逆囚人のジレンマ

道路公団をめぐる談合事件は、元理事が逮捕されるに至り、公団職員の関与も疑われている。しかし財界の動きはにぶく、経団連の奥田会長も「長年の慣習で、簡単にはやめられない」などと歯切れがよくない。これは談合に(少なくとも主観的には)一種の合理性があることを示唆している。

談合は、ゲーム理論でおなじみの「フォーク定理」で合理的に説明できる。1回かぎりの入札では抜け駆けで得をしても、それによって業界から追放され、指名入札に入れてもらえなくなったら、長期的には損をするからだ。しかし談合の場合には、この「サブゲーム完全均衡」は犯罪であり、ばれたら全員が最悪の状態になる。つまりここでは、通常の囚人のジレンマとは逆に、非常にリスクの大きな「協力」=談合に全員がトラップされているのである。

こういう「逆囚人のジレンマ」を壊すのは簡単である。すべての工事を一般競争入札にして、抜け駆けできるアウトサイダーを入れればいいのだ。しかしこういう解決法では、手抜き工事が行われる可能性があるので、工事の監視をきびしくするなどの事後的な行政コストが高くなる。談合は、業界内で互いに監視して品質を管理する役割もになっていたわけだ。

こういう「自主監視」のしくみは、終戦直後のような混乱した時期には必要だったかもしれない。しかし工事の質が上がり、行政による監視も厳重になった現在では、談合の積極的な意味はもう失われたのだ。奥田会長のいう「自由競争にしたら弱い会社が生き残れない」というのは理由にならない。競争が長期的には会社を強くすることは、トヨタがいちばんよく知っているはずだ。

天下り

経団連がよびかけていた「天下り自粛」は、会議に提案もされずに引っ込められた。橋梁談合をきっかけに、トヨタなどの「国際派」企業が言い出した改革は、「国内派」の抵抗によって、あえなく腰くだけになってしまったわけだ。

「人材の官民交流は必要だ」というのが抵抗勢力の言い分らしい。米国にもrevolving doorがあるじゃないか、というのはよく聞く擁護論だ。しかし、両者には決定的な違いがある。米国では、大臣官房の秘書課が再就職の世話をしたりしないということだ。

官僚が個人の実力で民間に再就職するのは望ましいことだし、若手官僚にも増えている。問題は、官庁の権限を背景にして再就職の斡旋をすることだ。官民の人材交流は大いに奨励し、その代わり役所による斡旋は法律で禁止してはどうだろうか。

Googleツールバー

Firefox用のGoogleツールバー(ベータ版)がリリースされたが、まだ問題があるので、使うことはおすすめできない。

普通にインストールすると、Googleの窓のついたバーが出てくるが、Firefoxの場合にはもともと右上に窓があるので、余計だ。さらに余計なのは「マウスオーバー辞書」というやつで、ウェブで英文を読んでいると、その訳語がマウスのポインタの横にいちいち出てきてうるさいので、オフにした。結局、機能は何も使っていないが、アンインストールできない。

無線ブロードバンド

ライブドアに続いて、平成電電も無線LANを使ったブロードバンド・サービスに参入するという。こっちはWi-FiだけではなくWiMAXも組み合わせる予定だそうだ。

同じような構想は、1999年にソフトバンクとマイクロソフトが東電と一緒に「スピードネット」として打ち上げ、失敗した。その後も東電だけは一部の地域でサービスを続けているが、ビジネスとして成功とはいいがたい。無線LANで公衆無線を構築するというのは、世界的にみても成功例はほとんどない。6年間に技術が進歩したのだろうか。それとも何か秘策があるのだろうか。

第1回ICPFシンポジウム

第1回ICPFシンポジウム「通信と放送は融合できるか」

ブロードバンドの急速な普及にともなって、通信のインフラを使って映像を伝送する「通信と放送の融合」が、技術的には可能になってきました。しかし現実には、いろいろな権利関係などの障害が多く、なかなかビジネスとしては立ち上がりません。今回のシンポジウムでは、問題点を明らかにするとともに、その解決の方向を関係者との議論によってさぐります。

日時:7月29日(金)
場所:東洋大学 スカイホール(2号館16階)
    東京都文京区白山5-28-20 (地図
    地下鉄三田線「白山」駅から徒歩5分
    地下鉄南北線「本駒込」駅から徒歩5分
入場料 2000円(ICPF会員は無料)
申し込みは、info@icpf.jpまで電子メールで(先着順で締め切ります)

第1セッション 13:30-15:30
  「放送とインターネットの出会い」
  地上波放送の再送信をめぐって起きている問題を整理し、解決策を考えます。
出演:原淳二郎(ジャーナリスト)
   楜澤悟(クラビット社長室長)
   田中良拓(風雲友社長)
司会:池田信夫(ICPF事務局長)

第2セッション 15:45-17:45
  「著作権の処理をめぐって」
  融合の最大の障害である著作権などの権利処理の問題を考えます。
出演:林紘一郎(情報セキュリティ大学院大学副学長)
   春日秀文(弁護士)
   安東高徳(総務省情報通信政策課コンテンツ流通促進室課長補佐)
司会:山田肇(ICPF副代表)

