AMラジオの未来

ニッポン放送の「社員総会」で、「ライブドアに買収されるのはいやだ」という決議が出され、圧倒的多数で可決されたそうだ。まあ敵対的買収というのはそういうものだが、この社員たちは、AMラジオに未来があると思っているのだろうか。

わが家のチューナーは、AMも受信できるが、一度も受信したことがない。Business Weekも指摘しているように、インターネット・ラジオが在来のラジオの市場を侵食している。日本では、規制がじゃましているが、時代の流れは戻らないだろう。ライブドアのノウハウを使って生き残りを図ってはどうだろうか。

キラー・コンテンツ

ソフトバンク・ホークスの試合(オープン戦)がヤフーBBで中継されたらしい。球場にカメラを30台置いて、視聴者が好きなアングルから見られるそうだ。

昔、NHKのBSの立ち上げにつきあった経験からいうと、こういう新しいメディアの「キラー・コンテンツ」は映画とスポーツだ。この意味で、ソフトバンクの戦略はまちがっていないが、野球だけではどうにもならないだろう。まず、地上波を再送信するという有線放送として当たり前の機能を実現する必要がある。

閉鎖会社

西武鉄道をめぐる事件は、今週にも「本格捜査」に入るそうだ。堤義明氏が、意外に率直にグループの実態を話しているのがおもしろい。

なかでも興味あるのは「なぜ西武鉄道を上場するのかわからない」という話だ。事実、その株式は堤家の「私物」だったわけだ。今回は、それを虚偽記載したことが問題になったが、正直に記載して閉鎖会社にしていれば、問題はなかったはずだ。

ニッポン放送の事件でも「買収によって上場廃止になる」ということが問題であるかのように語られるが、別に上場しなくても経営している大企業はたくさんある。サントリーも朝日新聞も閉鎖会社だ。1990年代の米国では、LBOによって公開会社の比率は減った。

企業は私有財産であり、基本的にはその株主のものである。鉄道や放送に「公益性」があるからといって、株式を公開すべきだということにはならない。

退屈

「肉弾」がレンタルで見られないので、買って見てしまった。

この映画の隠れたテーマは「退屈」だ。主人公は、自由時間を与えられると、まず古本屋へ行って「時間をつぶせる本は何か」とたずねる。店主が出したのは、聖書だった。これは実際に、学徒出陣のときにはよくあったことらしい。

老後というのも、退屈との闘いである。私も、そういう年齢に近づいている。これを解決してくれる、もっとも身近な手段がテレビなのだが、これが救いがたく退屈だ。これを是正することは、高齢化社会にとってきわめて重要な問題だと思う。今度のライブドア騒動でも、退屈ではないという点で堀江氏を応援したい。

ポイズン・ピル

ニッポン放送の発表した新株予約権の発行は、一種のポイズン・ピルである。日本の商法では、こういう対抗措置を認めておらず、しかも買収をしかけられてから事後的にやったのは疑問だ。ライブドアが仮処分を申請すれば、差し止められる可能性もある。そもそも、こんな方法が許されるなら、最初からTOBなんて必要なかったはずだ。

ニッポン放送は、増資の理由として「ライブドアの傘下に入ったら企業価値が毀損される」としているが、要するに「インターネットが恐い」ということだろう。これに対して「地上デジタル放送なんてナンセンス。インターネットでやればよい」という堀江社長のほうが、メディアの未来像としては正解だが、それが実現するかどうかはわからない。

ちなみに、ニッポン放送の亀淵社長というのは、もとディレクターで「オールナイト・ニッポン」のDJをやっていたこともある。当時に比べると、すっかりサラリーマン化した感じで、フジテレビのいいなりという感じだ。

放送の外資規制

今国会に、放送への外資規制を強化する法案が出るという。ライブドアの買収を「外資の間接支配」ととらえる時代錯誤は救いがたい。こういうルールを適用すると、ソニーもトヨタも「外資系」としてひっかかってしまうだろう。

