第三のビール


政府税調が、サッポロの「ドラフトワン」などの「第三のビール」の増税を決めたという。

このように、相手の投資がサンクコストになってから、事後的に不利な条件を持ち出すことを「ホールドアップ」という。こういうことが起こると事前にわかっていると、ビール会社は新商品の開発投資をしなくなり、経済全体に悪影響を与える。税調の石弘光会長は「税の秩序を乱す」とかいったそうだが、彼はもう経済学者を廃業したのだろうか。

問題は、第三のビールの税率が低いことではなく、ビールの税率が他のアルコール類に比べて高すぎることだ。「税の公平」をいうなら、ビールの税率をドラフトワンに合わせるべきなのである。



ゲーム理論


ゲーム理論が流行しているらしい。そういえば、最近、本屋で「ゲーム理論で経営に勝つ」みたいなタイトルをよく見るが、こういう本を読むのはやめたほうがいい。経済学を学んでも金がもうからないように、ゲーム理論を学んでもゲームに勝てるわけではない。それに経営学者の振り回すゲーム理論は、恐ろしくお粗末だ。

他方で「ゲーム理論批判」みたいなものも出てくるようになったが、これはもっと相手にしないほうがいい。金子勝に典型的にみられるように、もともとゲーム理論を理解していないのがほとんどだからである。そのなかで、竹田茂夫『ゲーム理論を読みとく』(ちくま新書)は、少なくとも著者が理論を理解しているだけでも救われる。

ただ、この本も「人間の行動は戦略的ではない」という類の超越的な批判で、経済学者が読んでも参考にはならない。経済学は、人間を利己的な個人として単純化する点に特長があるので、それを捨ててヴィトゲンシュタインだのハーバーマスだのといい出したら、本書のように何の結論も出ないのである。

大陸型と英米型

大陸型の「市民法」の影響の強い国よりも、英米型の「コモンロー」の国のほうが成長率が高いというShleiferたちの実証研究は有名だが、官僚制についても同じような類型がある。

Silberman, Cages of Reasonによると、日仏の官僚制度は中央集権・終身雇用・「組織特殊的」な技能形成などの特徴でよく似ており、英米の官僚制度は分権的・専門家志向・ローヤー中心という点で似ている。ここでも著者が指摘しているのは、実は米国の官僚制が「最古」だということで、英国の制度はそれに追随したものだという。各州ごとに政治・司法システムがばらばらにできたのをつなぎあわせたのが英米型で、それにあとから追いつくために国家に権力を集中して工業化を行うシステムが日仏型だというわけだ。

この2類型は、企業組織の「アーキテクチャ」についての一般的な類型にも対応している。Holmstrom-Milgrom(1994)などの「マルチタスク」モデルで知られているように、複数の業務に補完性がある場合、「強いインセンティヴと弱いコーディネーション」(英米型)か「弱いインセンティヴと強いコーディネーション」(大陸型)の組み合わせが望ましく、これ以外の組み合わせは安定な均衡にはならない。

この二つの均衡のどちらが最適になるかは環境に依存し、帝国主義の脅威に対抗して短期間に国家建設を行うには日仏型が向いていたという見方もありうる。ただ経済が成熟してくると、英米型の「モジュール的」な官僚制のほうが、柔軟にシステムを組み替えられるぶん有利になる。民間のほうはかなり「英米型」への移行が進んでいるが、行政の転換はこれからだ。

コンニャク問答


FTAで、コンニャクの関税率を下げるかどうかが「争点」の一つになっているそうだ。

20年ほど前にも、コンニャクが話題になったことがあった。日米貿易摩擦で、中曽根内閣が輸入拡大の「アクション・プログラム」を作ったときのことだ。通産省の担当者に「この計画で、黒字は減るんですか?」と質問したら、ニヤリと笑って「官邸がどこまで本気かは、コンニャクを見てればわかりますよ」という謎めいた答が返ってきた。調べてみてわかったが、コンニャクは群馬県の特産物なのだ。

それから20年。「大勲位」の引退で、ようやくコンニャクも聖域ではなくなったのだろうか。現在のコンニャクの関税率は990%・・・

民営化の手順


郵政公社の生田総裁が、竹中郵政民営化担当相に抗議の意見書を出したという。

業務範囲などに制約があっては他社と競争できないというのは、一般論としては正論だが、問題は、公社が実質1兆円も免税されて民間と競争するのが公正といえるのかということだ。これはNHKの「肥大化」問題と同じで、個別の業務について行政が監視するのではなく、経営を完全に民営化しないかぎり、公正競争は実現しない。

中途半端に政府から切り離して一挙手一投足を監視する「民営化」はNTTでも行われ、現在のようないびつな競争しか生まれなかった。このときも「分割」が争点になったが、企業の境界を決めることはもっとも重要な経営問題であり、これを自主的に決められないようでは、NTTのような「セミ民間企業」しかできない。