情報技術と組織のアーキテクチャ

私の新しい本が、ようやくアマゾンにも入荷した。ただし1冊しかないらしいので、注文はお早めに。

今度の本は、博士論文を一般向けに書き直したものだが、ちょっととっつきにくいかもしれない。テーマとしては「アーキテクチャ」とか「モジュール化」とか、このごろ関心の持たれている問題を扱っているのだが、手法があまり正統的ではない経済理論なので、前半はややわかりにくい。面倒な理屈に興味のない人は、後半の政策の部分だけ読んでもらってもよい。後半はほとんど論文集なので、前半を飛ばしても読める。

BTの再編とNTTの再々編

BTのローカルループを子会社として分離することが決まった。欧州委員会でもローカルループ・アンバンドリングの方針が出されており、今後EU全域で同様の政策が実施されるだろう。

それに比べて、NTTのおかしな経営形態を是正しようという声は出てこない。肝心のNTTの和田社長が「再々編は議論しない」というのだから、事態が動くはずがない。この背景には、宮津社長の時代に再々編を持ち出したら、「完全分割論」が復活してきてヤブヘビになってしまったという体験がトラウマになっているらしい。

しかし、時代は大きく変わった。今のような効率の悪い電話時代の経営形態をいつまでも続けていては、「FTTH3000万世帯」もおぼつかない。NTTにも、その問題意識はあるようだ。東日本の三浦社長が持株の副社長に異動する人事は、来年の社長交代の布石とみられているが、新体制で打ち出す戦略を1年かけて考えるということだろう。

ただ、今度は前回のようにNTT法をいじるというだけの話にとどまらず、通信と放送の垣根を超えてブロードバンド時代のインフラとコンテンツをどう供給するのか、という大きな枠組で考えてほしいものだ。規制改革・民間開放会議でも「通信と放送の融合」がテーマにあがるようだから、NTTも思い切った政策提言をしてはどうだろうか。

経産省の裏金

経産省の官房企画室長が「裏金」を私的に流用してカネボウなどに投資していたという事件が表に出た。しかも、彼は2900万円引き継いだのに、後任には1500万円しか引き継がなかったというから、これは横領だろう。諭旨免職ですむとは思えない。

この中富という企画室長は、仕事の面でも問題が多かった。彼が官房とRIETIの連絡役だったのに、ほとんどその機能を果たさず、本省とRIETIの関係がギクシャクする原因になった。彼の上司だった北畑経産局長(当時の官房長)も「監督不行き届き」として戒告処分を受けたが、彼が知らなかったとは考えられない。官房企画室長というのは、官房長と一体で仕事をする要職で、「あのポジションは技官では無理だ」といわれていた。

官房長が産業再生機構にさからってカネボウの「自主再建」を画策する一方で、その部下がカネボウで利殖に励むとは、とんだコンビである。インサイダー取引の疑いもある。しかし結果的には、カネボウの株価が上がったのは、経産省の工作が失敗したためだから、「ケガの功名」というべきか。

光ファイバー開放義務

NTTの光ファイバーには、世界でも他に例をみないきびしい開放義務が課せられている。このような過剰規制は設備投資のインセンティヴを低下させる・・・というのが教科書的な経済学による理解だが、実際にはNTTは「2010年までに3000万世帯」と意欲満々だ。

これはおかしい。何か政府と密約(たとえば何年後には開放義務をはずすとか)があるのではないか――と米国からNTTに調査に来たそうだ。たぶん答はYes & No。そのうち「空気」が変わってきたら規制をはずす、という「暗黙の契約」があるのだろう。

しかし私は、現在の規制はNTTよりも競争相手の設備投資インセンティヴをそいでいる(NTTのインフラを借りたほうが安い)点でよくないと思う。彼らがいつまでもNTTのインフラにぶら下がっていると、また光でもNTTが支配的事業者になり、電話時代と同じような「寄生的競争」になってしまう。開放義務は解除し、設備ベースで対等に競争するのが本筋だ。

デジタル放送の再送信

日本では、テレビ局が地上波の番組のIPによる再送信を認めないが、日経ITProの記事によると、米国のテレビ局は積極的に通信インフラを利用しようとし、通信会社のほうも放送の再送信をブロードバンド・サービスの目玉にしようとしているという。

この背景には、ケーブルテレビをめぐる状況の違いがある。米国のテレビ局は、難視聴対策をケーブルに頼ったため、今では8割の視聴者がケーブルでテレビを見ている。電波をいくらデジタル化しても、ケーブルが配信してくれなければ意味がないので、通信会社に頼らざるをえない。

他方、日本ではケーブルを規制して弱体化したため、地上波の独占が維持できた。ここでIP再送信を認めたりしたら、米国の二の舞になる、というわけだ。しかし地上デジタルで全国をカバーするには、こうした通信網も使わざるをえないだろう。意外に、地上デジタルが通信と放送の融合のきっかけになるかもしれない。







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