「人流」を規制する緊急事態宣言には意味がない

きょうからまた緊急事態宣言が始まるが、もう誰もその効果は信じていない。しかしBuzzfeedで、国立感染症研究所の感染症疫学センター長、鈴木基氏は「前回の緊急事態宣言の効果はあった」という。それは本当か。

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地球温暖化を防ぐ「グローバルな気候契約」

The Spirit of Green: The Economics of Collisions and Contagions in a Crowded World (English Edition)
気候変動は、錯覚のデパートである。地球の平均気温を一定に保つことが絶対の目的だと思い込んでいる人が多いが、これは誤解である。目的は人間が快適に生活することであり、気温はその条件の一つに過ぎない。地球温暖化は経済問題なのだ

だが快適な環境は、価格で正しく計測できない。たとえばガソリンの価格が安いのは、大気汚染やCO2排出などの外部性が反映されていないためだ。図のように炭素税(横軸)をかけると化石燃料の消費が減り、名目所得は減るが、環境が改善されて本当の所得(true income)は増える。それが最大になる点が、最適な炭素税率である。

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これ以外に、排出量などの数値目標を設定することは望ましくない。国連で1.5℃目標や「2050年カーボンニュートラル」などの非現実的な目標が出てくるのは、それが法的拘束力のない努力目標なので、いくらでも美辞麗句がいえるからだ。損するのはそれをまじめに実行する日本のような国で、利益を得るのは中国のようなフリーライダーである。

それに対してノードハウスが提案するのは、グローバルな気候契約(climate compact)である。これは参加国に同率の炭素税を適用して排出量を削減するもので、法的拘束力のある条約だ。違反した国には懲罰関税などの罰則を設ける代わり、炭素税は40ドルぐらいの実現可能な率とする。続きを読む

飲食店への酒の納入禁止は違法な行政指導だ



12日から4回目の緊急事態宣言が始まるが、西村康稔経済再生担当相(コロナ担当)は、酒の提供禁止の要請を守らない飲食店には「金融機関からも働きかけを行っていただきたい」と銀行の融資制限を求めた。これは批判を浴びて撤回したが、飲食店に酒の納入を禁止する「事務連絡」は予定通り出された。

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太陽光バブルはウイグル制裁で終わる

バイデン政権が中国製太陽光パネルの輸入禁止を決めたのを受け、パネルの価格が急騰している。日本経済新聞によると、太陽光パネルとその部材ポリシリコンの価格は、昨年に比べて5倍になった。

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日本経済新聞より

今回の制裁のきっかけは、ウイグルにある強制収容所で、ポリシリコンが製造されているというCSISの報告が、今年4月に出たことだった。2010年から10年間で中国製の太陽光パネルの世界シェアは26%から82%に激増した。

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世界の太陽光パネル生産量(CSIS)

世界の大手ポリシリコンメーカー5社のうち4社がウイグルにあり、今では世界のポリシリコンの45%がウイグルで生産されている。「太陽光発電が石炭火力より安くなった」といわれた原因は、ウイグルの強制労働だったのだ。その価格が5倍になると、補助金でつくられた「太陽光バブル」は終わるだろう。

続きは7月12日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンでどうぞ。

「緊急事態宣言」という超法規的支配

歴史なき時代に 私たちが失ったもの 取り戻すもの (朝日新書)
4度目の緊急事態宣言が出ることになったが、これは奇妙な言葉である。ヨーロッパでは、よくも悪くもロックダウンという戦時体制がとられ、罰則で政府の命令に従わせる態勢がとられたが、日本では自粛要請という曖昧な方針がとられた。当初は罰則もなかったが、それは法の支配を超え、われわれの日常を支配するようになった。

與那覇さんとは『「日本史」の終わり』という対談本を出したことがあるが、そのときから彼のテーマは同じである。天皇に象徴される日本の意思決定の二重構造は「江戸時代」的な長い平和の中でできた独自のシステムで、平時には便利だが危機管理に弱い。コロナ騒動では、その弱さが露呈した。

公式の命令系統がはっきりしないため、専門家会議など法的根拠のない「令外の官」が実質的な意思決定を行ない、何の権限もない感染症学者が「8割削減」という方針を安倍首相に吹き込んで緊急事態宣言を発令させ、世論は強硬な方針一色になった。

このような事態は、今に始まったことではない。1930年代にも大政翼賛会という正体不明の組織で戦時体制が進められ、青年将校がクーデタを起こし、勝ち目のない日米戦争に国民はこぞって賛成した。このような病理は、少なくとも江戸時代にさかのぼる。

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ESG投資って何?

