業界用語

テレビ業界の用語には、変な和製英語が多い。最近、民放で目立つのは、放送を「OA」と略す字幕だ。「オン・エア」の略語のつもりらしいが、「放送中」というのはon the airである。他にもたくさんある:

  • フリップ:「めくる」という意味の英語から転じて、スタジオで出す図のこと。NHKでは「パターン」という。これはテスト・パターンから来たらしい。

  • カフ・ボックス:アナウンサーが手元で使うフェイダーのこと。咳(cough)を消すためについた名前だという。NHKではFU(fader-upper?)という。

  • テロップ:これは不透明(OPaque)という言葉の前にTELevisionがついたものだというが...

    「やらせ」のように、そもそも業界では(世間的な意味で)使われていないのは、次のような言葉だ:

  • エア・チェック:「録音」の意味で使われるようだが、これは民放でCMがちゃんと放送されたことを放送同録でチェックすること。

  • ダビング:一般には「コピー」の意味で使われるが、テレビ局では映像に音声を多重録音(overdub)する作業のこと。

  • 均衡選択

    他人が問題を理解しているのを知ることはやさしいが、どう誤解しているのかを知ることはむずかしい。きょう田中秀臣『経済論戦の読み方』(講談社現代新書)を立ち読みしていて、「リフレ派」が何を誤解しているのかが初めてわかった。

    田中氏によれば、日本経済の直面しているのは、X軸に衰退産業、Y軸に成長産業をとった生産可能フロンティアの上で、社会全体の効用曲線がY軸側にシフトしているような状況である。したがって「構造改革」によってX軸の企業を破壊しなくても、フロンティアに沿って徐々に新しい均衡に移行する「漸進的改革」をすればよいという。

    こういう議論が成立するのは、生産可能集合が凸で、効用曲線も凸集合になっている場合に限られる。もしも生産可能集合が非凸であれば、フロンティアに沿って「漸進的に」望ましい均衡に移行することはできない。そして生産可能集合は一般には非凸だというのが、前述のRobertsの本でも強調されている点である。

    これは図で描くと、高い山と低い山が並んでいるような状態だ。低い山の山頂にいる人は、局所的にはもっとも高い所にいるので、わざわざ山を降りてもう一つの山に登りたくない。まして、もう一つの山が今いる所よりも高いかどうかわからなければ、低い山の上から動こうとしないだろう。日本経済が陥っているのも、こういう「局所最適化」のパラドックスである。

    ゲーム理論で(否定的に)証明されたように、こうした複数均衡のなかから最適な均衡を求める「均衡選択」の問題には一般的なアルゴリズムが存在しない。企業戦略や経済政策に求められているのは、このように個々人の努力では解決できない均衡選択だ、というのが私の博士論文の結論である。構造改革とか制度設計という言葉に意味があるとすれば、こうした戦略的な決断であり、それは現在の日本経済においてはマクロ的な安定化政策よりもはるかに重要である。

    Best CD

    NMEなどの音楽雑誌によれば、ほぼ一致して今年のベストCDは"Franz Ferdinand"だという。日本でも"Take Me Out"は一時よくラジオでかかったから、おなじみだろう。

    個人的には、"SMiLE"やU2の新作なども気に入ったが、これらもベストCDのリストには入っているようだ。ところで、iPodのコマーシャルにも使われているU2の"Vertigo"のサビの部分って"You Keep Me Hanging On"の出だしにそっくりだと思うのだが・・・

    環境リスク

    ウクライナの大統領選挙で、ダイオキシンが話題になっている。日本でも、ゴミ焼却炉から出るダイオキシンには厳重な規制が行われているが、中西準子『環境リスク学』(日本評論社)によると、焼却炉から出るダイオキシンの環境リスクは、ほとんど無視できるレベルだという。大部分のダイオキシンは、過去の農薬汚染によるものであり、現在のダイオキシン規制の意味は疑わしい。

    化学物質がどれだけ寿命を縮めるかという環境リスクを定量的に比較すると、ダイオキシンの1.3日に対して、喫煙は10年以上で、受動喫煙でさえ120日以上だ。リスクを最小化するという目的に関していえば、タバコを規制するほうがはるかに効果的である。

    こういう調査結果を中西氏が初めて発表したときは、「市民団体」から抗議が殺到したという。その前、彼女が流域下水道を批判したときは、日本の学会誌には論文掲載を拒否され、東大の研究室では「村八分」にされて、彼女は助手を23年間やった。学問的な事実をありのまままに発表することが大きな犠牲をともなうことは、日本では珍しくない。

