「コミンテルンの謀略」を実現した進歩的知識人

コミンテルンの謀略と日本の敗戦 (PHP新書)
世の中には、いまだに「日本はコミンテルンの謀略に乗せられて日米戦争をやった」という類の陰謀史観がある。本書もその種のトンデモ本だが、1930年代の惨憺たる歴史は、結果としては「日本を社会主義で破壊する」というコミンテルンの謀略が実現したようにみえる。

近衛文麿の側近だった尾崎秀実は、ソ連の工作員だった。「天皇制の打倒」を掲げたコミンテルンの1932年テーゼを実行しようとした日本共産党は弾圧で壊滅したが、日本を「半封建社会」と規定する「2段階革命論」は知識人に大きな影響を与え、それにもとづく講座派マルクス主義が広く支持された。

それはコミンテルンの工作のおかげではなく、当時の知識人が社会主義を支持したからだ。世界恐慌はマルクスの予言が実現したものと思われ、経済危機を解決する手段として総動員体制(戦時共産主義)が、革新官僚にも帝大教授にも受け入れられた。彼らは天皇制打倒や暴力革命といった過激な手段は否定したが、「経済の計画化」は支持したのだ。

続きは6月18日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで。

エリートの不合理な計画性



日本がなぜ無謀な日米戦争を始めたのかという問題については、山ほど本が書かれている。本書はそれについて従来と違う答を出しているわけではないが、新しい素材を提供している。陸軍の「秋丸機関」と呼ばれる研究機関で、有沢広巳などの経済学者が英米やドイツの戦力を調査し、1941年7月に報告書を出した事実だ。

続きはアゴラで。

プルサーマルで日米原子力協定は守れるのか



7月16日に日米原子力協定の30年の期限が来る。日本の電力会社が保有しているプルトニウム約47トンは最近ほとんど増えていないが、原発が再稼動すると使用ずみ核燃料は増えるので、日米原子力協定でアメリカの要求する「プルトニウム削減」を実現するには、プルサーマル原子炉を動かす必要がある。

ところが今まで原子力規制委員会が設置変更許可を出したプルサーマル炉は4基だけ。そのうち2基で年間1トンしかプルトニウムを消費できない。プルサーマルは他に4基あり、フルMOXの大間原発が動けば年間1.1トン消費できるが、すべて動いても合計5トンにもならない。

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他方で、六ヶ所村の再処理工場が動くと最大で年間8トンのプルトニウムができるので、プルトニウムは増えてしまう。対応策はプルサーマルを増設するしかないが、大間の運転も見通せない状況で、これから新しい原子炉を建設することは不可能だ。つまりプルサーマルだけでは、日米原子力協定の「利用目的のないプルトニウムはもたない」という約束は守れないのだ。

続きは6月18日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで。

アゴラ読書塾「丸山眞男と戦後日本の国体」

丸山眞男は戦後を代表する思想家で、今もリベラルの教祖的存在です。1950年代の講和条約をめぐる論争から安保条約改正に至るまで、彼は戦後民主主義を擁護し、知識人を代表して闘いましたが、60年代には論壇から姿を消しました。

しかし50年代に丸山などのリベラルが設定した「憲法擁護」や「安保反対」というアジェンダは、いまだに国会の争点です。かつて丸山が恐れたのは、治安維持法に代表される戦前の「国体」が復活することでしたが、今は表で非武装の平和憲法を掲げながら、裏では日米同盟で国を守る「戦後日本の国体」が定着してしまいました。

政治から撤退した丸山が研究したのは、日本人の精神構造でした。彼は古代から続く「古層」に、既成事実に屈服しやすい日本人の潜在意識を見出し、それを克服する近代的な主権者を確立する「永久革命」が日本の課題だと考えました。しかしその学問的成果はほとんど知られないまま、彼のつくった戦後日本の国体は今も政治を呪縛しています。

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ゼロ金利が日本企業をダメにした



昨夜の言論アリーナは、宇佐美さんの新著の「先送り」がテーマだったが、意思決定がなぜ先送りされるかはおもしろい問題だ。先送りはオプション価値をもつ。たとえば値下がりした土地を時価で売ると損が出る場合、ずっと保有していると、そのうち値上がりするかもしれない。先送りすると値上がりしてから売るオプションをもっているので、そういう権利を証券化したのがオプション証券だ。

他方、先送りにはコストも発生する。借金して土地を買ったとすると、先送りによって金利が発生する。つまり金利は先送りの機会費用とも考えることができるので、先送りのオプション価値と金利のどっちが大きいかで意思決定が決まる。

1998年以降の日銀の超低金利政策は、最初は不良債権問題で破綻した企業を救済するためだったが、そのうち企業がゼロ金利を前提にして行動するようになった。常識的には金利がゼロならどんどん借りて投資するだろうと思う(日銀も経済学者もそう思った)が、実際には逆だった。企業の貯蓄が増えたのだ。

