銀行が安楽死する時代

今年はマイナス金利が日本から世界に広がった年だった。これを受けて「金利なんか気にしないで政府がバンバン借金すればいい」というMMTが流行したが、これは単に金利をゼロと仮定しているだけなので、ゼロ金利を説明できない。

マイナス金利の原因を自然利子率の低下と考えるサマーズやブランシャールの長期停滞論が大きな影響をもつようになったが、彼らもマイナス金利そのものを是正する政策を提言しているわけではない。金融政策がだめなら財政政策でという発想は、80年前のケインズ理論とほとんど変わらない。当時ケインズは、こう論じた。
資本主義の金利生活者的な側面を、それが仕事を果たしてしまうと消滅する過渡的なものであると私は見ている。そして金利生活者的な側面の消滅とともに、資本主義に含まれる他の多くのものが変貌を遂げるであろう。(『一般理論』)
イギリス経済がだめになったのは、リスクを恐れる金利生活者のおかげで投資が不足したためだ、とケインズは考えていた。だから政府が投資する必要があるが、資本主義が効率的になってリスクがなくなると金利はなくなり、銀行は消滅する。

21世紀の資本主義は、ケインズの予想に似てきた。そこで重要なのは物的資本ではなく、情報や権利などの無形資本なので、金利は価値の尺度にならない。資本は過剰なので物的投資は大きくないが、付加価値は大きい。資本主義がケインズの予想していた道をたどるとすると、銀行の安楽死する日が来るのかもしれない。

続きは12月23日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで。

今年の良書ベスト10

韓国「反日主義」の起源今年は不作だった。世界情勢は意外に平穏で、経済もゆるやかに停滞しているので、話題になる出来事も少なかった。そんな中で、日本では韓国との紛争が再燃し、歴史をあらためて考えるきっかけになった。

  1. 韓国「反日主義」の起源

  2. 「追われる国」の経済学

  3. 大分断

  4. 反日種族主義

  5. Becoming Human

  6. 平成金融史

  7. Evolution or Revolution?

  8. イスラム2.0

  9. 腐敗と格差の中国史

  10. 父が娘に語る 美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。

続きはアゴラで。

「セカンドレイプ」という男性差別

伊藤詩織事件についての論評がマスコミにあふれているが、その圧倒的多数は伊藤側の立場からのコメントだ。 アゴラに書いたように、私も警察の捜査には疑問をもっているが、山口敬之氏は結果的に不起訴になったので「性犯罪」は存在していない。

今回の民事訴訟の判決はそれをくつがえすものではなく、「同意なき性行為」が民法上の不法行為にあたるという判決である。ところが記者会見で伊藤氏は「Hanadaなどを訴える可能性があるか」という質問に「法的措置を考えている」と答えた。


これは逆である。過去の事件では、三浦和義を犯罪者よばわりしたメディアは、無罪が確定したあと約500件訴訟を起こされて400件以上が敗訴し、「無罪の人を犯罪者扱いするのは名誉毀損」という判例が確立した。山口氏は起訴さえされていないので、彼を「レイプ犯」などと中傷している人こそ名誉毀損に問われるのだ。

Hanadaが山口氏の原稿を載せたのは、伊藤氏の原稿を文藝春秋が『Black Box』という単行本として出版したのと同じ表現の自由である。なぜ女性側の主張は「勇気ある告発」で、男性側の主張は「セカンドレイプ」なのか。それは男性差別ではないか。

続きは12月23日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで。

伊藤詩織事件で残るTBSへの疑問

伊藤詩織事件でマスコミがまだ騒いでいるが、これは犯罪事件としてはもう終わっている。真実は当事者以外にはわからないが、疑問が残るのは、山口氏が帰国するとき高輪署の取った逮捕状を警視庁が執行させなかったことだ。これは異例だが、その原因は今も不明である。

コメンテーターは安倍首相との関係を憶測しているが、首相官邸が個別の犯罪捜査に介入することはありえない。それよりはっきりしているのは、山口氏が事件当時、TBSのワシントン支局長だったという事実である。TBSは警視庁クラブの加盟社であり、その関係に警察が配慮したことは十分ありうる。

続きはアゴラで。

福島第一原発が安倍首相に迫る「決断のとき」

先週、3年半ぶりに福島第一原発を見学した。以前、見学したときは、まだ膨大な地下水を処理するのに精一杯で、作業員もピリピリした感じだったが、今回はほとんどの作業員が防護服をつけないで作業しており、雰囲気も明るくなっていた。福島第一にも日常が戻ってきたのだ。


大型休憩所の食堂(東電HPより)

続きはアゴラで。

2010年代の音楽ベスト10

Bon Iver
いろいろな音楽雑誌で「この10年のベスト」を特集している。私は個人的によく聞いたものを選んでみた。
  1. Bon Iver
  2. Adele: 21
  3. Allison Moorer: Down to Believing
  4. Bill Frisell: Guitar in the Space Age
  5. Julia Holter: Have You In My Wilderness
  6. Keith Jarrett & Charlie Haden: Jasmine
  7. Beach House: Teen Dream
  8. Vampire Weekend: Modern Vampires of the City
  9. Return to Forever: The Mothership Returns
  10. Daft Punk:Random Access Memories
続きは12月16日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで。