    Best Business Books

    Economist誌の「今年のベスト経済書」に選ばれたのは、John RobertsのThe Modern Firm (Oxford U.P.)である。

    内容は『組織の経済学』以後の企業理論をやさしく解説したもので、理論的にはあまり新味はないが、BP、ソニー、ノキアなどの具体的なケースでそういう理論を検証しているところは参考になる。特に、新しい企業組織の方向としてdisaggregationとかloose couplingなどの特徴をあげているところは、「モジュール化」の議論と通じるところがある。

    和解

    私と国際大学との紛争が12月21日円満に解決し、私が2004年4月1日から2005年3月31日まで国際大学グローバル・コミュニケーション・センターの教授であることが確認された。

    ITこの1年

    ワシントン・ポストの"Filter"コラムに、今年のITニュースのランキングが出ている。

    それによれば、今年の主役はGoogleで、脇役はFirefoxとiPodというところらしいが、来年はこれらがすべて「真の主役」マイクロソフトの挑戦を受ける年になるだろう。

    電波と政治

    「おわび特番」のあとも、NHKへの批判は収まる気配がない。当初は不正経理への批判だったものが、だんだん海老沢会長個人への怒りに変わっているようだ。彼が「ジャーナリスト」にはとても見えないことが、NHKの「いやな体質」を体現しているように見られるのだろう。

    しかし、あえて海老沢氏の立場に立って弁明すると、これは彼が悪いのではない。民放各社も、同じようなものだ。これまでの放送業界では、電波を取ることが最大の利益の源泉だったので、その専門家である政治部記者が経営を行うのは当然だ。NHKの総務省記者クラブには、記者が2人いる。1人は原稿を書く記者で、もう1人は「波取り記者」とよばれるロビイストだ。海老沢氏は、後者のエキスパートとして出世した。彼は、もともとジャーナリストではないのである。

    これは新聞も同じだ。かつては新聞とテレビは独立だったが、田中角栄が新聞とテレビを系列化したため、電波利権の配分を通じて自民党が新聞社をコントロールするしくみができてしまった(この系列化にもっとも熱心だったのが朝日新聞だ)。日本の電波政策が先進国でもっとも遅れている原因はこのタブーにあり、また「封建的」な電波政策がこうしたタブーを温存しているのだ。海老沢氏をたたくだけでは、根本問題は解決しない。

    海老沢氏への攻撃がやまない背景には、これまで彼の後ろ盾だった野中広務氏が引退し、橋本派の力が落ちたことも影響しているのだろう。派閥の盛衰と運命をともにするのは、派閥記者の宿命だ。

    アーキテクチャ決定論


    日立の首脳が「当社は組み合わせではなく、すり合わせで行く」という戦略を発表したらしい。藤本隆宏氏などの主張している「アーキテクチャ決定論」が、現実の経営判断に影響を及ぼしつつあるという点で、これは由々しき問題だ。

    私は、日立の技術者とも意見交換をする機会を何度ももったが、「官公需」に依存しているその体質を脱却しなければ未来はない、という点で現場の意見は一致している。今回の経営判断には、そういう現場の声がまったく反映されていない。

    しかも、この「理論武装」になっているのが、学問的には疑わしい藤本氏の決定論だ。これは経産省の官僚にも絶大な影響を与えているようだが、経済学的な論理はない。私の博士論文は、こういう決定論への反論として書いたつもりである。

    NHKに言いたい


    生放送の「謝罪」番組を見た。同じ話の繰り返しばかりなので、途中で風呂に入ったが、風呂から上がっても同じ話をしていた。「有識者」がNHKへの「信頼が失われた」と批判し、会長が頭を下げるだけだ。

    私は今度の着服事件がそれほど「構造的」なものだとは思わないが、これは受信料制度を考え直すいいきっかけだ。今回のCPがやっていたような演芸番組まで、受信料で制作する必要があるのか。災害報道など、最低限度の公共放送が必要だとしても、それは24時間ニュースが1チャンネルあれば十分だろう。NHKが(テレビ・ラジオ・衛星あわせて)11チャンネルも持つ必要があるのか。

    そういう具体的な経営問題は出てこないで、批判する側も答える側も精神論ばかり。目新しかったのは、経営委員の話が無内容で、その実態が会長の下請けにすぎないことが明るみに出たことぐらいか。







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