政府はコロナ療養方針をどう「大転換」したのか

TBS「NEWS23」より

きのうから政府のコロナ療養方針について誤報が相次いでいる。毎日新聞とTBSは「中等症も自宅療養に」という見出しをつけたが、きのうの関係閣僚会議後の首相談話の療養方針にそんな言葉はない。

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世界は確率論的に存在する

人間知性研究 (近代社会思想コレクション)
またコロナの大流行が始まり、原因はオリンピックだとかデルタ株だとか、いろんな説が乱れ飛んでいるが、誰も証明できない。事実として与えられているのは結果のデータだけであり、その原因は推測にすぎない。

こういう科学の本質的な限界を初めて指摘したのはヒュームである。本書は彼の主著『人間本性論』の要約のようなものと思われて重視されないが、カントが読んで「独断のまどろみ」から覚めたのは本書である。

本書で重要なのは、因果関係を神の存在との関連で論じていることだ。無神論者と疑われて大学に職を得られなかったヒュームは、『本性論』ではこの問題を間接的にしか論じていないが、本書では(架空の2人の対話という形で)明示的に論じている。
私を攻撃する諸君は、神の存在(私が問題にしたことはない)を示す主要ないし唯一の論証が、自然の秩序に由来することを認めた。自然には知性とデザインのしるしが現れているので、その原因として偶然あるいは物質の盲目的な力を考えるのは法外である、と諸君は考える。(第11章105節、強調は引用者)
「世界の秩序がこれほど完璧なのは、その原因があるからだ」という議論の原因とは神の意図であり、現代のインテリジェントデザイン論と同じである。ヒュームはそのデザインを示す証拠がないかぎり、こういう議論は推測にすぎないという。これは当時としては大胆な無神論の表明である。
ある属性の痕跡が現在、現れているその程度においてのみ、われわれは、これらの属性が存在すると結論できる。これ以上の属性の想定は、単なる仮説である。(同上106節)
コロナの感染爆発の原因を「不十分な自粛が原因だ」としてロックダウンを主張する人も、「ワクチンのせいだ」として接種をやめるよう求める人も、その決定的な証拠を出すことはできない。それは医学が不完全な学問だからではなく、ヒュームが指摘したように、世界は確率論的に存在しているからだ。続きを読む

国債の「合理的バブル」はいつ終わるのか

バブルの経済理論 低金利、長期停滞、金融劣化 (日本経済新聞出版)
貨幣はバブルである。これは150年前にマルクスが「商品の物神性」として指摘したことだが、今も正しい。1万円札の使用価値は20円しかないので、その価値はバブルだが、人々がそれを1万円の商品を交換する限り続く。中央銀行は「国営バブル」を維持する機関ともいえる。

ゼロ金利の状況では国債も貨幣と同じであり、余剰資金を社会的に循環させる合理的バブルである。これには次のような特徴がある。
  1. 長期金利(r)が名目成長率(g)より低い限りバブルは維持できる
  2. r<gのときバブルは効率的である(将来世代との利害対立が発生しない)
  3. 必要な安全資産の総量は一定なのでバブルは代替する
ここで重要なのは3の条件である。1980年代後半にも、都心の地価は収益還元価格を超え、その利回りはマイナスだったが、それは安全資産として保有された。これをGDP比でみると、90年代以降、土地と国債を合計した安全資産の比率はほとんど変わっていない。つまり土地が国債にバブル代替されただけなのだ。

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バブルの代替(本書より)

国債がこのような安全資産になったのは、実はそう古い話ではない。日本でr<gになったのは、2013年に黒田日銀の量的緩和が始まってからの10年足らずである。この不等式が逆転してr>gになると、国債バブルは終わるのだ。

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長期金利と名目成長率続きを読む

定価って何?