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日本が北朝鮮を「非核化」する方法



米朝首脳会談は空振りに終わったが、トランプ大統領が記者会見でこう答えたのには驚いた(ハフィントンポストより)。
韓国と日本が大いに支援してくれるだろう。彼らは支援する準備ができていて、支援しなければならないことも知っているはずだ。アメリカはこれまでに多くの国で多大な費用をかけてきた。韓国は(北朝鮮)の隣国で、日本もそうだ。彼らは支援してくれるだろう。
これは経済支援のことで、日本が北朝鮮を非核化するという意味ではないが、それは不可能ではない。日本はその技術をもっているからだ。北朝鮮の核兵器を解体すると、そこに含まれているウランやプルトニウムを無害化しなければならない。それには再処理工場でMOX燃料に加工し、プルサーマルで燃やすことがもっとも技術的に確実だ。

ところが青森県六ヶ所村の再処理工場は、いまだに稼働できない。核燃料を「増殖」する予定だった高速増殖炉「もんじゅ」が廃炉になった今、多大なコストをかけて再処理でプルトニウムを分離しても、使い道はプルサーマルしかない。それよりゴミとして直接処分したほうが、はるかに安い。

しかし北朝鮮の非核化となると、採算の問題ではない。日本が「北朝鮮の核兵器を解体する」と名乗りを上げたら、「完全な非核化」を約束した北朝鮮は拒否できないだろう。六ヶ所村の再処理工場で処理すれば「検証可能で不可逆的な」核兵器の解体ができる。これは安全保障の問題なので、国の仕事である。

続きは6月18日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで。

みんなが拒否権をもつ「ホールドアップ社会」



まもなく開票される新潟県知事選挙は、野党の推薦する池田千賀子候補がやや優勢と伝えられる。彼女が当選すると、米山前知事のつくった「検証委員会」で検討が続けられ、あと4年は再稼動が延期されるおそれが強い。知事には原発の再稼動を許可する権限はないが、東電は知事の意向には従うと表明している。

このように知事の権限が強い現象は他の立地県にもみられるが、その根本原因は日本社会ではみんなが拒否権をもっていることだ。こういう交渉問題は、経済学ではホールドアップ問題として知られている。たとえば自動車メーカーと下請けに資本関係がないとき、契約を結んでも、土壇場になって親会社が約束を破って「景気が悪くなったので納入価格を下げてくれ」と再交渉したら、下請けは抵抗できない。

ここで重要なのは事前にどんな詳細な契約を結んでもホールドアップできるということだ。「景気が悪くなっても納入価格は変更しない」と契約に書いても、親会社は「売り上げが落ちた」というかもしれない。「売り上げは無関係」と書いても、「品質が悪い」と文句をつけることができる…というように論理的には無限にホールドアップの理由がある。新潟県知事も同じだ。

続きは6月11日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで。

プルトニウム削減には原発再稼動が必要だ

けさの日経新聞の1面に「米、日本にプルトニウム削減要求 」という記事が出ている。内容は7月に期限が切れる日米原子力協定の「自動延長」に際して、アメリカが余剰プルトニウムを消費するよう求めてきたという話で、これ自体はニュースではない。

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東大経済学部の「科学革命」を実現した学問政治

日本の大学の文系学部がダメになった一つの原因は、人事が硬直化して親分子分の関係が強いことだ。特に戦後かなり長い時期、マルクス主義が社会科学の主流を占めたので、左翼的な教授が左翼を後継者にし、憲法学のようにガラパゴス化する傾向が強い。ところがマルクス主義の総本山だった東大経済学部には、今ほとんどマルクス経済学の教授はいない。

東大のマル経は戦前に人民戦線事件で摘発された栄光の歴史があり、近代経済学を「ブルジョア経済学」とバカにしていたが、1960年代から留学生が帰国してアメリカの経済学を輸入し始めた。経済学部でも近経のポストを確保しようという動きが強まったが、マル経から近経への転換は天動説から地動説への転換のような「科学革命」だった。

マル経の教授が近経の助教授を採用するはずがないので、パラダイム転換には「外圧」が必要だった。経済学は理系をまねて業績主義になったが、マル経では国際ジャーナルに載る論文は書けない。こういう国際競争が一つの要因だが、財界からは「マル経の学生は使い物にならない」という批判が強かった。そういうアメリカや財界の外圧を利用して、人事を動かしたのが大石泰彦である。彼は学問的業績は何もなかったが、学問政治の達人だった。

続きは6月11日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで。

新潟県民の「NIMBY症候群」を解決する方法

新潟県知事選挙では、原発再稼動が最大の争点になっているが、原発の運転を許可する権限は知事にはない。こういう問題をNIMBY(Not In My Back Yard)と呼ぶ。公共的に必要な施設でも「うちの裏庭にはつくるな」という意味で、わかりやすい日本語に訳すと「地域エゴ」である。

続きはアゴラで。




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