中山素平氏

中山素平氏が亡くなった。GLOCOMの特別顧問だったので、たまに話すことがあった。私がRIETIに行くとき、「君のような曲がったことのきらいな性格では、役所なんて1年ももたないよ」といわれた。RIETIを辞めたあと、「3年もちましたよ」といったら笑っておられた。

去年の裁判のときも、一貫して私を応援してくださった。そのとき何度か話して、彼が「鞍馬天狗」といわれた所以がわかった。目の前の現象に右往左往せず、つねに大局を見ているということだ。結論を出すまでにはセカンド・オピニオンを聞いたりして慎重だが、いったん決めたらぶれない。

これは興銀が国策銀行だったころからのよき伝統だろう。目先の利害よりも「日本にとって何が大事か」という観点から考える。これは、大きな問題であればあるほど、なかなかできないことだ。だから90歳を超えてからも、政財界のトップがよく相談に来ていた。

新聞で、小林陽太郎氏がまるで中山氏の後継者のような顔をしてコメントしているが、彼は中山氏とは逆の経営者だ。騒ぎが起きると右往左往し、いったん決めた人事をひっくり返す。最近は断絶状態で、中山氏は「小林は閲兵式のときなどは見映えがするが、経営はだめだ」といっておられた。

インターネット・ガバナンスという「非問題」

チュニジアで行われていた国連のWSISは、幸い何も決めずに終わったようだ。中国などの主張する「インターネットを米国の独占にするな」という主張に、一時はEUが同調したが、結局「独占」の具体的な弊害は何か、という点で「国連派」の主張があやふやなため、今後は小規模な「フォーラム」で具体的な問題を話し合おうという形で、問題を先送りして終わった。

中国などの本音は、インターネットを政府の管理下において検閲しようということである。それを公式の場でいえないから、無内容な「独占の弊害」について延々と議論が行われてきた。こんな「非問題」を論じる場を(インターネットに何の権限もない)国連が開くのもおかしいし、そういうのに出て行くインターネット側のメンバーも不見識だ。こんなのはボイコットすべきだ。

第3世代

注目されていた携帯電話への新規参入は、1.7GHzでソフトバンクとeアクセス、2.0GHzでアイピーモバイルが決まった。意外にスムーズに決まったのは、総務省が参入の条件を「第3世代」に限定したため、それ以外の方式で申請したウィルコムと京セラが「門前払い」となったためだ。

しかし、なぜ3Gに限らなければならないのか。世界的にみると、総務省の想定しているW-CDMAやCDMA2000は多数派ではない。世界のマーケットの8割近くはGSMであり、欧州で普及しているのはGSMと互換性があって数百Mbps出るGPRSやEDGEである。これもITUが3Gと認めたので、3Gというのは、規格としてほとんど意味のない概念になってしまった。

ところが日本では、3Gを狭く定義しているため、GPRSもEDGEも3Gのなかに入っていない。これでは2Gのとき日本の業者をPDCに「統一」して失敗した歴史を繰り返すのではないか。

来週のICPFセミナーでは、アイピーモバイルの竹内取締役にも出席いただくことになったので、こうした問題も議論したい。

WiMAX

日本でも来年、WiMAXへの周波数割り当てが決まるもようだ。「IMT-2000プランバンド」だった2.5GHz帯にiBurstなどと一緒に認める方向だという。

WiMAXについては、実機が出る前から「携帯電話に取って代わる」という強気の見方と「有線では採算のとれない田舎むけ」という否定的な見方があるが、とにかくモノが出てきて、動かしてみないとわからない。

11/25のセミナーでは、このWiMAXの話題も取り上げる予定なので、関心のある向きはどうぞ。

NTT再々編(3)

11/7の記事は、私の早とちりだったようだ。きょう正式に発表された中期経営戦略によると、NTTコムに集約するのはISPなどのサービスだけで、IPインフラ(次世代ネットワーク)は全国一体で構築し、東西会社がもつようだ。

これでは、光ファイバーが政府の規制を受ける厄介な状況が今後も続くことになる。どうせなら、東西会社の子会社は規制の対象にならないのだから、IPインフラは子会社がもって、東西会社はLoopCo(0種会社)になったほうが自由度が上がると思うのだが、やはり「土管会社」になるのはいやなのだろうか。

