チェルノブイリで何が起こったのか

チェルノブイリ:「平和の原子力」の闇
ロシア軍がチェルノブイリ原発の使用ずみ核燃料プールを占拠したというニュースで、1986年の事故を思い出した人が多いだろう。本書は事故の当事者に取材し、事故のもようを分刻みで再現したドキュメントである。

その発端は、外部電源を喪失したとき、発電機のタービンの慣性回転を利用して電源を確保する実験だった。4月25日、4号炉のECCS(緊急炉心冷却装置)の電源を切り、制御棒を引き抜いた。この結果、原子炉の出力が上がり、緊急停止の信号が出るはずだったが、そのスイッチを切っていたため、作業員は出力上昇に気づかなかった。

このため核反応が暴走し、原子炉が完全に破壊されて高温の放射性物質が成層圏まで立ち昇り、周囲に降り注いだ。これを消火するために駆けつけた作業員は事故の詳細を知らされず、線量計もつけなかったため、28人が急性被曝で死亡し、その後22人が死亡した。広範囲に拡散された放射能で、全ヨーロッパの発癌率が上がると予想されたが、その結果はどうだったか。

本書は427ページから2ページだけ、さらっとふれている。事故から30年たった学会で、多くの科学者がチェルノブイリ事故の長期的な健康被害について合意に達した。それは統計的に有意な発癌率の上昇は観測されなかったということである。

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原爆と原発はどうちがうの?

岸田首相は国会で、ウクライナで原発が攻撃されたことに関連して「原発を警備する警察の専従部隊を置くことも検討したい」と答弁しました。

山口原子力防災相は「原発を爆破するとチェルノブイリよりすさまじい被害が出る」といいました。こういう政治家のみなさんの頭の中では、原発と原爆がつながっているようにみえます。

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核戦争という「チキンゲーム」に最適解はあるか

戦争はゲームである、というと怒る人がいるが、これは遊びという意味ではない。ゲーム理論をつくったフォン・ノイマンは、核兵器の生みの親だった。ゲーム理論は、冷戦期に米ソの戦略的相互作用を分析するために発達した。

世の中では戦争は囚人のジレンマだと思われて「安全保障のジレンマ」などと呼ばれるが、これは誤りである。囚人のジレンマでは攻撃(裏切り)がつねに最適解(支配戦略)なので、平和を説明できない。現実の戦争は、一方が攻撃したら他方は譲歩するチキンゲームに近い。

ジレンマを解決するのが「しっぺ返し」(TIT FOR TAT)だというのも、40年ぐらい前の話である。TFTは2人ゲームでは強いが、一般的な多人数ゲームでは、つねに裏切る戦略(GRIM)のほうが強い。これはナッシュ均衡で進化的安定戦略(ESS)でもある。

囚人のジレンマとチキンゲームは、次のような共通利益ゲーム(タカ・ハト・ゲーム)という一般形の特殊なケースである(数字は自国の利益を示し、他国も対称とする)。

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戦争に勝った場合の利益を2、平和の利益を1とする。戦争のコストcが小さい(c<1)ときは、相手がタカなら自分もタカになる利益(1-c)がハト(0)より大きいので、つねに戦うことが唯一の解になる。これが安全保障のジレンマだが、このようにコストが小さいのは中世までの戦争である。

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バイデン大統領の「チキン戦略」は成功するか


このバイデン大統領のツイートが、世界に大反響を呼んでいる。ざっくり訳すとこんな感じだ。
はっきりさせておきたいのは、私たちは結束し、活気づいたNATOの全力をもってNATO域内の1インチまで守るということです。

しかしウクライナでロシアと戦争することはない。

NATOとロシアが直接対決すると、第3次世界大戦になります。それを防ぐために私たちは努力しなければならないのです。

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アゴラ経済塾「戦争は世界経済をどう変えるか」

4月からのアゴラ経済塾は「インフレ時代に資産を守る」パート2として「戦争は世界経済をどう変えるか」を考えます。



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核兵器の恐怖から世界を救った反共の闘士

330px-Official_Portrait_of_President_Reagan_1981ウクライナ戦争の焦点は、プーチンが核兵器を使うかどうかに尽きる。その脅威は冷戦とともに終わったと思われていたが、改めて相互確証破壊(MAD)の意味を考える必要がある。それが成り立つには、三つの条件が必要である。

まず双方の核戦力が均衡していることだ。1950年の朝鮮戦争のころには、戦力は不均衡であり、マッカーサーは核兵器の使用を主張したが、トルーマンは拒否した。これによって核兵器は「大統領の許可なく使えない特別な兵器」になった。

第2の条件は、核保有国の指導者が合理的であることだ。この点でスターリンは合理的だったが、フルシチョフはそうではなかった。冷戦が実際の戦争に転化する最大の危機は、1962年のキューバ危機だったが、実際にはフルシチョフは十分なミサイルを持っておらず、これは単なる脅しだった。

