ADR

ほとんど知られていないが、「ADR(Alternative Dispute Resolution)利用促進法」が今国会で審議される。熱心なのは公明党ぐらいだが、これは重要法案である。

米国で100万人いる弁護士が、日本では2万人しかいない。これを是正するために、ロースクールを乱造する必要はない。司法書士・行政書士・弁理士・税理士は計12万人以上いる。不足しているのは弁護士という人間ではなく、弁護士の機能なのだから、こうした専門家に弁護士業務を開放し、ADRで簡易に紛争を解決するオプションを広げれば、現在の高コストで時間のかかる司法制度は、かなり改善できる。

この程度の改革にも、日弁連は「専門性が確保できない」とかいう理由で反対しているが、これは逆である。法廷で弁論する仕事については弁護士は専門家だが、税については税理士のほうが専門家だし、特許については弁理士のほうが専門性が高い。

そもそも「職業免許」というのは、存在する根拠の疑わしいものが多い。医師やパイロットのように人命にかかわる職業については無免許業務を禁止する意味があるが、それ以外は「資格認定」で十分だ。司法については、裁判官に変な人がなると困るが、弁護士は代理人にすぎないのだから、資格を廃止しても、大した弊害はないだろう。

弁護士の参入は、かねてから日米間の通商問題になっているが、USTRもADRについての要望書を出した。今度もやっぱり、外圧に頼るしかないのだろうか。

ムーアの法則

インテルがペンティアム4の開発を断念した。これは「ムーアの法則の終わりか」ともいわれたが、半導体の集積度そのものは、あと15年ぐらいは法則どおり上がる見通しだという。

この「法則」の正確さは驚くべきもので、Nordhausによれば、集積回路の発明からこれまで40年間で計算能力あたりの価格は1/1億、つまり18ヶ月で1/2という法則どおりに下がっている。まあこれは、半導体メーカーがこの法則に沿って開発のロードマップを作るからだという説もあるが。

問題は、発熱が限界に達したことだ。これを「マルチコア」という並列処理技術で乗り越えようというのがインテルの方針だが、それにはソフトウェアの変更が必要だという。素朴な疑問だけど、水冷にするとかで、何とかならないのだろうか?

ちなみに、わが家のパソコンは半年ほどCPUを冷やすファンが止まったままだった。気づかずに使っていたが、どうということはなかった。発熱って、そんなに深刻な問題なのかな・・・

Innovation and Its Discontents

Adam JaffeとJosh Lernerの新著が、きょう届いた。

"How Our Broken Patent System is Endangering Innovation and Progress, and What to Do About It"という副題からも明らかなように、ラーナーたちがここ10年以上やってきた特許制度の研究、とくに「ビジネス方法特許」などの際限ない拡大がいかに危険かについての実証分析と提言をまとめたもの。裏表紙に、レッシグが推薦のことばを寄せている。

中国という<帝国>

中国というのは、わからない国である。あるいは中国人がわからない、というべきかもしれない。私の妻(日本人)は、かつて中国銀行の日本法人に勤務していたが、「中国人は、ずるいからきらいだ」という理由で、やめてしまった。こんなに近くで、何千年もつきあっていながら、こんなに不可解な隣人というのも珍しい。

しかも、その歴史がやたらに複雑で血なまぐさい。この複雑な歴史を手短におもしろく解説してくれるのが、高島俊男『中国の大盗賊』(講談社現代新書)である。このほど、現代新書が新装版になったのを機に、その「完全版」が出た。もとの「不完全版」が1989年に出たときも、著者の深い学識に裏打ちされたすぐれた中国論だと思ったが、今度の完全版は、旧版で(政治的な理由から)割愛されていた毛沢東論が「復刻」され、これが圧倒的におもしろい。

旧社会主義国が経済の破綻でみんな崩壊したのに、中国が逆に元気になっているのはなぜか、という素朴な疑問に、著者は明快に答える(しかもこれが書かれたのは80年代である)。それは中国の政権が、もともと社会主義でも共産主義でもなく、伝統的な「農民反乱」によってできた王朝だからである。権力が共産主義のイデオロギーに依存していないのだから、経済が資本主義になっても「上部構造」である王朝は安泰なのだ。

つまり中国は4000年前も今も<帝国>であり、本質は何も変わっていないのだ。これはネグリ=ハートを超える、東洋的な(そして斬新な)帝国論である。

Japan's Broadband Miracle

David Isenbergの日本のブロードバンドについてのコラム。元ネタは、私のコラムだ。私もソフトバンクについての記事を週刊エコノミストに書いた。

日本のアンバンドル規制が成功したのは、文字どおり「奇蹟」であって、欧米のように失敗するのが当たり前だと考えたほうがよい。今後は、むしろ無線による設備ベースの競争を促進するというのがFCCの方針のようだ。

