黒死病が資本主義を生んだ

日本中が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)で大騒ぎだが、こういう疫病は歴史的には珍しいものではなく、それがパンデミック(世界的流行病)になって歴史を変えたことも少なくない。史上最大の帝国を築いたモンゴル帝国が14世紀にあっけなく崩壊した一つの原因は、黒死病(ペスト)の大流行だと考えられている。

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地球の平均気温の推定(Wikipedia)

図のように地球は14世紀から小氷河期に入り、寒さで免疫力が低下し、農業生産も激減した。黒死病はアジアで発生したが、シルクロードを通ってヨーロッパに広がったので、それを伝えた遊牧民のモンゴル帝国は崩壊し、ヨーロッパの人口も黒死病で半減した。

この時期に生まれたのがプロテスタンティズムである。治療の方法もない疫病が多くの人を殺す時代には、誰が死ぬかは神があらかじめ決めた運命だというルターやカルヴァンの宿命論が説得力をもった。それを信じる者だけが天国に行けるという単純な教えは疫病のようにヨーロッパに流行し、凄惨な宗教戦争を生んだ。

この宗教戦争に勝ち抜いたのは重火器で武装した国であり、その経済力を支えたのが資本主義だった。黒死病は宿主を殺し尽くすと終わったが、資本主義は国家に寄生して世界に広がった。それはウォーラーステインのいうように富の追求という単純な原理で国家を包摂する世界=経済を築き、植民地に寄生する疫病になったのだ。

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日本共産党はなぜ「暴力革命」の方針をとったのか


安倍首相が「共産党の暴力革命の方針に変更はない」と答弁したことに、志位委員長が怒っている。彼が「全面的に反論済み」という共産党国会議員団事務局の見解にはこう書かれている。

1950年から55年にかけて、徳田球一、野坂参三らによって日本共産党中央委員会が解体され党が分裂した時代に、中国に亡命した徳田・野坂派が、旧ソ連や中国の言いなりになって外国仕込みの武装闘争路線を日本に持ち込んだことがあります。

しかし、それは党が分裂した時期の一方の側の行動であって、1958年の第7回党大会で党が統一を回復したさいに明確に批判され、きっぱり否定されました。

彼らも1950年代に暴力革命をめざしたことは認めているが、それは「党が分裂した時期の一方の側の行動」であり、「党の正規の方針として「暴力革命の方針」をとったことは一度もない」という。これは歴史の偽造である。

続きはアゴラで。

グローバル化で格差は縮小する

2000年以降の日本で物価が上がらない最大の原因は、先進国の中で日本だけ名目賃金が下がったことだ。これは製造業の賃金が中国に引っ張られて下がり、生産拠点の海外移転が進んだからで、中国の人件費が上がって日中の単位労働コスト(ULC)は2012年ごろ逆転した。

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各国の単位労働コストの比較(経産省「ものづくり白書」)

名目賃金は日本が約2800ドル、中国(都市部)が約500ドルとまだ大幅な差があるが、賃金を付加価値で割ったULC(名目雇用者報酬/名目GDP)でみると、日本は中国より低くなった。これは2012年以降の人民元レート上昇の影響もあるが、2000年ごろ3倍以上だった日本と中国の賃金格差が、大幅に縮まったことは明らかだ。

これは1990年代から始まった大収斂の必然的な結果で、この傾向は逆転しないだろう。上の図でもわかるように、OECD諸国でもアジアでも、ULCが収斂する傾向は一貫している。「グローバル化で格差が拡大する」という通念とは逆に、賃金格差はグローバルには縮小しているのだ。

その結果、日本では中国と競合する単純労働者の賃金が下がり、中間層が没落して国内の格差が拡大している。このグローバルに生産要素が一物一価になる要素価格均等化の傾向を「デフレ」と誤解して、マクロ経済政策で止めようとしたことが安倍政権の失敗だった。