経営者が経営に100%の権限と責任を持たないかぎり、企業の経営はできない。生田氏が自由に競争したいのなら、まず公社という形態をやめ、法人税を収めるのが先である。この肝心の問題を曖昧にするから、いろいろ政府の介入が起こるのだ。ユニバーサル・サービスなどの問題は「デカップリング」して解決できる。

Hype cycle


先日、ある記者に「マルチメディアの歴史」についての話をしていたら、1985年ごろにはINSなどの「ニューメディア」が流行し、1995年ごろにはビデオ・オンデマンドなどの「マルチメディア」、というように、新技術が大規模に宣伝されては失敗するhypeが10年周期で起こっているのではないか、という話になった。

では2005年のhypeは何か、と考えてみると、明らかに「ユビキタス」だろう。需要があるかないかわからないうちから政府が補助金を投入し、マスコミ先行でブームが盛り上がり、NTTや日立などの重厚長大企業が巨費を投じて「実証実験」をやる、というパターンもそっくりだ。

同じ失敗が繰り返されるのは、みんなサラリーマンで、失敗したら配置転換されてしまい、政府も企業も「失敗」という総括をしたくないので、教訓が継承されないからだ。愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶというが、せめて10年前の経験には学んでほしいものである。

Firefox 日本語版


Mozilla Firefox 1.0の日本語版の公式ページができた。メニューが日本語になるだけで、機能的には英語版と変わらないが、とりあえず正式版が出たのはめでたい。

非常に混んでいるので、本家のほうからダウンロードしたほうがいいかもしれない。

周波数争奪戦


総務省の第3回携帯周波数検討会が開かれ、800MHz帯の配分をめぐって議論が行われたようだ。

しかし、この記事に出ている「移行方針案」の図をみてもわかるように、区画整理で行く先の帯域に他の業者が入ってきたら、いま営業している業者はどこへ行けばよいのか。ソフトバンクなどのいうのは、要するに「割り当ては新規事業者だけにしろ」「既存業者は800MHz帯から立ち退け」という話だ。これはドコモもKDDIも、とても飲めないだろう。

1.7GHz帯の「開放」の中身も、よくわからない。総務省の資料によると、170MHzぐらい空いているように見えるが、日経新聞の報道では「30MHz(×2)を3Gに開放する」という話になっていた。残り100MHz以上は、何に使うのか。

最大の問題は、他の帯域はどうなっているのかということだ。MCAや防災無線などを「デジタル化」する作業も進んでいるようだが、そもそもこういう業務用無線が存在する意味があるのか。デジタル放送用と称して空いたままのUHF帯も含めて、周波数の総点検が必要だ。

インターネット・ガバナンス


私は、昔からこの意味不明な言葉がきらいなのだが、Vint Cerfも同じらしい。

もともとインターネットは「ネットワーク」ではなく、通信プロトコル(TCP/IP)にすぎない。だから、それによってコントロールできるのはアドレスやドメインネームぐらいのもので、ICANNがそれに目的を限定したのは正しかったのだ。それが知的財産権やら「デジタル・デバイド」やらにまで責任を負う理由はない。こういうのは、行政がインターネットに介入する口実にすぎない。

特に国連が旗を振っているWSISは、独裁国家の多い途上国が言論統制に悪用するおそれも強い。ドメインネームの問題も、もう一時ほど騒がれてもいないし、ITUがでしゃばるような問題でもない。アドレスが「枯渇」するとかいう話も、どこかに消えてしまった。「インターネット・ガバナンス」と称して議論されているのは、ネットワーク社会をめぐる世間話にすぎない。

政治的任命


日本の行政改革でよくいわれるのは、「各省庁の幹部に政治的任命を増やすべきだ」という議論だ。これは私も基本的には賛成だが、この点でもっとも極端な米国のケースをみると、「過ぎたるは及ばざるがごとし」という気もする。

イラク戦争の失敗の最大の原因は、諜報機関の情報がお粗末だったことだが、Seymore Hershの新著によれば、これは米国の官僚機構の欠陥に起因しているという。イラクが大量破壊兵器を持っていることは"slam dunk"だというCIA長官のいい加減な情報にもとづいて開戦の決定が行われたように、政権によって任命された幹部の結論は最初から決まっており、現場の情報はまったく無視されたのである。

日本では逆に「現場」の力が強すぎて、道路公団や郵政の民営化などでも、官邸と所管官庁が対決し、後者が実質的に押し切ってしまうことが多い。たぶん正解はこの中間だろうが、政権は選挙というチェックを受けるだけましだ・・・という議論も、今度の米大統領選挙の結果をみると、建て前論なのかもしれない。







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