第6回ICPFセミナーのお知らせ

「ワイヤレス・ブロードバンドをめぐる政策とビジネス」

スピーカー:中村秀治(三菱総合研究所 次世代社会基盤研究グループ・リーダー)
       竹内一斉(アイピーモバイル取締役)
モデレーター:真野浩(ルート株式会社 社長)

携帯電話に3社が参入し、話題のWiMAXにも周波数を割り当てる方針が打ち出されるなど、電波の世界が大きく動いています。総務省の「ワイヤレス・ブロードバンド推進研究会」では、こうした問題を含めて様々な議論が行なわれました。このセミナーでは、研究会のメンバーである中村さんと、今回 2.0GHz帯で携帯電話に参入する意向を表明したアイピーモバイルの竹内さんをお招きし、無線ブロードバンドの今後について考えます。

日時:11月25日(金)19:00~21:00
場所:東洋大学白山キャンパス 3号館3204教室(いつもと部屋が違います)
   東京都文京区白山5-28-20
   地下鉄三田線「白山」駅から徒歩5分
   地下鉄南北線「本駒込」駅から徒歩5分
入場料:2000円
    ICPF会員は無料(会場で入会できます)

申し込みはinfo@icpf.jpまで電子メールで(先着順で締め切ります)

NTT再々編(2)

読売新聞によれば、NTTグループのインターネット関連事業はNTTコムに集約するそうだ。これは、われわれの提唱してきた「NTT-IP」に近いが、インターネットを奪われた東西会社はどうなるのか。固定電話だけでやっていけるのか。

むしろ知りたいのは、固定電話をどう「清算」するかである。電話のユニバーサル・サービスが必要だというのなら、これは国営企業として切り離すしかない。

マルチチュード

古典的な名著『<帝国>』の続編の邦訳、『マルチチュード』(NHKブックス)が出た。しかし残念ながら、その出来は前著に遠く及ばない。

前著の弱点は、<帝国>に対峙するはずの「マルチチュード」の概念が抽象的で曖昧だということだった。著者もそれはわかっていたらしく、その部分を補うのが本書だが、上下巻600ページあまりを読んでも、その曖昧さは変わらない。

「反グローバリズム」運動を評価しているようなしていないような書き方で、具体的な運動論としてはほとんど何も書かれていない。「新自由主義」に対する批判も通俗的だし、知的財産権に対する批判も常識的だ。それに対置してインターネットやオープンソースがマルチチュードのモデルとして出てくるのも、「今ごろ気づいたの」という感じだ(私も前著の書評で書いた)。

そういうモデルがサブシステムとして成り立つことは、わかっている。問題は、それがグローバル資本主義の<帝国>に取って代われるような完結したシステムなのかどうかなのである。このへんについては、はっきりいって著者のどちらもインターネットを理解していないから、まったく議論になっていない。

地域IP網

朝日新聞によると、NTTは「地域IP網」をやめて全国一体の光ファイバー網を構築する方針だという。技術的には、当然のことだ。国境のないインターネットに県境を設けて、互いに接続もできないというネットワークは、世界にも例をみない。

競合各社は、最近のこうした動きを「NTTの再統合だ」と批判しているが、もう時代は変わったのだ。電話網のように長距離網と市内網がピラミッド型になっているネットワークなら、各市内網を切り離すことにも意味があるが、IP網はメッシュ型に構成するのがもっとも効率的だから、どのノードも切り離せないのだ。

シェアでみても、NTTが圧倒的に優位なのは、加入者線(銅線)だけである。その独占的行動を阻止するには、加入者線をNTTから切り離してはどうか。あとは普通の会社と同じように、独禁法で取り締まればよい。総務省の電気通信事業部を公取委に吸収すればよいのである。

クロムサイズ判決

情報通信政策フォーラムでも話題になったクロムサイズのテレビ共同受信設備「選撮見撮(よりどりみどり)」について、大阪地裁は販売差し止めを命じる判決を出した。それによれば、このシステムは
電気通信回線を通じて多数の利用者にサービスを提供することから、公衆用自動複製機械の使用に該当するとし、放送を送信可能化するものであると認定。集合住宅にシステムが設置された場合には、放送局の著作隣接権を侵害することがほぼ必然である
という。フォーラムでも議論したように、こういう情報を蓄積するコンピュータがすべて違法ということになったら、ホスティング・サーバやキャッシュ・サーバなどはすべて違法になる。こういう愚かな判決を出す裁判官は、コンピュータの知識がないのではないか。









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