国交省が作り出す「EVのジレンマ」

トヨタ自動車が、ようやく電気自動車(EV)に本腰を入れ始めた。今までも試作車はつくっており、技術は十分あるが、「トヨタ車として十分な品質が保証できない」という理由で消極的だった。それが今年の東京モーターショーでは次世代の技術「全固体電池」の開発に力を入れていると強調し、「EV企画室」を社内カンパニーに移管すると発表した。

続きはアゴラで。

幻の「日米相互防衛条約」

きのうのアゴラこども版はあまりこども向けではないので、補足しておこう。ガラパゴス左翼は今ごろ「日米同盟は対米従属だ」などと騒いでいるが、そんなことは誰でも知っている。それがこの60年間、保守勢力の懸念していたことだ。自民党の結成された最大の目的は、憲法を改正して安保条約を「相互防衛条約」にし、米軍を撤退させることだった。

『歴史としての日米安保条約』によると、1955年8月に鳩山一郎内閣の重光葵外相は訪米し、ダレス国務長官に「日米相互防衛条約」の日本案を見せた。その第4条まではNATOなどと同じ共同防衛の規定だが、第5条には「日本国内に配備されたアメリカ合衆国の軍隊は、この条約の効力発生とともに、撤退を開始するものとする」と書かれていた。

これに対してダレスは「現憲法下において相互防衛条約が可能であるか。日本は米国を守ることができるのか。たとえばグワムが攻撃された場合はどうか」と質問した。重光は「自衛である限り協議が出来るとの我々の解釈である」と答えたが、ダレスは「それは全く新しい話である。日本が協議に依って海外派兵できると云う事は知らなかった」と驚いてみせた。

続きは11月13日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンでどうぞ。

本居宣長の「言語論的転回」

宣長学講義
右翼の心情倫理は、和辻哲郎や折口信夫に受け継がれた皇国史観だが、それは国定教科書とともに葬られ、戦後は危険思想として封印された。その元祖は本居宣長だが、いまだに国学をそういう「日本主義」として批判する人がいるのは困ったものだ。

宣長の学問的な革新は、彼の文献学的な方法論にあった。このオリジナルは、荻生徂徠である。彼の古文辞学は漢文の訓読を否定して外国語として理解する方法論で、「テキストそのもの」に即して意味論を括弧に入れる言語論的転回の一種だったともいえる。それを宣長は古事記や日本書紀に適用したが、彼は漢文テキストの裏に「やまとことば」という本質を読み込んだ。

特に彼が重視したのは、古事記の背景に口承というパロールがあったことだ。『古事記伝』は暗号としての古事記を「復号化」して口承を再現する作業だったが、著者も指摘するように、そういう本質が実在したかどうかはわからない。与えられているのは古事記という原エクリチュールだけで、そこから「やまとごころ」というシニフィエを導いたのは宣長の想像力だった。

続きは11月6日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンでどうぞ。

「見えない増税」は2020年代に見える税になる



きょうのVlogが尻切れトンボだったので、補足しておく。安倍首相も錯覚していると思うが、雇用が改善しても「デフレ脱却」できない大きな原因は、家計消費の分母になる可処分所得が下がっていることだ。次の図は実収入(勤労者の平均月収)と可処分所得(実収入から税・社会保険料を引いた手取り)を2000年を100とする指数であらわしたものだ(総務省家計調査)。

続きはアゴラで。

労働の「商品化」は資本主義の終わりの始まり

最近、銀行のリストラが話題だ。決済機能は100%コンピュータで代替でき、融資や仲介業務もAIでできるので、給料の高い銀行員はIT投資のリターンが大きい。正社員のコストは労働生産性よりはるかに高いので、銀行員が定年退職して時給1000円でコンビニの店員をやると賃金は大幅に下がる。これが労働分配率の下がる原因だ。

労働がATMやPOSなどで自動化されると、賃金は労働生産性に近づく。コンピュータにできないクリエイティブな労働は少ないので、平均賃金は理論的にはIT投資の収益率(レンタル価格)と等しくなる。それがマルクスが、労働力の商品化(コモディタイズ)という言葉で表現したことだ。

これを契約理論で考えると、労働サービスを(たとえばロボットとして)売買できるようになると、雇用という非効率な長期契約が必要なくなる。Hartが指摘したように、企業は奴隷制の禁止によって人的資本が売買できない近代社会の制約に適応する制度だから、雇用契約がなくなると物的資本を所有する必要もなくなり、資本主義は終わるかもしれない。

