ソフトバンクのFTTH

「ヤフー!BB光」のおひろめが、上戸彩まで使って派手に行われたようだ。

しかし、ヤフー!BBが始まったときのような衝撃はない。月額6890円というのは有線ブロードよりも高いし、シェアド・タイプでさえNTT東西と300円しか違わない。NTTのPONを使っているからだ。償却の終わったドライカッパーと違って、光では得意の「コバンザメ商法」はあまり効果がない。

それよりもWiMAXを使って、昔「スピードネット」で実験した無線による高速アクセスをねらってはどうだろうか。世界的に、いま最大の焦点はUHF帯の免許不要機器への開放である。ソフトバンクには、日本の「電波開放の旗手」になってほしいものだ。

Star Suite

MS Office XPのPersonal editionにはPowerPointが入っていない。これだけを買おうとすると14000円もするので、Star Suite 7(本体1980円)を使ってみた。

買うのは、ソースネクストのサイトからダウンロードするだけで、あっという間だ。利用期限は1年だが、MSのほうもすぐアップデートするから、似たようなものだろう。特にいいのは、PDFファイルにできることで、これなら互換性の問題もクリアできる。

ファイルを作成する機能は遜色ないが、既存のMS-Officeファイルを読むのは弱い。特にOLEは、まともに動くと思わないほうがいい。しかし文書作成だけなら問題ないし、単独のオフィス・ソフトと割り切れば、これで2000円はお買い得だ。

金子勝『経済大転換』の支離滅裂

著者は日本で数少ないマル経だが、本書では経済学者の名前をあげて、支離滅裂な「批判」を浴びせている。たとえば、著者は、ゲーム理論を次のように批判する:
ゲーム理論は融通無碍にできている。それは、このアプローチの前提となる契約理論では、モデル設計者が超越的な「観察者」の立場に立って、現にある制度を事後的に跡づけるモデルを設定することができるからである。(p.78)
この文章を理解できる経済学者はいないだろう。日本語として、意味をなしていないからである。「ゲーム理論の前提となる契約理論」とは、どんな理論 だろうか。ゲーム理論は、1944年のフォン=ノイマンとモルゲンシュテルンの本で始まったとされるが、契約理論(情報の経済学)の先駆とされるアカロフ の「逆淘汰」についての論文が発表されたのは1970年であり、後者が前者の「前提」となるはずもない。逆に契約理論は、最適な契約は戦略的な相互作用の 結果(ナッシュ均衡)として決まると考える「応用ゲーム理論」なのである。著者は、そもそもゲーム理論とは別の契約理論が存在することも知らないのだろ う。
ゲーム理論では、ゲームのルールは所与とされるが、このルールを決めるにはも う一度プレイヤーが一堂に集まってゲームをしなければならないと考えられる。では、そのゲームのルールを決めるゲームのルールは誰が決めるのか・・・とい うように、無限に遡及されなければならなくなる。こうした問題を避けようとして、ハイエクと同様に自主的なルールの形成を「繰り返しゲーム」、制度の変化 を「進化ゲーム」で描こうとする。(pp.78-9)
これも意味不明だ。繰り返しゲームはハイエクとは何の関係もなく、単に同じゲームが繰り返されると想定する理論である。 この程度のことは、どんな初等的な教科書にも書いてある。それも読まないで(あるいは読んでも理解できないで)「批判」する人物も問題だが、そのまま出版 する編集者も非常識である。筑摩書房は経済学の本は出していないから、編集者は素人なのだろうが、それなら専門家に原稿を読んでもらうべきだ。そうすれ ば、出版に耐えないことがわかるだろう。

京都議定書

ロシアが批准を決めたことで、来春にも発効する見通しだという。

ロシアの動機は明らかで、「排出権取引」という名による先進国からの援助を得ようということだ。GDPが(したがってCO2排出量が)基準となる1990年の半分になったロシアの排出枠は大幅に余っており、CO2は最大の「輸出資源」なのだ。

私は、環境問題をproperty ruleで解決するというCoaseの考えに基本的には賛成だが、この問題に関しては、財産権を設定するコストがあまりにも大きいうえに実効性が疑わしく、エネルギー関連産業をすべて規制産業にするおそれが強い。経産省の官僚も実は大部分は反対だが、公式にはいえない。私は炭素税のようなliability ruleでやるべきだと思う。

そもそもロシアが「温暖化」で困るということは、常識で考えてもありえない。地球温暖化がいかに政治的な問題であるかを示す実例だ。これについて、なぜか私のところに取材が来る。記者は「他の専門家の方に聞いても、政府見解と違う話が聞けないので」という。私は、この問題については専門家ではないが、状況はデジタル放送に似てきたようだ。

C&W

C&WIDCが日本から撤退するという。

これで通信業界では、ボーダフォン以外の外資はみんな撤退した。通信の80%は国内で、95%は同じ大陸だが、この比率はインターネットによって逆転し、80%はグローバルな通信になるだろう――というジョージ・ギルダーの主張を、かつて(私を含めて)多くの人々が信じたが、むしろインターネットの発達につれて国内サイトへのアクセスの比率は高まってきた。今では、日本のインターネット・アクセスの80%以上は国内である。

通信は各国政府に強く規制された産業なので、国境を越えるのは簡単ではない。また英語圏以外では、企業ネットワークに海外企業が参入するのもむずかしい。したがって、グローバルな競争のなかではNTTの独占も大した問題ではないという(石黒一憲氏などの主張する)NTT擁護論の根拠も疑わしい。やはり、国内の公正競争なしには国際競争もないのである。

情報家電

24日に電波有効利用政策研究会のWGが開かれ、免許不要局については無線LANなどの「帯域を占有しない無線機」からは取らないという方向になったそうだ。私のパブリック・コメントと似た考え方である。

