スターリン批判を批判した丸山眞男

P_20171025_114609立憲民主党は、万年野党にしかなれない戦後左翼の末期症状である。多くの先進国でも戦後の左翼の出発点は似たようなものだったが、現実を見て成長してきた。日本の左翼だけが「永遠の幼年期」にとどまっているのはなぜだろうか。

初期にはソ連についての正しい情報が入ってこなかったため、やむをえない面もあったが、1956年のスターリン批判で粛清の実態が明らかになった。ところが丸山眞男は『世界』1956年11月号に「『スターリン批判』の批判」という論文を書き、このタイトルはスターリン批判に反論するものとも読めるので批判を浴びた。

これは大幅に改稿されて『現代政治の思想と行動』に「スターリン批判における政治の論理」として掲載されたが、原論文は『丸山眞男集』にも収録されていない。その内容はスターリンを擁護するものではないが、改稿の跡をたどると、彼の社会主義に対するシンパシーの原因は、情報不足よりも根本的な問題にあったことがわかる。

続きは10月30日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンでどうぞ。

東芝の「複合危機」を見えなくした社内政治

東芝の悲劇
東芝の経営危機については多くの本が出ているが、そのほとんどは原子力村と組んだ西田社長の「敗戦」という類の話だ。本書はそういう勧善懲悪とは違い、経営陣の社内政治が複合的な危機を隠して問題を大きくしたことを明らかにしている。

その病根は西田社長ではなく、彼を指名した西室社長だというのが著者の見立てである。1990年代に方向を見失って業績が低迷していた東芝に「グローバル化」という方向づけをしたのが、海外営業出身の西室氏だった。グローバル化なんて戦略ではないのだが、ドメスティックな経営者の多い中で、英語ができるだけでも重宝された。

ソニーも90年代末に、同じような経緯で海外営業出身の出井社長を選んだ。文系で傍流の西室氏にとって出井氏はライバルであり、お手本でもあった。求心力の弱さを補う社内カンパニーや執行役員など、経営手法も似ていたが、中身は親分子分の関係だった。西室氏が(中継ぎの岡村氏の次に)後継者にしたのは、同じ海外営業出身の西田社長だった。

西田氏は海外法人でパソコン部門を建て直した功績で社長に抜擢された、というのが一般的な見方だが、彼が統括だったころからパソコン部門では「バイセル取引」による会計操作が日常化し、西田氏の業績回復も粉飾のおかげだったという。

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アルゼンチン政府はなぜ借金を返せなかったのか

総選挙は希望の党のひとり負けで、安倍政権の信任投票のようなものだった。これ自体は国際情勢が不安定な中で結構なことだが、首相が勝利の弁で「プライマリーバランス(PB)を無理やり黒字化して、アルゼンチンは次の年にデフォルトになった」といったのはおかしい。

これを土居丈朗氏が指摘しているが、「PBを無理やり黒字化したから次の年に債務不履行になったのではない。債務不履行を避けようとPBを黒字にした」というのもおかしい。図のようにアルゼンチンは2014年にデフォルトになったが、その前からPBはずっと赤字である。

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【更新】「新たな民政党」が必要だ

日本政治「失敗」の研究 (講談社学術文庫)
総選挙は予想どおり自公政権の現状維持で、安倍3選も視野に入ったが、泡沫だった立民党が勝って55年体制に回帰し、政治的には「1回休み」である。本書は戦前の政党政治について書いたものだが、日本にまともな野党が育つ条件を考えている。

立憲政友会は政府と一体の御用政党だったので、民間を代表する政党が必要だった。一つの可能性はヨーロッパ型の社民政党だが、これはうまく行かなかった。当時の日本はまだ農業国で、労働者がそれほど大きな政治力をもっていなかったからだ。

もう一つはイギリスのホイッグに近い自由主義の政党だ。これが1927年に浜口雄幸の結成した立憲民政党で、その理念は、議会中心政治、軍縮、健全財政だった。彼らの集票基盤は地主や財閥などの高額納税者だったので、政友会が「税金を使う党」だとすると、民政党は「納税者の党」だった。

日本に欠けているのは(将来世代の負担も含む)納税者の立場から政治を効率化する政党だ。それを実現するのは投票率の低い若者ではなく、厚生年金や健康保険の負担に苦しむ企業かもしれない。少なくとも民政党には、その可能性があった。

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いま大きな政府か将来もっと大きな政府か

きょうの選挙はあいにくの台風で、小池百合子氏の逃亡した希望は惨敗、プチバブルだった立民も50議席がせいぜいだろう。それより問題なのは、日本の政治にまともな選択肢がないことだ。8月の記事の図を更新すると、今の対立軸はこんな感じだろう。


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中島岳志氏の恥ずかしい「パターナル国家」

中島岳志氏のインタビュー(聞き手は江川紹子氏)は立憲民主党が「理性に対する謙虚さを持つ保守を打ち出しつつ、セーフティーネットを構築していこうというリベラル」だという応援演説だが、おもしろいのは(江川氏の描いた)次の図である。