続きは11月6日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンでどうぞ。

社会保険料が消費を浸食する

きのう総務省が発表した家計調査速報によると、9月の実質消費支出は前年比0.3%の減少で、2014年から減り続けている。これが日銀がいくらお金をばらまいても、物価の上がらない原因だ。これを安倍首相は消費増税のせいだと信じているようだが、それは誤りである(2016年家計調査年報)。

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2015年以降も消費が減り続けている現象は、消費税では説明できない。これは消費の分母になる可処分所得が減った影響が大きい。実収入はそれほど大きく減っていないが、給料から天引きされる所得税や社会保険料などの非消費支出が増えた。特にここ10年、社会保険料が何度も引き上げられたことが「痛税感」なき負担増を招いたのだ。この状況で「賃上げ要請」なんかしても消費は増えない。

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折口信夫の物語としての「古代」

折口信夫 - 日本の保守主義者 (中公新書)
枝野幸男氏は「和を以て貴しとなす」日本の伝統を保守するというが、こういう「素朴保守主義」は、昔から珍しくない。その元祖が折口信夫である。彼の「古代研究」は日本社会の近代化の中で、そのアイデンティティを古代に求めるものだった。

それは文字に書かれた史料に頼らないで口承から昔に遡及しようとした点では柳田国男を継承したが、「折口君は古い方から下りてくるような形をとった」と、柳田は批判した。しかし本居宣長以来、「日本」を探究する学問は多かれ少なかれそういう物語だった。古代に日本人という統一された国民は存在しなかったので、それは文学にならざるをえない。

折口の場合には、その物語のコアは(宣長と同じく)やまとことばであり、それを支える実在が天皇だった。有名な「まれびと」は神の別名だが、この概念が古代に実在したかどうかは疑問だ(柳田は否定した)。しかし折口が「神の国」としての日本の存在を証明するために使ったのは、キリスト教神学のような論理ではなく情緒だった。この点では、彼の本質は(釈迢空の)短歌に表現されている。

続きは11月6日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンでどうぞ。

立民党は「安保法制は違憲だ」という見解を撤回せよ

立民党の枝野代表が「私は保守だ。30年前だったら自民党宏池会だ」といったことが、ちょっと話題を呼んでいる。このごろ彼だけでなく保守を自称する左翼が多いが、ほとんどは中島岳志氏のような無学な話だ。こういうときの「保守」はバークを念頭に置いていることが多いが、枝野氏は「宏池会」と具体化したのがおもしろい。

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マルクス主義はなぜ成功したのか

Main Currents of Marxism: The Founders,The Golden Age,The Breakdown
最近の「立憲主義」は社会主義の劣化版だが、今では彼らさえ社会主義という言葉を使わないぐらいその失敗は明らかだ。しかしそれがなぜ100年近くにわたって全世界の労働者と知識人を魅惑したのかは自明ではない。本書は1978年にポーランド語で書かれたマルクス主義の総括だが、40年後の今もこの分野の古典として読み継がれている。

マルクス主義は「20世紀最大のファンタジー」だったが、彼の思想は高度なものだった。それを社会主義という異質な運動と結びつけて「科学的社会主義」を提唱したのが、間違いのもとだった。目的を実現する手段が科学的だということはありうるが、目的が科学的だということはありえない。

マルクスがその思想を『資本論』のように学問的な形で書いただけなら、今ごろはヘーゲル左派の一人として歴史に残る程度だろう。ところが彼はその思想を単純化して『共産党宣言』などのパンフレットを出し、その運動が成功することで彼の理論の「科学性」が証明されると主張した。このように独特な形で共産主義の理論と実践を結びつけたことが、その成功の一つの原因だった。続きを読む

憲法7条の解散権は制約すべきだ

立民党の枝野代表が「憲法9条を議論してもいいが7条の解散権も議論すべきだ」と、テレビで表明した。彼の意見に共感することはめったにないが、これは正論である。世界的にみて、日本の国会議員は異常に短命だ。その原因は政権の都合のいいとき解散できる7条解散のおかげで、平均1年半に1回(衆議院は2年半に1回)も国政選挙が行われるためだ。

続きはアゴラで。






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