消費税率8%のままでも財政は破綻しない

OECDの対日審査報告が「日本は消費税率を最大26%に上げるべきだ」と提言したことが話題になっているが、その前提には疑問がある。


図1 OECDの予想


図1がOECDのシミュレーションだ。2026~35年までにGDP比5%の増税(消費税20%)を行ってプライマリーバランス(PB)を黒字にした場合は、政府債務比率はGDPの150%に収斂するが、何もしないと債務が発散して、2060年にはGDPの560%に達すると予想している。

続きはアゴラで。

中央銀行は独立性を失った。それが何か?

FRBが適切に仕事をしていたら(そうではなかったが)、株式市場は5000〜10,000ポイント上がり、GDPは3%ではなく4%をはるかに上回っていただろう。量的引き締めはキラーだった。FRBは正反対のことをすべきだった!

トランプ大統領が、FRBへの介入を強めている。理事にB級の身内を2人指名しただけでなく、パウエル議長にも利下げを要求している。Economist誌も、カバーストーリーで中央銀行の独立性が失われることを警告している。

続きはアゴラで。

黒田日銀のマネタイゼーションはなぜ失敗したのか

日本の政府債務が先進国で最悪だということはよく知られている。粗債務ではGDPの236%、純債務でみても152%で、2位イタリアの約2倍だ。国債のリスクが政府債務に比例するとすれば、日本の長期金利はイタリアより高くなるはずだが、図のようにイタリアの金利が最高7%を超えたのに、日本の金利は1%からゼロだ。

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各国の長期金利

この図を見ると、日本やドイツのようなよい均衡と、イタリアやスペインのような悪い均衡があるように見える。日本では国民が政府を信頼しているので、政府債務が増えても金利が上がらないが、南欧では国民が政府を信頼していないので債券市場が国債に高いリスクプレミアムを要求し、金利が上がるのだ。このように金利(国債価格)は予想に依存する複数均衡になっているので「最適な政府債務」は存在しない。

ユーロ圏ではECBが通貨を発行するのに、国債を各国政府が発行する「ねじれ」が債務危機の原因になったが、日本政府は自国通貨を発行できるので、財政をコントロールしやすい。その特権を利用して、国債のマネタイゼーションという禁じ手でインフレ予想を生み出そうというのが、日銀の黒田総裁の発想だったと思われる(そんなことは公言できないが)。

これはよくできた戦略だったが、失敗した。その最大の原因は、財務省が財政赤字を減らしたからだ。マネタイゼーションが危険なのは財政への信頼をなくすからだが、日本はよくも悪くも財政への信頼が強すぎるのだ。財政赤字が減っているとき、それをマネタイズしても国債のリスクは増えないので金利は上がらず、インフレにもならない。黒田総裁は財務省出身なので「消費税を増税するな」とはいえなかったのだろうが、ここに彼の矛盾があった。

続きは4月15日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで。

新紙幣を「政府の電子マネー」として発行したら…

政府が2024年から新紙幣を発行すると発表したが、キャッシュレス化を進めているとき、時代錯誤な話だ。むしろ脱税の温床になっている1万円札は廃止すべきだ、というのがロゴフの提案である。そこで電子マネーの時代にふさわしい新通貨を考えてみた。



続きはアゴラで。

5Gの電波はプラチナバンドに空いている



第5世代移動通信システム(5G)の電波割り当てについての比較審査(美人投票)の結果が出た。きょう政策カフェでその話をしたが、その結果がちょっとおもしろい。NTTドコモとKDDIが1位と2位で3.7/4.5GHz帯では2枠取ったが、ソフトバンクは最下位で1枠しか取れなかったのだ。その点数は4.7点と、楽天より少ない。

続きはアゴラで。

ゼロ金利では賦課方式の社会保障が効率的になる

ゼロ金利の世界では、いろいろ直感に反する現象が起こる。Blanchard-Summersの指摘でおもしろいのは、賦課方式の社会保障が積立方式より効率的になることだ。社会保障の常識では、若者の所得を同時代の老人に移転する賦課方式は不公平で、積立方式にしたほういいと思われているが、金利が成長率より低い動学的に非効率な社会ではその逆になるのだ。

