使用ずみ核燃料を「核のゴミ」にしない方法

核兵器と原発 日本が抱える「核」のジレンマ (講談社現代新書)
著者は原発反対派ではないが、核燃料サイクルには反対で、「核の傘」は神話だという。私は核兵器についての意見には賛成できないが、原発についてはおおむね賛成だ。特に核燃料サイクルは技術的に行き詰まっており、高速増殖炉なしでは採算が合わない。

余剰プルトニウムをプルサーマルですべて消費することは不可能で、六ヶ所村の再処理工場を動かすと膨大な赤字を生み出す。再処理工場が稼働する見通しが立たないので、むつ市に完成した中間貯蔵施設も使えない。これはあくまでも再処理工場に「早期に搬出」するための施設なので、再処理工場が動かないとサイクル全体が止まってしまうのだ。その拒否権は青森県知事がもっている。

この打開策は政府が直接処分のオプションを認めるしかないが、これには電力会社が反対している。使い道のなくなった使用ずみ核燃料が「核のゴミ」になるからだ。電力会社のバランスシートでは使用ずみ核燃料は「資産」として計上されているが、直接処分にするとそれは膨大な「負債」になり、巨額の減損処理が発生して債務超過になる会社も出てくる。電力会社はそれを恐れているのだが、本書も指摘するように、現実にはすでに負債は発生している。

これは会計処理上の問題なので、法改正で対応可能だ。日本の所有する47トンのプルトニウムのうち、海外に再処理を委託した37トンは、まだ海外に保管されている。イギリス政府はこれをそのまま保管し、その維持費を所有国(日本)が負担するという方法を2011年に提案した。これは実質的に日本の所有するプルトニウムをイギリスに譲渡するものだが、引き続き電力会社の資産として計上できるなら、検討に値するのではないか。

続きは12月25日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンでどうぞ。

VHF帯で無線インターネットを



きのうのシンポジウムで原英史さんもいったように、電波の制度は20年以上変わっていない。その間に、電波は有線の通信を補完するインフラから主役に変わったのに、制度がそれに対応していないのだ。オークションばかり話題になるが、それは改革の一部にすぎない。

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トリチウムも流せない安倍政権には何もできない

復興の日本人論 誰も書かなかった福島
福島第一原発事故とは何だったのだろうか。それが初期に多くの人に恐怖を与え、避難で多大な被害が生じたことは事実だが、避難は結果的には無意味だった。国連科学委員会などすべての科学的調査が指摘するように、福島で人体に影響を及ぼす放射線障害は生じておらず、今後も起こるとは考えられない。

莫大な損害が発生したにもかかわらず、人的被害がゼロだということは、発生した被害はすべて風評被害だということを意味する。福島第一では毎日、7000人の作業員が廃炉作業に携わっている。最大の仕事はサイト内の「汚染水」を貯水タンクに集める作業だが、その水が流せないのでタンクは1000基にのぼる。

著者は「これを見たとき、私はほとんど絶望のような感じをもった。こんなことを10年も20年も続けられるはずがない」という。特に問題なのは、浄化装置で除去できないトリチウム(三重水素)である。これは水素の放射性同位体で、ごく微量のベータ線を出すが、化学的には水と同じなので、世界では薄めて流すのが普通だ。日本でも他の原発はそうしているが、福島第一だけは「汚染水」をいやがる漁協の反対で流せない。

原子力規制委員会の田中前委員長は「トリチウムは薄めて流せばいい」と助言し、東電の川村会長もその意向だったが、今年7月に吉野復興相が反対して流せなくなった。安倍首相が「流せる」といえば流せるが、政権は動かない。電力関係者は「トリチウムも流せない政治には何もできない」と自嘲する。

