携帯料金を4割下げる方法

携帯電話に参入する予定だった楽天が、KDDIと業務提携すると発表した。これで来年秋からのサービス開始では、楽天の通信網だけではなく、KDDIとのローミングでやることになる。その代わり楽天は、ネット通販のインフラをKDDIに提供するという。

楽天は携帯に参入すると発表したとき、設備投資額を「2025年までに6000億円」と述べたが、3大キャリアの設備投資は昨年だけで合計1兆3000億円。この投資では、全国にネットワークを張りめぐらすのは困難だ。いずれ既存キャリアとの提携は避けられないとみられていたが、最初からインフラを借りるのでは、KDDIの顧客を奪うような低料金を出すことはできないだろう。

菅官房長官が「携帯料金は4割下げられる」という発言は大きな反響を呼んでいるが、今のスマホの処理能力は1990年の大型コンピュータを上回る。PCの価格は90年代の1割以下になっているのだから、通信料金を4割下げるというのは控えめな目標だ。コンピュータと同じように競争が働けば不可能ではない。

続きはアゴラで。

江戸時代化する日本

文明としての江戸システム 日本の歴史19 (講談社学術文庫)
21世紀の日本は、よくも悪くも「江戸時代化」している。これは與那覇潤氏が「中国化」と対比した特徴だが、少なくとも次の3点で現代は江戸時代と似ている。

 ・平和が長く続く
 ・人口が増えない
 ・経済が停滞する

これは江戸時代全般ではなく、18世紀以降の特徴だ。江戸時代前期は経済が成長し、人口も急増した。著者の推定によれば、1600年の人口は1500~1600万人だったが、1700年には3100~3200万人ぐらいになったと思われる。100年で2倍の急成長だが、その最大の原因は平和になって農業が発展し、市場経済が拡大したことだ。

それはわかりやすいのだが、人口増加は1700年ごろぴたっと止まり、幕末までほとんど増えていない。150年間で90万人ぐらいしか増えなかった。その原因は気候の寒冷化による飢饉だとか出生抑制(間引き)だとかいわれるが、決定的な理由はわからない。はっきりしているのは、その結果、経済が停滞し、大名の財政が悪化して武士が貧しくなったことだ。

続きは11月5日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで。

韓国の「戦勝国史観」が日韓関係をゆがめる

韓国大法院の元徴用工判決が大きな反響を呼んでいる。これは外務省も指摘するように、日韓の請求権問題は日韓基本条約で「完全かつ最終的に解決」されたという合意に違反し、日韓関係を1965年の国交正常化の前に戻すものだ。

中央日報によると判決は11対2で、少数意見は「日本企業でなく韓国政府が強制徴用被害者に正当な補償をすべき」として請求を棄却すべきとしたという。これが日韓条約の正しい解釈である。

続きはアゴラで。

日本が韓国に「賠償」する理由はない

韓国の大法院が戦時中の徴用工について新日鉄住金に賠償を求めた判決が話題になっているが、「賠償は日韓基本条約で終わった」というコメントは事実誤認だ。日韓条約と請求権協定は賠償ではない。外務省の大臣談話にもあるように、
日韓請求権協定は,日本から韓国に対して,無償3億ドル,有償2億ドルの資金協力を約束する(第1条)とともに,両締約国及びその国民(法人を含む。)の財産,権利及び利益並びに両締約国及びその国民の間の請求権に関する問題は「完全かつ最終的に解決」されており,いかなる主張もすることはできない(第2条)ことを定めており,これまでの日韓関係の基礎となってきました。
日韓条約は「資金協力」であって「賠償」ではない。1910年の日韓併合条約は国際法にもとづき、当時の国際社会でも広く認められた条約だから、日本に賠償の義務はない。これは普遍的な原則で、植民地支配について賠償した旧宗主国はない。日本政府も一貫して、賠償も謝罪もしないという立場だ。これに対して韓国は「日韓併合は武力で強要されたものだ」と主張して賠償を求めたため、サンフランシスコ条約で国交が結べなかった。

しかし1960年代に韓国経済が行き詰まったため朴正熙大統領が妥協し、日本が賠償ではなく5億ドルの「資金協力」を行う協定が1965年に結ばれた。これは当時も根拠不明の「つかみ金」と批判されたので「完全かつ最終的に解決」されるという文言が明記されたが、これをくつがえしたのが1990年代に出てきた慰安婦問題だった。

続きは11月5日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで。

ビールの「消費税率」74%は外税表示に

来年の消費税引き上げで「複数税率」が導入される見通しだが、これは「軽減税率」だけではない。酒税・タバコ税・揮発油税などの個別消費税は今すでに複数税率であり、今回の税法改正で「重課税」になる。たとえばビールの税率は、アサヒの「スーパードライ」の場合、本体価格132円に酒税77円かかり、その合計価格209円に8%の消費税が課税されている。これが消費税10%になると230円、本体価格に対して74%課税される。

続きはアゴラで。

血縁淘汰から「マルチレベル淘汰」へ

人類はどこから来て,どこへ行くのか
本書はアゴラ読書塾のテキストに使っているのだが、私は原著しか読んでいなかった。訳本を読んで気づいたのは、解説で巌佐庸氏(生物学者)が「ウィルソンの血縁淘汰批判は間違いだ」と批判していることだ。これはテクニカルな話だが、進化論にとっては重要な問題である。

