無線ブロードバンド

ライブドアに続いて、平成電電も無線LANを使ったブロードバンド・サービスに参入するという。こっちはWi-FiだけではなくWiMAXも組み合わせる予定だそうだ。

同じような構想は、1999年にソフトバンクとマイクロソフトが東電と一緒に「スピードネット」として打ち上げ、失敗した。その後も東電だけは一部の地域でサービスを続けているが、ビジネスとして成功とはいいがたい。無線LANで公衆無線を構築するというのは、世界的にみても成功例はほとんどない。6年間に技術が進歩したのだろうか。それとも何か秘策があるのだろうか。

第1回ICPFシンポジウム

第1回ICPFシンポジウム「通信と放送は融合できるか」

ブロードバンドの急速な普及にともなって、通信のインフラを使って映像を伝送する「通信と放送の融合」が、技術的には可能になってきました。しかし現実には、いろいろな権利関係などの障害が多く、なかなかビジネスとしては立ち上がりません。今回のシンポジウムでは、問題点を明らかにするとともに、その解決の方向を関係者との議論によってさぐります。

日時:7月29日(金)
場所:東洋大学 スカイホール(2号館16階)
    東京都文京区白山5-28-20 (地図
    地下鉄三田線「白山」駅から徒歩5分
    地下鉄南北線「本駒込」駅から徒歩5分
入場料 2000円(ICPF会員は無料)
申し込みは、info@icpf.jpまで電子メールで(先着順で締め切ります)

第1セッション 13:30-15:30
  「放送とインターネットの出会い」
  地上波放送の再送信をめぐって起きている問題を整理し、解決策を考えます。
出演:原淳二郎(ジャーナリスト)
   楜澤悟(クラビット社長室長)
   田中良拓(風雲友社長)
司会:池田信夫(ICPF事務局長)

第2セッション 15:45-17:45
  「著作権の処理をめぐって」
  融合の最大の障害である著作権などの権利処理の問題を考えます。
出演:林紘一郎(情報セキュリティ大学院大学副学長)
   春日秀文(弁護士)
   安東高徳(総務省情報通信政策課コンテンツ流通促進室課長補佐)
司会:山田肇(ICPF副代表)

情報技術と組織のアーキテクチャ

私の新しい本が、ようやくアマゾンにも入荷した。ただし1冊しかないらしいので、注文はお早めに。

今度の本は、博士論文を一般向けに書き直したものだが、ちょっととっつきにくいかもしれない。テーマとしては「アーキテクチャ」とか「モジュール化」とか、このごろ関心の持たれている問題を扱っているのだが、手法があまり正統的ではない経済理論なので、前半はややわかりにくい。面倒な理屈に興味のない人は、後半の政策の部分だけ読んでもらってもよい。後半はほとんど論文集なので、前半を飛ばしても読める。

BTの再編とNTTの再々編

BTのローカルループを子会社として分離することが決まった。欧州委員会でもローカルループ・アンバンドリングの方針が出されており、今後EU全域で同様の政策が実施されるだろう。

それに比べて、NTTのおかしな経営形態を是正しようという声は出てこない。肝心のNTTの和田社長が「再々編は議論しない」というのだから、事態が動くはずがない。この背景には、宮津社長の時代に再々編を持ち出したら、「完全分割論」が復活してきてヤブヘビになってしまったという体験がトラウマになっているらしい。

しかし、時代は大きく変わった。今のような効率の悪い電話時代の経営形態をいつまでも続けていては、「FTTH3000万世帯」もおぼつかない。NTTにも、その問題意識はあるようだ。東日本の三浦社長が持株の副社長に異動する人事は、来年の社長交代の布石とみられているが、新体制で打ち出す戦略を1年かけて考えるということだろう。

ただ、今度は前回のようにNTT法をいじるというだけの話にとどまらず、通信と放送の垣根を超えてブロードバンド時代のインフラとコンテンツをどう供給するのか、という大きな枠組で考えてほしいものだ。規制改革・民間開放会議でも「通信と放送の融合」がテーマにあがるようだから、NTTも思い切った政策提言をしてはどうだろうか。

経産省の裏金

経産省の官房企画室長が「裏金」を私的に流用してカネボウなどに投資していたという事件が表に出た。しかも、彼は2900万円引き継いだのに、後任には1500万円しか引き継がなかったというから、これは横領だろう。諭旨免職ですむとは思えない。

この中富という企画室長は、仕事の面でも問題が多かった。彼が官房とRIETIの連絡役だったのに、ほとんどその機能を果たさず、本省とRIETIの関係がギクシャクする原因になった。彼の上司だった北畑経産局長(当時の官房長)も「監督不行き届き」として戒告処分を受けたが、彼が知らなかったとは考えられない。官房企画室長というのは、官房長と一体で仕事をする要職で、「あのポジションは技官では無理だ」といわれていた。

