Negroponte Switch

かつてMITのNegroponteは「将来は今までとは逆に、電話が無線になり、テレビが有線になるだろう」と予言した。この前半は携帯電話によって現実になったが、デジタル放送が光ファイバーで行われれば、後半も実現することになる。

AEIのHazlettは2001年に、放送のデジタル化を電波ではなくケーブルでやるNegroponte Switchを提案した。米国では、視聴者の9割近くがケーブルテレビを見ているのだから、デジタル化はケーブルでやり、UHF帯は空けるべきだというのだ。

同じことが、日本にもいえる。NTTの目標とする「2010年までに3000万世帯に光ファイバー」が完全に達成できなくても、4年で1300万世帯を超えたDSLと合わせれば、2011年には8割以上の家庭がブロードバンドでカバーできるだろう(残りはCSでカバーすればよい)。政府の規制改革・民間開放会議でも「デジタル化はネットでやり、電波は不足している携帯に空けろ」という意見が出ているという。

「アナアナ変換」に計上された1800億円の国費は、この対策費に使えばよい。これによってUHF帯を空けることができるなら、安いものだ。ローカル民放は、被害者意識をもつ必要はない。デジタル放送がIPになれば、今は実質的に5社しかない全国放送の民放が127社に増え、制作能力のあるローカル局にとってはチャンスなのである。

民放ローカル局

地上デジタルのIP配信について、民放連は「域外の放送が見られないようにする技術が確立していなければ流さない」方針だという。IPでキー局の放送が全国で見られるようになれば、それを中継するローカル局の営業が成り立たなくなるからだ。

これは本末転倒である。キー局の番組が直接みられるなら、それを垂れ流すだけのローカル局はいらない。ローカル局はローカルサービスに徹してもよいし、全国放送を流してキー局と対等に競争してもよいのだ。

総務省は、この民放連の方針を前提にして地域限定の「実証実験」を行う予定と伝えられるが、視聴者の選択の幅をわざわざせばめる技術に(ローカル局の延命以外の)どういう意味があるのか。総務省は、業者の側に立つのか視聴者の側に立つのかが問われる。

地上デジタルのIP配信

総務省が、地上デジタル放送の光ファイバー配信を認める方針だという。これは、私が7年前から主張してきたことである。こんな自明の事実を政府が今ごろやっと認めたのは遅すぎるけれど、認めないよりはましだ。

今のところ、電波を使うか光ファイバーを使うかは放送局にまかすことになっているらしいが、これはおかしい。ファイバーで配信できるなら、電波はいらないので、免許は返上すべきだ。これはキー局も同じで、最初からIP配信にして、UHF帯はすべて無線LANや携帯電話に空けるべきだ。ICPFのシンポジウムでも、この問題は論じる予定である。

NHK民営化

内閣府の規制改革・民間開放会議の中間答申にNHKの「有料放送化」が盛り込まれる方向だという。デジタル放送になれば、スクランブルをかけるのは当然であり、不払いの激増による不公平感を払拭する意味でも、避けて通れない問題だ。

NHKが普通のペイテレビになれば、「市場の声に耳を傾けなければならない仕組み」すなわち民間企業になるのが自然だろう。最終答申でそこまで踏み込んだ結論が出るのかどうかわからないが、これまでタブーになっていたこの問題に言及しただけでも意義がある。NHKの「懇談会」でもスクランブル化の方向が検討されるようだが、そうなれば受信料制度そのものの見直しに発展することは必至だ。

逆囚人のジレンマ

道路公団をめぐる談合事件は、元理事が逮捕されるに至り、公団職員の関与も疑われている。しかし財界の動きはにぶく、経団連の奥田会長も「長年の慣習で、簡単にはやめられない」などと歯切れがよくない。これは談合に(少なくとも主観的には)一種の合理性があることを示唆している。

談合は、ゲーム理論でおなじみの「フォーク定理」で合理的に説明できる。1回かぎりの入札では抜け駆けで得をしても、それによって業界から追放され、指名入札に入れてもらえなくなったら、長期的には損をするからだ。しかし談合の場合には、この「サブゲーム完全均衡」は犯罪であり、ばれたら全員が最悪の状態になる。つまりここでは、通常の囚人のジレンマとは逆に、非常にリスクの大きな「協力」=談合に全員がトラップされているのである。

こういう「逆囚人のジレンマ」を壊すのは簡単である。すべての工事を一般競争入札にして、抜け駆けできるアウトサイダーを入れればいいのだ。しかしこういう解決法では、手抜き工事が行われる可能性があるので、工事の監視をきびしくするなどの事後的な行政コストが高くなる。談合は、業界内で互いに監視して品質を管理する役割もになっていたわけだ。

