武士の起源は都を荒らす「群盗」だった

武士の起源を解きあかす――混血する古代、創発される中世 (ちくま新書)
岸田内閣には「安倍元首相の影」があるといわれるが、その特徴は反対派の切り捨てである。河野太郎氏を広報本部長にした以外は、石破茂氏も小泉進次郎氏も無役で、その支援者も徹底的に冷遇する。これが裏切り者を許さない長州武士の伝統なのだろうか。

このように忠誠心を重視する武士のエートスは、農民の実利主義とは違う。戦後初期のマルクス主義歴史学では、荘園の中で成長した農民が武装し、荘園領主の支配を脱して武士になったと考えたが、それは史実と一致しない。著者は「中世に活躍した代表的な武士に農民の子孫など一人もいない」と断定する。

武士の起源は、宇多天皇のころ(887年~)始まった天皇を警護する滝口武士だった。これは当時、都に横行した群盗から天皇を守る警備員で、平・源・藤原などの姓を与えられた。しかし彼らは乗馬や弓術などの特技をもち、明らかに伝統的な豪族とは異なる軍人だった。

これは都を荒らし回った群盗の一部が天皇を守る警備員として雇われ、貴姓を授かったものだというのが本書の見立てである。この姓は豪族と同じだが、警備員に藤原家と血縁があったわけではない。滝口武士は治安維持に重要な役割を果たしたが、都が平和になると職を失い、地方に散って地元の豪族と混合した。それが10世紀以降の武士である。続きを読む

岸田さんの「新しい日本型資本主義」って何?

あす臨時国会が開かれ、岸田文雄さんが第100代の内閣総理大臣にえらばれます。彼のスローガンは「新しい日本型資本主義」。その中身は、このパネルに書いてあるんですが、よい子のみなさんにはむずかしいと思うので、なるべくやさしく解説しましょう。



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安倍・菅政権でなぜ日本は安くなったのか

このごろ「安い日本」がよく話題になる。たとえば渡辺直美さんはこう言っている。
やっぱニューヨークはもう大変。住んでみて分かったんですけど、食べ物が高い。ビックリしました。朝、目玉焼き2個と、ちょっとアボカドを乗せたのとパン、ツナサラダで7000円。マジで70ドルしたんですよ、2人で。

マネックス証券のコンサルはこう書いている。
大戸屋で、さばの炭火焼定食を食べると840円です。 それがニューヨークにある大戸屋では22ドル(約2400円)と日本の2.8倍です。日本で鶏と野菜の黒酢あん定食を食べると890円ですが、ニューヨークの大戸屋では21ドル(約2310円)と日本の約2.6倍です。

この原因は単純である。円が購買力平価に比べて大幅に過小評価されているからだ。購買力平価の指標にもいろいろあるが、有名なビッグマック指数でみると、こんな感じだ。

BigMac-index-USDJPY-202001

2013年からドルの名目為替レートは大幅に上がったが、円の購買力平価(ビッグマックの価格)はほとんど変わっていないので、結果的に円は40%ぐらい過小評価されている。その最大の原因は、明らかに黒田日銀の量的緩和である。それは隠れた円安誘導だったからだ。ではどっちのレートが適正水準なのか?

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「家」は血縁集団ではなく法人だった

中世は核家族だったのか (歴史文化ライブラリー 524)
きょうからアゴラ読書塾「『家』の日本史」がスタートする(ZOOM受講者はまだ募集中)。「家」をテーマにしようと思った一つの理由は、これが「保守」を自称する人々に誤解(あるいは曲解)され、政治的に利用されているからだ。

姓は父系血縁集団(宗族)を示す中国の制度であり、日本の伝統も夫婦別姓だったが、武士や貴族以外に姓を名乗る人はほとんどいなかった。生活の単位は、血縁とほとんど無関係に共同で農地を耕作する「家」だったからだ。中世以降、多くの「家」を示す苗字ができたが、これは姓とは別の通称である。

ところが明治時代にドイツに押しつけられたファミリーネームを「氏」として民法で定めたので、これを伝統的な姓と混同する人が多い。明治の「家」制度は男尊女卑で、長男が全財産を相続し、次三男にも女性にもまったく権利がなかった。

このような長男相続の直系家族は、近世以降の武士の制度である。本書のような最近の研究では、民衆の大部分は中世まで核家族だったと考えられている。その原因は、多くの民衆は移動して生活していたので、相続する住宅も土地もなかったからだ。

