デジタル・デバイド

途上国の問題は、コンピュータなどの「デジタル・デバイド」ではなく、携帯電話などの通信インフラだ、とEconomist誌が論じている。

しかも携帯電話は、商業ベースで途上国にも急速に普及しており、国連が果たせる役割はないだろう。むしろ必要なのは、周波数の割り当てに市場メカニズムを導入し、競争を促進する改革だ。この点では、日本も「真のデジタル・デバイド」打開策を考えてほしいものだ。

電子投票

岐阜県可児市議選の電子投票の結果が、裁判所で無効とされた。これ自体は、やむをえないだろう。サーバが最大1時間20分も止まり、最下位と次点の差が35票というのでは、このトラブルが選挙結果に影響を与えた可能性は否定できない。

しかし、現在の投票制度は結果に影響を与えていないのか。以前も書いたことがあるが、現在の「自書式」投票は、明らかに知名度の高い現職が有利になっている。この先進国に類をみない奇妙な制度を廃絶することが、選挙改革の第一歩だ。

奇妙なTOB

フジテレビが公開買い付けで取得したニッポン放送株は、36%を超したという。

しかし、これをTOB(Take Over Bid)とよぶのはおかしい。TOBというのは、企業の支配権を得るために行うもので、最初にフジテレビの行った「50%超」という目標の買い付けはTOBだが、それを25%に下げた買い付けは、消極的な「企業防衛策」でしかない。

また、市場価格を下回る価格で買い付けが成功するのもおかしな話だ。通常のTOBでは、市場価格が上がるとTOBの価格も引き上げられ、むしろ一定のプレミアムがつくのが普通だ。今回は、トヨタが「市場価格以下で売るのは株主に説明がつかない」と応募を拒否したようだが、これが世界の常識である。

日本では初めての出来事だからしかたないが、いかにも日本的な、奇妙なTOBだった。

Secondary market

昨日の記事へのコメントで議論が沸騰している。私はAMラジオに未来がないことは明らかだと思うが、ライブドアに未来があることはそれほど明らかだとは思わない。少なくとも、これまで表明されている堀江氏のビジネスモデルは、かなり曖昧なもので、それがすべてだとすれば失敗するおそれも強い。

こういう買収が起こる一つの原因は、放送業界に新規の免許が出ないことだ。したがって企業買収が事実上免許を売買するsecondary marketになっており、この意味での放送局の買収というのは、欧米でも珍しくない。今回も、ニッポン放送の免許の買収だとすれば成功する可能性は大きいが、本来の目的はフジテレビだろう。しかし筆頭株主になっただけでは、その目的は達成できない。

日本のテレビ業界では、これまで買収・合併は1件もない。これは「護送船団行政」で保護されてきたためだ。これを打破するには、やはりブロードバンドで「もうひとつのテレビ」をつくって正面突破するしかないのではないか。護送船団に慣れきった今の放送業界に、変われと要求しても無理だ。そのことは、今度の騒動で堀江氏も学んだのではないか。

ある「家」の終焉

辻井喬『父の肖像』(新潮社)を読んだ。前に買ったのだが、今度の騒動で、堤康次郎という人物に興味がわいたので。

ひとことでいうと、堤義明前会長のワンマン経営は、康次郎の手法の「まるごとコピー」に近い。「世間では東急を近代的だとか大企業らしいなどと言っているが、どの企業も五島家のものではない。そこへ行くとわしの事業は全部[堤家の]ものだ」という康次郎の「家」への執着はすさまじい。

さらに話をややこしくしているのが、いろいろな妾にたくさん子供を生ませた血縁関係のドロドロだ。著者(堤清二氏)も、父に反抗して共産党に入り、相続を拒否したりするのだが、結局は西武百貨店を相続した。これも経営が破綻して、解体されてしまった。

これで堤家は、事実上消滅することになるだろう。「家」の業の深さを感じさせる。

AMラジオの未来

ニッポン放送の「社員総会」で、「ライブドアに買収されるのはいやだ」という決議が出され、圧倒的多数で可決されたそうだ。まあ敵対的買収というのはそういうものだが、この社員たちは、AMラジオに未来があると思っているのだろうか。

わが家のチューナーは、AMも受信できるが、一度も受信したことがない。Business Weekも指摘しているように、インターネット・ラジオが在来のラジオの市場を侵食している。日本では、規制がじゃましているが、時代の流れは戻らないだろう。ライブドアのノウハウを使って生き残りを図ってはどうだろうか。

キラー・コンテンツ

ソフトバンク・ホークスの試合(オープン戦)がヤフーBBで中継されたらしい。球場にカメラを30台置いて、視聴者が好きなアングルから見られるそうだ。

昔、NHKのBSの立ち上げにつきあった経験からいうと、こういう新しいメディアの「キラー・コンテンツ」は映画とスポーツだ。この意味で、ソフトバンクの戦略はまちがっていないが、野球だけではどうにもならないだろう。まず、地上波を再送信するという有線放送として当たり前の機能を実現する必要がある。

閉鎖会社

西武鉄道をめぐる事件は、今週にも「本格捜査」に入るそうだ。堤義明氏が、意外に率直にグループの実態を話しているのがおもしろい。

なかでも興味あるのは「なぜ西武鉄道を上場するのかわからない」という話だ。事実、その株式は堤家の「私物」だったわけだ。今回は、それを虚偽記載したことが問題になったが、正直に記載して閉鎖会社にしていれば、問題はなかったはずだ。

ニッポン放送の事件でも「買収によって上場廃止になる」ということが問題であるかのように語られるが、別に上場しなくても経営している大企業はたくさんある。サントリーも朝日新聞も閉鎖会社だ。1990年代の米国では、LBOによって公開会社の比率は減った。

企業は私有財産であり、基本的にはその株主のものである。鉄道や放送に「公益性」があるからといって、株式を公開すべきだということにはならない。

退屈

「肉弾」がレンタルで見られないので、買って見てしまった。

この映画の隠れたテーマは「退屈」だ。主人公は、自由時間を与えられると、まず古本屋へ行って「時間をつぶせる本は何か」とたずねる。店主が出したのは、聖書だった。これは実際に、学徒出陣のときにはよくあったことらしい。

老後というのも、退屈との闘いである。私も、そういう年齢に近づいている。これを解決してくれる、もっとも身近な手段がテレビなのだが、これが救いがたく退屈だ。これを是正することは、高齢化社会にとってきわめて重要な問題だと思う。今度のライブドア騒動でも、退屈ではないという点で堀江氏を応援したい。

ポイズン・ピル

ニッポン放送の発表した新株予約権の発行は、一種のポイズン・ピルである。日本の商法では、こういう対抗措置を認めておらず、しかも買収をしかけられてから事後的にやったのは疑問だ。ライブドアが仮処分を申請すれば、差し止められる可能性もある。そもそも、こんな方法が許されるなら、最初からTOBなんて必要なかったはずだ。

ニッポン放送は、増資の理由として「ライブドアの傘下に入ったら企業価値が毀損される」としているが、要するに「インターネットが恐い」ということだろう。これに対して「地上デジタル放送なんてナンセンス。インターネットでやればよい」という堀江社長のほうが、メディアの未来像としては正解だが、それが実現するかどうかはわからない。

ちなみに、ニッポン放送の亀淵社長というのは、もとディレクターで「オールナイト・ニッポン」のDJをやっていたこともある。当時に比べると、すっかりサラリーマン化した感じで、フジテレビのいいなりという感じだ。







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