こういう「自主監視」のしくみは、終戦直後のような混乱した時期には必要だったかもしれない。しかし工事の質が上がり、行政による監視も厳重になった現在では、談合の積極的な意味はもう失われたのだ。奥田会長のいう「自由競争にしたら弱い会社が生き残れない」というのは理由にならない。競争が長期的には会社を強くすることは、トヨタがいちばんよく知っているはずだ。

天下り

経団連がよびかけていた「天下り自粛」は、会議に提案もされずに引っ込められた。橋梁談合をきっかけに、トヨタなどの「国際派」企業が言い出した改革は、「国内派」の抵抗によって、あえなく腰くだけになってしまったわけだ。

「人材の官民交流は必要だ」というのが抵抗勢力の言い分らしい。米国にもrevolving doorがあるじゃないか、というのはよく聞く擁護論だ。しかし、両者には決定的な違いがある。米国では、大臣官房の秘書課が再就職の世話をしたりしないということだ。

官僚が個人の実力で民間に再就職するのは望ましいことだし、若手官僚にも増えている。問題は、官庁の権限を背景にして再就職の斡旋をすることだ。官民の人材交流は大いに奨励し、その代わり役所による斡旋は法律で禁止してはどうだろうか。

Googleツールバー

Firefox用のGoogleツールバー(ベータ版)がリリースされたが、まだ問題があるので、使うことはおすすめできない。

普通にインストールすると、Googleの窓のついたバーが出てくるが、Firefoxの場合にはもともと右上に窓があるので、余計だ。さらに余計なのは「マウスオーバー辞書」というやつで、ウェブで英文を読んでいると、その訳語がマウスのポインタの横にいちいち出てきてうるさいので、オフにした。結局、機能は何も使っていないが、アンインストールできない。

無線ブロードバンド

ライブドアに続いて、平成電電も無線LANを使ったブロードバンド・サービスに参入するという。こっちはWi-FiだけではなくWiMAXも組み合わせる予定だそうだ。

同じような構想は、1999年にソフトバンクとマイクロソフトが東電と一緒に「スピードネット」として打ち上げ、失敗した。その後も東電だけは一部の地域でサービスを続けているが、ビジネスとして成功とはいいがたい。無線LANで公衆無線を構築するというのは、世界的にみても成功例はほとんどない。6年間に技術が進歩したのだろうか。それとも何か秘策があるのだろうか。

第1回ICPFシンポジウム

第1回ICPFシンポジウム「通信と放送は融合できるか」

ブロードバンドの急速な普及にともなって、通信のインフラを使って映像を伝送する「通信と放送の融合」が、技術的には可能になってきました。しかし現実には、いろいろな権利関係などの障害が多く、なかなかビジネスとしては立ち上がりません。今回のシンポジウムでは、問題点を明らかにするとともに、その解決の方向を関係者との議論によってさぐります。

日時:7月29日(金)
場所:東洋大学 スカイホール(2号館16階)
    東京都文京区白山5-28-20 (地図
    地下鉄三田線「白山」駅から徒歩5分
    地下鉄南北線「本駒込」駅から徒歩5分
入場料 2000円(ICPF会員は無料)
申し込みは、info@icpf.jpまで電子メールで(先着順で締め切ります)

第1セッション 13:30-15:30
  「放送とインターネットの出会い」
  地上波放送の再送信をめぐって起きている問題を整理し、解決策を考えます。
出演:原淳二郎(ジャーナリスト)
   楜澤悟(クラビット社長室長)
   田中良拓(風雲友社長)
司会:池田信夫(ICPF事務局長)

第2セッション 15:45-17:45
  「著作権の処理をめぐって」
  融合の最大の障害である著作権などの権利処理の問題を考えます。
出演:林紘一郎(情報セキュリティ大学院大学副学長)
   春日秀文(弁護士)
   安東高徳(総務省情報通信政策課コンテンツ流通促進室課長補佐)
司会:山田肇(ICPF副代表)

情報技術と組織のアーキテクチャ

私の新しい本が、ようやくアマゾンにも入荷した。ただし1冊しかないらしいので、注文はお早めに。

今度の本は、博士論文を一般向けに書き直したものだが、ちょっととっつきにくいかもしれない。テーマとしては「アーキテクチャ」とか「モジュール化」とか、このごろ関心の持たれている問題を扱っているのだが、手法があまり正統的ではない経済理論なので、前半はややわかりにくい。面倒な理屈に興味のない人は、後半の政策の部分だけ読んでもらってもよい。後半はほとんど論文集なので、前半を飛ばしても読める。







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