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けさの日経新聞に、経済産業研究所の「常勤研究員公募のお知らせ」が出ている。研究員が大量に抜けたあと集まらなくて、よほど困っているのだろう。まちがって応募する人がいると気の毒なので、条件を補足しておく:

  • 経産省の意向に反する政策提言を行った研究員は、懲戒処分を受ける。1年契約なので、雇用も保障されない。
  • 研究計画が承認されても、上司にきらわれると経費は支給されない。
  • 研究員の電子メールは、すべてシステム管理者に監視されている。問題のあるメールは、経産省の官房長まで転送される。
  • 研究所がいつまで存続するかも不明である。研究員の7割以上が辞めて、2006年までの「中期目標」を達成するのは不可能なので、統廃合される可能性が強い。

ベイジアン・フィルター


米議会や霞ヶ関では、「スパム防止法」が話題になっているが、私はスパムの問題はベイジアン・フィルターによって基本的に終わったと思う。代表的なのは、オープンソースのPOPFileで、最近はMozilla Thunderbirdなどにも標準装備されるようになった。

最初に数十通も振り分けると、ソフトウェアが自動的に学習し、1000通も受信すると、スパムの99%以上は排除できる。効率が悪い場合は、詳細設定で"unclassified weight"を10000ぐらいに上げればよい。あまり選別率を上げると、正しいメールが排除されるfalse positiveがたまに出るが、これもログが残るのでチェックできる。

ベイジアン・フィルターは、統計学で「ベイズの定理」とよばれる18世紀に発見された原理にもとづいている。ある単語(の組み合わせ)を含むメールがスパムである確率を、実際のスパムに含まれる単語を解析してアップデートするのだが、実際の役に立ったという話は聞いたことがない。原理は単純だが、解析の作業量が膨大になるからだ。

しかしメールのように入力と出力が単純で、コンピュータの処理能力が上がると、いくらでも高度な解析が可能になる。ニューラル・ネットなどを使えば、もっと効率的な学習ができるようになるかもしれない。

日本版FCC


5GHz帯についての答申案が出た。欧米並みに、レーダーの使っている帯域でも室内ではオーバーレイで無線LANを認めようというものだ。

5年前に今の「全面禁止」の方針が出たときも、批判が強かった。常識的に考えても、10mWの無線LANが数MWのレーダーに「干渉」することは考えられない。実測調査でも、レーダー画面に無線LANの部分で小さな点が出るだけだったが、審議会では「災害時に、もしものことがあったらどうするのか」という気象庁の主張が通ってしまった。

こういう議論をみていると、「日本版FCC」を作っても大した効果はないだろう。インカンバントの立場に立つ行政が、既得権をおかさない範囲でしか新規参入を認めないからだ。むしろ電気通信事業部や電波部の許認可権をなくし、Peter Huber(Law and Disorder in Cyberspace)のいうように、すべて裁判所やADR(紛争処理委員会)で決めたほうがいいのかもしれない。

ヒラリー大統領?


次の民主党の大統領候補は、ヒラリー・クリントンでほぼ決まりだという。8年おいて息子が大統領になったと思えば、今度は妻とはね。16年後はローラ・ブッシュか、なんてくだらない冗談もいいたくなる。

日本でも、福田康夫氏が次の自民党総裁候補に擬せられているという。参入障壁が高いのか、それともまともな人材が政治家にならないのか、いずれにしても政治の「血縁化」現象は、世界共通の傾向のようだ。

海老沢バッシング


日放労が海老沢会長の退陣を要求したとか、日テレの氏家会長が「3期でやめろ」といったとか、NHKというより「海老沢バッシング」が盛り上がっている。私のところにも週刊誌などがコメントを求めてくるが、材料は末端職員の不祥事ばかりで、なんでこれが会長の責任問題になるのかわからない。

新聞協会は、またNHKの「商業化」を批判しているという。NHKの肥大化を批判するなら、なぜ郵貯のように「民営化しろ」という話が出てこないのか。それは、現在の民放の番組がひどすぎるからだ。いしいひさいちの漫画でいえば、レベルの低い「地底人」NHKが、それよりも低い「最底人」民放と闘っているという図である。

海老沢氏個人をたたいても意味がない。彼のようにテレビについての知識も経営能力もない人物が長期政権を続けられるのは、NHKが「国営」だからである。政府のごきげんをとるのが最大の仕事だから、彼のような政治部出身のロビイストがトップになるのだ。これは氏家氏をはじめ、民放もみんな同じである。

問題は、海老沢氏の資質でも「商業化」でもない。実質的に国営の放送局が11波も持っているという異常な状況であり、少なくとも一部を民営化しないかぎり、根本的な解決にはならない。民営化といっても、広告ではなく「視聴料」で運営するBSのような方式でやれば、質は落ちない。今回のスキャンダルをきっかけに、NHKの経営形態について議論してほしいものだ。

米国の遺伝子


米国の大統領選挙は、また土壇場まで混乱した。今回はさいわい民主党の「大人の判断」で何とか収まったが、あの奇妙な選挙制度が諸悪の根源だ。2000年のときは、ヒラリー・クリントンが直接投票で大統領を決めるという憲法改正を提案したが、ほとんど話題にもならなかった。それは、これがUnited Statesという米国の根本理念にかかわるものだからである。

もともと米国が独立戦争に勝ったあと、どういう憲法を作るかについては、意見がわかれていた。とくに大統領については、直接投票で選ぶべきだという連邦派の意見と、連邦議会が選ぶべきだという議院内閣制に近い意見がわかれ、両者の妥協として各州が独自に選挙人を選ぶ奇妙な方法が採用されたという(阿川尚之『憲法で読むアメリカ史』PHP新書)。