かつてもNTTの大株主に外資がなったとき、「通信主権」なるものが論じられたことがあったが、具体的にどういう弊害があるのかわからないため、立ち消えになった。放送の場合も、外資の出資している会社が20%以上の株式を持ったら、番組の内容に影響が及ぶのか。

こういうとき必ず出てくるのが「電波は有限だ」とか「公共の財産だ」という話だ。世の中に無限の財産などない。有限だからこそ、特定の企業に独占させないで新規参入によって有効利用するのが市場メカニズムである。外資を差別する理由はない。

買収防衛策

来年から外資による企業買収が容易になることで検討されていた会社法案の買収防衛策が、ライブドア騒動で注目を浴びている。

しかし内容は「ポイズン・ピル」などの買収妨害を可能にするもので、株主資本主義という観点から見ると問題がある。経営努力を怠っている経営陣が、「外資はいやだ」とか「ベンチャーに買われたくない」といった理由で買収を拒否する道具に使われる可能性もある。

要は「敵対的」とか「友好的」とはだれに対してなのかということだ。たとえ経営陣にとっては敵対的であっても、企業価値を高めるなら株主にとっては友好的な買収だ。「米国並み」にするというふれこみもおかしい。ポイズン・ピルなどを認めているのは州レベルで、「株主軽視だ」と批判をあびたケースもある。

敵対的買収の成功率は高くないが、「株主を無視して株価が下がったら買収される」という規律を経営陣に与える意味は大きい。買収が本格的に始まらないうちから、防衛策ばかり入念に検討するのもいかがなものか。

泥沼

ライブドアの騒動は、泥沼化してきた。ニッポン放送の株式の40%を取得したとしているが、これ自体には大した意味がない。過半数の株式を取得したとしても、ニッポン放送を支配できるだけで、フジテレビに対しては単なる筆頭株主でしかない。

「インターネット時代にはスピードが重要だから、買収で決着をつける」という堀江氏の主張は正論だが、それならフジテレビを買収しなければ意味がない。ニッポン放送の22.5%という持株比率では、フジテレビに役員も出せないし、特別決議の拒否権もない。

堀江氏が今まで買収してきたようなネット企業とちがって、フジサンケイ・グループのような大企業集団を支配するのは、ライブドアの体力では無理だろう。企業買収というのはall or nothingである。中途半端に支配権をもって業務提携の呼びかけをしても、相手は拒否反応を起こすだけだ。

堀江氏は「事実上の筆頭株主になれば、フジテレビが提携に応じる」と考えたのかもしれないが、放送業界の体質は、彼が考えているよりはるかに保守的で、とくにインターネットに対しては拒否感が強い。そのへんの読みが甘かったのではないか。

岡本喜八

岡本喜八氏が死去した。私にとっては、中学生のとき見た「肉弾」の印象が鮮烈だ。米軍の本土襲来に備えて、自爆攻撃の訓練をする若い兵士(寺田農)の孤独な青春物語である。最後は、魚雷をくくりつけたドラム缶の中で餓死するのだが、そのとき幻想のなかで、最後に一夜を過ごした女子高生(大谷直子)を思い出す。

岡本氏自身が、こういう「本土決戦」の訓練をしていたという。無意味な戦争で失われた同世代の青春への追悼だったのだろうが、戦争を「告発」するのではなく、ひとりの青年の物語としてユーモラスに描いていた。あのように重いテーマを軽く描ける監督は、もう出てこないだろう。

敵対的買収

ライブドアのケースは、日本では珍しい敵対的企業買収としても注目される。しかし欧米でも、敵対的買収が成功する確率は低い。その種の企業として有名なKKRも、ほとんどは友好的買収である。

日本でも、かつて孫正義氏がルパート・マードック氏と一緒にテレビ朝日の株式を取得したことがあったが、彼も総括するように「相手が十分にその気になっていないのに株主になってもあまりうまくいかない」。ライブドアに、これを乗り越える秘策はあるのだろうか。







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