啓蒙はなぜ敗北したのか


昨年、印象的だったのは、コロナについてのドイツのメルケル首相の12月の演説である。

私は啓蒙の力を信じています。ヨーロッパが今日あるのは啓蒙のおかげであり、科学的知見が従うべき事実だという信念によるものだと信じています。

私は旧東ドイツで、物理学の研究を志しました。西ドイツに生まれていたら、そうしなかったかもしれません。私が物理学を研究したのは、科学への確信があったからです。多くのものが否定できますが、重力や光速などの事実は否定できません。

これは再度ロックダウンした彼女に対する「(ロックダウンの効果は)証明されていない!」という右派野党(AfD)の野次に対する反論だが、こういうとき咄嗟に「啓蒙を信じる」という言葉が出てくるのはドイツ人だけだろう。

スターリンにも、物理学の法則は否定できなかった。メルケルはロックダウンの根拠となる疫学理論が、物理学と同じ客観的真理だといいたいのだろうが、彼女の信念に反して感染は科学で止めることができなかった。初期には「感染のコントロールに成功した」と賞賛されたドイツのコロナ死亡率は、フランスやスペインを抜いてしまった。

続きはアゴラサロンで(初月無料)。

資本主義の「脱物質化」で人類の未来は明るい

新年おめでとうございます。今年も年賀状は出さないので、ブログでごあいさつ。

人類の未来についての暗い予言は、昔からたくさんあります。1972年、ローマクラブは『成長の限界』というレポートで、石油、石炭、天然ガスなどの天然資源が2004年までに枯渇すると予言し、大きな反響を呼びました。しかしそれから50年たった今、どの資源の可採埋蔵量も当時より増えています。

2013年に国連IPCCの第5次評価報告書は、2100年までにCO2排出量が最大で現在の3倍以上に増えると予想しました。ところがIEAの世界エネルギー見通しでは、2020年の世界のCO2排出量は前年より8%減り、今後もほぼ横ばいと予想しています。


IPCCとIEAのCO2排出量の見通し

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日本が突入する「2050年排出ゼロ」という必敗の戦争

昭和16年夏の敗戦-新版 (中公文庫 (い108-6))
猪瀬直樹氏が政府の「グリーン成長戦略」にコメントしている。これは彼が『昭和16年夏の敗戦』で書いたのと同じ「日本人の意思決定の無意識の自己欺瞞」だという。

「原発なしでカーボンゼロは不可能だ」という彼の論旨は私も指摘したことだが、違うのは私が「原発の運転延長や新増設が必要だ」というのに対して、猪瀬氏は原発や石炭に頼る日本は「世界の笑い者」になるという点である。

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今年の良書ベスト10

社会はどう進化するのか――進化生物学が拓く新しい世界観
  1. ウィルソン『社会はどう進化するのか』
  2. 深尾京司『世界経済史から見た日本の成長と停滞』
  3. マクニール『疫病と世界史』(合本)
  4. Lomborg: False Alarm
  5. ロー『適応的市場仮説』
  6. スコット『反穀物の人類史』
  7. Goodhart & Pradhan: The Great Demographic Reversal
  8. 今野元『マックス・ヴェーバー』
  9. ハインドマン『デジタルエコノミーの罠
  10. 岡山裕『アメリカの政党政治』
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温暖化で地球は今より「グリーン」になる

False Alarm: How Climate Change Panic Costs Us Trillions, Hurts the Poor, and Fails to Fix the Planet (English Edition)
グレタ・トゥーンベリは「私たちは大量絶滅の始まりにいる」と叫び、国連は「残された時間はわずかだ」と警告し、日本政府はグリーン成長戦略を発表した。そこでは地球温暖化は人類に破滅をもたらすと想定しているが、それは本当だろうか。本書は具体的なデータで、こういう終末論を反証する。

「カーボンニュートラル」を目標にする計画が「グリーン」と名づけられているのは皮肉である。炭素は植物の栄養であり、それが増えると森林は増えるからだ。過去35年間の温暖化(CO2増加)で世界の森林はオーストラリアの面積と同じぐらい拡大し、今後も大気中のCO2が増えると、2100年までに50%近く拡大する見通しである。地球はますますグリーンになり、農産物の収穫も大幅に増えるのだ。

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地球上の植生の面積続きを読む

長期停滞で地球温暖化は減速した

政府の「グリーン成長戦略」が発表された。その目標は菅首相の宣言した2050年カーボンニュートラルだが、世界のCO2排出量がピークアウトした現状で、限界削減費用の高い日本がこんな大規模な対策をとる必要があるのだろうか。

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IPCCとIEAのCO2排出予想(Burgess et al.)