これを簡単な例で考えてみよう。これから50年間、人口も年齢構成も同じで成長率は1%、金利はゼロとする。いま20歳の若者Aの年収が500万円で毎年1%増えると、50年後の年収は822万円になる。他方いま70歳の老人Bがいて年収ゼロとすると、積立方式では生活できないが、賦課方式でAが収入の10%を社会保険料として払うと、Bは年収50万円になるので得する。

50年後には、積立方式だとAは社会保険料を年金として払い戻すが、金利ゼロだと元本が増えないので、年収は(年金の算定方式によって違うが)毎年60万円ぐらいだろう。しかし賦課方式だと、Aは50年後の現役世代の年収の10%をもらえるので、年収82万円になる。つまり賦課方式で今の老人は明らかに得するが、今の若者も(次の世代がいる限り)得するのだ。続きを読む

大坂なおみ選手は国籍選択しないと「違法状態」になる



パックンが「大坂なおみ選手の二重国籍が認められた!」というコラムを書いているが、これは蓮舫問題のときも出てきた誤解である。これは国籍法の改正ともからむので、訂正しておく。彼の論旨は
日本国籍をキープしたいなら、それを選ぶ「選択宣言」をしないといけない。そして、その後「外国籍の離脱に努める」ことが規定となっている。しかし、それに伴うチェック機能もなければ、離脱に努めていないときの罰則もなにもない

ということだが、これは間違いである。

続きはアゴラで。

財政赤字で将来世代の負担は減る

超高齢化する日本で、世代間格差は大きな問題である。増税を先送りすると財政赤字が増え、そのコストは将来世代の増税になるので、現在世代は子孫にツケを回しているとよくいわれるが、この問題は二つにわけて考える必要がある。

第一は所得分配の問題である。賦課方式の社会保障は、定義によって世代間の所得移転なので、高齢化で現役世代の負担が増えることは避けられないが、これは財政赤字の問題ではない。社会保障の赤字を国債で埋めても、借り換えできれば増税しなくてもいいので、将来世代の負担増は発生しない。

第二は資源配分の問題である。これは理論的にはむずかしいが、厳密な証明はブランシャールの論文を読んでいただくとして、ごく大ざっぱにいうと、財政赤字で民間投資がクラウディングアウトされるが、金利(資本収益率)が成長率より低いときは、そのコストは小さい。資本過剰で投資が足りない動学的に非効率な状態では、政府が需要不足を埋めたほうがいいのだ。

今のゼロ金利の状況では財政赤字のコストはゼロなので、政府が借金して需要を作り出し、それをゼロ金利で借り換えれば、現在世代は得をし、将来世代も成長率が上がって利益を得る。つまりゼロ金利がずっと続くとすれば、財政赤字ですべての世代が利益を得るフリーランチがあるのだ。問題はそれがいつまで続くのかということである。続きを読む

アベノミクスはMMTの実験だった

いよいよ日本の国会でもMMT(Modern Monetary Theory)が出てきた。自民党の西田昌司氏は「安倍政権はすでにMMTをやっている」という。



この指摘は正しい。MMTのケルトンも、最近のインタビューでこう答えている。
日本の経済には十分な余裕があり、これまでもありました。政府債務は過去の財政赤字の単なる歴史的記録です。これによってわかるのは、これまでの赤字財政で日本経済の過熱を招くことはなかったということです。だからこの水準[GDP比240%]の債務を吸収することができたのです。

続きはアゴラで。

イノベーションで長期停滞は脱却できるか

日本が低成長に陥った原因を「イノベーションの不足」や「生産性の低さ」に求める人が多い。

 潜在成長率=資本蓄積率+労働人口増加率+全要素生産性(TFP)上昇率

なので、資本蓄積が飽和して労働人口が減少しても、TFPを上げれば成長は維持できる、というわけだ。それならイノベーションの中心であるアメリカではTFPが上がっているはずだが、次の図のように2000年代前半にITバブルが崩壊したあと、アメリカのTFP上昇率は大きく下がっている。

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ロバート・ゴードンはこうしたデータをもとにして、IT革命の最盛期は終わったと論じている。それはイノベーションが衰退したからではなく、物的設備がコンピュータに代替されて資本コストが大幅に下がったからだ。ITイノベーションは一部の企業には大きな利益をもたらすが、経済全体のGDPは低成長になるのだ。これがマイナス金利の原因である。

続きは4月8日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで。






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