日経新聞によれば、政府は今年の洞爺湖サミットの目玉として、発展途上国の地球温暖化対策に、5年間で総額100億ドルを無償資金協力や円借款などで援助する方針だという。このニュースを見て思い出したのは、2000年の九州・沖縄サミットで採択された「IT憲章」だ。
当時は「IT革命」が騒がれた最中で、「ITを目玉にしたい」と外務省が主導して、途上国に5年間で150億ドルの「IT支援」を行なうことを決めた。しかし途上国から「電力もない地域にPCを配ってもらっても困る」と批判されたため、土壇場で感染症対策に30億ドルの追加を決めた。このとき森首相(当時)が「電力がなくても携帯電話は使える」と発言したのは有名な笑い話だ。
今度の100億ドルも、これと同類の話題づくりだ。途上国が求めているのは、温暖化対策なんかではなく、医療と食料である。このように政府や国際機関が、費用と便益のバランスを考えず、優先順位もつけないで政策資源をばらまく現状を、編者ロンボルグは批判している。本書は、途上国にどんな問題があり、それを解決するにはどれだけコストがかかるかを、23項目にわけて各分野の専門家が定量的に分析している。その内容は、たとえば
追記:本書に関連するCopenhagen Consensusプロジェクトの内容は、公式サイトにある。
当時は「IT革命」が騒がれた最中で、「ITを目玉にしたい」と外務省が主導して、途上国に5年間で150億ドルの「IT支援」を行なうことを決めた。しかし途上国から「電力もない地域にPCを配ってもらっても困る」と批判されたため、土壇場で感染症対策に30億ドルの追加を決めた。このとき森首相(当時)が「電力がなくても携帯電話は使える」と発言したのは有名な笑い話だ。
今度の100億ドルも、これと同類の話題づくりだ。途上国が求めているのは、温暖化対策なんかではなく、医療と食料である。このように政府や国際機関が、費用と便益のバランスを考えず、優先順位もつけないで政策資源をばらまく現状を、編者ロンボルグは批判している。本書は、途上国にどんな問題があり、それを解決するにはどれだけコストがかかるかを、23項目にわけて各分野の専門家が定量的に分析している。その内容は、たとえば
- 麻薬は合法化して政府が管理し、高率の課税を行ったほうがよい。現在の麻薬による被害のほとんどは、その摂取よりも取引にからむ犯罪で起きているからだ。この政策費用はゼロだが、税収は世界で年間1300億ドルにのぼるので、これは最優先で行なうべき政策である。
- 次に優先順位が高いのは、感染症対策だ。このコストは90億ドル程度だが、便益はその7倍から30倍にのぼる。特に多くの人命がかかっていることからも、これは緊急の課題である。
- 地球温暖化については、その対策の便益が費用を上回るかどうかも疑わしいが、やるなら「国際的枠組」も排出権取引も必要なく、トンあたり50ドルの炭素税をかければよい。温暖化の被害が出てくるのは50年後なので、緊急度はもっとも低い。
追記:本書に関連するCopenhagen Consensusプロジェクトの内容は、公式サイトにある。