第3の条件は、迎撃できないことだ。迎撃ミサイル(ABM)は1972年にABM条約で禁止されたが、レーガン米大統領はこれに挑戦した。

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「核の共有」と「核の持ち込み」はどこが違うのか

非核三原則の第3原則(持ち込ませず)について、きのう国会で岸田首相は「核の一時的寄港を認めないと日本の安全が守れない事態が発生すれば、その時の政権が命運を懸けて決断し国民に説明する」という民主党政権の岡田外相の答弁を踏襲すると答えた。

これは沖縄返還の密約で佐藤首相がニクソン大統領に約束した有事の核持ち込みの密約であり、そこにはこう書かれている。
米国政府は、極めて重大な緊急事態が生じた際、日本政府との事前協議を経て、核兵器の沖縄への再持ち込みと、沖縄を通過させる権利を必要とするであろう。米国政府は、その場合に好意的な回答を期待する。

これはアメリカが沖縄に核を配備する権利を(事前協議を条件に)認めるもので、NATOの二重の鍵とほとんど変わらない。NATOの場合も、ドイツに配備された核兵器の指揮権はアメリカにある。これを「核共有」と呼ぶなら、日米も(有事には)核を共有できる。

違うのは運用である。NATOの核兵器は地上戦用の戦術核なので、実戦でそれを使うのはドイツ軍であり、拒否権もドイツがもつ。だが日本は、有事に際して持ち込まれる核兵器の実戦使用にはまったく関与できない。領海から米軍の核ミサイルが発射されることを拒否できないのだ。

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プーチンは「ストレンジラブ博士」になるのか



スタンリー・キューブリックのDr. Strangeloveは、私の歴代映画ベストワンである。日本では「博士の異常な愛情」という変なタイトルで公開されたが、原題は"Dr. Strangelove: or How I Learned to Stop Worrying and Love the Bomb"。タイトルは主人公の名前である。

あらすじ:アメリカ空軍の司令官が精神に異常をきたし、警戒飛行中だった戦略爆撃機34機に対し、ソ連への核攻撃を行うよう命令した。空軍司令部は爆撃機の大部分を呼び戻したが、一部の爆撃機に連絡する暗号がわからない。これを知った米大統領や軍高官、大統領科学顧問のストレンジラブ博士は、ペンタゴンの戦略会議室に集結して対策を協議した。

大統領はソ連の首相に「連絡がとれなかったら爆撃機を撃墜してほしい」と電話するが、ソ連首相は、核攻撃を受けた場合、自動的に大量の核兵器を発射して人類を全滅させるドゥームズデイ・マシンという装置を実戦配備したことを告げる。米大統領はストレンジラブ博士に対策を相談するが、彼は「全国民が地下シェルターの中で暮らすしかない」と告げる…

公開は冷戦初期の1964年。米ソが人類を全滅させられる量の核兵器を保有するようになった時期である。この映画は、自動的に報復して相手を全滅させる相互確証破壊(MAD)という戦略がいかにバカげたアイディアかをブラックコメディとして描いたものだが、ウクライナ戦争でもMADの危険性が明らかになった。

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核戦争は起こるの?

よい子のみなさんは核戦争といっても何のことかわからないと思いますが、30年ぐらい前まで、人類は核兵器で滅亡すると思っている人が多かったのです。いまウクライナで起こっているのがどんなに大変なことか理解するには、これを知る必要があります。


BBCより

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原発の攻撃で大災害が起こるのか


ウクライナのザポロジエ原発がロシア軍の攻撃を受けたことで、こういう話がたくさん出てきた。原発が戦時にねらわれやすいことは事実である。国際法では危険な工作物(ダム、堤防、原発)の攻撃を禁じているが、それは実際に攻撃されないことを意味しない。

日本の原発で特重(特定重大事故等対処施設)の審査が行われているのも、このような戦争やテロの危険から原発を守ることが目的だが、原発の攻撃は合理性があるのか。そして大災害になるのだろうか。

まず戦争の攻撃目標として、原発をねらうことに合理性はない。敵基地を破壊すれば戦力をそぐことができるが、原発を攻撃しても意味がない。また今回のような砲撃ぐらいでは、原子炉の圧力容器は破壊できない。

原発が核ミサイルの目標になることはありえない。弾道ミサイルでは原子炉にピンポイントで的中させるのはむずかしいので、やるなら1981年のイスラエルのイラク原子炉爆撃のように、戦闘機で爆撃するしかない。

破壊活動として使うなら、原発より都市を爆撃したほうが人的被害ははるかに大きい。これについては田中俊一元原子力規制委員長が「爆弾を落とすなら原発より東京に落とすだろう」と失言して問題になったことがある。

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