安倍政権のバラマキ財政は成功した

国交省の塚田一郎副大臣が更迭された。NHKによると、福岡県知事選挙の集会で彼が4月1日に発言した内容は次のようなものだ。
下関は誰の地盤か。安倍晋三総理大臣だ。安倍晋三総理大臣から麻生副総理の地元への、道路の事業[下関北九州道路]が止まっているわけだ。吉田博美参議院幹事長と大家敏志参議院議員が副大臣室に来て、「何とかしてもらいたい」と言われた。動かしてくれということだ。

吉田氏が私の顔を見て、「塚田、分かっているな。これは安倍総理大臣の地元と、麻生副総理の地元の事業なんだ。俺が、何で来たと思うか」と言った。私はすごくものわかりがいい。すぐ忖度する。

続きはアゴラで。

長期停滞か過剰債務の解消か

きょうからアゴラ経済塾「長期停滞の時代」がスタートする(ネット受講はまだ受け付け中)。これはいま論争中の問題だが、これを考えるとき大事なのは、次の3つの概念を区別することだ。
  • GDP成長率
  • 潜在成長率
  • 可能な潜在成長率
現実のGDPと潜在GDPの差がGDPギャップ(需給ギャップ)である。これまでの常識では2008年の世界金融危機のような大不況が起こったときはGDPギャップがマイナス(需要不足)になるので財政出動が必要だが、時期がたつとギャップは縮小して経済は回復すると考えられていた。ところが金融危機から回復した後も、先進国では低成長が続いている。

これを説明するために出てきたのが、サマーズの長期停滞論である。Fatas-Summersは、これをユーロ圏について次のようなシミュレーションで説明している。2007年の成長率のトレンドが金融危機で大きく下方屈折したが、その後回復した。しかし2011年からEUの緊縮財政で財政支出が削減されたため、さらに成長率が下がったという。

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彼らの計算ではEUが緊縮財政にしないで赤字財政を拡大していれば、図の"Potential11"という成長率には達していたはずだ。つまり潜在成長率とは別の可能な潜在成長率があり、緊縮財政でその達成が阻害された、というのがサマーズの見方である。これによれば需要不足は構造的な問題なので、財政赤字が中長期にも必要だということになる。

これに対する批判も多い。その一つは、2008年までの成長率が過剰債務によって嵩上げされたバブル的な水準であり、今はそれが解消されて正常化する途上だ、というロゴフの批判である。これによればゼロ金利はいずれ終わり、成長率も潜在成長率に収斂するので、財政赤字を拡大するのは危険だ。赤字を縮小することが政治的に困難だからである。

続きは4月8日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで。

鳩山由紀夫氏の体内にもある「トリチウム水」

鳩山元首相が、また放射能デマを流している。こういうトリチウムについての初歩的な誤解が事故処理の障害になっているので、今さらいうまでもないが訂正しておく。

続きはアゴラで。

GDPは豊かさの指標ではない

幻想の経済成長
20世紀は史上最大の成長の時代だったが、先進国では成長のピークを過ぎた。だが「もう成長する必要はない」とか「脱成長の時代だ」というわけには行かない。財政や社会保障などの制度が成長を前提につくられているので、成長をやめると将来世代の負担が重くなるからだ。

しかし成長の指標はGDPだけではない。それはもともと1930年代の戦時体制で国家の戦力を集計するためにつくられた指標で、豊かさを示す指標ではない。GDPは国内市場で生産された財・サービスの「価格×量」、つまりコストの集計であって豊かさの集計ではないのだ。

この違いは本書も指摘するように、経済学でおなじみの消費者余剰の概念でわかる。消費者の効用を集計して需要曲線を描くと、消費者の得る豊かさ(効用-コスト)は価格P1の上の部分の消費者余剰で示せるが、市場で評価されるのはP1×Q1であり、その集計がGDPである。たとえばスマホの価格がP2に下がって供給量がQ2になると、GDPは下がるが消費者余剰は増え、消費者は豊かになる。

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価格低下による消費者余剰の変化(情報通信白書)

ここにはスマホを通じて無料で供給される情報の価値も出てこない。10年前にスマホが登場したころに比べると情報量は飛躍的に増えたが、それはGDP統計には反映されていないのだ。だから長期停滞の時代は、人々が貧しくなる時代ではない。GDPの代わりに情報量という尺度をとれば、将来世代は今よりはるかに豊かになるだろう。今週から始まるアゴラ経済塾では、21世紀の豊かさの意味も考えたい(申し込みはまだ受け付け中)。

続きは4月8日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで。

消費税の増税は必要か

けさ消費税の増税が延期されるとツイートしたら、意外に多くの人が引っかかったが、もちろんこれはエイプリル・フールである。2019年度予算はもう成立したので、政治的には延期できないが、経済的に考えるとどうだろうか。

日本の政府債務は先進国で最悪なので、これ以上財政赤字が増えると財政が破綻する、と警告する人が多いが、財政破綻とは何だろうか。政府が名目債務をデフォルトすることはありえないので、これは国債の金利が急上昇してハイパーインフレになるといった状況をさすと思われるが、そういうリスクはどれぐらいあるだろうか。

続きはアゴラで。

世界経済 大いなる収斂

世界経済 大いなる収斂 ITがもたらす新次元のグローバリゼーション
先進国の長期停滞の背景にあるのは、グローバルな産業構造の変化である。歴史の大部分で世界の最先進国は中国だったが、ヨーロッパの植民地支配で19世紀以降の大分岐が始まり、ヨーロッパとアジアの格差が拡大した。それが1990年以降の大収斂で逆転し始めたのだ。