財産のある武士には中世から直系家族が生まれたが、それは血縁集団ではなく一族郎党が集まる法人であり、そのリーダーには武力にたけた男が婿取りで選ばれることが多かった。そこで守るべきものは血筋ではなく「家」で生活する人々の生命・財産だったからだ。

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河野太郎氏はなぜ「小泉首相」になれなかったのか

今回、世論調査で圧倒的な人気だった河野太郎氏が敗れ、2001年の「小泉旋風」のような劇的な展開にならなかった原因は、選挙制度の違いにある。

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2001年の自民党総裁選(共同通信)

2001年の選挙では、県連票が各県3人で、トップの候補が総取りだった。このため田中真紀子氏とともに全国を遊説して「自民党をぶっ壊す」と説いた小泉純一郎氏が、41の県で123票を取った。この勢いに押されて議員票も小泉氏に流れ、
  • 小泉純一郎 298票(議員票175、県連票123)
  • 橋本龍太郎 155票(議員票140、県連票15)
  • 麻生太郎  31票(議員票31、県連票0)
で小泉氏が圧勝したのだ。今回は県連票は決選投票で各県1票で、ここでは39対8で河野圧勝だった。これが3票で総取りだったら、117対24で小泉氏に近い圧勝。県連の票読みは事前にわかるので、議員票も河野氏に流れ、河野総裁になっていただろう。

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NHKより

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「岸田総裁」の命運を決めるのはコロナ対策だ

あす投開票の自民党総裁選挙の大勢が判明した。共同通信の票読みでは、河野氏が300票を超えたが、第1回投票では過半数に達しない。岸田氏が約230票、高市氏が約170票で、決選投票は河野vs岸田になることがほぼ確定した。


西日本新聞より

決選投票では議員票だけが問題なので、岸田氏と高市氏の2・3位連合ができれば、岸田氏の議員票140票に高市氏の議員票100票が上積みされ、240票で、総投票数(430票)の過半数になり、河野氏を逆転する。

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河野太郎氏の否定する「小型原子炉」は成長産業


ここで河野氏のいう「今年3月のIAEAのファクトチェック」というのはネット上には見当たらない。IAEAは2020年から3年計画でSMRの経済性評価をしている途中なので、今年そういう「ファクトチェック」を出すことは考えられない。

これはおそらく今年3月にJAEA(日本原子力研究開発機構)の出した世界のSMR開発状況というレポートのことだと思われるが、そのどこにも「割高でコスト的に見合わない」とは書いてない。

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河野太郎氏の年金改革は「大増税」にはならない



河野太郎氏の提案している最低保障年金で消費税が何%増税になるかについて、彼が言葉を濁しているので他の候補から突っ込まれている。これは簡単な算数だが、年金勘定を細かく知っている人は少ないと思うので、確認しておく。

河野氏が保障する支給額ははっきりしないが、現行の基礎年金支給額を維持することが原則なので、その支給額は図のように最低23.9兆円である。これを全額消費税でまかなうと、2020年度の消費税収21兆円では1.9兆円足りない。これは税率にして1%程度であり、大増税にはならない。

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基礎年金のしくみ(厚労省の財政検証より)

それに対して被保険者の負担(事業主負担を含む)は、図の基礎年金拠出金23.7兆円から国庫負担11.8兆円を引いた11.9兆円少なくなる。これは消費税6%分だから、現行の国民年金と同じ水準を保障する最低保障年金は差し引き5%の減税なのだ。

これは制度設計によって変わる。民主党政権のように月額7万円を保障すると支給額は33.6兆円になるので、消費税率で17%。麻生財務相の「消費税率が18%になる」という話はこういう計算だろうが、この程度なら7%の増税で、保険料の減税分6%とほぼ同じで負担は中立に近い。

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最低保障年金って何?

自民党総裁選挙で、河野太郎さんが提案した最低保障年金が大論争になっています。これは民主党政権で提案され、成立しなかったものとほぼ同じです。これに対して他の候補が「増税になる」と反対しているので、その中身をやさしく解説しましょう。


総裁選のタウンミーティング(産経新聞より)

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総裁候補がだれも語らない日本経済の最大の問題

自民党総裁選では、経済政策の論争が低調だ。年金改革については河野氏の最低保障年金が正しく、エネルギー政策については彼の脱原発は誤りだが、それ以外は大した違いがない。

岸田氏の「株主資本主義の見直し」は時代遅れの笑い話で、高市氏の財政バラマキはアベノミクスの二番煎じだ。安倍政権の8年間に、日本の潜在成長率はゼロに近づいた。これが成長の天井であり、いくらバラマキで需要不足を埋めても、これ以上は成長できないのだ。


日本の潜在成長率(日銀調べ)

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