けさの朝日新聞の1面トップに「著作物の利用緩和へ」という記事が出ているので、何のことかと思ったら、政府の知財制度専門調査会で3月から行なわれている議論の、「フェアユース」の部分だけを今ごろ取り上げたものだ。この調査会が現在の著作権制度を抜本的に見直そうとする方向は賛成だが、門外漢として感想をいえば、フェアユースの導入が望ましいかどうかは疑問だ。
よく知られているように、英米法では著作者の権利はフェアユースという漠然とした概念で制限されているが、日本の著作権法では、30条以下で適用除外の条件が具体的に限定列挙されている。このため、そこに列挙されていない用途、特に検索エンジンが著作権法違反だということになり、サーバを海外に置かなければならない。これを解決するため、著作権法を改正して検索エンジンを適用除外に加えるという改正案もあったが、「ダウンロード違法化」と一緒に流れてしまったようだ。
このように新しい技術を次々に適用除外に加えるのはいたちごっこなので、フェアユースとして司法的に柔軟に対応しよう、というのが今回の調査会の方向だ。しかし調査会長である中山信弘氏の教科書(p.308~)でも指摘されているように、フェアユースは判例の膨大な蓄積があって初めて可能なルールであって、そういう判例がないと、逆に片っ端から何でも訴えられることになりかねない。以前シンポジウムで、レッシグも「フェアユースの権利というのは、高価な弁護士を雇う権利だ」と言っていた。私は、むしろ著作権法の規定を逆にして30条以下の規定を廃止し、どういう場合は著作権が行使できるかという条件を、なるべく具体的かつ詳細に列挙すべきだと思う。たとえば
上の条件は例示であって、これ以外にあってもよいし、変えてもよい。要は情報利用(著作者の権利制限)のルールを「~を許可する」という積極的自由から「~は禁止する」という消極的自由に変え、その禁止条件を可能な限り厳密に、また最小限度にすることである。それが自由な社会を実現する条件だ、というのがハイエク(もとはバーリン)の主張である。
いいかえれば、フェアユースを認める(あとは禁じる)のではなく、法的に厳密に定義されたフェアコピーライトだけを認め、あとは複製自由とするのだ。もっとも、この提案は現在の著作権法を根幹からひっくり返すものなので、実現可能とは思われない。次善の策としては、現在の30条以下の限定列挙に加えてフェアユースを導入することが考えられるが、これも日本の著作権法の実定法主義とは相容れないので、実現はむずかしいだろう。
よく知られているように、英米法では著作者の権利はフェアユースという漠然とした概念で制限されているが、日本の著作権法では、30条以下で適用除外の条件が具体的に限定列挙されている。このため、そこに列挙されていない用途、特に検索エンジンが著作権法違反だということになり、サーバを海外に置かなければならない。これを解決するため、著作権法を改正して検索エンジンを適用除外に加えるという改正案もあったが、「ダウンロード違法化」と一緒に流れてしまったようだ。
このように新しい技術を次々に適用除外に加えるのはいたちごっこなので、フェアユースとして司法的に柔軟に対応しよう、というのが今回の調査会の方向だ。しかし調査会長である中山信弘氏の教科書(p.308~)でも指摘されているように、フェアユースは判例の膨大な蓄積があって初めて可能なルールであって、そういう判例がないと、逆に片っ端から何でも訴えられることになりかねない。以前シンポジウムで、レッシグも「フェアユースの権利というのは、高価な弁護士を雇う権利だ」と言っていた。私は、むしろ著作権法の規定を逆にして30条以下の規定を廃止し、どういう場合は著作権が行使できるかという条件を、なるべく具体的かつ詳細に列挙すべきだと思う。たとえば
- 著作物は事前に政府に有料で登録し、?というマークを必ず表示しなければならない
- 電子的に配布されたコンテンツの場合は、それがオリジナルのデッドコピーであることをウォーターマークのような技術で証明しなければならない
- 他の著作物に複製して利用された場合は、それによって著作者の名誉や利益が侵害されることを具体的に立証しなければならない
上の条件は例示であって、これ以外にあってもよいし、変えてもよい。要は情報利用(著作者の権利制限)のルールを「~を許可する」という積極的自由から「~は禁止する」という消極的自由に変え、その禁止条件を可能な限り厳密に、また最小限度にすることである。それが自由な社会を実現する条件だ、というのがハイエク(もとはバーリン)の主張である。
いいかえれば、フェアユースを認める(あとは禁じる)のではなく、法的に厳密に定義されたフェアコピーライトだけを認め、あとは複製自由とするのだ。もっとも、この提案は現在の著作権法を根幹からひっくり返すものなので、実現可能とは思われない。次善の策としては、現在の30条以下の限定列挙に加えてフェアユースを導入することが考えられるが、これも日本の著作権法の実定法主義とは相容れないので、実現はむずかしいだろう。