情報通信省?

冬になると出てくるお化けというのがあるのかどうか知らないが、昨日から話題になっている「情報通信省」という話は、ちょうど2年前の1月にも出て、すぐ消えてしまったものだ。これは、さらに1997年の行革会議にさかのぼる。「橋本行革」も、もとは通信と情報(コンピュータ)を別々の官庁が所管しているのはおかしいというところから始まったのだが、二転三転したあげく、官庁をまるごと合併して看板をかけかえただけで終わってしまった。今度は、その轍を踏まないように「官邸主導」でやろうということらしい。

たしかに、今の「勢い」のある小泉政権なら、「情報通信省」ぐらいはできるかもしれない。しかし、これは間違った方向である。私も2年前のコラムで書いたように、日本はもう発展途上国ではないのだから、情報通信を振興する役所なんていらないのだ。必要なのは、電波政策など最小限の規制だけで、これはFCCのように独立行政委員会にしたほうがよい。通信・放送を独立行政委員会で規制していないのは、OECD諸国のなかでは日本と韓国しかない。

各国で通信・放送の規制を独立行政委員会で行うのは、特に放送局を官庁が所管すると言論・報道の自由が制約されるという理由もある。日本でも、GHQの命令で1950年に「電波監理委員会」が独立行政委員会としてつくられたが、占領体制が終わると、1952年には廃止され、通信・放送は郵政省(当時)の直轄になってしまった。

最近でも、USTRの出してくる対日要求の第1項目は、ほとんど毎年、「通信・放送規制の独立行政委員会への移管」である。総務省はいつも、この第1項目は無視し、そのかわり第2項目以下の「NTT接続料の引き下げ」などの要求には一生懸命に対応してきた。しかし、郵政民営化で現業部門が切り離され、郵政族も「小泉劇場」で蹴散らされた今となっては、総務省もいつまでも抵抗していられないだろう。

率直にいって、今の郵政三事業を民営化するかどうかよりも、通信と放送が過剰に規制され、官庁が時代遅れの「産業政策」によって業界をミスリードしている問題のほうがはるかに重要である。アナログ人間の小泉首相は、この種の問題に興味がないので、これまで放置されてきたが、今や「影の首相」ともいわれる竹中氏がトップダウンでやれば、「日本版FCC」も可能かもしれない。

Google Video

Googleのビデオ・オンデマンド・サービスGoogle Videoが始まった。まだベータ版で、アマチュア・ビデオしかないが、今後はCBSの番組やNBAのバスケットボール中継なども行うという。

おもしろいのは、そのビジネス・モデルだ。これまでのVODサービスは、プラットフォーム側が権利関係を処理し、料金を決める「卸し―小売り」モデルだったため、ややこしい著作権の処理がボトルネックになっていた。これに対して、Google Videoはサイトを提供するだけで、権利処理や料金設定は各コンテンツの提供者にゆだね、プラットフォーム提供の手数料でもうける「直販」モデルである。

これは、いわばeBayの動画版で、著作権者に「自己責任」で配信させることで、権利関係の問題を巧妙に避けている。日本でも、こういう方式でやれば、VODに意地悪しているテレビ局も動かざるをえなくなるかもしれない。

明けましておめでとうございます

年賀状は(返事以外は)出さないことにしているので、このブログでごあいさつ。

去年の最大の収穫は、博士号をもらって論文が出版できたことだった。今年は、1月15日に『電波利権』(新潮新書)を出す。著述業としては順調な1年だったが、学問的にはあまり進歩がなかった。今年は、ちゃんと勉強して学術論文を書きたい。

政策的には、竹中総務相の懇談会で、ようやく通信と放送の融合が国家的なテーマになりそうだ。ただ小泉首相が「NHKは民営化しないと閣議決定した」と発言するなど、官邸の腰が引けているのが気になる。

iCon

『スティーブ・ジョブズ:偶像復活』(東洋経済)を読んだ。大して期待していなかったが、予想以上におもしろかった。アップルの没落については多くの本が出ているが、この本はジョブズという型破りの個性を中心にし、彼のまわりの人間との葛藤を丹念に描いたことで、単なるビジネス書の域を超えた奥行きが出ている。

もうひとつの新味は、ジョブズの復活の過程を描いたことだ。iMacやiPodの開発では彼のデザインへのこだわりが功を奏し、iTunes Music Storeを立ち上げる際のネゴシエーションでは、彼のプレゼンテーションの才能が役に立った。Pixarの成功にも、ハリウッドのアクの強い連中に対抗できるジョブズの個性が貢献した。日本のビジネスマンに欠けているのは、良くも悪くも、このアクの強さだろう。

