グレタという「天才子役」のシナリオを書いたのは誰か

キャプチャダボス会議にもグレタ・トゥーンベリが出てきたが、アメリカのムニューシン財務長官が皮肉ったように、彼女はチーフエコノミストでも科学者でもない。スピーチは退屈で、どの会議でも同じ話をしているが、問題は中身ではない。

国際会議に何の専門的知識もない子供が出てくるのは異常だが、グレタは与えられたシナリオを演じる「天才子役」にすぎない。そのシナリオを書いたのはスウェーデンの環境活動家だと思われるが、それだけでは国連や各国政府を説得できない。彼女を利用しているのは、ヨーロッパの社民勢力である。

気候変動は、世界の左翼に共通の目標になった。「地球環境を守れ」という誰も反対しないスローガンは、幅広い勢力を結集するには便利だ。気候変動の問題に決着がつき、それを世界に広めることだけが目的なら、将来世代を代表する子役を使うキャスティングは正しい。

温暖化の防止がすべての経済問題に優先するなら、解決策は簡単である。経済成長を止めればいいのだ。2050年に温室効果ガス排出を実質ゼロにするには、ニュージーランド政府の方針のようにガソリン車を廃止し、火力発電を廃止すればいい。それによってGDPは20%以上さがるが、グレタの世代は幸福になるのだろうか。

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【更新】イノベーションのジレンマ

イノベーションのジレンマ―技術革新が巨大企業を滅ぼすとき (Harvard business school press)
著者クレイトン・クリステンセンが死去したので更新。

経営学に古典と呼べる本はほとんどないが、本書は1997年に出版された後、むしろ年とともに評価が高まっている稀有なビジネス書だ。ジョージ・ギルダーやアンディ・グローブが絶賛し、『ビジネスウィーク』などが特集を組み、多くの賞を受賞した。
 
本書の特色は、企業の成功ではなく失敗を分析した点にある。特に印象的なのは、著者がくわしい実証研究を行ったハードディスク業界のケースだ。大型コンピュータ用の14インチ・ディスクのトップ・メーカーは、ミニ・コンピュータ用の8インチ・ディスクの開発に遅れをとってすべて姿を消し、8インチの主要メーカーのうちパソコン用の5インチで生き残ったのは一社だけ、そして3.5インチでも…というように、ディスクの世代が変わるごとに主要メーカーがすっかり入れ替わってしまった。続きを読む

地球温暖化についてのよくある疑問

地球温暖化については、いまだに論争が続いている。科学的データはIPCC第5次評価報告書にあるが、これは読みにくいので、よくある疑問を一問一答形式で整理しよう。

1.温暖化は中世にも起こったのではないか?

これについては多くの研究があるが、次の図のように西暦1000年ごろの北半球の気温が20世紀後半と同じぐらいだったことは共通している。その最大の原因はCO2ではなく、太陽の活動が活発で雲が少なかったためと推定されている。

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中世温暖期(Wikipedia)

2.CO2濃度の上昇は温暖化の原因ではなく結果ではないか?

過去40万年の長期の周期をみると、次の図のように温暖化の後にCO2が増えている。氷河期の終わる原因は地球の公転軌道の変化だが、それによる温暖化で海水から出るCO2が増えると、その温室効果で大気の温暖化が促進されるフィードバックが起こる。

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CO2濃度と平均気温

3.太陽の活動の影響ではないか?

太陽の放射照度は次の図のように、1980年代から低下している。全体として自然要因は寒冷化の方向に変化しており、それを人間の活動が逆転させているというのがIPCCの説明である。

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太陽活動と平均気温

4.宇宙線の変化が原因ではないか?

太陽の磁場が強まると宇宙線がそれに吸収されて減り、宇宙線によってできる低層雲が減って温暖化するという説がIPCCでも取り上げられたが、次の図のように、これも80年代から相関が崩れている(宇宙線が増えて温暖化した)。

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宇宙線(逆スケール)と平均気温

5.温暖化は都市化による局地的な現象ではないか?

都市化によるヒートアイランド現象は明らかで、東京の平均気温はこの100年に3℃上がったが、そのうち地球温暖化は0.74℃と推定されている。


ヒートアイランド現象(産総研調べ)

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ESG投資というモラルハザード


きのうこういう論争が、水野弘道氏(GPIF最高投資責任者)と山崎元氏(国家公務員共済組合連合会資産運用委員)の間で繰り広げられた。水野氏のいうようにESG(Environment, Social, Governance)投資が流行していることは事実だろう。

しかしそれが投資理論として成り立たないことは、山崎氏のいう通りである。少なくとも効率的市場仮説による限り、「環境にやさしい」などの収益以外の基準で運用の対象を制限して、収益を高めることはできない

たとえばあるファンドが収益最大化の基準で組んだ100社のポートフォリオから、ESG基準で石炭を使う10社を排除したとすると、残りの90社からなるポートフォリオが、もとの100社より継続的に高い収益を上げることはありえない。これは多くの実証研究のデータでもわかっており、ESGが収益を改善する効果は統計的に有意ではない。

もちろん地球環境を守ることには意義があるが、それは政府の仕事だ。ファンドマネジャーの社会的責任は投資家の収益を最大化することであり、投資家のカネを収益以外の目的に使うのはモラルハザードだというのが、フリードマンの指摘である。投資家が私企業の株主ならそういうセールストークで資金を集める営業もいいが、GPIFではやめていただきたい。

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オーストラリアの山火事の原因は地球温暖化か

オーストラリアで起こっている大規模な山火事が、日本でも話題になっている。これを気候変動と結びつけ、「地球が温暖化すると山火事が増える」という話が多いが、そもそもオーストラリアの山火事は増えていない。