上の図はBurgess et al.がIPCCの第5次評価報告書のシナリオとIEA(国際エネルギー機関)の予想を比較したものだが、IPCCが「何も政策対応しない場合」としているRCP8.5シナリオの最小限度をIEAの世界エネルギー見通し(WEO)は下回っている。

IEAの予想が下方修正を繰り返している最大の原因は長期停滞だ、とこの論文は指摘する。先進国の成長率は2010年代に大きく落ち込み、金利はゼロになった。エネルギー多消費型の産業が衰退し、途上国も含めて石炭の消費は2014年でピークアウトした。これがIEAの予想がはずれる原因だ。

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IEAの石炭需要予測は下方修正の連続

地球温暖化を防ぐためには成長率を下げることが効果的だ、という環境活動家の主張は正しい。そして資本主義は(彼らの運動とは無関係に)そういう「脱成長」の道をたどっているのだ。長期停滞の最大の原因は経済のデジタル化で投資が減ったことだが、それはいいことなのだろうか。

1月8日からのアゴラ経済塾デジタル資本主義の未来では、こういう問題も考えたい(申し込みは受け付け中)。

「2050年CO2排出ゼロ」は無意味な目標である

菅政権の目玉は「2050年CO2排出ゼロ」だろう。政府は25日、「カーボンニュートラル」(炭素中立)を目標とするグリーン成長戦略を発表した。炭素中立とは、人間の排出するCO2と森林などの吸収を合計して実質ゼロにするという意味だ。

世界でも121ヶ国が、これを目標にしている。電気自動車を推進する人々の目標も実質ゼロだが、CO2は有害物質ではない。何のためにゼロにするのだろうか?

続きはアゴラ

電気自動車で「インターネット革命」は起こるのか

菅首相が「2050年にカーボンニュートラル」(CO2排出実質ゼロ)という目標を打ち出したのを受けて、自動車についても「脱ガソリン車」の流れが強まってきた。政府は年内に「2030年代なかばまでに電動車以外の新車販売禁止」という目標を打ち出す方向で調整しているという。

この「電動車」とは、電池だけで動く電気自動車(EV)だけではなく、ハイブリッド車(HV)や充電できるプラグインハイブリッド車(PHV)、燃料電池(FCV)を含むが、2035年までに内燃機関(ガソリン車・ディーゼル車)をなくすとすれば、自動車業界だけでなく日本の製造業全体の問題である。

これに対してトヨタ自動車の豊田章男社長は17日、日本自動車工業会の懇談会で「国のエネルギー政策に手を打たないと、ものづくりを残し、雇用を増やし、税金を納める自動車業界のビジネスモデルが崩壊する」と、政府の方針を暗に批判した。

続きはアゴラ

日本医師会が「医療緊急事態」を打開するためにできること

きのう日本医師会など9団体が「医療緊急事態宣言」を出した。それによると日本は医療崩壊の瀬戸際で、このままでは「国民が通常の医療を受けら れなくなり、全国で必要なすべての医療提供が立ち行かなくなります」という。

医療が逼迫していることは事実だろうが、日本のコロナ死亡率はヨーロッパの1/50で、人口あたり病床数は世界一である。それが本当に崩壊の危機に瀕しているのだろうか。



続きはアゴラで。

政府が非常事態で命令できない国

医師会などの騒いでいる「医療崩壊」は、アゴラでも書いたように医療資源の絶対的な不足ではなく、医療資源の配分のゆがみである。これは経済問題としては単純で、安倍政権の専門家会議の方針のように、感染症対策の目的はウイルスの撲滅ではなく流行のピークを下げることである。

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上の図の横軸を場所と考えると、ある地域の感染が「医療対応の限界」を超える場合には、その患者を他の地域に移すか、他の地域からの応援で片寄りをフラットにしてピークを下げればいい。ところが日本の医療法では、行政が民間病院の医療資源を配分できない。

この問題を解決する便法として厚労省が使っているのが指定感染症だが、これも指定医療機関にコロナ患者の受け入れを強制できない。感染症法19条は「都道府県知事は感染症指定医療機関に対し当該患者を入院させるべきことを勧告することができる」と定めているだけで、指定医療機関がその勧告に従う義務も罰則もない。

いまだに「ロックダウンしろ」という人がいるが、日本ではヨーロッパのようなロックダウン(罰則つきの外出禁止令)はできない。特措法45条は都道府県知事が住民に「みだりに当該者の居宅又はこれに相当する場所から外出しないことその他の新型インフルエンザ等の感染の防止に必要な協力を要請することができる」と定めているだけだ。

ロックダウンは「移動の自由」という基本的人権の侵害なので、非常事態条項がない憲法では不可能だ。立法論としてはありうるが、やるなら憲法を改正するしかない。その歯止めなしで政府が恣意的にロックダウンすることは危険である。

要するに日本では、非常事態に政府が民間に命令できる根拠法が何もないのだ。これは憲法で戦時体制を想定していないことが原因だが、本物の危機になったとき、これで大丈夫なのだろうか?続きを読む








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