規制改革会議

規制改革・民間開放推進会議の答申が出た。目玉だったNHK民営化については、「竹中プラン」を待つという結論に後退したが、これまでタブーだった放送業界への競争の導入に言及したことは画期的だ。

これに対して、NHKは早くも原田放送総局長(私の元上司)が「有料放送にすると視聴率優先になる」と反対の意見を表明している。しかし、この多メディア時代に、NHKだけが視聴者に受信契約を強制する制度の存在意義は疑わしい。また「戦時性暴力」の番組改竄騒動でも明らかになったような政治との深いつながりが、NHKのジャーナリズムとしての独立性を危うくしている。

それに民営化するといっても、選択肢は株式会社ばかりではない。いまNHKが持っているテレビ・ラジオ8波のうち、報道チャンネルだけは米国のPBSのようなNPOにするという手もある。とにかく大事なのは、政治家を使ってつぶしたりせずに、国民の前で堂々と議論することだ。

竹中プラン

竹中平蔵総務相が、通信・放送分野の規制改革についての懇談会を設け、その結論を受けて来年6月にも「竹中プラン」を打ち出すそうだ。これまで、この分野は小泉首相の関心がないのをいいことに、業者と役所が談合して問題を先送りしてきたが、これでようやくITの世界でも「構造改革」が始まりそうだ。

竹中氏は「インターネットでテレビ放送をどうしてみることができないのか、NTTは無料のIP電話をなぜ提供できないのか、海外のCNNなどの放送を日本でほとんど見ることができないのはどうしてか」など、いろいろな問題に「聖域を設けない」といっているから、NHKの民営化やインターネットによる放送の再送信などについても議論されるだろう。

誰も知らなかった毛沢東

ユン・チャン他『マオ:誰も知らなかった毛沢東』(講談社)は、上下巻1000ページ以上を4日で一気に読んだ。執筆に14年もかかっただけあって、毛沢東を権力のために平気で殺人を重ねる冷血漢として描く記述には、証拠に裏づけられた説得力がある。

ここに描かれる毛のイメージは、むしろスターリンに近い。なかでも驚いたのは、国内で数百万人が餓死しているのに、他国に自分の権威を示すために大量の食料を輸出していたという話だ。社会主義が生み出した権力者がこれほどよく似ているのは、偶然ではないだろう。国家権力が極大化した社会では、権力のために他のものをすべて犠牲にする者だけが生き残るのだ。

ICPFセミナーのお知らせ

第7回「ワイヤレス・ブロードバンドへの総務省の取り組み」

スピーカー:小泉純子(総務省電波部 電波政策課 周波数調整官)
モデレーター:真野浩(ルート株式会社 社長)

日本が「ブロードバンド大国」になった今、ワイヤレスの世界に注目が集まっています。総務省は、民間の専門家からなる「ワイヤレス・ブロードバンド推進研究会」を開催し、今後5~10年後の周波数再編を見据えた検討を行ってきました。その結果が21日にとりまとめられるのを機に、これからの電波政策について総務省の説明をうかがい、その方針について議論します。

日時:12月22日(木)19:00~21:00
場所:東洋大学白山キャンパス 5号館5202教室
   東京都文京区白山5-28-20
   地下鉄三田線「白山」駅から徒歩5分
   地下鉄南北線「本駒込」駅から徒歩5分
入場料:2000円
    ICPF会員は無料(会場で入会できます)

申し込みはinfo@icpf.jpまで電子メールで(先着順で締め切ります)

サザン・オールスターズ

東京ドームでサザン・オールスターズのコンサートを聞いた。桑田もユーミンも私の同世代だが、後者が見る影もないのに対して、東京ドームを即刻満員にするサザンの寿命の長さ(27年といっていた)は驚異的だ。

それに、大御所になってもユーミンのように格好をつけないで、3枚目をやっているのも立派だ。サザンはデビューのころから知っているが、最初はコミックバンドとして売り出した。そのときの雰囲気が、まだ残っている。

非弁活動

西村真悟代議士が、弁護士事務所の元職員に「非弁活動」をさせていた容疑で逮捕された。私は西村氏にまったく同情する気はないが、交通事故の示談は弁護士でなければできない仕事だろうか?

問題の元職員は、「示談のプロ」だったそうだから、これまでの示談の内容には問題がなかったのだろう。示談というのは、当事者が合意すればいいのだから、それを仲介するのに特別な資格がないとできないとは思えない。もちろん訴訟になったときは、弁護士が必要だろうが、法廷外の解決にはもっと門戸を広げたほうがいいのではないか。






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