自民圧勝?

けさの各紙の世論調査は、そろって自民党が単独過半数の勢いと報じている。保守党が「改革」や「小さな政府」を旗印にして野党を圧倒する状況は、1980年代の英国に似ている。先進国が一度は通らなければならない局面なのだろう。

民主党の最大の失敗は、前の国会で郵政民営化に対案も出さずに反対したことだ。今ごろになって岡田代表が「将来は民営化もありうる」などとぶれた発言をし、かえって混乱している。現在の郵政民営化法案が大した改革にならないことは事実だとしても、一般の選挙民には、公社を維持するという民主党が、歯切れの悪い「守旧派」にみえることは避けられない。

集票基盤を都市の中間層に求めることは民主党の課題だったはずだが、今回は「改革」の旗印を自民党に奪われたことで、逆転してしまった。しかしEconomist誌も指摘するように、今回の自民党の「変身」が成功すれば、日本の政治全体が古い利益集団中心型から大衆社会型への後戻り不可能な変化をとげることになろう。

第4回ICPFセミナーのお知らせ

「ライブドアのワイヤレス戦略」

講師:照井知基(株式会社ライブドア上級副社長)
モデレーター:真野浩(ルート株式会社 社長)

ライブドアは、11月から無線LANによるブロードバンド・サービス「ライブドア・ワイヤレス」を開始します。その目玉は、月額525円という低料金で最大54Mbpsの通信速度を実現することにあります。しかし、こうした無線LANによる公衆無線サービスは、過去に何度か試みられ、事業としては失敗に終わりました。ライブドアには、今度こそ成功する秘策があるのでしょうか。今回は、ワイヤレス事業の陣頭指揮をしておられる照井副社長に、その戦略をうかがいます。

日時:9月29日(木)19:00~21:00
場所:東洋大学白山キャンパス 5号館5202教室
   東京都文京区白山5-28-20
   地下鉄三田線「白山」駅から徒歩5分
   地下鉄南北線「本駒込」駅から徒歩5分
入場料:2000円
   ICPF会員は無料(会場で入会できます)

申し込みはinfo@icpf.jpまで電子メールで(先着順で締め切ります)

地上デジタル放送についての情報通信審議会第2次中間答申に対する意見

きょう次のようなパブリック・コメントを情報通信政策フォーラムとして提出した:

意見:放送のデジタル化は、当該放送地域内に限定せず、全国にひろく伝送できるIPの特長を生かすべきである。

理由:今回の答申で「伝送路の融合」が強調され、IPマルチキャストや通信衛星の利用が提言されているのは、大きな前進である。とりわけIP伝送について、「条件不利地域」にかぎらず積極的に導入すべきとする答申の方針は、高く評価できる。その物理的なインフラは光ファイバーである必要はなく、DSLや無線LANなども活用すべきである。

問題は、IP伝送が「当該放送地域内に限定される」ことを条件としている点である。IPの特長は低コストで情報を全世界に伝達できる点にあり、これを人為的に制限することは、その特長を減殺し、視聴者の選択の幅を狭める。現在でも放送地域外で見ている視聴者は多く、県域放送の原則は厳密に守られているわけではないし、守る意味もない。

放送局は、放送地域外にIP伝送されれば地方局の既得権が脅かされると考えているのだろうが、問題は逆である。現在のデジタル化では新たな収入源はほとんどないが、県域を超えてIP伝送できるようになれば、全国127社の民放がすべて全国放送でき、放送業界に競争が導入され、新たな収入源ともなろう。これによって番組が多様化し、民放にデジタル化のインセンティブが生まれれば、普及が急速に進むかもしれない。

あと6年でアナログ放送を無条件に止めるというのは、世界にも例のない方針であり、視聴者に理解されなければ実現は不可能である。したがって第一に配慮すべきなのは、放送局の既得権ではなく、視聴者にとっていかに魅力的な放送を低コストで行うかということである。このためには、既存の方針を大胆に見直し、多様なインフラを活用することが望まれる。

予報円

台風11号が近づいてきた。こういうとき、台風情報でわかりにくいのは、暴風雨圏と予報円の二つの円が描かれていることだ。こういう曖昧な予報をしているのは、日本だけである。台風の進路予測はスーパーコンピュータで行われるので、本来の予想進路は一意的に決まっているが、気象庁が左右に幅を持たせるのだ。

昔は、日本でも中心の予想位置は1本の線で描いていたが、20年ほど前に予想が外れて、長崎で漁船が遭難したことがあった。この責任を国会で追及され、それ以来、気象庁は責任逃れのために予想に幅をもたせるようになったのだ。予報官会議では、もっぱらコンピュータの出した進路をどうぼかすかが議論される。

それにしても、円になるのはおかしい。進路に幅があるだけなら、誤差を見込んだ中心の位置は扇形の弧になる(速度の誤差を加えても幅のある扇形になる)はずだ。それを円形に描くので、暴風雨圏とまぎらわしいのである。

刺客

「刺客」は今年の流行語大賞にでもなりそうだが、ちょっと実態とずれてきたような気がする。もともとは「共倒れ覚悟で殺しに行く」という(ヤクザ映画の)鉄砲玉のイメージだったが、刺客がこれだけ脚光を浴びると、むしろ割を食うのは民主党のほうで、鉄砲玉が生き残るケースも多いのではないか。