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幻の「70年安保」という危機

佐藤栄作-戦後日本の政治指導者 (中公新書)
アゴラにも書いたように、安倍首相は岸信介より佐藤栄作に似ている。佐藤は兄の岸ほど優秀だったわけではなく、確たる政治信念もなかったが、人事をあやつる手腕は超一流で「人事の佐藤」と呼ばれた。初期には右派の核武装論者とみられたが、政権につくと「社会開発」を重視する左派になった。

そういう佐藤の路線を決めたのは「70年安保」だったと本書はいう。60年安保のように70年安保でも大衆運動で内閣が倒れると考える人は、60年代後半には少なくなかった。ベトナム戦争に協力した佐藤首相は、今の安倍首相よりはるかにダークな悪役で、「ストップ・ザ・サトウ」という変なスローガンで各地に革新自治体が生まれた。

ベトナム反戦運動から始まった学生運動が世界的に大きな盛り上がりをみせ、70年安保は「保守政治の全面的危機」と意識されていた。沖縄の「核抜き本土並み返還」や「非核三原則」などの佐藤の平和主義的な装いは、こうした危機を乗り越える対策だったので、自民党も派閥を超えて協力した。これが佐藤内閣が長期政権になった原因である。

しかし学生運動は1969年の東大安田講堂の攻防戦をピークに退潮し、その年の末の総選挙で自民党は300議席を超える圧勝だった。1970年6月の安保条約の自動延長は何事もなく過ぎたが、そのあと佐藤の求心力は急速に衰えた。凧のように強い逆風で維持されていた政権は、風がやむと落ちていくしかなかったのだ。

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「内閣改造」という悪習が無能な長期政権を生む

北村誠吾地方創生担当相(72)の答弁をめぐって、国会が紛糾している。野党は新型肺炎もそっちのけで彼の失言を引き出すことに熱中し、答弁を補助する官僚の「政府参考人」にも反対している。

こういう騒ぎは珍しいことではない。55年体制では野党が「爆弾質問」を出し、閣僚がそれに答えられないと審議を止めることは日常茶飯事だった。その対策として、局長級の官僚が政府委員として国会に出席する慣例ができた。

これが政治家の官僚依存をまねき、「それは大事な問題ですから政府委員に答弁させます」という閣僚も出てきたため、2001年に政府委員は廃止された。これは政治主導という理念からは当然だが、北村大臣のように当事者能力のない閣僚が多いため、官僚が答弁を準備して「大臣レク」する負担が増えた。

続きはアゴラで。

「ステイクホルダー資本主義」の幻想

企業所有論:組織の所有アプローチ
CSR(企業の社会的責任)とかESG(環境・社会・ガバナンス)など、株主以外の利益を投資の指標にするステイクホルダー資本主義は昔からある話だが、うまく行った例は少ない。かつてその手本とされた日本の「労働者管理企業」も幻想だった。

本書は企業だけでなくNPOまで含めた経営形態を比較し、どういうガバナンスが望ましいかを「法と経済学」の立場から論じた古典である。その結論は、ボトルネックになる生産要素をもつステイクホルダーだけにコントロール権を与えることが効率的だということだ。企業の最大のボトルネックは資本設備なので、株主が企業をコントロールし、他の生産要素は契約で調達することが望ましい。

もう一つのボトルネックは人的投資だが、労働組合にもコントロール権を与えて労使交渉で投資を決定する労働者管理企業は失敗することが多い。投資が失敗しても労働組合は責任を負わないので、労働者の利益を優先して資本を浪費するからだ。

こういう無責任なステイクホルダーは、ESGのように「公益」を主張することが多いが、それが本当に公益になるかどうかはわからない。少なくとも日本では、企業がCO2を削減するコストはその利益より大きいので、ESG投資は企業価値を毀損するおそれが強い。将来それがわかったとき投資ファンドは責任を取るのだろうか。