キャプチャ


中島氏によると「リベラルは、個人の内面の問題について国家が踏み込まないのが基本。その反対語は保守ではなく、パターナルです。権威主義ですね」という。彼は大学でもこう教えているのだろうか。学生から「先生、paternalというのは意味が違うんじゃないでしょうか」という質問は出なかったのだろうか。これは「父親の」とか「父系の」という意味であり、「権威主義の」という意味はない。それはpaternalisticという別の言葉である。

まぁそれは大した問題ではない。本質的に間違っているのは、彼の「自民党政権は、権威主義的でかつ小さな政府です。90年代以降の改革によって、日本はすでに小さすぎる政府になっています」という話だ。確かに租税負担率は26.1%とアメリカに次いで低いが、それは日本政府が「小さすぎる」からではない。社会保険料や財政赤字などの「見えない税」が大きいからだ。そしてそれは今後10年で激増し、日本は世界でもっともpaternalisticな国になるのだ。

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日本人はなぜ55年体制が好きなのか



昨夜の言論アリーナ(放送事故で申し訳ありません)でも話したことだが、今回の総選挙は55年体制への先祖返りになるだろう。かつて社会党は、国会の1/4前後の議席をもって自民党の憲法改正を阻止する力があったが、立憲民主党はたかだが50議席で、万年野党以外の何者にもなれない「劣化社会党」である。

自民党が農村部で圧倒的に強かったときは、それに対抗する理念は社会主義だった。野党を支持した人々の動機は明らかな貧しさであり、後進国の日本で労働者が豊かになる道は公平な再分配しかないと知識人は考えた。農村から都会に入ってきたサラリーマンも美濃部都政などの革新自治体を支持し、朝日新聞などのマスコミも一貫して社会党支持だった。

それは1960年代までは一定の説得力をもったが、労働者が豊かになると、大企業では資本家の分け前を増やしてもらう同盟系の「第二組合」が増え、民社党が都市部では一定の勢力をもつようになった。先進国の社会主義政党はこういう社民になるのが普通だが、日本はならなかった。「平和憲法」という社会主義の代用品があったからだ。

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「ソビエト」の宗教的起源

神と革命: ロシア革命の知られざる真実 (筑摩選書)
ロシア革命は奇妙な革命である。それが資本主義の高度に発達したヨーロッパではなく後進国で起こり、少数派だったボリシェヴィキが政権を取ったのは多分に幸運だったが、その後の革命戦争を戦い抜いたことは運だけでは説明できない。彼らは無神論を公式の教義として掲げたが、その革命を可能にしたのは宗教的な怨念だった。

ソビエトは、いうまでもなくソビエト連邦の中核となった組織だが、レーニンは1917年4月に帰国して「すべての権力をソビエトへ」と呼びかけるまで、ソビエトという言葉を肯定的に使ったことがない。それを彼は「ブルジョア民主主義」と規定していたが、帰国すると全土に広がっていたソビエトを見て、ボリシェヴィキの権力基盤に転用したのだ。

「協議会」という意味のソビエトは、1905年にイワノボ・ボズネセンスクというモスクワの北東の都市で生まれた。そこはロシア正教の異端である「古儀式派」の拠点だった。彼らは1666年にロシア正教が分裂したとき「分裂派」と呼ばれ、正教会の弾圧を受けて教会がなくなった。しかしロシア各地に分散した古儀式派は、250年も「反帝政」の地下組織として生き延びた。

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小池百合子氏はなぜヒトラーになれなかったのか



希望の党は9月下旬には「政権交代」をうかがう勢いだったのに、今週の情勢調査ではほぼ立憲民主党と並んでしまった。産経によると、都議選まで高い支持率を得ていた小池百合子都知事の支持率も66%から39%に急落し、バブルが崩壊した。彼女は一部の人の恐れていた「ヒトラー」にはなれなかったのだ。

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立憲民主党のアイドル 小林よしのり氏の「心情倫理」

今回の総選挙のスターは希望の党ではなく、立憲民主党である。世論調査で小池百合子氏が失速したのは、枝野幸男氏が結党宣言した直後だった。その立憲民主党の応援に駆けつけたのが、小林よしのり氏だ。彼の応援演説は「安倍はヒトラーだ」みたいなありきたりの話だが、それなりの「つかみ」がある(写真はBuzzfeedより)。
なんで保守がリベラルを応援するのか。それはね、保守じゃないからですよ、自民党が。あれは単なる対米追従勢力です。アメリカについて行って戦争しろと。それだけですよ。自衛隊を自衛隊のまま集団的自衛権に参加させるんですか? こんな恐ろしいことはないですよ。枝野さんは安保法制の議論のときに個別的自衛権を強化しろと言った。実はこれがね、保守の考え方なんですよ。

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