解散の記者会見で小泉首相が「郵政民営化に賛成か反対かを選択する選挙にする」と宣言したとき、それを真に受けた人は少なかったはずだ。分裂選挙で民主党が漁夫の利を得る、というのが「政界の常識」だった。それを強引に自分の土俵にひっぱりこんでしまった首相のプロデューサーとしての力量には恐れ入る。これは計算というよりも、天性の勘みたいなものだろう。

実は私も、4年前の参院選に出ないかと自民党の代議士に説得されたことがある。そのときは森政権の末期で、候補者も集まらなかったらしい。もちろん即座に断ったが、あのときOKしていれば、小泉政権のもとで選挙になったから、私の人生はどうなっていただろうか・・・

ユニバーサル・サービス

郵政法案をめぐるテレビの討論を見ていると、「改革」を主張する与党に対して反論する野党の論点は、ほとんど「ユニバーサル・サービス」しかなく、この点では自民党内の反対派も同じだ。しかも、与党側も「ユニバーサル・サービスは守る」と主張するから、争点がわかりにくい。

ユニバーサル・サービスというのは、20世紀初めにAT&Tが1社独占を正当化するためにつくった政治的な言葉だ。それが日本では、さらに政治的に拡大解釈されて、金融にまでユニバーサル・サービスが必要だという話になっているらしい。しかし、この種の問題の大部分は社会福祉の問題であり、私も3年前に書いたように、基本的には所得補償で解決することが望ましい。

公的補助によってサービスを維持する場合にも、過疎地こそ民間で効率的にやらないと公的負担がかさむ。たとえば郵便事業を請け負う業者をオークションでつのり、最小の補助で事業を行う業者に委託するなどの工夫が必要だ。

さらに本質的な問題は、今の郵便局ネットワークを丸ごと守る必要があるのかということだ。今の特定郵便局は、日本人の7割が農民だった時代の配置で、それを今後もすべて守ることは不可能だし、その必要もない。与党が「構造改革」をいうなら、そういう論点も正面から争わなければ、また2兆円の基金で赤字補填する家父長的な保護行政になってしまう。

IPマルチキャストは放送か

先月の情報通信政策フォーラムのシンポジウムでも議論になったように、電気通信役務利用放送法によるIPマルチキャストのサービスが放送と認知されていないことが、栄村などさまざまな混乱を呼んでいる。これは日本の著作権法でインターネットを「自動公衆送信」という概念で規定し、放送と区別したことが原因だ。

実際には、IPマルチキャスト(UDP/IP)は「公衆によって同時に受信される」点で、有線テレビ法による放送(ケーブルテレビ)と変わらないのに、IPだというだけで自動公衆送信のような扱いを受け、BGMなどにも1曲ずつ許諾を得なければならない。これはIPといえばTCP/IP=インタラクティヴ通信という固定観念があるからだろう。

さらにいえば、放送と通信で権利関係にこんな大きな差があるのがそもそもおかしい。こういう法的な非対称が、放送業界の既得権を守る武器になっているのだ。1次権利者に個別に許諾を得るなんて実際には不可能なのだから、通信にも強制ライセンスと包括契約を認めるべきだ。

総務省人事

総務省の今年の人事異動は、郵政民営化騒動のあおりで、かなり大幅なものになった。総合通信基盤局長になるはずだった鈴木康雄政策統括官が小泉首相の「一本釣り」で郵政行政局長に異動してしまったため、基盤局長が旧自治省系から出る。

情報通信政策局長に竹田電波部長(技官)が昇格したのも異例だし、逆に電波部長に事務官がなったのも初めてだろう。これまで電波部は特殊な「ムラ」で、技官の牙城だったが、通信と放送の融合時代には、有線・無線の枠を超えてインフラの効率化を考える必要がある。こういう人事の「融合」は歓迎すべきことだ。

解散

衆議院が、とうとう解散された。紫色の解散詔書を見て思い出したのは、12年前の宮沢内閣による解散だ。あのとき私は、国会内の中継車から解散を見ていた。歴史の歯車が回る音を聞いたような気がした。それがサラリーマンをやめようと決意したきっかけだった。

いま思えば、私の決意は早すぎた。日本が大きく変わると思ったが、政治はすぐ元に戻ってしまった。経済はボロボロになって持ち直してきたが、行政は何も変わっていない。12年前の連立与党のときも、行政主導は、かえって強まった。今度、もしも民主党が勝ったとしても、大した期待は持てない。日本を支配しているのは、明治以来100年以上になる「官治国家」システムだからだ。

FCCの規制撤廃

FCCは、地域電話会社へのアンバンドル規制を事実上撤廃し、ケーブルと「平等な競争条件」にする決定を行った。これで1996年電気通信法以来の規制は、完全に逆戻りしたわけだ。

このような「設備ベースの競争」路線は、アンバンドル規制を強める日本や欧州とは逆である。長期的にどっちが成功するかはわからないが、この10年の試行錯誤でわかったことは、中間の解はないということだ。垂直統合か水平分業かというのは、産業全体のアーキテクチャの選択だから、一部の業者に別の規制をしたり、規制が二転三転したりするのは最悪である。その意味では、最近のFCCの政策は、一貫しているだけましかもしれない。







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