米国は、実は「最古の憲法」をもつ民主国家である。英国には(成文)憲法がないし、欧州の憲法は革命や戦争のたびに変わって、フランスなどは「第5共和制」だ。これに対して、米国憲法は(18世紀に表現の自由などを定めた修正条項が付け加えられた以外は)200年以上、ほとんど改正されていない。

この18世紀から引き継がれる「遺伝子」が、よくも悪くも米国の性格を決めている。独善的な単独行動主義も、銃による「自衛」も、そのDNAの一部だろう。あれほど大失敗をやったブッシュ大統領が再選されるのも、彼がそのDNAを持っている(ように見える)からではないか。

しかし司法や地方政府の権威の高さなど、このDNAには学ぶべきものも多い。なんとか「遺伝子組み換え」で、日本にもそういう面を導入できないだろうか。

モジラの逆襲?


Mozilla Firefoxのほぼ正式版が公開された。インターネット標準に準拠してないサイト(MSNなど)では、フォントの表示(とくに日本語)がちょっと変になることがあるが、ほとんど問題ない。

特に便利なのは、タブ・ブラウジングとRSSへの対応だ。RSSフィードできるサイトでは、タスクバーの右端に「RSS」と表示され、これをクリックしてブックマークに入れると、いちいちサイトまで行かなくてもブックマークを見ただけで更新情報がわかる。

RSSには多くのblogが対応しており、当blogも対応している。今のところ大手のサイトでRSSに対応しているのは、NYタイムズ、BBC、CNETなど少ないが、そのうちこれは標準的な仕様になるだろう。

脆弱性の問題もあいまって、IEのシェアは低下を続けているという(といっても90%以上だが)。これでIE固有の仕様に依存したサイトがなくなれば、Firefoxはもっと普及するだろう。

Gatewayの再参入


3年前に日本から撤退したGatewayが、日本にまた参入するそうだ。PCを縮小して家電に進出しようとしたが、それが失敗したので、またPCに「フォーカス」するという行き当たりばったりの戦略である。

こういういい加減な経営姿勢は、製品にもあらわれている。わが家では、撤退の直前にGatewayのノートパソコンを買ったが、これがひどいもので、2週間ぐらいでまともに起動しなくなった。修理しても、すぐだめになる。どうやらハードディスクが安物らしい。そうこうしているうちに撤退してしまい、修理だけは別の代理店でやってくれたが要領を得ず、また壊れたので捨てた。

値段からいうと、今ではデルのほうが安いし、こっちは何といっても頑丈だ。10年以上使っている(今は3代目)が、まったく故障がない。先月はじめてハードディスクが壊れたが、サポートも徹底的にやってくれる。コンパック(今はHP)も壊れやすく、サポートがいい加減だった。

とにかく、絶対の自信をもってデルをおすすめする。Gatewayはやめたほうがいい。

電波はタブーか


今日は文化放送の「斉藤一美のS/N/A/P」という番組に出演した。テーマは「携帯電話の料金はなぜこんなに高いのか」。例の孫氏の問題提起が大きなインパクトをもたらしたわけだ。

こっちは「電波はタブーだ」という意識が強いので、恐る恐る話したのだが、ディレクターは「なんでテレビだけが優遇されるのか」とか「デジタル・ラジオ放送なんて無意味だ」とか、電波行政に強い不満を持っていた。キャスターが本番で「周波数オークションをやるべきだ」といったのには驚いた。以前にCSの番組に出たときも、キャスターが「地上波デジタル放送には疑問がある」と私よりも強く批判していた。

つまり「電波のタブー」というのは、「地上波テレビ局とその系列の新聞社のタブー」にすぎないのだ。意外に、私の味方はたくさんいるのかもしれない。

音楽産業の実験


いま音楽産業で起こっている紛争は、そのうち映像にも、またあらゆるメディアにも起こるだろう。その意味で、音楽産業は「ポスト工業化社会」のルールの実験場である。

もっとも過激なのは、Boldrin-Levineなどの「知的財産権(intellectual monopoly)なんて廃止してしまえ」という意見だ。これに比べれば、ストールマンなどは、著作権を認めるぶん「穏健派」である。私は、彼らの議論にも一理あると思うが、これは現実の政策としては「弁護士資格を廃止しろ」というよりも非現実的だ。

私は、Economist誌のいうように、電機メーカーや携帯電話業者が独立レーベルやスタジオを垂直統合し、インターネット配信でプロモーションしてコンサートやハードウェアでもうけるというモデルのほうが現実的だと思う。

新曲や新作映画に投入される巨額の広告費は、実際にはあまり割りのあわないギャンブルである。P2Pに直撃されているのは、Utadaのくだらない新曲(米国ではチャートから消えたらしい)を大量宣伝で売りまくるといった大手レーベルの商法であり、世界で4社しかないという音楽業界の異常な「水平統合」なのだ。

DRMがTCP/IPのように標準化されれば、音楽や映像をアーティスト(あるいは独立レーベル)がHDDプレイヤー内蔵の携帯電話に直接オンライン配信するといったビジネスモデルが成立するかもしれない。ただ、その標準化を阻んでいるのも大手レーベルなのだが。

追記:この記事を書いたあとで、SONY/BMGがGroksterと提携するというニュースが出た。P2Pでサンプルを配信して、有料の正式版を売ろうというものだ。If you can't beat it, join it.







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