法人税ゼロの時代がやってくる

The Economics of Tax Policy
マンキューなどの国境調整炭素税は合理的な提言で、石油メジャーも参加した。これが実現すると、国境調整税(DBCFT)という画期的な改革の第一歩になる。これはトランプの保護主義と混同しやすいが、中身はまったく違う。本書はそのしくみを学問的にくわしく論じたものだが、超簡単に解説しよう。

日本から自動車を輸出するとき、アメリカが20%の関税をかけるとしよう。これは国内製品の保護になるのでWTO違反で提訴されるが、すべての輸入品にも国内品にも一律にかけたら、そういうバイアスはなくなる。これはEUの付加価値税と同じく国内にもかける関税だから、資源配分に中立なのだ。海外に対しては輸入制限になるが、そのぶんドルが上がって調整され、貿易収支は変わらない。

日本も消費税を20%に引き上げると「保護主義競争」になって世界経済が縮小する、というのがアダム・スミス以来の経済学のセントラル・ドグマだが、これはDBCFTには当てはまらない。それは生産地に関係なく同じ税率を消費地でかける一括固定税なので、理論的には資源配分のゆがみは最小になり、WTOもFTAも貿易交渉も必要なくなる。

DBCFTを導入する代わりに資源配分のゆがみが最大の法人税を廃止すれば、税収中立にしても5%以上はGDPが増える。東京のお台場に法人税ゼロの「オフショア特区」をつくれば、世界中から銀行が集まってくるだろう。

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4000円/トンの炭素税導入を

6月20日のWSJに、こういう全面広告が出た。出稿したのはClimate Leadership Council。昨年の記事でも紹介した、マンキューやフェルドシュタインなどの創設した、炭素税を提唱するシンクタンクだが、注目されるのはそこにBPとエクソンモービルとシェルが参加したことだ。

石油資本は人為的地球温暖化説に否定的で、気候変動対策にも反対してきた。トランプ大統領がパリ協定を脱退したのも石油業界の意向といわれたが、その直後にベーカー元国務長官を中心とする共和党系のシンクタンクに石油メジャーが参加した意味は小さくない。

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世界最大のタックス・ヘイブンはロンドン

タックス・ヘイブン――逃げていく税金 (岩波新書)
ピケティからロゴフに至るまで政治的立場の違いを問わず、グローバル資本主義の最大の「闇」として指摘するのがオフショアである。それは税金を逃れるだけでなく、銀行規制の抜け穴になり、麻薬取引などの犯罪の温床になっている。

本書はその実態を元財務省幹部が実証した本だが、おもしろいのはOECDなどの会議で、イギリスが口先ではオフショア規制に賛成しながら、最終的な条約の規制対象から英連邦が落とされたり、具体的な罰則が消えたりすることだ。その原因は著者も指摘するように「世界最大のタックス・ヘイブンはロンドンだから」である。

登記上ケイマン諸島にある銀行は実質的にはロンドンで運営され、その経営者もシティの出身者が多い。この問題を解決するのは、著者のいうような規制だけでは無理だ。まず法人所得税を廃止し、最終的には労働所得税も廃止して、消費税のようなキャッシュフロー課税に一元化する必要があるが、それでも地下経済は根絶できないだろう。

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前川喜平氏は安倍政権の「ブラック・スワン」

失敗の法則 日本人はなぜ同じ間違いを繰り返すのか都議選の結果は、小池都知事の都民ファーストの圧勝というより、自民党の歴史的惨敗に終わった。これは14日に発売される私の新著『失敗の法則』の第7法則「小さくもうけて大きく損する」の事例として興味深い。第7章はタレブの「日本人は小さな失敗をきびしく罰するので、人々は小さくてよく起こる失敗を減らし、大きくてまれな失敗を無視する」という言葉で始まる。

これは彼の新著『反脆弱性』のテーマだが、盤石にみえた安倍政権がこれほど脆弱だとは思わなかった。私の印象では、加計学園の内部文書が出てきたとき、これを菅官房長官が「怪文書」と断定し、そのあと前川喜平元次官が出てきたとき、異例に感情的なコメントをしたあたりから「割れ窓」が拡大してきたように思う。

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原田泰氏は日銀審議委員を辞任せよ

ユダヤ人の人権団体、サイモン・ウィーゼンタール・センターが、日銀の原田泰審議委員の発言について「深く憂慮」する声明を出した。Abraham Cooper副理事長は、次のようにコメントしている。
Once again we are witness to a member of the Japanese elite invoking praise for Hitler and Nazi policies - this time from a Central Banker official. An outrage. […] While we note his apology, Yutaka Harada, a member of the board of the Bank of Japan praised Hitler's economic policies as "appropriate" and "wonderful".