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CO2は地球を緑化する

昨年発表されたIPCCの土地利用に関する報告書では、大気中のCO2が増えると、温暖化で地球が砂漠化して食糧生産は低下し、穀物価格は2050年までに中央値で7.6%(最大23%)上昇すると予想しているが、これはおかしい。炭素は光合成で植物の生長を促進するので、CO2が増えることは肥料と同じ効果(施肥効果)があるからだ。

この効果はIPCCも認めている。次の図は国立環境研究所の増冨祐司氏がIPPCの第4次評価報告書をもとに描いたものだ。温帯・寒帯(中・高緯度域)では産業革命前から3℃上昇までは小麦の収量は増加するが、熱帯(低緯度域)では減少する。これは熱帯の気温がもともと小麦には高すぎるためだ。

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地球温暖化による農業生産の変化

他方でCO2の施肥効果は、濃度が今の400ppmの2.5倍になっても単調に増加する。ここでC3作物と書かれているのが、米や小麦などの穀物である。こういう効果を考えると、温帯や寒帯では、CO2の増加や温暖化で農業生産が低下することは考えられない。カナダやシベリアは穀倉地帯になり、日本でも北海道の農業生産は増えるだろう。

問題は熱帯である。IPCCは次のように予測している。
土地が劣化すれば生産性が下がり、栽培できる作物が制約を受けて、土壌の炭素吸収能力も低下します。そうなれば、気候変動が激しくなるばかりか、気候変動自体がさまざまな形で土地劣化を助長することになります。

砂漠化が起きている区域には、およそ5億人が暮らしています。乾燥地や砂漠化区域は気候変動や、干ばつ、熱波、砂塵嵐などの異常気象の影響を受けやすく、世界人口の増加がさらに圧力を加えています。
これは本当だろうか。

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新型肺炎よりインフルエンザのほうが危険



新型コロナウイルスの感染が拡大し、患者は3万人、死者は600人を超えたが、死者は今のところほぼ中国に限られている。日本では25人の患者が確認され、クルーズ船では61人(うち日本人は21人)の感染が確認されたが、死者は1人も出ていない。

続きはアゴラで。

アベノミクスは「左派」の経済政策

安倍晋三と社会主義 アベノミクスは日本に何をもたらしたか (朝日新書)
安倍首相の政策は、祖父である岸信介の政策によく似ている。その根底に戦前の国家総動員体制があることは、私も何度か指摘したことがある。 この意味で安倍首相の政策を社会主義と呼ぶのは新しい話ではないが、彼が三輪寿壮に強い関心をもっていることは本書で初めて知った。

三輪は岸の大学時代の同窓で、戦前には無産政党の指導者だった。戦後は右派社会党を指導して、左右社会党を統一した。他方で岸は保守合同を実現し、自民党と社会党は政権交代できる二大政党になるはずだったが、三輪は統一直後に死去した。岸はその社会党葬で弔辞を読み、「これで政権を渡す相手がいなくなった」と嘆いたという。

岸の経済政策は、産業政策や社会保障を重視する「大きな政府」だった。国民年金や国民健康保険を国民皆保険にしたのも岸内閣である。安倍首相もそういう社会主義の遺伝子を受け継いでおり、財政・金融を拡大するアベノミクスは、世界的にみると「反緊縮」を主張する左派の経済政策だ。それが長期政権になった原因だが、日本経済の長期停滞の原因でもある。

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小泉進次郎氏の悩みを解決するたった一つの方法

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小泉環境相が悩んでいる。COP25で「日本が石炭火力を増やすのはおかしい」と批判され、政府内でも「石炭を減らせないか」と根回ししたが、相手にされなかったようだ。

彼の目標は正しい。石炭は大気汚染でもCO2排出でも最悪の燃料であり、今後22基も建設計画がある日本は先進国では突出している。それを減らそうという理想は正しいのだ。

続きはアゴラで。







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