今週はガンプラの転売屋をめぐる騒動がありましたが、驚いたのは「定価で売らないのはけしからん」という声が多いことでした。オタクのみなさんはまだ社会常識を身につけてないのかもしれませんが、大人にもよくある誤解なので、簡単に説明しておきましょう。

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コロナを5類に格下げして「共存」すべきだ

コロナの感染者数が1日1万人を超えて「史上最多」になったと騒がれているが、図のように日本の感染率は10万人あたり1日5人で、G7では最少レベルである。感染率が日本の9倍にのぼるイギリスは、規制を解除することを決めた。


コロナ新規感染者数(FT.com)


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明治維新という奇蹟はいかにして可能になったか

明治維新の意味(新潮選書)
明治維新は、世界史でもまれな奇蹟だった。アジアの東端の発展途上国だった日本がほとんど内乱なしに「無血革命」をなしとげ、驚異的なスピードで近代化に成功したのはなぜか――本書はこの古い問いに対して新しい答を出しているわけではないが、バランスのとれた概観である。

第一の要因は、江戸時代の長い平和の中で成熟した官僚機構である。幕末に活躍した幕府の官僚は、勝海舟や川路聖謨など、下級武士や農民の出身で、身分制度は実質的に崩れていた。そういう実力主義の中で、下級武士が実権を掌握する「宮廷革命」として明治維新は起こった。

第二の要因は外圧である。中国がヨーロッパ諸国に敗北したことは、当時のエリートにとっては衝撃だった。彼らは軍人だったので、ペリーの黒船を見ただけで、戦争をしても勝てないことを即座に理解した。その後も政府の指導者が1年以上ヨーロッパに視察に行き、西洋のシステムを丸ごとコピーした。

第三の要因は天皇である。尊王攘夷というのはスローガンにすぎず、明治政府の指導者がそれを信じていたわけではないが、各藩を超えた「日本」という国家の存在を民衆に意識させる記号として天皇を利用した。明治政府の実態は薩長の藩閥政権だったが、それを儒教的な秩序で正統化することに成功した。

しかしこの制度設計は内乱を指導した元勲のカリスマ性に支えられていたので、その中心だった大久保利通や伊藤博文が暗殺され、山県有朋が世を去ると、硬直化した官僚機構を統合する権威が失われ、国のバランスが狂ってゆく。

続きは8月2日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンでどうぞ。

小売店はなぜ人気商品を値上げしないのか

転売騒動は一段落したが、この問題は昔から論じられており、一般論としては答が出ている。転売屋がもうかるときは超過需要が発生しているのだから、それがゼロになるまで小売店が値上げし、メーカーが増産すればいい。それをしないで、抽選にしたり転売屋を取り締まったりするから混乱が起こるのだ。

ではなぜ小売店は値上げしないのか。この問題は自明ではない。この手の話は海外でもあり、行列ができることでプレミアム感を出すなどの理由があげられているが、日本の場合はそれとは違う。日本では小売店が零細でメーカーの価格支配力が強く、「業界秩序」を守るためにメーカーが値上げを許さないのだ。

昔は、全国に「町の電気屋さん」があった。松下電器はナショナルショップだけに商品を卸し、安売りを許さなかった。ダイエーが安売りをしたため、松下はダイエーに出荷せず、訴訟を起こされて松下が負けたが、幸之助が死ぬまで出荷しなかった。これは系列店を生かさぬよう殺さぬように維持して、定価販売を守る知恵だった。

今も日本の小売店は零細で、労働生産性がアメリカのほぼ半分である。そのかなりの部分はコンビニで系列化されたが、コンビニでも定価販売(ヤミ再販)というカルテルが行われている。この流通機構の非効率性が、日本経済の停滞する大きな原因である。

続きは8月2日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンでどうぞ。

転売はユーザーの利益になる

先週から話題になっているホビージャパンの問題が、社員を解雇するという処分に発展した

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エネルギー基本計画の致命的な欠陥

第6次エネルギー基本計画の素案が、資源エネルギー庁の有識者会議に提示されたが、各方面から批判が噴出し、このまま決まりそうにない。

電源構成については、図1のように電力消費を今より20%も減らして9300~9400億kWhにし、その中で再エネを36~38%と今の2倍にすることになっている。これは土地集約的なメガソーラーや風力の適地がなくなり、反対運動で行き詰まっている状況では不可能である。

図1(エネルギー基本計画素案より)

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地球温暖化は命を救う

ロンボルグもLancetの論文を紹介している。


凍死など寒さによる死亡率は、世界のどこでも熱中症などの暑さによる死亡率よりはるかに高い。世界でもっとも寒さによる死亡率が高いのはサブサハラのアフリカであり、インドでさえ寒さによる死者は暑さによる死者の7倍である。地球温暖化は、多くの命を救うのだ。

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