ユニバースからマルチバースへ

マルチバース宇宙論入門 私たちはなぜ〈この宇宙〉にいるのか (星海社新書)
一時ポストモダン業界で流行した新実在論は「ヒュームの問題」を解こうとするものだが、その答は物理学で30年前に提唱された人間原理と同じだ:世界がどういう形で存在するかは(論理的には)偶然だが、こういう形で存在することは(現実的には)必然である。そうでなければ、人間が生存できないからだ。

これは多くの人が指摘しており、そういう論文集も出たが、メイヤスーは批判に答えていない。彼の議論は物理的実在を「ガリレオ的な数学的整合性」で基礎づけようとするトートロジーである。物理学ではそんな幼稚な段階はとっくに過ぎ、宇宙は10500以上あるというマルチバース(多宇宙)仮説を観察データで実証する試みが行われている。

著者はカリフォルニア大学バークレーでそういう研究を指導する立場にあるが、ここ10年ぐらいでマルチバースに対する学界の見方は大きく変わったという。昔はランチタイムの茶飲み話だったが、最近は学会発表で多くの状況証拠が出され、少なくとも真空のエネルギー(宇宙定数)が10-120になる事実はマルチバース以外では説明できないらしい。

続きは8月21日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンでどうぞ。

日銀の「財政ファイナンス」はフリーランチか

内閣府の発表した今年4~6月期の実質成長率(速報値)は、1%(年率4%)と高い伸びを示したが、GDPデフレーターは前年比-0.4%だった。これは先週の個人ブログでも書いたように、リフレは失敗したが財政ファイナンスは(今のところ)成功したことを示す。財政ファイナンスとは政府債務を無制限に中央銀行がファイナンスすることで、財政節度を失わせるため禁忌とされる。


日銀の保有資産(青・億円)と国債残高(赤)と企業物価指数(緑・右軸)


続きはアゴラで。

日本には資本主義が必要だ

生涯投資家著者は、いわずと知れた「村上ファンド」の元オーナー。最近は久々に黒田電気に安延取締役を送り込んだことで話題になったが、いまだに日本では企業買収に「乗っ取り」のイメージがつきまとう。これが日本経済が低迷している最大の原因だ。

東芝に典型的にみられるように、日本の大企業は1970年代までのアメリカのコングロマリットと同じ、非効率な多角経営をしている。半導体部門が高い利益を上げても、他の部門の赤字を補填するので、全体としては東証1部上場企業のROE(株主資本利益率)は8%で、アメリカの12%に遠く及ばない。

続きはアゴラで。

なぜリフレは失敗したのに「アベノミクス」は成功したのか

今週は夏休みだが、アゴラの久保田さんの記事が気になったので、ひとことコメント。「アベノミクスの4年半を振り返ると、景気回復と脱デフレという面では相当の成果を上げた」という「大機小機」の評価が正しいかどうかは「アベノミクス」の定義による。それをリフレ(人為的インフレ)政策と定義すると、リフレが失敗したことは明白だ

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電気自動車は「エコ」か「エコノミー」か

テスラが新車を発表し、電気自動車(EV)が関心を集めている。フランスのマクロン大統領は「2040年までにガソリン・ディーゼル車の販売を停止する」という目標を発表した。つまり自動車はEVとハイブリッド車に限るということだが、それは可能だろうか。そして「エコ」なのだろうか?

続きはアゴラで。

ベーシックインカムは「ただでお金をもらえる」制度ではない



最近ちょっと話題になっているNHKのベーシックインカム特集は、根本的に間違っている。ベーシックインカム(BI)は「国民全員がただでお金をもらえる」制度ではない。フィンランドの実験は「世界初」ではなく、そもそも「ただでお金をもらえる」という言葉が矛盾している。

続きはアゴラで。

大学無償化より「インセンティブ奨学金」を

安倍新内閣の目玉は「人づくり革命」という珍妙なネーミングの政策だ。茂木経済再生担当相は5つのテーマを発表したが、ポイントは教育無償化につきる。これは安倍首相の憲法改正案にも盛り込まれて大きな関心を呼んでいるが、政府が税金をばらまいても「人づくり」にはならない。文科省の政策は大学院重点化や法科大学院など、失敗の連続だ。

続きはアゴラで。

戦略としての対米従属

アゴラの合宿は盛り上がり、やばい話も出たが、オフレコなので一般論で感想をメモ。安倍首相が秋の国会に憲法改正案を出すことを断念して憲法論議は振り出しに戻ったが、これは国防のあり方を根本から考え直すチャンスともいえる。

憲法改正を党是とする自民党の結成以来、改正案を出した総裁は、実は安倍氏が初めてである。自民党ハト派はもちろん、中曽根総裁も小泉総裁も出さなかった。その理由は複雑だが、単純化すると対米従属が快適だったからだろう。これは高坂正堯のいう「軽武装」だが、単なる経済主義ではない。

1951年にアメリカの求める再軍備を拒否した吉田茂には、それなりの計算があった。朝鮮戦争の起こっている東アジアで、貧弱な戦力で日本を守ることは不可能だった。米軍基地を日本に引き留めるには、日本があえて丸腰で「属国」になることが一つの戦略だった。このために彼がアメリカに提供したのが、日米行政協定(今の地位協定)という不平等条約だった。

続きは8月7日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンでどうぞ。

江戸時代の「長い平和」を守った組織暴力

江戸の平和力―戦争をしなかった江戸の250年 (日本歴史 私の最新講義)
『失敗の法則』の仮説は、日本人に根強い部分最適化の歴史的な原因は江戸時代に続いた(世界史に類をみない)長い平和にあるということだが、この平和はどうやって維持されたのだろうか。徳川家が全国を小さな藩に分割して内戦を防いだことはよく知られているが、各藩の中はどうしたのだろうか。

普通は豊臣秀吉の「刀狩り」で兵農分離が行われたと説明されるが、これは疑問である。武士は城下町に集まって住んだので、農民は生活を守るために武装せざるをえず、農村には多くの刀や槍が残っていた。そういう農村や宿場町の治安維持の役割を果たしたのが「侠客」だった。国定忠治や清水次郎長が今もさまざまな物語になって親しまれるのは、そういう「私的な警察」の役割を果たしていたからだろう。

彼らの収入源は賭博などの非合法な手段であり、暴力を独占しようとする武士には弾圧されたが、元をたどれば、武士も戦国時代に成り上がった組織暴力にすぎない。これは武士という大きな組織暴力と侠客という小さな組織暴力の戦いで、今でいう警察と暴力団のようなものだった。

続きは8月7日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンでどうぞ。

河野外相で日米原子力協定は変わるか

今度の改造で最大のサプライズは河野太郎外相だろう。世の中では「河野談話」が騒がれているが、あれは外交的には終わった話。きのうの記者会見では、河野氏は「日韓合意に尽きる」と明言している。それより問題は、日米原子力協定だ。彼はこう答えている。
原子力協定につきましては,来年の7月16日に30年の期間が終了するわけでございますが,これはそのまま失効するわけではなく,日米どちらかが終了を通告しないかぎりは続くわけでございます。原子力協定が今の我が国の原子力利用の一つの基盤であることを考えますと,政府内,あるいは日米の緊密な連携をしながら協定のあり方を含め考えていかなければならないと思っております。

続きはアゴラで。






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