このごろ世の中は「脱炭素」や「カーボンニュートラル」でにぎわい、再生可能エネルギーとか水素とかアンモニアとか、いろんな話が毎日のようにマスコミに出ています。それを後押ししているのがESG投資ですが、その意味がわからない人も多いと思います。

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日本の自動車メーカーは生き残れるか

EVと自動運転 クルマをどう変えるか (岩波新書)
アゴラシンポジウムでも話題になったように、日本の製造業の最後の砦になっている自動車がEV(電池駆動車)になるかどうかは、製造業のみならず日本経済の今後を左右する問題である。

重要なのはガソリン車と電気自動車の違いではなく、ハイブリッド車(HV)とEVの違いだ。HVは基本的にはエンジンだが、EVはモーターである。今や中国は毎年2500万台以上を販売する世界最大のEV大国だが、すべての自動車がEVになるだろうか。

それを予想する上で、本書のあげているブラウン管と液晶のケースは示唆的である。かつて日本のテレビは世界を圧倒する競争力を誇っていたが、ブラウン管から液晶に転換した1990年代に覇権を失い、今はテレビの90%以上が輸入品になってしまった。

その原因は技術ではない。初期には液晶の技術で日本の電機メーカーが世界をリードしていたが、それはブラウン管より劣る技術だった。カラー液晶のコントラストは悪く、解像度も低く、応答速度が遅かった。価格もブラウン管のほうが安く、液晶テレビの価格は1インチ1万円以下には下がらないといわれていた。

しかし液晶の価格は2002年ごろ1万円/インチを切り、今では1000円以下である。テレビはすべて液晶になり、日本の電機メーカーは敗れた。その最大の原因は日本の技術が劣っていたためではなく、技術力が高すぎるためだった。

続きは7月5日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンでどうぞ(初月無料)。

カーボンニュートラルの勝者は中国



きのうのアゴラシンポジウムでは、カーボンニュートラルで製造業はどうなるのかを考えたが、やはり最大の焦点は自動車だった。政府の「グリーン成長戦略」では、2030年代なかばまでに新車販売の100%を電動車にすることになっているが、これはバッテリー駆動の電気自動車(EV)だけでなくハイブリッド車(HV)を含む。

しかしEUは2030年代にHVも禁止し、バッテリー駆動のEVしか認めない方針だ。ライフサイクル全体でみるとHVのほうがCO2排出量が少ないが、EUがEVにこだわる理由は、ヨーロッパの自動車メーカーにはHVをつくる技術がないからだ。

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習近平 父を破滅させた鄧小平への復讐

裏切りと陰謀の中国共産党建党100年秘史 習近平 父を破滅させた鄧小平への復讐
1921年7月1日、中国共産党が創立されたことになっているが、実際には23日だったらしい。創立大会に参加したのは13人で、その資金はコミンテルンが負担した。中国共産党という組織に実態はなく、コミンテルンが国民党を乗っ取るためのダミーだった。

しかし国民党との勢力の差は大きく、内戦でも共産党は敗退を続け、延安に逃げて西北革命根拠地を置いた。このとき延安を守ったのが、習近平の父、習仲勲だった。彼は毛沢東の信頼を得たが、1950年代に鄧小平に陥れられ、失脚した。

その後、鄧小平は文化大革命で失脚したが、毛沢東の死後に復権した。習仲勲も復権したが、またしても鄧小平の陰謀で失脚し、二度と復権できなかった。習近平の行動の根底には、父を政治的に葬った鄧小平への恨みがあり、そのために彼の路線を逆転させた。それは次のようなものだ。

 ・改革開放で生まれた腐敗の根絶
 ・拡大した経済格差の解消
 ・経済重視で弱体化した軍事力の増強

習近平の本質が父の恨みだけで語れるとは思えないが、本書の推測する鄧小平の陰謀が事実だとすれば、彼の実像は日本や欧米のメディアで描かれるプラグマティックなまとめ役というイメージとは違う、ライバルを蹴落として生き残ってきた陰険な策士である。

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日本人はなぜゼロリスクを求めるのか

コロナでも原発でも、日本人がゼロリスクを好む傾向は顕著だが、その原因は何だろうか。まずこれがアドホックな観察ではないことをみておこう。図1のように日本の計金融資産に占める現預金の比率は52.8%と先進国では群を抜いて高く、この比率はゼロ金利になってもまったく変わらない。

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図1 ガベージニュースより

この特異なポートフォリオが合理的な資産選択の結果か、それとも文化的なものかという問題は、昔から議論されているが、世界価値観調査の国際比較でも、図2のように日本人がリスク回避的だという傾向は確認されている。

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図2 World Values Surveyより

したがってこの原因は、文化的なものだと思われる。こういう説明は、昔は「思考停止だ」とか「宿命論だ」と批判されたが、最近は文化遺伝子の研究が進んで、実証的な議論ができるようになった。では何が決定的な要因だったのか?

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