しかし今度は、5GHz帯に「情報家電専用の帯域」を設けるという話が本格化してきた。「情報家電」の実態はよくわからないが、ブルートゥースに似た日本独自規格らしい。総務省は「情報家電に帯域を割り当てるのは世界初だ」と自慢しているらしいが、米国では5GHz帯で800MHz以上を完全自由に(免許不要で)開放するというのに、日本が本当にこんな割り当てをしたら、世界の笑いものである。

啓蒙専制君主

総務省は、1.7GHz帯で30MHzを第3世代携帯電話(3G)に割り当てる方針だという。ソフトバンクの行政訴訟を避けるために、「800MHz以外にも空きはありますよ」といいたいのだろう。

しかし、そのやり方は依然として書類審査による「美人投票」である。電波有効利用政策研究会が「オークションはやらない」という結論を出してしまったからだ。これまで日本で美人投票が機能してきたのは、申請してもどうせ電話会社しか認められないという暗黙の合意があったためだが、プロ野球をみていると、そういう合意は崩れはじめている。ソフトバンク以外に多くのベンチャー企業や外資が申請してきたら、どうするのか。

80年代の米国でも、「金のなる木」である電波を求めて多くの会社が殺到したため、くじ引きでやったら逆に何万社も申請して大混乱になり、結局オークションになった。欧州でもオークションが原則であり、北欧やフランスは美人投票で3Gの周波数を割り当てたが、結果的には新規参入が阻害され、参入した業者も免許を返上したりして、失敗というのが一般の評価だ。

今年2月、ジュネーブで行われたITUの専門家会合でも、「第2市場」を創設して財産権でやるか、免許不要の「コモンズ」でやるかの論争が繰り広げられているところに、日本の総務省だけが「市場活用型美人投票」を提案して、みんな唖然としていた。

誤解のないようにいうと、今の電波部のスタッフは、竹田部長をはじめとして良心的であり、新たな帯域の開放に努力している。しかし、これは絶対主義の時代に「啓蒙専制君主」が善意でお抱えの商人に貿易の免許状を与えたようなものだ。問題は、そもそも貿易に政府の免許が必要なのかということなのである。

シティバンク

わが家にも在日支店長からおわびの手紙が来た。

しかし、この手紙を読んでも、何が起こったのかさっぱりわからない。新聞などの報道も、みんな匿名で、刑事事件になったようにもみえない。リスクを十分開示しないで多額の仕組み債を売ったとか、仕手筋に資金を提供したとか、マネーロンダリングに協力したとか、断片的な話はいろいろあるが、これは問題の丸の内支店長の個人的な犯罪という印象も強い。世界最大のプライベート・バンクを日本から撤退させるようなことなのか。

私は、かつてこの種のプライベート・バンクの世界最大の集積地、ケイマン諸島で取材したことがある。小さな島に一流銀行の巨大な支店が林立する異様な風景は、なかなか絵になった。たしかに犯罪と結びついている部分もあるが、それが現地では合法的であることも事実なのだ。あるプライベート・バンカーは「税はコストのひとつにすぎない。それを法の許す限りで最小化することは企業や資産家の当然の行動だ」といっていた。インターネット時代は、主権国家と資本主義の闘いの時代になるのだろう。

Copenhagen consensus

「コペンハーゲン解釈」といえば、1927年にコペンハーゲンで開かれた国際会議で確立された量子力学についての標準的な解釈だが、今年の5月、世界でもっとも緊急性の高い問題を評価する国際会議がコペンハーゲンで開かれた。

これは500億ドルの予算があるとしたら、世界のどういう問題にいくら予算を配分するかをヴァーノン・スミスやロバート・フォーゲルなど8人の著名な経済学者に評価させたものだ。その結果、もっとも重要な問題だとされ、270億ドルが配分されたのはHIVで、最低ランクだったのは地球温暖化だった。京都議定書のコストは、その便益をはるかに上回ると評価された。

この評価は、ほぼ世界の経済学者のコンセンサスだといってよい。宇沢弘文氏などの「原理主義的エコロジスト」によれば、地球温暖化のリスクを低く評価する経済学者は、すべて米国政府に魂を売っていることになるようだが、環境問題というのは衣食足りると気になる贅沢品にすぎないのである。

ベキ分布

ブラック=ショールズ式は金融工学の基本定理として有名だが、これでノーベル賞を受賞したショールズとマートンの運営したLTCMというヘッジファンドは破産した。これは当時、経済学がだめな証拠といわれ、ノーベル賞を取り消すべきだなどという議論もあったが、実際の破綻の原因は、理論を無視してロシアの国債を大量に買うなどの単純な投機の失敗だった。

・・・というのが定説だが、高安秀樹『経済物理学の発見』(光文社新書)によれば、やはりブラック=ショールズ式はまちがっているのだという。それが非常にエレガントなのは、価格の変動が正規分布に従うと仮定しているからだが、外国為替市場などのデータは、横軸に変動の大きさ、縦軸にその頻度をとると、左端にピークがあり、右側の裾野が広い「ベキ分布」になる。つまり、極端に高い価格や低い価格のつく「不均衡状態」が起こりやすいのである。

価格が正規分布になるのは、それが完全にランダムなブラウン運動になる場合だが、為替ディーラーの行動は、ランダムどころか、互いに他のディーラーをみながら行動するので相関が強く、特定の方向にひっぱられる「カオス的」な動きを示すことが多い。その結果、極端に大きな変動が5%ぐらいあるが、ブラック=ショールズ式で近似できるのは残りの95%の小さな変動だけなのである。







title




連絡先(取材・講演など)

記事検索
月別アーカイブ
QRコード
QRコード
Creative Commons