続きは12月25日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンでどうぞ。

安保反対運動は何に反対したのか

私が子供のころ、初めて聞いた政治用語は「アンポ反対」だった。もちろん意味はわからなかったが、今もわからない。60年安保で、野党や知識人や全学連は何に反対していたのだろうか。一般には岸首相が「強行採決」で野党の反対を押し切ったと思われているが、最初に旧安保条約を問題にしたのは野党だった。

1957年2月4日の衆議院本会議で、社会党委員長の鈴木茂三郎は「日本民族の独立のための不平等条約の改廃」を求めた。そのきっかけは砂川事件で、米軍が日本に自由に基地を置ける安保条約は不平等条約だ、というのが野党の主張だった。これに対して岸信介(首相臨時代理)は「自力によるところの防衛状態が完備した状態において改正を考えたい」と答弁した。

野党の中でも左派は安保条約の破棄を主張したが、右派は破棄は現実的ではないといい、その妥協で安保改定に反対という統一要求が掲げられた。これでは肝心の不平等条約を改正するなという要求になってしまうが、誰もおかしいと思わなかったのだろうか。来年1月からのアゴラ読書塾「戦後史を疑う」では、こういう戦後史の疑問点を考えたい。

続きは12月18日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンでどうぞ。

アゴラ読書塾 2018年1~3月「戦後史を疑う」

集団的自衛権の思想史──憲法九条と日米安保 (風のビブリオ)日本の戦後史には、二つの見方があります。一つは侵略戦争の反省から日本は新憲法をつくり、平和国家を築いてきたというステレオタイプ、もう一つは憲法を占領軍の押しつけと批判し、日米同盟を「対米従属」と批判して、憲法を改正して日本の誇りを取り戻さなければならないというルサンチマンです。

しかし事実に即して歴史をみると、どっちの見方にも疑問があります。憲法の草案を書いたのは占領軍でしたが、それを修正して制定したのは日本の議会でした。講和条約のとき憲法を改正するチャンスはあったのに、なぜ日本は見送ったのでしょうか。自民党は憲法改正を党是としながら、なぜ今まで放置してきたのでしょうか。

1960年の安保反対運動は大きな盛り上がりを見せましたが、新条約のどこがいけなかったのでしょうか。1972年の沖縄返還では「核持ち込みの密約」が争点になりましたが、核は持ち込まれたのでしょうか。このとき集団的自衛権の行使を違憲とする政府見解が出されましたが、なぜ集団的自衛権だけが違憲になったのでしょうか。

続きはアゴラで。

沖縄の「核密約」は必要だったのか

佐藤栄作 最長不倒政権への道 (朝日選書)
戦後の日米関係は密約だらけで、その全貌がわかってきたのは最近である。特に重要なのは、沖縄返還の際に佐藤栄作がニクソンと結んだ「核密約」だ。1969年に日米共同声明で「核抜き・本土並み」の返還が決まったのと同時に「有事の核持ち込み」を日米首脳の「議事録」で約束していた。

その存在は佐藤の密使としてキッシンジャーと交渉した若泉敬が著書で明らかにし、「密約なしで沖縄返還は実現できなかった」と主張した。2009年に民主党政権が密約の存在を確認したが、正式の外交文書とは認めなかった。それは日米首脳が私的にかわしたメモであり、のちの首相にも引き継がれていないからだ。

実際には返還以降、沖縄に核が配備されたことはない。米軍の核兵器の主力は原潜に搭載したSLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)になっており、沖縄の基地に配備する必要はないからだ。では返還交渉で「核抜き」が最大の争点になり、密約までかわされたのはなぜか?

