コンニャク問答


FTAで、コンニャクの関税率を下げるかどうかが「争点」の一つになっているそうだ。

20年ほど前にも、コンニャクが話題になったことがあった。日米貿易摩擦で、中曽根内閣が輸入拡大の「アクション・プログラム」を作ったときのことだ。通産省の担当者に「この計画で、黒字は減るんですか?」と質問したら、ニヤリと笑って「官邸がどこまで本気かは、コンニャクを見てればわかりますよ」という謎めいた答が返ってきた。調べてみてわかったが、コンニャクは群馬県の特産物なのだ。

それから20年。「大勲位」の引退で、ようやくコンニャクも聖域ではなくなったのだろうか。現在のコンニャクの関税率は990%・・・

民営化の手順


郵政公社の生田総裁が、竹中郵政民営化担当相に抗議の意見書を出したという。

業務範囲などに制約があっては他社と競争できないというのは、一般論としては正論だが、問題は、公社が実質1兆円も免税されて民間と競争するのが公正といえるのかということだ。これはNHKの「肥大化」問題と同じで、個別の業務について行政が監視するのではなく、経営を完全に民営化しないかぎり、公正競争は実現しない。

中途半端に政府から切り離して一挙手一投足を監視する「民営化」はNTTでも行われ、現在のようないびつな競争しか生まれなかった。このときも「分割」が争点になったが、企業の境界を決めることはもっとも重要な経営問題であり、これを自主的に決められないようでは、NTTのような「セミ民間企業」しかできない。

経営者が経営に100%の権限と責任を持たないかぎり、企業の経営はできない。生田氏が自由に競争したいのなら、まず公社という形態をやめ、法人税を収めるのが先である。この肝心の問題を曖昧にするから、いろいろ政府の介入が起こるのだ。ユニバーサル・サービスなどの問題は「デカップリング」して解決できる。

Hype cycle


先日、ある記者に「マルチメディアの歴史」についての話をしていたら、1985年ごろにはINSなどの「ニューメディア」が流行し、1995年ごろにはビデオ・オンデマンドなどの「マルチメディア」、というように、新技術が大規模に宣伝されては失敗するhypeが10年周期で起こっているのではないか、という話になった。

では2005年のhypeは何か、と考えてみると、明らかに「ユビキタス」だろう。需要があるかないかわからないうちから政府が補助金を投入し、マスコミ先行でブームが盛り上がり、NTTや日立などの重厚長大企業が巨費を投じて「実証実験」をやる、というパターンもそっくりだ。

同じ失敗が繰り返されるのは、みんなサラリーマンで、失敗したら配置転換されてしまい、政府も企業も「失敗」という総括をしたくないので、教訓が継承されないからだ。愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶというが、せめて10年前の経験には学んでほしいものである。

Firefox 日本語版


Mozilla Firefox 1.0の日本語版の公式ページができた。メニューが日本語になるだけで、機能的には英語版と変わらないが、とりあえず正式版が出たのはめでたい。

非常に混んでいるので、本家のほうからダウンロードしたほうがいいかもしれない。

周波数争奪戦


総務省の第3回携帯周波数検討会が開かれ、800MHz帯の配分をめぐって議論が行われたようだ。

しかし、この記事に出ている「移行方針案」の図をみてもわかるように、区画整理で行く先の帯域に他の業者が入ってきたら、いま営業している業者はどこへ行けばよいのか。ソフトバンクなどのいうのは、要するに「割り当ては新規事業者だけにしろ」「既存業者は800MHz帯から立ち退け」という話だ。これはドコモもKDDIも、とても飲めないだろう。

1.7GHz帯の「開放」の中身も、よくわからない。総務省の資料によると、170MHzぐらい空いているように見えるが、日経新聞の報道では「30MHz(×2)を3Gに開放する」という話になっていた。残り100MHz以上は、何に使うのか。

最大の問題は、他の帯域はどうなっているのかということだ。MCAや防災無線などを「デジタル化」する作業も進んでいるようだが、そもそもこういう業務用無線が存在する意味があるのか。デジタル放送用と称して空いたままのUHF帯も含めて、周波数の総点検が必要だ。

インターネット・ガバナンス


私は、昔からこの意味不明な言葉がきらいなのだが、Vint Cerfも同じらしい。

もともとインターネットは「ネットワーク」ではなく、通信プロトコル(TCP/IP)にすぎない。だから、それによってコントロールできるのはアドレスやドメインネームぐらいのもので、ICANNがそれに目的を限定したのは正しかったのだ。それが知的財産権やら「デジタル・デバイド」やらにまで責任を負う理由はない。こういうのは、行政がインターネットに介入する口実にすぎない。

