中国の官僚はなぜ腐敗するのか

腐敗と格差の中国史 (NHK出版新書)
習近平政権では、よく「腐敗の追放」と称して幹部が粛清される。その実態は派閥抗争だが、海外に数千億円の資産をもっているといった桁違いの腐敗が報じられる。中国は伝統的に、と呼ばれるごく一部の特権階級と、と呼ばれる圧倒的多数の民衆の格差社会なのだ。

士は伝統的には世襲の貴族だったが、10世紀ごろから科挙で選ばれた官僚が「士大夫」と呼ばれるようになった。しかし科挙で選ばれるは1万人に一人ぐらいの秀才で、全国を転勤するので、地元のことはわからない。そこで地元で(日本でいうとノンキャリアの)が雇われ、ほとんどの実務は吏がやるようになった。

官には俸給が払われたが、吏は無給だったので民衆から賄賂を取った。中国では腐敗が制度化されたのだ。官の選抜は厳格だったが、吏は官のコネで雇われたので、士大夫に寄生する数万人の宗族(父系の疑似親族集団)ができた。吏は民衆から賄賂を取って一族に分配することが義務になり、腐敗は組織的で大規模になった。続きを読む

地球温暖化は熱帯の防災問題である

グレタ・トゥーンベリの演説を聞いた人は人類の絶滅が迫っていると思うかもしれないが、幸いなことにそうではない。25日発表されたIPCCの海洋・雪氷圏特別報告書(SROCC)では、従来の気温上昇予測(第5次評価報告書)にもとづいて海面上昇がどうなるかを予測している。

2300年までの平均海面上昇の予測(SROCC Fig.4.8)

続きはアゴラで。

最低賃金の引き上げで中小企業を減らせ

国運の分岐点 中小企業改革で再び輝くか、中国の属国になるか (講談社+α新書)
労働人口が毎年1%減る日本でGDPを維持するには、労働生産性を高めるしかない。これは算術的に自明で、アトキンソンもかねて主張してきたことだが、どうやって生産性を高めるかは自明ではない。それについて本書は、中小企業を減らすという具体的な政策を提案している。

その理由は単純である。中小企業が多すぎるからだ。その原因を著者は「1964年問題」に求める。戦後日本の企業の平均従業員数は25人程度で推移してきたが、1964年から大きく減り始め、1986年には12.9人まで減った。この原因は明らかで、図のように労働人口の増加以上のペースで企業の数が増えたからだ。

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1964年に日本は OECD に加盟して資本の自由化を義務づけられ、100%外資企業が認められることになった。これに対して日本の企業は株式の持ち合いを進め、非上場の中小企業を増やした。1963年には中小企業基本法が制定され、中小企業には税の優遇策がとられた。法人税率は40%だったが、資本金1億円以下の中小企業の税率は28%だった。

このように税制で優遇され、補助金や規制で手厚い保護が行われたため、高度成長期に増えた労働人口の受け皿として中小企業が激増した。特に地方の小売業・サービス業の規模が拡大しないまま、大型店に反対して経営の効率化が立ち遅れた。サービス業では中小企業の労働生産性は大企業のほぼ半分で、賃金もそれに見合っている。それが日本のサービス業の生産性が低い原因だ。

これを打開するために著者が提案するのは、最低賃金の引き上げである。安倍政権も、最低賃金を全国一律1000円に引き上げることを検討している。これには地方の中小企業が強く反対しているが、それが著者のねらいである。最低賃金も払えない非効率な中小企業を退場させ、経営統合を進めるのだ。

続きは9月30日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで。

子供を使って再エネ投資でもうける環境NGO



国連温暖化サミットで、小泉環境相の「セクシー」発言と並んで話題になったのが、スウェーデンの16歳の女の子、グレタ・トゥーンベリの演説だ。その動画を見るとわかるが、彼女の表情は大げさで芝居がかっているが、原稿を読んでいるだけで、記者会見にも応じない。その内容はこんな感じだ。
人々は苦しんでいます。人々は死んでいます。生態系は崩壊しつつあります。私たちは、大量絶滅の始まりにいるのです。なのに、あなた方が話すことは、お金のことや、永遠に続く経済成長というおとぎ話ばかり。よく、そんなことが言えますね。
ありふれた活動家の演説で、16歳でなければ、だれも相手にしないだろう。彼女がよく引用するIPCCの報告書も、実は読んでいない。IPCCは人類が「大量絶滅」するなどとは書いていない。IPCCが予想しているのは、2100年までに地球の平均気温が3℃程度上がるだろうということだ。それによって穀物の生産は増えるが、人類が絶滅することはありえない。

グレタは高校にも行かないで各国を回って演説し、デモに参加している。彼女のメディア・プロモーションをやっているのは、Standpointによれば、スウェーデン の環境NGOである。その目的はヨーロッパ全体で原発と火力発電を止め、彼らの投資している再エネに政府の補助金を出させることだ。その代表は「グレタは道具だ」という。国連への出席は、彼らにとっては大勝利である。

続きは9月30日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで。

牛のゲップは地球温暖化の脅威である

小泉進次郎環境相は国連温暖化サミットの前夜に、ニューヨークのステーキハウスに行ったらしい。彼は牛のゲップが地球温暖化の大きな原因だということを知っているだろうか。

世界の温室効果ガスのうち、メタンは15.8%(CO2換算)を占める。これはメタンの温室効果が、CO2の28倍と高いためだ。



次にメタンのうち最大の24%を占めるのが消化管内発酵つまりゲップやオナラである。これは「牛、水牛、めん羊、山羊などの反芻動物は複胃を持っており、第一胃でセルロース等を分解するために嫌気的発酵を行い、その際にメタンが発生する」 からだ(国立環境研究所)。