血縁淘汰というのは、一般にはドーキンスの「利己的な遺伝子」として知られているが、オリジナルはハミルトンの理論である。これはたとえば蜂の巣を守るために働き蜂が外敵に対して自殺攻撃をするような「利他的」な行動を説明する理論で、ある遺伝子を集団の中で残す利益をB、そのために個体が犠牲になるコストをCとし、遺伝子を共有している確率(血縁度)をrとすると、

 rB>C

となるとき、利他的な行動が進化するという。これは1964年に提唱され、いろいろな生物で実証されて、ほぼ確立した法則と考えられている。ところがその元祖だったウィルソンが、それが当てはまらない例が多いとして、マルチレベル淘汰という理論をとなえている。これは個体レベルの利益Bkとは別に、集団レベルの利益Beを考え、

 rBk+Be>C

となるとき、利他的な行動が進化すると考える。これはBe=0のときは血縁淘汰と同じになるので、ハミルトンの法則の一般化だが、生物学者の批判を呼び、今も論争が続いている。

続きは10月29日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで。

人質はビジネスである



安田純平事件はいろいろな波紋を呼んでいるが、こういう人質事件は世界的にみると珍しくない。岡本行夫氏の国会証言によると、ホルムズ海峡では2000年以降にソマリア海賊の襲撃は1000回を超え、4000人を超える人質が取られたという。

海賊やテロリストの目的は、第一義的にはカネである。過去の人質事件では自衛隊の撤退や囚人の解放を求めたりしたので「彼らの話を聞いてやれ」などという平和ボケもいるが、いくらテロリストの話を聞いても、カネを払うまで人質は解放しない。ときには他のグループに転売することもある。今回はカタール政府が身代金を払ったともいわれるが、それは最終的には日本政府が負担することになろう。

この種の事件は、今後も起こる可能性がある。そのとき大事なのは、アドホックに対応しないことだ。事前にルールを決め、それに違反した者にはペナルティを課す。今回のように政府が渡航禁止した国に入国した場合は救出費用を請求し、パスポートを没収して出国を永久に禁止する。これは旅券法の運用でできると思うが、施行規則として明文化してはどうだろうか。

続きは10月29日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで。

身の安全は「自己責任」では守れない

シリアでテロリストの人質になっていたフリージャーナリストの安田純平氏が解放されたが、マスコミは妙に甘い。たとえば日本人拘束、繰り返される「自己責任論」という朝日新聞の記事は、ネトウヨが「自己責任」を主張して彼を「バッシング」しているという印象操作をしているが、これは逆である。自己責任を主張したのは彼なのだ。



続きはアゴラで。

中央銀行という不思議な存在

中央銀行: セントラルバンカーの経験した39年
日銀の白川前総裁の回顧録だが、マスコミの期待するような内情暴露やアベノミクス批判はなく、淡々と一般論で「中央銀行のあり方」が語られる。著者もいうように「中央銀行は不思議な存在である」。日銀は政府機関でありながらジャスダックに上場し、日銀法で独立性が保障されているが、これは自明のルールではない。

理論的には政府と中央銀行のバランスシートは、統合して考えることが合理的だ。法的にも、民主国家で行政機関が内閣から独立すべきかどうかには議論がある。独立性が保障されるようになったのは、スタグフレーションで政府の介入がインフレを加速させた経験によるもので、独立性が明文化されるようになったのは1990年代である。1998年の日銀法改正も、バブル崩壊の影響で実現したものだ。つまり中央銀行の独立性は、インフレを防ぐ制度なのだ。

とすればインフレにしようとしてもできない時代に独立性を保障する必要はない、という議論もあるが、著者はこれに反論する。中央銀行の仕事を「インフレファイター」に限定するのは、経済の不均衡はインフレやデフレという形で出てくるという考え方にもとづいているが、これは一面的だ。不均衡は資産バブルという形で蓄積され、その崩壊による金融危機として表面化する、というのがここ30年の先進国の経験である。

この点で、著者は「主流派マクロ経済学のバイアス」にも疑問を呈する。世界の中央銀行が採用している動学マクロ理論(DSGE)によれば、経済の動きは成長トレンドとその攪乱で成り立っており、中央銀行の役割は金融政策で攪乱を最小化することだということになっているが、これでは金融危機は説明できない。

続きは10月29日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで。

高坂正堯の孤独な現実主義

高坂正堯―戦後日本と現実主義 (中公新書)
今の学生が高坂正堯の本を読んでも、あまりおもしろくないだろう。たとえば彼の代表作といわれる『国際政治』の「力の体系」として国際政治をとらえる現実主義は、モーゲンソーやキッシンジャーとあまり変わらない。その意味で普遍性はあるのだが、独創性はない。

だが論壇では、高坂は孤独だった。それは彼が京大出身だったことと無関係ではないだろう。1962年に彼はデビュー作「現実主義者の平和論」で坂本義和の中立論を批判したが、坂本は反論せず、議論は噛み合わなかった。東大法学部を中心とする論壇の主流は非武装・非同盟の理想主義であり、彼らにとって現実主義とは既成事実に屈服する保守政治だった。

こういう論壇の空気を読まないで「日米同盟なしで日本は守れない」という常識を説くことが、高坂の独創性だった。彼には「御用学者」のイメージがつきまとい、マスコミでは数少ない保守派の代表として使われるようになったが、その後継者はいない。論壇はなくなったが、今もマスコミの主流は彼の批判した一国平和主義である。

続きは10月29日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで。






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