「カクレキリシタン」の隠れた歴史

カクレキリシタンの実像: 日本人のキリスト教理解と受容
文書偏重の伝統的な歴史学に対して、口頭伝承などの「書かれざる歴史」を発掘したのがアナール学派の社会史だが、語り手は聖職者などの知識人に片寄っていた。それに対して本書の調査した「カクレキリシタン」は、江戸時代に230年にわたって受け継がれ、今も長崎に残る庶民の信仰である。

それは17世紀初めに宣教師が殉教し、知識人のいないまま口づてに伝えられたので、「オラショ」と呼ばれる祈りはラテン語がなまって意味不明になっている。彼らの信仰は固く、摘発されて死罪になっても転ばなかったが、取り調べた役人は彼らが教義をほとんど知らないことに驚いたという。

キリスト教をモデルとしたデュルケームやウェーバー以来の宗教社会学では、教義のない宗教などというものは「呪術」でしかないが、その意味では中世までのカトリック教会も呪術に近い。信徒はギリシャ語の聖書を読めず、神父の説教しか知らなかったからだ。それをドイツ語に訳して印刷したルターは「反逆者」だった。

カクレの人々は聖書さえ知らなかったが、その信仰を「日本的」と呼ぶのは誤りである。それが弾圧に耐えて長く伝えられてきた原因には、進化心理学でわかってきた遺伝的なメカニズムがあると考えられる。

続きは3月13日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンでどうぞ。

「小池劇場」の進化心理学的な説明

スーパーセンスーーヒトは生まれつき超科学的な心を持っている
豊洲問題はあきれるのを通り越して笑い話になってきたが、敵をつくって不安をあおる小池知事のレトリックは、ヒトラーからトランプまでおなじみだ。それはポピュリズムの手法としてはありふれているが、文化を超えて効果を示すことは遺伝的な感情に原因があると考えられる。

これは進化心理学で、スーパーセンスと呼ばれる。災害などの不可解な出来事の背後に超自然的な「本質」を見出し、災害を「天罰」と考えるのだ。これがシステム化されたのが一神教で、すべての現象の本質が神にあるので、災難は「神罰」となる。

「小池劇場」も敵か味方かという区別から入り、災難の原因はすべて敵(石原氏)にあるという本質主義を民衆に刷り込む。敵のやることはすべて悪いので、細かい手続き論で昔の話を蒸し返す。それが豊洲の安全性と無関係でもかまわない。目的は敵を滅ぼすことだからである。

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苦難の神義論から十字架の神学へ

古代ユダヤ教 (上) (岩波文庫)
歴史上もっとも豊かになった時代にトランプのような不満分子の代表が大統領になり、「イスラム国」などのテロが横行するのは逆説的だが、古来こうした現象は珍しくない。キリスト教やイスラム教のようなセム系一神教は弱者のルサンチマンに迎合するポピュリズムであり、その元祖がユダヤ教だ。それを最初に指摘したのはニーチェだが、その影響を受けて書かれた『古代ユダヤ教』は、ウェーバーの代表作である。

「第二イザヤ」の預言のコアは、苦難の神義論である。これは人が苦難にあったとき、それを「神罰」と考える思想だ。罪が大きいほど苛酷な罰を受け、それを償うことによって天国で救済される――という「第二イザヤ」のイノベーションはパウロに受け継がれ、十字架の神学になった。この不合理な教義には何の証拠もないが、不合理であるがゆえに信じる者だけが天国に行ける。

キリスト教は不幸を食い物にする宗教だから、戦争や疫病で多くの人が死ぬ時代に流行する。それは宗教戦争を起こす一方で、教会は病院や避難所になって「マッチポンプ」で信者を増やし、世界で20億人以上の信者を獲得した。キリスト教は弱者へのマーケティングで、歴史上もっとも成功したポピュリズムともいえよう。

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日本国憲法は「三権分立」ではない


橋下氏が噛みついているのは、朝日新聞の「最高裁人事、崩れた慣例」という記事だろう。「慣例は、政治権力による露骨な人事介入に対する防波堤の役割を果たしてきた面がある」と批判するガラパゴス憲法学者のコメントを載せているが、日弁連の推薦なんて何の法的根拠もない。これは首相を「みこし」にしようという下剋上の思想だ。

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小池知事のレーニン的愚民主義

豊洲の騒動はくだらないので興味がなかったが、きのうの議会答弁のあとのぶら下がりは傑作である。都の「築地にも米軍の工場があって有害物質が大量に使われ、土壌が汚染されている可能性がある」という報告を受けて、記者団が「築地は大丈夫なのか?」と質問したのに対する答だ。