Googleニュース

読売の島田さんに教えてもらった(ITメーリングリストへの私の投稿の訂正)のだが、Googleニュース日本版のニュースの配列は、コンピュータが自動的にやっているのだという。もちろん、本家もそうやっているのだろう。

一定時間帯に同一テーマでいくつのメディアからニュースが集まるか、メディアのブランド力なども加味しつつ、配列を決めるそうだ。これだと、共同通信から地方紙に配信される記事がいつも上位になり、特ダネは上位に出てこないことになる。それにしても、コンピュータがやっているとはとても思えない自然な配列だ。最後は人間がチェックしているのだろうが。

日本のGoogleニュースが本家に比べて使いにくいのは、読売・毎日などの有力紙がリンクを拒否しているためだ。米国では、この種の問題は「リンクは著作権法にふれない」ということで決着しているが、日本ではまだインターネットを妨害することが既得権を守ることだと信じているメディアが多い。

情報社会の倫理?

「情報社会の倫理と設計についての学際的研究」なるものが、GLOCOMで始まるそうだ。

「社会を設計する」というのがファシズムの思想であることは、ハイエクの指摘したとおりだが、このGLOCOMというのは、ネット上の言論を理由にして研究員を解雇する組織だから、こういうスローガンもお似合いなのだろう。

それよりお笑いなのは「倫理」だ。言論に対してひとことも反論しないで、その発言者を解雇する行為は、彼らにとって「倫理的」なのだろうか。まあ「ファシストによるファシズム研究会」というのも、それなりにおもしろいかもしれないが。

WiMAX

WiMAXをめぐる動きが活発になってきた。

AT&Tワイヤレスは2006年までにWiMAXを配備する方針だという。SBCにも同様の計画があるようだが、WiMAXは過大評価されているという懐疑的な見方も強い。特に大電力を要することから、携帯電話のようなバッテリー駆動の機器には無理で、主な用途は放送のような大容量・大電力のインフラだという。

他方Wi-Fiも、IP携帯電話が発表されるなど、しぶとく生き延びている。これまでの経験則でいうと、こういう「中途半端だがいったん普及した技術」が、改良を重ねて「互換性のない高級技術」をしのぐことが多いが、今回はどうなることやら・・・

ITS

ITS世界会議というのが始まったそうだ。第11回の世界会議というと、いかにも国際的な話のようだが、欧米人(それも無線の専門家)に「ITS」といっても通じない。

私も何度かITSについての発表を聞いたことがあるが、彼らの話の特徴は、すべて行政主導で、道路インフラと垂直統合され、IPがまったく出てこないことだ。要するに、ITという新しい名目で税金を無駄づかいする「第2公共事業」なのである。それが使い物にならないことは、ETCを見ても明らかだろう。

特に5.8GHz帯を「ITS専用帯」にするのは、日本だけだ。世界的には、5GHz帯は米国のU-NIIのように無線LANに開放するのが主流になっているなかで、日本だけがITSや「情報家電」などに細切れで割り当てるという。5.8GHzなんて直線性が強すぎで、高速移動するものには使えないので、自動車の専門家も困っている。

CCCDとコピーワンス

エイベックスがCCCDから撤退する。「みんながやめたいと思っていた」そうだ。レコード輸入権のとき、消費者にきらわれたことも遠因らしい。

次に問題になるのは、この対談でも議論されているように、デジタル放送の「コピーワンス」だろう。これはDVDレコーダーの天敵である。ハードディスクに録画した時点で「ワンス」だから、DVDにコピーすることはできない。もとのファイルを消す「ムーブ」はできることになっているが、各社の仕様がバラバラで、買ってきてやってみないとわからない。しかも2011年に本当にアナログ放送を止めたら、世の中のDVDレコーダーは粗大ゴミになってしまう。

他方、アナログ放送は「非圧縮」なので、これをハードディスクに録画したMPEG2ファイルは、デジタル放送の映像と同じである。つまり、ハードディスクの留守番録画を再生するとき、すでに視聴者は「デジタル放送」を見ているのだ。こっちはコピーも編集も自由だから、わざわざ受像機を買い換える必要はない。アナログ放送は「デジタル映像加工の素材伝送」として残し、本当のデジタル放送はブロードバンドでやってはどうか。

先日、インテル本社の役員が「コピーワンスは、事実上copy neverだ。しかも外資を排除した国内独自規格で、非関税障壁だ」と怒っていたので、こういう状況を話して「デジタル放送はCCCDみたいに自滅するから、参入しないほうがいい」と説明したら「勉強になった」と喜んでいた。









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