するには不十分で、大きな収益を上げる見通しもない。全体としてバブル的な投資ブームであり、急速に上がる金利はそのリスクを反映している。

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「ネットゼロ」には毎年3.5兆ドルのコストが必要だ

マッキンゼーは、2050年にCO2排出をネットゼロにするというCOP26の目標を実際に実現するための投資についてのレポートを発表した。


2050年ネットゼロに必要な物的投資(マッキンゼー)


必要な投資は2050年までに累計275兆ドルで、毎年9.2兆ドルだ。そこから今までに実施された投資を引いても、3.5兆ドル(400兆円)が必要になる。これは毎年4兆ドルというIEAの予測と(計算方法は違うが)おおむね同じだ。

3.5兆ドルというのは大きすぎて実感がわかないが、全世界のGDPの約4%に相当する。これを均等に負担したとすると、日本では20兆円である。

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無垢な自然を破壊した人類の「原罪」

王国と楽園
アル・ゴアは1990年代から地球温暖化を警告し、21世紀には海面が6メートル上昇すると『不都合な真実』の初版で予言した。それが本当なら人類の脅威だが、現在のIPCC報告書では、今世紀末に60cm上がるかもしれないという程度である。

ところが環境原理主義は過激化し、化石燃料の禁止による資源インフレで世界経済が大混乱に陥っている。このようなカルトがヨーロッパで流行するのは、科学的には説明できないが、キリスト教的な贖罪意識だと考えると理解できる。

人類は無垢な自然を破壊し、楽園を失った。その原罪は永遠に消えないが、それを悔い改めることで救われるという発想は、パウロ書簡にも福音書にもない。それは4世紀にアウグスティヌスが確立し、その後ずっと正統派の教義となった。世界の本質が疎外されるという論理は、ヘーゲル以降の近代哲学の原理になった。

アガンベンが本書で批判するのは、原罪の概念が矛盾していることだ。アダムとイブの罪は、彼らが楽園を追放されたとき終わった。その罪が今も受け継がれているとすると、先祖から遺伝したと考えるしかないが、それは自由意思とは無関係である。自分がおかしてもいない罪を悔い改める必要はない――アウグスティヌスの論敵、ペラギウスはこう論じた。

それに対するアウグスティヌスの答は明快ではない。原罪はアダムとイブの罪だが、それは堕落した子孫にも受け継がれた罪深い人間本質である。人々の悪行はすべてこの本質の現前であり、教会しか癒やすことのできない病のようなものだという。これは自由意思を否定し、教会による秘蹟を正当化する護教論だった。

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脱炭素化で世界はスタグフレーションに陥る

日経新聞の「スタグフレーションに身構える欧州」という記事に「気候変動は景気悪化の要因」という小見出しがついているが、本文には「脱炭素が欧米景気に与える影響についてモデル分析した」と書かれている。脱炭素が景気悪化をもたらすという話は日経の「カーボンゼロ」キャンペーンに都合が悪いので、整理部が改竄したのだろう。

この記事で紹介しているチェコ中銀のレポートが分析しているのは、脱炭素化の世界経済への影響である。具体的には2050年に炭素税を700ドル/トンまで上げ、化石燃料の消費を80%以上減らした場合のシミュレーションだ。

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脱炭素化による世界のGDPの変化(チェコ中銀)

その結果は上の図の右のように、炭素税だけのdelayed transitionでは、エネルギーコストが上がって消費が大幅に減るので、実質GDPがマイナス7%になる。青の部分は気候変動による洪水などの物理的ショック、赤が化石燃料削減のショックだが、気候変動ショックより脱炭素ショックのほうが大きい

そのショックを政府の補助金(オレンジの部分)で埋めると、左のようにプラスマイナスゼロになるが、物価が上がるので、長期的なスタグフレーションが起こる。今の資源インフレは、その序幕にすぎない。

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