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EdgeでFacebookの入力文字が消える

このごろAdobeのAcrobatやFlashをダウンロードすると、インテルのTrue Keyというソフトウェアが勝手にダウンロードされ、ログインするとき3つめのアカウントをつくるようになった。コントールパネルでアンインストールできず、Intel_securityとMcAfeeの中に2つ入っているプログラムを削除しなければならない。この原因は(インテルに買収された)マカフィーらしいので、これを完全にアンインストールした。
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明治維新は「能力主義の革命」だった

天皇はなぜ万世一系なのか (文春新書)
森友学園の事件は、意外に海外メディアに受けている。「極右の安倍首相が大日本帝国の教育をしている」という物語が、彼らの偏見に合致しているからだろうが、教育勅語は英訳を読めばわかるように、君主の訓話としては控えめである。

そのコアは天皇の正統性を万世一系で根拠づけたことだが、これは明治憲法で初めて公式に使われた言葉で、著者もいうように江戸時代以前にはそんな意識はなかった(タイトルはミスリーディング)。天皇家が「男系」で相続するというルールはなく、「生前退位」はありふれた出来事だった。

500年以上も休眠していたミカドが、1860年代に急に担ぎ出されたのは、明治政府の首脳が卑しい身分の下級武士で、およそ正統性をもっていなかったためだ。伊藤博文や山県有朋は、自分たちの権力を正統化するために世襲を徹底的に否定してペーパーテストによる公務員制度(および大学)を設立し、自分の跡継ぎもつくらなかった。

これは世界的にも珍しく潔癖な能力主義(科挙は当時は形骸化していた)で、日本の歴史上も初めてだった。それが明治維新の本質的な革命だった、と著者はいう。

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「異次元の財政政策」は日本経済を救うか


けさの日経新聞で平田育夫記者(元論説委員長)がシムズの政策をシミュレーションしているが、異次元の財政政策というのはおもしろい。金融政策で行き詰まった安倍首相が、3期目の目玉として財政政策を打ち出す確率は高い。平田記者にならって、私もシミュレーションしてみよう。

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教育勅語は危険思想か


森友学園をめぐる下らない事件には興味がないが、おもしろいのは子供が毎日、教育勅語を朗読させられているという話だ。マスコミは勅語が日の丸や君が代より凶悪な危険思想だと思っているようだが、それを読んだことはないだろう。上の写真がその原文だが、これを素読して意味のわかる人もほとんどいないだろう。ウィキペディアの現代語訳は、こんな感じだ:
まず皇祖皇宗、つまり皇室の祖先が、日本の国家と日本国民の道徳を確立したと語り起こし、忠孝な民が団結してその道徳を実行してきたことが「国体の精華」であり、教育の起源なのであると規定する。続いて、父母への孝行や夫婦の調和、兄弟愛などの友愛、学問の大切さ、遵法精神、一朝事ある時には進んで国と天皇家を守るべきことなど、守るべき12の徳目(道徳)が列挙され、これを行うのが天皇の忠臣であり、国民の先祖の伝統であると述べる。これらの徳目を歴代天皇の遺した教えと位置づけ、国民とともに天皇自らこれを銘記して、ともに守りたいと誓って締めくくる。
ここには「一億火の玉だ」とか「天皇のために死ね」とかいうアジテーションはなく、最初の「皇祖皇宗」のくだりで皇国史観を語っている以外は、平凡な徳目を並べただけだ。しかしそれが強烈な影響力をもったことも事実である。不思議なのは、こんな短い説教があれほどの影響力をもったのはなぜかということだ。

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韓国のキリスト教は戦争と植民地支配で発展した

韓国とキリスト教 (中公新書)
日本のキリスト教徒は人口の1%に満たないが、韓国では30%近い。キリスト教は戦争や貧困の時期に流行する不幸度の指標だから、韓国人は日本人の30倍不幸なのかもしれない。

イエズス会の宣教師が日本に来たのは16世紀初めだが、彼らが朝鮮半島に渡ったのは1593年、豊臣秀吉の朝鮮侵略(文禄の役)のときだった。これがキリスト教が韓国に伝えられた最初だが、韓国のキリスト教会では不都合な事実として隠されている。

そのあと日本では「隠れキリシタン」として細々と残ったが、人々が飢餓状態にあった李氏朝鮮では、不幸を食い物にするキリスト教が儒教と習合して「東学党」というカルトができた。東学党の乱を契機にした日清戦争で朝鮮半島が戦場になったとき、東学党は弾圧されたが、その信者は激増した。

日露戦争後に朝鮮半島が日本の植民地になってからは、東学党は「天道教」という宗教になって韓国のキリスト教の原型になった。つまり日本では江戸時代の長い平和の中でキリスト教が衰退したのに対して、韓国では戦争と植民地支配でキリスト教が発展したのだ。

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