官房長が産業再生機構にさからってカネボウの「自主再建」を画策する一方で、その部下がカネボウで利殖に励むとは、とんだコンビである。インサイダー取引の疑いもある。しかし結果的には、カネボウの株価が上がったのは、経産省の工作が失敗したためだから、「ケガの功名」というべきか。

光ファイバー開放義務

NTTの光ファイバーには、世界でも他に例をみないきびしい開放義務が課せられている。このような過剰規制は設備投資のインセンティヴを低下させる・・・というのが教科書的な経済学による理解だが、実際にはNTTは「2010年までに3000万世帯」と意欲満々だ。

これはおかしい。何か政府と密約(たとえば何年後には開放義務をはずすとか)があるのではないか――と米国からNTTに調査に来たそうだ。たぶん答はYes & No。そのうち「空気」が変わってきたら規制をはずす、という「暗黙の契約」があるのだろう。

しかし私は、現在の規制はNTTよりも競争相手の設備投資インセンティヴをそいでいる(NTTのインフラを借りたほうが安い)点でよくないと思う。彼らがいつまでもNTTのインフラにぶら下がっていると、また光でもNTTが支配的事業者になり、電話時代と同じような「寄生的競争」になってしまう。開放義務は解除し、設備ベースで対等に競争するのが本筋だ。

デジタル放送の再送信

日本では、テレビ局が地上波の番組のIPによる再送信を認めないが、日経ITProの記事によると、米国のテレビ局は積極的に通信インフラを利用しようとし、通信会社のほうも放送の再送信をブロードバンド・サービスの目玉にしようとしているという。

この背景には、ケーブルテレビをめぐる状況の違いがある。米国のテレビ局は、難視聴対策をケーブルに頼ったため、今では8割の視聴者がケーブルでテレビを見ている。電波をいくらデジタル化しても、ケーブルが配信してくれなければ意味がないので、通信会社に頼らざるをえない。

他方、日本ではケーブルを規制して弱体化したため、地上波の独占が維持できた。ここでIP再送信を認めたりしたら、米国の二の舞になる、というわけだ。しかし地上デジタルで全国をカバーするには、こうした通信網も使わざるをえないだろう。意外に、地上デジタルが通信と放送の融合のきっかけになるかもしれない。

第3回ICPFセミナー

今日のセミナーも、立ち見の出る大盛況だった。通信と放送の融合を放送業界がどう見ているか、について『月刊NEW MEDIA』編集長の吉井勇さんに話してもらった。

再送信の問題などでテレビ業界がもっとも恐れているのは、映像が勝手に編集されたりコマーシャルが抜かれたりすることだという。ケーブルテレビのように電波のまま再送信するならいいが、インターネットに出てしまうと何をされるかわからない、というわけだ。

それでいて、地上デジタル放送で全国の85%もカバーするのは無理だから、IPによる再送信の実験もしているという。それなら栄村の実験などは、妨害しないでむしろ協力すべきだろう。逆にいえば、こういう方向でwin-winの解を見出すことは、それほど困難ではないような気がする。

Sharing Economy

Yochai Benklerの論文"Sharing Nicely"は、これまでに比べて「共有」の重要性についての主張が控えめになっている。オープンソースのような共有システムは、市場メカニズムをくつがえす存在という感じではなく、市場と共存でき、ある場合には市場や企業よりすぐれた一つの「モード」だという評価になっている。

これは一般論としてはそのとおりだが、問題はどういう場合に市場が、どういう場合に共有が望ましいのかという場合わけをすることだろう。そのへんの経済学的なロジックが弱い(法学の論文だからしかたがないが)。これでは経済学者を説得できない。

むしろ、彼もBusinessWeekのインタビューでいっているように、共有モードは急成長中で、まだ通常の経済メカニズムと比べられるほど安定したシステムではないのだろう。

放送村

仕事の都合で『NHK:問われる公共放送』(岩波新書)を読んだが、予想どおりつまらなかった。終戦直後のことなどはよく知らなかったので、資料としては役に立つが、結論は「経営の公開」とか「ジャーナリスト魂」云々といういつものお題目だ。デジタル化についても、BBCのようにSDTVでやれという。

要するに、こういう「放送評論家」の人々も、放送業界の連中と同様、「放送村」の中しか見ていないのだ。ジャーナリズムを支える産業的・技術的な「下部構造」の変化に気づいていないから、十年一日の精神論になってしまう。村そのものが消滅する過程がすでに始まっているということに、彼らは気づかないのだろうか。

それでいて、録画ネットやクロムサイズのようなマージナルなビジネスにも、いちいち訴訟を起こすのは、放送が通信に飲み込まれることを恐れているからなのだろう。こういう後ろ向きの対応だけはすばやいというのも、困ったものだ。







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