Hype cycle


先日、ある記者に「マルチメディアの歴史」についての話をしていたら、1985年ごろにはINSなどの「ニューメディア」が流行し、1995年ごろにはビデオ・オンデマンドなどの「マルチメディア」、というように、新技術が大規模に宣伝されては失敗するhypeが10年周期で起こっているのではないか、という話になった。

では2005年のhypeは何か、と考えてみると、明らかに「ユビキタス」だろう。需要があるかないかわからないうちから政府が補助金を投入し、マスコミ先行でブームが盛り上がり、NTTや日立などの重厚長大企業が巨費を投じて「実証実験」をやる、というパターンもそっくりだ。

同じ失敗が繰り返されるのは、みんなサラリーマンで、失敗したら配置転換されてしまい、政府も企業も「失敗」という総括をしたくないので、教訓が継承されないからだ。愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶというが、せめて10年前の経験には学んでほしいものである。

Firefox 日本語版


Mozilla Firefox 1.0の日本語版の公式ページができた。メニューが日本語になるだけで、機能的には英語版と変わらないが、とりあえず正式版が出たのはめでたい。

非常に混んでいるので、本家のほうからダウンロードしたほうがいいかもしれない。

周波数争奪戦


総務省の第3回携帯周波数検討会が開かれ、800MHz帯の配分をめぐって議論が行われたようだ。

しかし、この記事に出ている「移行方針案」の図をみてもわかるように、区画整理で行く先の帯域に他の業者が入ってきたら、いま営業している業者はどこへ行けばよいのか。ソフトバンクなどのいうのは、要するに「割り当ては新規事業者だけにしろ」「既存業者は800MHz帯から立ち退け」という話だ。これはドコモもKDDIも、とても飲めないだろう。

1.7GHz帯の「開放」の中身も、よくわからない。総務省の資料によると、170MHzぐらい空いているように見えるが、日経新聞の報道では「30MHz(×2)を3Gに開放する」という話になっていた。残り100MHz以上は、何に使うのか。

最大の問題は、他の帯域はどうなっているのかということだ。MCAや防災無線などを「デジタル化」する作業も進んでいるようだが、そもそもこういう業務用無線が存在する意味があるのか。デジタル放送用と称して空いたままのUHF帯も含めて、周波数の総点検が必要だ。

インターネット・ガバナンス


私は、昔からこの意味不明な言葉がきらいなのだが、Vint Cerfも同じらしい。

もともとインターネットは「ネットワーク」ではなく、通信プロトコル(TCP/IP)にすぎない。だから、それによってコントロールできるのはアドレスやドメインネームぐらいのもので、ICANNがそれに目的を限定したのは正しかったのだ。それが知的財産権やら「デジタル・デバイド」やらにまで責任を負う理由はない。こういうのは、行政がインターネットに介入する口実にすぎない。

特に国連が旗を振っているWSISは、独裁国家の多い途上国が言論統制に悪用するおそれも強い。ドメインネームの問題も、もう一時ほど騒がれてもいないし、ITUがでしゃばるような問題でもない。アドレスが「枯渇」するとかいう話も、どこかに消えてしまった。「インターネット・ガバナンス」と称して議論されているのは、ネットワーク社会をめぐる世間話にすぎない。

政治的任命


日本の行政改革でよくいわれるのは、「各省庁の幹部に政治的任命を増やすべきだ」という議論だ。これは私も基本的には賛成だが、この点でもっとも極端な米国のケースをみると、「過ぎたるは及ばざるがごとし」という気もする。

イラク戦争の失敗の最大の原因は、諜報機関の情報がお粗末だったことだが、Seymore Hershの新著によれば、これは米国の官僚機構の欠陥に起因しているという。イラクが大量破壊兵器を持っていることは"slam dunk"だというCIA長官のいい加減な情報にもとづいて開戦の決定が行われたように、政権によって任命された幹部の結論は最初から決まっており、現場の情報はまったく無視されたのである。

日本では逆に「現場」の力が強すぎて、道路公団や郵政の民営化などでも、官邸と所管官庁が対決し、後者が実質的に押し切ってしまうことが多い。たぶん正解はこの中間だろうが、政権は選挙というチェックを受けるだけましだ・・・という議論も、今度の米大統領選挙の結果をみると、建て前論なのかもしれない。

RIETIの求人広告


けさの日経新聞に、経済産業研究所の「常勤研究員公募のお知らせ」が出ている。研究員が大量に抜けたあと集まらなくて、よほど困っているのだろう。まちがって応募する人がいると気の毒なので、条件を補足しておく:

