大仏破壊

高木徹『大仏破壊』(文藝春秋)が大宅壮一ノンフィクション賞を受賞した。NHKスペシャルの取材をもとにした、よく書けたルポルタージュだ。

大仏破壊と9・11は、異教徒のシンボルを破壊するという点では明らかにつながっている(両方とも対になって建つ巨大な建造物だというところまで同じだ)。大仏破壊の意味は、単に文化財が破壊されたというだけでなく、タリバンがアルカイダに乗っ取られたということを示していたのである。国際社会(とくに米国)がこの兆候を見逃したことが、9・11を許したともいえるだろう。

戦争の民営化

イラクで「警備会社」の日本人の事件が話題になっているが、これは警備員というよりは、武装した「傭兵」である。

戦争は、近代以前には傭兵によって行われたものだ。Soldierという英語の語源は、傭兵という意味である。これを徴兵制による常備軍に置き換え、その代わり彼らに市民権を与えたのが近代国家である。カネで転ぶ傭兵よりも「わが国」を守る国民のほうが強かったわけだ。

この意味では、補給や警備などを民間に「アウトソース」する米軍の方式は、近代以前に先祖返りしているのかもしれないが、その戦力は狂信的なイスラム教徒には勝てないだろう。

植草一秀氏の再起?

植草一秀氏が「スリーネーションズリサーチ」という会社をつくってウェブサイトを立ち上げた。

もともとアカデミシャンではなく(彼の議論は学問的には疑問が多い)経済評論家なので、講演などの口がかかれば,十分食っていけるのではないか。ただ、裁判で有罪が確定してしまったので、まともな再就職は無理だろう。どうせなら控訴して闘えばよかったのに。

B-flag

FCCの導入しようとしていたb-flag(デジタル放送のコピープロテクト技術)が、裁判所で「違法」との判決を受けた。

日本では、b-flagよりもっと「進んだ」B-CASが導入され、さまざまなトラブルの原因になっているのに、だれも文句をいわない。こっちはコンテンツにスクランブルがかかっているから、録画機器に対応を義務づける必要もないのだ。

国家の罠

佐藤優『国家の罠』(新潮社)を読んだ。鈴木宗男氏と一緒に逮捕された元外交官の手記だが、たしかに事務次官の決裁まで受けた国際学会への出席が「背任」だという検察の筋書きには、かなり無理がある。

しかし疑問も残る。第一に、著者が鈴木氏を「大臣」と呼んだりして、その政治家としての行動に疑問をもっていないことだ。たしかに著者にとっては頼りになる親分だったかもしれないが、外務省のキャリア官僚にとっては地元利益をゴリ押しし、気に入らないと怒鳴り上げたり人事に介入したりする最悪の政治家だったのではないか。

だから「国策捜査」の背景分析もおかしい。問題はケインズとかハイエクとかいう高尚な話ではなく、外務省の方針にうるさく口を出す鈴木氏を葬り去る絶好のチャンスだったというだけのことだろう。日本は「官治国家」であり、それに逆らう者は排除する、という国家意志が働いた、という点では「国策」に沿う捜査といえるのかもしれない。

Verizon-MCI

VerizonによるMCIの買収が決定し、米国の通信業界はAT&Tを買収したSBCとの「2強」体制となった。20年前のAT&T分割以降の歴史を、まるで逆転しているようだ。

これが「健全な結果」だというEconomist誌の評価には同意できないが、これで1996年電気通信法が死んだことはまちがいない。ネットワークをUNEにアンバンドルして競争を導入しようという96年法の方針が成功したのは、皮肉なことに米国ではなく日本だった。

今後は、ケーブルとの設備ベースの競争に期待をかけるしかないが、このような「寡占的競争」が健全な結果をもたらすとは考えにくい。新たにFCC委員長になったケヴィン・マーティンはWiMAXなどの無線MANに期待をかけているようだが、こっちは影も形もない。米国が「ブロードバンド後進国」である状態は、しばらく続くだろう。

UWB

FCCが標準を決めたことで、UWBが実用化に向けて一歩前進した、とNYタイムズが伝えている。早ければ、今年後半にも製品が出てくるようだ。

これも当初は、Wi-Fiを置き換える革命的な技術として期待されたが、GPSと干渉する(これはGPS側に問題があるのだが)という問題があって、周波数が制限された。また標準化団体が二つあるのも状況をややこしくしていたが、FCCの決定で両者は「休戦」したらしい。

超広帯域だが超低出力なので、しょせんは室内用の無線に限られるが、それでも100Mbps出るというのは魅力だ。実用化すれば、USBのような汎用の接続規格になる可能性もある。

日本の成功?米国の失敗?

トマス・ブレハのForeign Affairs論文が話題を呼んでいる。日本や韓国はブロードバンドで米国を抜き、インターネットの母国である米国は、通信政策の失敗によって産業競争力を失っている、という話だ。NYタイムズで、トム・フリードマンが紹介して話題になった。

しかし、この評価は一面的である。私が以前にも書いたように、日本でブロードバンドが普及したのは、いろいろな原因による「競合脱線」のようなもので、政府が賢明だったからではない。米国の政策の評価も単純すぎる。Economist誌も指摘するように、設備ベースの競争を促進するFCCの政策は、結果が出るのに時間がかかる。最終的な勝負は、まだついていないのだ。

栄村と霞ヶ関

第1回ICPFセミナーの栄村についてのスライド(PDF)を講師の佐藤千明さんにいただいた。

話を聞いて、あきれたのは霞ヶ関の無責任さだ。あらゆる法律を調べて担当の官庁に問い合わせたらしいが、総務省は「著作権は文化庁に」、文化庁は「著作権は権利者の問題」、そして権利者の民放キー局は話し合いもしない。うっちゃっておけば、あきらめると思っているのだろうか。それでも粘り強く問題を追及する佐藤さんの執念には頭が下がった。

第2回ICPFセミナー


情報通信政策フォーラム(ICPF)からのセミナーのお知らせです。

昨年10月、「録画ネット」という会社に業務停止を命じる仮処分が東京地裁で言い渡されました。この会社は海外在住の日本人向けに、日本のテレビ番組を録画できるパソコンを売り、それを自社内に置いて海外から操作できるようにする「ハウジング・サービス」を行っていたのですが、それに対してNHKと在京キー局5社が、サービスの差し止めを求め、裁判所が認めたのです。

録画ネットのユーザーは、わずか250人。こんな「すきま商売」をテレビ局がそろって訴えるのは、同様の録画代行サービスが国内でも広がることを恐れているためです。しかし業者は、インターネット経由で録画の操作をしているのはユーザーであり、著作権は侵害していないと主張しています。

ハードディスクとブロードバンドが普及した今日、それを利用した便利なサービスが登場していますが、著作権上の紛争も引き起こしています。どこまでが合法なのか、また制度を見直す必要はないのか、いくつかのケースをもとに考えます。

講師:原田昌信(エフエービジョン取締役)
モデレーター:真野浩(ルート株式会社 社長)

日時:5月19日19:00~21:00
場所:東洋大学白山キャンパス 5号館5202教室
東京都文京区白山5-28-20
   地下鉄三田線「白山」駅から徒歩5分
   地下鉄南北線「本駒込」駅から徒歩5分
   地下鉄千代田線「千駄木」駅から徒歩15分
入場料:2000円
    ICPF会員は無料(会場で入会できます)

申し込みはinfo@icpf.jpまで電子メールで







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