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安倍政権の「割れ窓」はどこまで広がるか

anti盤石にみえた安倍政権は、加計学園騒動をきっかけに、豊田真由子事件や稲田防衛相の失言などが重なり、内閣支持率は第2次安倍内閣発足以来の水準に下がった。一つ一つは小事件だが、ここに来て一挙に政権をゆるがす事態になったのは、タレブの『反脆弱性』の例としておもしろい。

安倍政権のように「政治主導」ですべての政策や人事を菅官房長官が集権的に統括していると、ペイオフは図のような凹関数になる。平時には左側のように安定して利益を出せるが、前川喜平氏のような「割れ窓」ができると、そこから右側のように破壊が始まる。初期に情報をすべて公開するなど「損切り」すればよかったが、警察の提供した下ネタで逆転をはかったことが割れ目を広げてしまった。

こういう脆弱性に法則はないが、一つあるとすれば、誰もが絶対安全だと思っている部分から破綻が始まるということだ。誰もが今のマイナス金利が永久に続くはずはないと知っているが、安倍政権の安定が低金利を支えてきた。これが反転するきっかけは、黒田総裁の「出口」発言のような誰もが予想する出来事ではなく、政治家から出てくるのではないか。

続きは7月3日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンでどうぞ。

原田泰氏の賞賛する「ヒトラーの経済政策」は正しかったのか

ロイターによれば、日銀の原田泰審議委員は29日の講演で「ヒトラーが正しい財政・金融政策をした」と述べ、NYタイムズなどで世界にも配信された。講演記録は公表されていないので、詳細は不明だが、彼の発言はこのようなものだったという。
ケインズは財政・金融両面の政策が必要と言った。1930年代からそう述べていたが、景気刺激策が実際、取られたのは遅かった。ヒトラーが正しい財政・金融政策をやらなければ、一時的に政権を取ったかもしれないが、国民はヒトラーの言うことをそれ以上、聞かなかっただろう。彼が正しい財政・金融政策をしてしまったことによって、なおさら悲劇が起きた。ヒトラーより前の人が、正しい政策を取るべきだった。
これは「ヒトラーが初めてケインズ政策を採用してドイツ経済を救った」という通俗的な話だが、今では誤りだと判明している。


上の図のように、ドイツの失業者はヒトラーが政権についた1933年から激減したが、500万人以上も失業者が減ったのは、原田氏のいうような「ケインズ政策」のおかげではなく、毎年100万人徴兵したからだ。ドイツの若者は職を失う代わりに、戦場で命を失ったのだ。つまり原田氏が「正しい政策」として賞賛したのは戦時経済である。日銀は責任ある対応をすべきだ。

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「バリアフリー」のインフレに歯止めをかけよう



バニラ・エアの事件で議論が盛り上がっているが、乙武さんの記事は事実誤認だ。これについては尾藤さんの記事も指摘するように、バニラ・エアの対応は違法ではない。

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日米原子力協定は延長できるのか



きのうの言論アリーナは民進党の高井崇志議員に話を聞いたが、後半はやや専門的な話なので、ちょっと補足しておきたい。核拡散防止条約(NPT)では非核保有国のプルトニウム保有を禁じているが、日本は平和利用に限定することを条件に、日米原子力協定で保有が認められている。

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ヘーゲルの宣告した「神の死」

ヘーゲル・セレクション (平凡社ライブラリー)
廣松渉はマルクス主義者を自称していたが、学生には「ヘーゲリアン」といわれていた。その割には彼のヘーゲルについての著書はなく、本書はアンソロジーという形で書かれた廣松の数少ないヘーゲル論である。1975年の本の再刊なので、さすがに文献学的には古いが、新実在論でヘーゲルが再評価されているいま読むと、意外な発見がある。

廣松が授業で強調していたのは、ヘーゲル哲学は神学だということだった。弁証法とかトリアーデなんて目くらましで、「あれは三位一体に迎合したんですよ」という。これは最近の文献学でも確認され、ヘーゲルは宗教戦争の続くドイツを統一する思想として、カトリックとプロテスタントの共通点である三位一体論を正統化するために、あの奇妙な論理を考えたのだ。

彼の思想は弁証法とは逆の「否定の哲学」であり、本書にも「神は逝きぬ。神は死せり」(『宗教哲学』)という言葉が出てくる。ヘーゲルはニーチェを先取りしており、そういうニヒリズムを超克するために、あの壮大な哲学を構築したのだ。

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