「社会契約」としての新憲法

はじめての憲法 (ちくまプリマー新書)
安倍政権の残された最大のテーマは憲法改正だが、今のところ自民党内の合意もできていない。公明党の合意は絶望的だ。それでも安倍首相がこの問題にこだわるのは「押しつけ憲法」の改正が自民党の結党以来の悲願だからだろう。

他方で一部の憲法学者は、それが押しつけではなく、終戦で主権者になった日本国民が「八月革命」によって制定したものだというが、この主張に対応する歴史的事実はまったく存在しない。どっちにも共通するのは、憲法が民主的正統性に弱点を抱えているという認識である。

この背景には主権者たる国民が憲法を制定するというドイツ国法学の発想があるが、憲法を書いたのはアメリカの法律家である。彼らにとってはそんな観念論はどうでもよく、憲法は連合国が提案して日本が受諾したポツダム宣言の具体化だった。それは日本と連合国の社会契約だったと著者は考え、この契約を「ポツダム・プロセス」と呼ぶ。

占領で日本の国家主権が制限されたことが国際法違反だというのが保守派の一部の主張だが、当事者の合意した契約は一般法に優先する。日本政府が降伏文書に調印したときポツダム・プロセスが始まり、サンフランシスコ条約で終わった。その根底にあった概念はドイツ的な「主権者」ではなく、英米的な国際法にもとづく契約だった。

続きは12月16日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで。

アゴラ経済塾「環境・エネルギー問題を経済的に考える

TIME誌は「今年の人」に地球環境の危機を訴えるスウェーデンの高校生、グレタ・トゥーンベリを選びました。彼女はCOP25(気候変動枠組条約締約国会議)で「人類は非常事態なのに各国政府は抜け道をさがしている」と大人を批判しました。

今や地球温暖化は、人類最大の問題に昇格したようにみえます。人類が危機に瀕していることは自明で、何をやるべきかもわかっており、問題は行動することだけだ、というのが彼女のような活動家の主張ですが、これは本当でしょうか。

続きはアゴラで。

年金不安は幻想か

年金不安の正体 (ちくま新書)
日本の年金制度が危機的状態にあるというのは常識だが、本書はその常識に挑戦し、年金危機は「日本人の心の中にある」幻想だという。

これは一見、驚くべきことを言っているようだが、実はそれほど意外な話ではない。厚労省の年金マンガと同じロジックである。終章に出てくる権丈善一氏の話がそれを要約しているので、基礎知識のある人は終章だけ読めばいい。

キャプチャ

経済学者の批判は「超高齢化社会では、賦課方式の年金だと将来世代の負担が重くなる」ということに尽きる。本書もこの事実は認める。積立方式のほうが将来世代の負担が少ないことも認めるが、賦課方式から積立方式に移行するのは巨額の「二重の負担」が発生するので不可能だから、賦課方式で問題はないという。

これは論点のすり替えである。積立方式が政治的に困難であることは、世代間格差が存在しないことを意味しない。世代会計でみると、今のゼロ歳児の生涯所得(受益-負担)が今の60代より約1億円少なくなることは算術的に明らかだ。それが「不公平ではない」というのは厚労省の弁解である。

なお本書は原田泰氏を一貫して「元日銀副総裁」と書いているが、彼は現役の日銀審議委員である。

続きは12月16日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで。

ローカル民放がインターネットを殺す



NHKは2020年3月からすべての番組をインターネットで同時配信する予定だが、これに高市総務相が噛みついた。ネット配信の経費を受信料収入の2.5%以内に収めろという総務省の要求に応じて、 NHKは深夜早朝のネット配信をやめる方向で検討しているという。

その原因は民放連がNHKのネット配信に強く反対しているからだが、これは奇妙な話である。NHKのネット配信で、民放が配信できなくなるわけではない。民放がやりたければ自由にやればいい。それは技術的には容易だが、今は法的にできない。地デジのネット配信は県域内に限定されているので、NHKが全国にネット配信しても、民放キー局は全国に配信できないのだ

こんな世界にも類をみない規制を続けているのは、番組がネット配信されると、日本のローカル民放を支えている県域免許という制度が崩壊するからだ。たとえばTBSの番組が全国にネット配信されると、全国のTBS系のローカル民放は「中抜き」されてビジネスが成り立たなくなる。これが日本でテレビ番組のネット配信が進まない最大の原因である。

世界ではテレビ番組のネット同時配信は常識であり、BBCなどはネット配信を主体にして電波を返上することも検討している。NHKにも県域免許の制約はないが、ローカル民放の利潤を守るためにネット配信に制限がかけられ、そのおかげで全国配信できないキー局がNHKの足を引っ張っているのだ。

続きは12月9日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで。





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