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「ヘリマネ型量的緩和」のすすめ

17日に発表された内閣府の経済見通しでは、プライマリーバランス(PB)の黒字化は2年ずれ込んで2027年になったが、政府債務のGDP比は図のように減っている。これは過去に発行した国債をゼロ金利の国債で借り替えたからで、名目成長率3%台の「成長実現ケース」では157%まで下がる。1%台の「ベースラインケース」でもほぼ横ばいだ。

コメント 2020-01-19 181915

PB黒字化は政府債務が発散しないための条件なので、それを自己目的化する必要はない。ゼロ金利では財政赤字を拡大する余地があるが、問題は何に使うかである。ゼロ金利が永遠に続くなら、激増する社会保障費に使うことが合理的だが、こういう長期支出は将来金利が上がったとき、減らすわけには行かない。むしろ非裁量的なバラマキが望ましいのだ。

それがヘリコプターマネーである。これは中央銀行が市中銀行から国債を買う「財政ファイナンス」と同義と考えられているが、本来のヘリマネは銀行を通さないで国民にばらまくものだ。ブランシャールは、中央銀行が直接、国民の銀行口座に入金する国民の量的緩和を推奨している。これは銀行を通さない「ヘリマネ型の量的緩和」ともいえよう。

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地球温暖化は1万2000年前から始まった

人類と気候の10万年史 過去に何が起きたのか、これから何が起こるのか (ブルーバックス)
2019年の地球の平均気温は、観測史上2番目だったという。この「観測史上」というのが曲者で、気温が観測され始めた1850年から現在までの170年は、46億年の地球の歴史の中では一瞬である。西暦1000年ごろは今よりも暖かく、グリーンランドはその名の通りグリーンだった。

ではそれより長い地質学的なスケールで見ると、現代はどう位置づけられるのだろうか。そういう研究が正確にできるようになったのは、最近のことである。地層に含まれる炭素の放射性同位元素の量を測定して、その年代の気候が正確に推定できるようになったのだ。

福井県にある水月湖には、そういう年縞と呼ばれる地層がきわめて安定して蓄積されており、過去15万年の気候を推定できる。これは世界的にも珍しいサンプルで、今ではこの分野の世界標準になっているという。次の図が、本書の156~7ページにある水月湖の気候の歴史である。

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この図でわかるのは、地球の気温は氷河期と温暖期を繰り返しているが、今は例外的に温暖な時代だということである。気温の最大の周期は地球の公転軌道の変化で起こるが、その軌道は徐々に楕円から円に近づき、地球は太陽から離れて寒冷化してきた。ところが農耕が始まった1万2000年前から、そのトレンドから飛び離れて温暖化した。地球温暖化は、産業革命以後の出来事ではないのだ。
 
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原発の停止で数万人の生命が失われた

四国電力の伊方原発3号機の運転差し止めを求めた仮処分の抗告審で、広島高裁は運転の差し止めを認める決定をした。決定の理由の一つは、2017年の広島高裁決定と同じく「9万年前に阿蘇山の約160キロ先に火砕流が到達した」からだという。裁判官は原発に9万年のゼロリスクを求めているのだろう。

しかし原発を止めても、エネルギー需要は変わらない。原発の電力が減った分は、輸入した化石燃料を余計に燃やすだけだ。原発の代わりに化石燃料を燃やすと、四国の人々の生活は安全になるのだろうか。

続きはアゴラで。

MMTって何?

このごろ日本でMMT(現代貨幣理論)という理論が流行しています。これは50年ぐらい前からある話で、現代的でも貨幣理論でもないのですが、アベノミクスが手詰まりになった日本で今ごろ話題になっています。

MMTは基本的にはケインズ理論の焼き直しで、目新しい点はありませんが、おもしろいのは内生的貨幣供給説です。これはお金の流通量は資金需要で決まるので、預金の制約を受けないという説です。

たとえばA社がB銀行に口座をもっているとしましょう。B銀行がA社に1億円貸し出すとき、1億円の札束を持って行くわけではありません。B銀行のA社の口座に、万年筆で「1億円」と書いたら終わりです。

これを万年筆マネーといいます。現代では「キーボードマネー」といったほうがいいと思いますが、ここでは銀行貸し出しは、預金がなくてもできるフリーランチのように見えます。

続きはアゴラで。

「不自然なテクノロジー」が人類を救う

21世紀の啓蒙 上: 理性、科学、ヒューマニズム、進歩
啓蒙主義は退屈である。人類の直面している問題はテクノロジーで解決できるという進歩主義は軽蔑され、アドルノ=ホルクハイマーのように「啓蒙の生んだテクノロジーが人類のコントロールを超えた」と批判するのが知識人だと思われている。

しかし彼らの終末論的な予想に反して、1900年に約30歳だった世界の平均寿命は今は71歳になり、1800年に世界の人口の90%を超えていた極貧層(1日の所得2ドル以下)は10%以下になった。本書のアメリカ的な啓蒙主義に思想的な深みはないが、それによって人類は幸福になったのだ。

テクノロジーは平和と安全をもたらした。核兵器によって戦争は大きく減り、20世紀後半は歴史上もっとも平和な時代になった。原子力は、毎年100万人が大気汚染で死んでいる石炭よりはるかに安全なエネルギーである。それは地球温暖化の合理的な解決策でもある。

不安定な再生可能エネルギーは、化石燃料の代わりにはならない。それを「自然エネルギー」と呼ぶのは間違いだ。太陽光発電も風力発電も高度なテクノロジーであり、環境破壊の原因である。エコロジストの元祖スチュワート・ブランドも指摘したように、大昔から人類は農林業で自然を破壊して生き延びてきた。これからも人類の問題を解決するのは、不自然なテクノロジーしかないのだ。

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