特に国連が旗を振っているWSISは、独裁国家の多い途上国が言論統制に悪用するおそれも強い。ドメインネームの問題も、もう一時ほど騒がれてもいないし、ITUがでしゃばるような問題でもない。アドレスが「枯渇」するとかいう話も、どこかに消えてしまった。「インターネット・ガバナンス」と称して議論されているのは、ネットワーク社会をめぐる世間話にすぎない。

政治的任命


日本の行政改革でよくいわれるのは、「各省庁の幹部に政治的任命を増やすべきだ」という議論だ。これは私も基本的には賛成だが、この点でもっとも極端な米国のケースをみると、「過ぎたるは及ばざるがごとし」という気もする。

イラク戦争の失敗の最大の原因は、諜報機関の情報がお粗末だったことだが、Seymore Hershの新著によれば、これは米国の官僚機構の欠陥に起因しているという。イラクが大量破壊兵器を持っていることは"slam dunk"だというCIA長官のいい加減な情報にもとづいて開戦の決定が行われたように、政権によって任命された幹部の結論は最初から決まっており、現場の情報はまったく無視されたのである。

日本では逆に「現場」の力が強すぎて、道路公団や郵政の民営化などでも、官邸と所管官庁が対決し、後者が実質的に押し切ってしまうことが多い。たぶん正解はこの中間だろうが、政権は選挙というチェックを受けるだけましだ・・・という議論も、今度の米大統領選挙の結果をみると、建て前論なのかもしれない。

RIETIの求人広告


けさの日経新聞に、経済産業研究所の「常勤研究員公募のお知らせ」が出ている。研究員が大量に抜けたあと集まらなくて、よほど困っているのだろう。まちがって応募する人がいると気の毒なので、条件を補足しておく:

  • 経産省の意向に反する政策提言を行った研究員は、懲戒処分を受ける。1年契約なので、雇用も保障されない。
  • 研究計画が承認されても、上司にきらわれると経費は支給されない。
  • 研究員の電子メールは、すべてシステム管理者に監視されている。問題のあるメールは、経産省の官房長まで転送される。
  • 研究所がいつまで存続するかも不明である。研究員の7割以上が辞めて、2006年までの「中期目標」を達成するのは不可能なので、統廃合される可能性が強い。

ベイジアン・フィルター


米議会や霞ヶ関では、「スパム防止法」が話題になっているが、私はスパムの問題はベイジアン・フィルターによって基本的に終わったと思う。代表的なのは、オープンソースのPOPFileで、最近はMozilla Thunderbirdなどにも標準装備されるようになった。

最初に数十通も振り分けると、ソフトウェアが自動的に学習し、1000通も受信すると、スパムの99%以上は排除できる。効率が悪い場合は、詳細設定で"unclassified weight"を10000ぐらいに上げればよい。あまり選別率を上げると、正しいメールが排除されるfalse positiveがたまに出るが、これもログが残るのでチェックできる。

ベイジアン・フィルターは、統計学で「ベイズの定理」とよばれる18世紀に発見された原理にもとづいている。ある単語(の組み合わせ)を含むメールがスパムである確率を、実際のスパムに含まれる単語を解析してアップデートするのだが、実際の役に立ったという話は聞いたことがない。原理は単純だが、解析の作業量が膨大になるからだ。

しかしメールのように入力と出力が単純で、コンピュータの処理能力が上がると、いくらでも高度な解析が可能になる。ニューラル・ネットなどを使えば、もっと効率的な学習ができるようになるかもしれない。

日本版FCC


5GHz帯についての答申案が出た。欧米並みに、レーダーの使っている帯域でも室内ではオーバーレイで無線LANを認めようというものだ。

5年前に今の「全面禁止」の方針が出たときも、批判が強かった。常識的に考えても、10mWの無線LANが数MWのレーダーに「干渉」することは考えられない。実測調査でも、レーダー画面に無線LANの部分で小さな点が出るだけだったが、審議会では「災害時に、もしものことがあったらどうするのか」という気象庁の主張が通ってしまった。

こういう議論をみていると、「日本版FCC」を作っても大した効果はないだろう。インカンバントの立場に立つ行政が、既得権をおかさない範囲でしか新規参入を認めないからだ。むしろ電気通信事業部や電波部の許認可権をなくし、Peter Huber(Law and Disorder in Cyberspace)のいうように、すべて裁判所やADR(紛争処理委員会)で決めたほうがいいのかもしれない。







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