続きはアゴラで。

朝鮮人は日本に同化して「皇民」になった



日本と韓国の問題は本質的には歴史認識、特に日韓併合をめぐる認識の違いである。その答は、国際法的には明らかだ。1910年の日韓併合条約は大日本帝国と大韓帝国の間で合法的に結ばれ、英米にも承認された。それが武力による威嚇の結果だという証拠は何もない。

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「PCB汚染」はNHKの報道災害だった

福島でトリチウムが騒がれているが、これは普通の水にも含まれている、ほぼ無害といってよい物質である。こういう物質がいったん有毒物質として騒がれると、それが科学的には無害とわかっても、莫大なコストをかけて処理しなければならない。

私が取材する側として経験したのが、PCB(ポリ塩化ビフェニール)である。これは1万4000人が食中毒になったカネミ油症事件の原因とされたが、瀬戸内海の魚からPCBが検出されたことをNHKがスクープし、全国で魚が売れなくなるパニックが発生した。PCBの製造・輸入は禁止され、それを使った製品はすべて廃棄され、いまだに最終処分できないまま大量に貯蔵されている。

しかしその後の調査で、食中毒の原因は熱媒体として使われていたPCBではなく、それが加熱されてできたダイオキシンであることがわかった。中西準子氏の研究でも、ライスオイル中毒の原因はPCBではなくダイオキシンだったと結論している。

これはNHKも早くから気づいていた。私がPCB問題を取材した1980年代から「原因はダイオキシンだ」という研究発表が出ていたが、NHKは無視した。それを認めると、大スクープが誤報ということになってしまうからだ。そして原因がダイオキシンだということがわかると、今度はダイオキシン騒動が起こった。

続きは9月23日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで。

中国は「漢字文化」ではない

中国文明の歴史 (講談社現代新書)
中国を語るとき「漢字文化」とか「漢民族の伝統」という言葉で語るが、そういう文化が 2000年前からあったわけではない。漢字は中国にもともとあった言葉ではなく、古代に中国大陸に集まった多くの民族は、それぞれの口語を使っていた。

漢字はそれとはまったく違う、商人の人工的な共通語だった。もとは取引に使う符号だったので単純で、時制も接続語もなく、感情を表わす言葉がほとんどなかった。複雑な概念を表現するため、漢字を組み合わせて新しい漢字をつくったので、どんどん増えて発音もバラバラになった。

その読み方を統一したのが601年に書かれた『切韻』で、これが科挙の試験に採用された。民族にも身分にも関係なく、すべての男子から官僚を登用する科挙は、教育に大きな影響を与えた。初期の科挙は詩をつくる能力を試すだけだったので、漢字を教える学校がたくさんでき、人々は競って漢字を学んだ。

口語も漢字の文法に合わせて再編され、その組み合わせで表現できるようになった。多くの民族の雑多な言語が漢字で統一され、今の中国語の原型となった。漢民族という概念も、漢字によって生まれた。「中国」という概念はもっと新しく、19世紀にできたものだ。

アゴラ読書塾「東アジアを疑う」では、中国や韓国への先入観を見直し、日本人が彼らを理解できるのかどうかを考えたい。

続きは9月23日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで。

小泉進次郎氏は原発処理水の問題を打開できる

大阪市の松井市長が「福島の原発処理水を大阪に運んで流してもいい」と提案した。首長がこういう提案するのはいいが、福島第一原発にあるトリチウム(と結合した水)は57ミリリットル。それを海に流すために100万トンの水を大阪湾までタンカーで運ぶのは、膨大な無駄である。

国や自治体がカネを出す気なら、もっと効果的な方法がある。今や障害は福島県漁連しか残っていない。彼らは福島第一原発の沖では操業していないが、今も「風評被害」を理由にして海洋放出に反対している。

彼らが(暗に)求めているのは漁業補償の上積みだが、それを誰も言い出せない。東電はすでに休業補償を出したので、2度カネを出すことができない。だから漁業補償とは違う形で、カネを出すしくみを作ればいいのだ。



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「正社員」はグローバル化できない

日本社会のしくみ 雇用・教育・福祉の歴史社会学 (講談社現代新書)
小熊英二氏の本はいつも冗漫だ。本書も新書なのに600ページもある。「日本社会のしくみ」と銘打っているが、中身は日本的雇用慣行の話で、ほとんどは経済学の文献サーベイだ。おさらいとしては便利だが、経済学を学んだ人が読む価値はない。

終身雇用・年功序列などと呼ばれる日本的雇用慣行は、普遍的なものではない。日本の労働政策は大企業の正社員を理想としているが、こういう「大企業型」の雇用形態は労働者全体の25%程度で、それ以外の「地元型」(中小企業)が35%、「残余型」(非正規)が40%である。

その待遇の差は大きく、大企業型以外の労働者は雇用を保障されていない。正社員と非正社員の賃金格差は(時給ベースで)ほぼ2倍というのが、戦後の定型的事実である。 これが「二重構造」として多くの労働経済学者が批判してきた問題だが、正社員はメンバーシップなので、社員が会社に人的投資するには、レント(競争的な水準を超える賃金)が必要だ。

こういう本書の労働観は、もう一昔前の話だ。グローバル化やITで正社員の価値は下がり、大企業型の必要な仕事はもう労働人口の1割もないだろう。それでも厚労省は正社員を理想とし、安倍首相は「非正規という言葉を一掃する」という。この言葉は逆の意味で実現するだろう。雇用規制をきらう大企業は海外に出て行き、非正社員はコンピュータに置き換えられ、正社員を抱える中小企業は消えてゆくからだ。

続きは9月23日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで。






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