本書は交渉の経緯を最新の資料で検証した結果、「核密約が必要だったかどうかは疑問だ」という。当時すでに沖縄に配備された戦術核(メースB)は旧式になり、SLBMの射程距離のほうが大きかった。もともと米軍は戦術核を撤去する予定だったが、日米交渉でそれを返還の条件にして(本当の目的である)基地の自由使用を維持するのがねらいだったのではないか。

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日米原子力協定で買った「核の傘」



来年、日米原子力協定の30年目の期限が来る。今のところ自動延長されるようだが、その意味は複雑だ。日本では核燃料サイクルはエネルギー問題としか理解されていないので、民主党政権は2012年に「原発ゼロ」を決め、アメリカに「余剰プルトニウムはどうするんだ」と突っ込まれて撤回した。その本質はアメリカの核戦略である。

もともとアメリカは原子力技術をいっさい国外に出したくなかったが、ソ連がそれを入手したため、1950年代には日本に「平和利用」の技術を売り込んだ。しかし核が世界に拡散すると核拡散防止条約(NPT)で核を独占しようとし、核燃料サイクルも1977年にカーター政権がやめ、日本にもやめるよう求めた。

これに日本が反発し、東海村で再処理を続けたので、アメリカはその核燃料を国際原子力機関(IAEA)が個別に査察しないと再処理できないしくみにした。これでは商業運転はできないので日本が改善を求め、10年以上の交渉の末、再処理にアメリカが包括的事前同意する原子力協定が1988年に結ばれた。金子氏はそのときの交渉官である。

この協定は二国間協定でNPTの例外をつくる特別待遇だったが、このとき日本は再処理でできたプルトニウムをすべて平和利用で消費することを約束した。これによって(よくも悪くも)日米同盟の形が決まった。いわば日本は核武装しないことを約束してアメリカの「核の傘」を買ったのだが、この約束は守れるのだろうか。

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楽天は「第4のキャリア」になれるか

楽天が携帯キャリアへの参入を表明した。適時開示によると、総務省が今年度中に比較審査で割り当てる予定の1.7GHz帯と3.4GHz帯の割り当てを受けようということらしい。業界には懐疑的な見方が多く、楽天の株価は下がったが、私はチャンスはあると思う。その最大の理由は、日本では通信に適した帯域の電波が余っているからだ。


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テレビ局の恐れる「幻の黒船」

電波改革が混乱しているのは、オークションが過剰に政治的に取り上げられたためだと思う。通信業界ではオークションは世界的に当たり前なので、それほど強い反対はなかったが、日本では民放が強く反対してきた。電波をオークションで割り当てると、マードックやクアルコムのような外資が入ってくることを心配したのだ。県域放送で過少資本の民放は、大資本とは競争できない。

それは1990年代までは、根拠のない心配ではなかった。国内でも松下電器やソニーが、テレビに参入しようとした。これを民放連は政治的に阻止したが、松下はWOWOWで放送衛星に参入し、ソニーはスカパーで通信衛星に参入した。このころは地上波をふさいで、新たなチャンネルを締め出すことが重要だった。地デジで最大8chしか使っていないUHF帯が40chあいたときも、チャンネルが全部ふさがっていることにしたのだ。

しかし時代は変わった。いま地上波テレビに入ってくる局はない(新規参入は1993年のMXが最後)。放送なら中継器1本で全国に放送できるCSのほうがはるかに効率的なので、いま地上波をテレビに割り当てる国はない。電波が足りないのは、モバイル・インターネットである。ところが民放連がいまだに地上波に参入する「幻の黒船」を恐れているおかげで、貴重な電波が浪費されている。

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エネルギー問題に民主主義は有効か

デモクラシーの歴史は長くない。それを古代ギリシャのような特権階級の自治制度と考えれば古くからあるが、普通選挙にもとづく民主政治が世界の主流になったのは20世紀後半であり、それによって正しい意思決定ができる保証もない。特に長期的な意思決定には適していない。



この図は1956年にハバートの描いた「長い夜に燃やす1本のマッチ」で、化石燃料があと数百年で枯渇することを示している。彼の「ピークオイル」論は間違っており、化石燃料の生産はあと100年ぐらいは枯渇しないと思われるが、非在来型を含めてもあと1000年続くことはない。

続きはアゴラで。






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