大分岐をもたらしたのは、第1のアンバンドリングだった。ローカルに閉じていた伝統社会がヨーロッパ諸国の植民地支配で統合され、貿易が始まった。商品はローカルな社会からアンバンドルされて国際的に流通する一方、情報は国内に閉じていたので、東西の格差が広がった。

それに対して大収斂をもたらしたのは、第2のアンバンドリングだった。コンピュータや通信の発達によってグローバルな情報の流通コストが下がり、高技術国から技術をアンバンドルして低賃金国に移転する水平分業が急速に進んだ。これによってアジアが豊かになり、1820年から上がっていた先進国のGDPシェアが、1990年から下がり始めた。

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世界のGDPに占める先進国(G7)のシェア


続きは4月1日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで。

長期停滞の時代には財政赤字が必要だ

今月出たRachel-Summersの論文は、長期停滞を実証的に分析している。低金利は2010年代の一時的な現象ではなく、世界金融危機が原因でもない。過去40年間に実質長期金利は先進国で3%ポイント下がり、図1のように世界的に実質金利はゼロに収斂している。

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図1 日米欧の実質長期金利

図2は先進国の中立金利(インフレにもデフレにもならない実質金利)の変動を要因分解して、今後の変動を予測したシミュレーションだ。下に描かれている人口減少や労働時間の短縮が金利を下げる要因、上に描かれている老人医療や社会保障や政府債務が金利を上げる要因だ。政府部門の需要超過が、民間部門の需要不足をほぼ埋め合わせている。

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図2 先進国の中立金利R*の変動要因

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新しいダーウィン革命

This View of Life: Completing the Darwinian Revolution (English Edition)
「社会的ダーウィニズム」という言葉は、現代ではタブーに近い。それはダーウィンの進化論を社会に適用し、弱者や障害者は「淘汰」されるべきだという優生学の思想で、それを実行に移したのがヒトラーだった。しかしこれはダーウィン自身の思想ではない。彼は個体だけではなく集団が淘汰の単位になると考えていた。

このような集団淘汰の理論は一時は否定されたが、21世紀によみがえった。本書はその理論を社会に適用する。遺伝子レベルで集団淘汰が起こるかどうかは論争中の問題だが、社会的に起こることは明らかだ。集団で戦う利他的な集団はバラバラに戦う利己的な集団に勝つので、利他的な感情(ミーム)が継承される。

近代社会が機能しているのも、集団を守る法秩序が確立しているからだ。殺人や泥棒を禁止することは個人の自由に優先するので、近代社会は自由放任主義ではない。このシステムは遺伝的な集団淘汰と本質的には同じだ。人体は37兆個の細胞からなる「社会」であり、たとえば癌細胞が利己的に増殖すると人間は死に至る。

しかし人体は、脳や中枢神経だけがコントロールする中央集権システムではない。癌細胞を殺すのは脳とは無関係な免疫機構であり、それもつねに癌細胞との戦いで組み替えられている。人体でも集団淘汰が起こっているのだ。このような多レベルの集団淘汰という考え方が政治や経済にも応用できるのではないか、というのが本書の提案する「ダーウィン革命の完成」である。

続きは4月1日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで。

GAFAをいじめてもプラットフォーム独占は止まらない

世界的にGAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon)規制の動きが強まっている。EU委員会は3月20日、グーグルに14億9000万ユーロの制裁金を課した。アメリカでは2020年の大統領選挙に名乗りを上げた民主党のウォーレン上院議員が、GAFA分割を公約した。

日本でも公正取引委員会がGAFAの調査に不公正慣行について調査を始め、自民党は4月にGAFA規制の方針を打ち出す予定だ。こういうプラットフォーム独占が競争を阻害し、長期停滞の原因になったと考える経済学者も多い。

続きはアゴラで。

MMTについての超簡単な解説

Modern Money Theory: A Primer on Macroeconomics for Sovereign Monetary Systems (English Edition)
最近は日本でもネトウヨがMMTを受け売りして「これこそわれわれの理論だ」と宣伝しているが、経済学者のアンケートでは、MMTに賛成する人は1人もいない。誤解したまま政治的に利用されるのはよくないので、簡単に解説しておこう。

本書はMMTのほぼ唯一の入門書だが、これは金融理論というより素朴な財政哲学で、数式も統計データも出てこない。その考え方は通貨は税であるというものだ。管理通貨制度では政府と中央銀行は一体だから、自国通貨はいくらでも発行できる。政府に徴税能力がある限り国債は通貨でファイナンスできるので、政権が崩壊しない限り政府がデフォルトすることはありえない。

経済政策の目的は失業をなくして物価を安定させることであり、財政はその手段なので、「財政健全化」を自己目的化してはいけない。不完全雇用のときは財政赤字を拡大して需要を増やし、失業を減らすべきだ。これはケインズが1930年代に失業対策として提案したことだが、MMTはそれを雇用保障として制度化すべきだと主張する。これは政府が失業者を(公務員として)雇用して最低賃金を保障するものだ。

これには巨額の財源が必要だが、増税はしなくてもいい。中央銀行が通貨を増発すれば、需要が拡大して失業が減るという。そんなことをしたらハイパーインフレになる、という批判に対してMMTは、不完全雇用(需要不足)がある限りインフレにはならないと反論する。完全雇用になると失業もなくなって財政拡大も止まるので、雇用保障はインフレを防ぐ「自動安定化装置」になるというのだが、そううまく行くだろうか。続きを読む






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