  • 経産省の意向に反する政策提言を行った研究員は、懲戒処分を受ける。1年契約なので、雇用も保障されない。
  • 研究計画が承認されても、上司にきらわれると経費は支給されない。
  • 研究員の電子メールは、すべてシステム管理者に監視されている。問題のあるメールは、経産省の官房長まで転送される。
  • 研究所がいつまで存続するかも不明である。研究員の7割以上が辞めて、2006年までの「中期目標」を達成するのは不可能なので、統廃合される可能性が強い。

ベイジアン・フィルター


米議会や霞ヶ関では、「スパム防止法」が話題になっているが、私はスパムの問題はベイジアン・フィルターによって基本的に終わったと思う。代表的なのは、オープンソースのPOPFileで、最近はMozilla Thunderbirdなどにも標準装備されるようになった。

最初に数十通も振り分けると、ソフトウェアが自動的に学習し、1000通も受信すると、スパムの99%以上は排除できる。効率が悪い場合は、詳細設定で"unclassified weight"を10000ぐらいに上げればよい。あまり選別率を上げると、正しいメールが排除されるfalse positiveがたまに出るが、これもログが残るのでチェックできる。

ベイジアン・フィルターは、統計学で「ベイズの定理」とよばれる18世紀に発見された原理にもとづいている。ある単語(の組み合わせ)を含むメールがスパムである確率を、実際のスパムに含まれる単語を解析してアップデートするのだが、実際の役に立ったという話は聞いたことがない。原理は単純だが、解析の作業量が膨大になるからだ。

しかしメールのように入力と出力が単純で、コンピュータの処理能力が上がると、いくらでも高度な解析が可能になる。ニューラル・ネットなどを使えば、もっと効率的な学習ができるようになるかもしれない。

日本版FCC


5GHz帯についての答申案が出た。欧米並みに、レーダーの使っている帯域でも室内ではオーバーレイで無線LANを認めようというものだ。

5年前に今の「全面禁止」の方針が出たときも、批判が強かった。常識的に考えても、10mWの無線LANが数MWのレーダーに「干渉」することは考えられない。実測調査でも、レーダー画面に無線LANの部分で小さな点が出るだけだったが、審議会では「災害時に、もしものことがあったらどうするのか」という気象庁の主張が通ってしまった。

こういう議論をみていると、「日本版FCC」を作っても大した効果はないだろう。インカンバントの立場に立つ行政が、既得権をおかさない範囲でしか新規参入を認めないからだ。むしろ電気通信事業部や電波部の許認可権をなくし、Peter Huber(Law and Disorder in Cyberspace)のいうように、すべて裁判所やADR(紛争処理委員会)で決めたほうがいいのかもしれない。

ヒラリー大統領?


次の民主党の大統領候補は、ヒラリー・クリントンでほぼ決まりだという。8年おいて息子が大統領になったと思えば、今度は妻とはね。16年後はローラ・ブッシュか、なんてくだらない冗談もいいたくなる。

日本でも、福田康夫氏が次の自民党総裁候補に擬せられているという。参入障壁が高いのか、それともまともな人材が政治家にならないのか、いずれにしても政治の「血縁化」現象は、世界共通の傾向のようだ。

海老沢バッシング


日放労が海老沢会長の退陣を要求したとか、日テレの氏家会長が「3期でやめろ」といったとか、NHKというより「海老沢バッシング」が盛り上がっている。私のところにも週刊誌などがコメントを求めてくるが、材料は末端職員の不祥事ばかりで、なんでこれが会長の責任問題になるのかわからない。

新聞協会は、またNHKの「商業化」を批判しているという。NHKの肥大化を批判するなら、なぜ郵貯のように「民営化しろ」という話が出てこないのか。それは、現在の民放の番組がひどすぎるからだ。いしいひさいちの漫画でいえば、レベルの低い「地底人」NHKが、それよりも低い「最底人」民放と闘っているという図である。

海老沢氏個人をたたいても意味がない。彼のようにテレビについての知識も経営能力もない人物が長期政権を続けられるのは、NHKが「国営」だからである。政府のごきげんをとるのが最大の仕事だから、彼のような政治部出身のロビイストがトップになるのだ。これは氏家氏をはじめ、民放もみんな同じである。

問題は、海老沢氏の資質でも「商業化」でもない。実質的に国営の放送局が11波も持っているという異常な状況であり、少なくとも一部を民営化しないかぎり、根本的な解決にはならない。民営化といっても、広告ではなく「視聴料」で運営するBSのような方式でやれば、質は落ちない。今回のスキャンダルをきっかけに、NHKの経営形態について議論してほしいものだ。







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