物価が「正常化」すると何倍になるか



佐藤主水氏がFTPLの解説をしている。彼の表現では「公債残高(名目額)/今期の物価水準=Σ将来に渡る基礎的財政収支(実質ベース)の現在割引価値」だから、物価水準は次のように決まる:

 今期の物価水準=公債残高/プライマリー黒字の割引現在価値

これは私の式と同じだが、公債残高(正確には名目政府債務)は約1100兆円で、中期財政計画ではプライマリー・バランス(右辺の分母)は2020年でも赤字だから、右辺はマイナスだ。したがって現状は明らかに「非リカーディアン不均衡」なので、横断性条件(ネズミ講の非存在)を仮定すると、いずれインフレで「正常化」して非リカーディアン均衡になる。そのとき物価は何倍になるだろうか?

続きは2月20日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンでどうぞ。

時間はなぜ未来から過去へ流れないのか

確実性の終焉―時間と量子論、二つのパラドクスの解決
安倍政権は去年「未来への投資を実現する経済対策」を閣議決定したが、「過去への投資」はあるのだろうか。首相官邸のスタッフと、サンクコストを再稼動の費用に計上する反原発派の脳内には、あるのかもしれない。原発の建設工事を完全に逆転できるならすべて可変費用になり、東芝の経営危機は簡単に解決できる。

それは冗談だが、物理学では時間は逆転できる。たとえば落体の法則は、落下距離をv、重力の加速度をg、時間をtとすると、v=½gt2だが、この式はtをマイナスにしても成り立つ。ボールが落ちるビデオを逆転しても、そのボールは古典力学の法則に従っているのだ。それは量子力学でも同じで、シュレーディンガー方程式は時間について対称である。

ではなぜ日常生活では、時間は未来から過去へ流れないのだろうか。わからない、というのが物理学の標準的な答である。これは直観に反するので「時間の矢」が本質的だと考えたのが、プリゴジンの非平衡系の熱力学だが、それも古典力学の特殊な場合だった。よくある反論が「熱力学の第2法則では時間は不可逆だ」という話だが、それは違うのだ。

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【GEPR】東電と東芝の会社整理を考える

朝日新聞の「(争論)21.5兆円、私も払う?」という記事で、アゴラにもたびたび登場する竹内純子氏と、反原発派の除本理史氏の意見が紹介されている。

このタイトルは意味不明である。21兆5000億円の「賠償・廃炉・除染」費用が本当に必要なら、誰かが払うしかない。それを東電が払っても最終的には利用者に転嫁され、東電が負担できなければ税金を投入するしかない。「なぜ私企業が起こした事故の尻ぬぐいを、私たちがしないといけないのでしょうか」という除本氏は、金がなくなったら事故処理をやめろというのか。

続きはアゴラで。

大学の誕生と死

大学の誕生〈上〉帝国大学の時代 (中公新書)
現在の大学は、ウォーラーステインも指摘するように中世のuniversityとは無関係だ。それはuniversalとも無関係で、uniは「学生が一つの組合で職業知識を得る専門学校」という意味だったが、そのうち教師のギルドになり、中世が終わると消え去った。

19世紀のドイツでできた大学は、これを名前だけ継承した新しい教育機関で、英米の亡びかけていた神学校も、ドイツ的な教養主義に転向して生き残った。日本の高等教育は、明治初期は語学中心の専門学校の時代だったが、次第に官吏養成機関である帝国大学を中心とするドイツ型になった。

戦時体制で帝大を頂点とする大学中心の学制に変更され、ドイツ的教養主義が戦後も続いているため、日本の大学は実務的な知識をほとんど教えない。世界的に「大学バブル」が問題になり、ユニバーシティからカレッジへの転換が進んでいる。日本も明治期のように多様な専門学校を育てる必要がある。

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高校無償化は子供を食い物にする「教育ポピュリズム」

日経新聞が「小池知事の高校無償化は自治体のポピュリズム競争を生み出す」と警告している。東京都は来年度予算案で、私立高校の生徒への補助金の世帯年収の上限を「760万円未満」と全国最高にするが、表のように埼玉県も追随して609万円に引き上げる。

高校無償化には公明党が熱心で、これに反対する会派はない。それどころか自民党も、「教育国債」で大学を無償化する案を検討している。民進党も同じような案を考えており、維新は「憲法改正で教育を無償化する」という方針を掲げている。何でもいいから憲法を改正したい安倍首相も、これに前向きだ。

続きはアゴラで。

「徳川幕府」は平和ボケで自壊した

東アジアの王権と思想 増補新装版
日本の「保守派」に特有の錯覚は、明治時代の制度や文化を「日本古来の伝統」として美化することだ。彼らにとっては、靖国神社に代表される「国体」を復古し、「幕府」を倒して天皇を本来の地位に戻したのが明治維新だということになっている。

しかし幕府というのは、徳川家の使った言葉ではない。「鎌倉幕府」も「室町幕府」も、当時の名称ではなかった。それは後期水戸学(藤田幽谷)が、主権者たる天皇の任命した将軍が天皇の地位を簒奪した、という彼らの倒錯した歴史観を正当化するために使い始めた蔑称である。

だから「勤王の志士」が維新を実現したというのも司馬遼太郎のお話で、徳川政治体制は構造的に自壊したのだ。その原因は尊王でも攘夷でもなく、250年の天下泰平の中で武士に浸透した「平和ボケ」だった。

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重力はなぜ距離の2乗に反比例するのか

昔、廣松渉のゼミで、彼が「重力はなぜ距離の2乗に反比例するのか?」という問題を出したことがある。科学哲学はみんな理系だから、ある院生が「3次元空間だからです」と即答した。すると廣松が「この教室で実測して1.99乗だったらどうするの?」と聞くと、院生は言葉に詰まってしまった。廣松は「それはガリレオがいったように、世界は数学の言葉で書かれてるからだよ」と笑った。

物理学では、法則に反する事実が見つかったら法則は「反証」される。重力がどこで計測しても1.99乗にも2.01乗にもならないのは、偶然に過ぎない。これはヒュームの問題と呼ばれる重要なパラドックスで、ポストモダン界隈では今ごろそれを解決したと称する笑い話が出ているが、これは誤りである。その答は存在しない、というのが正しい答なのだ。

続きは2月13日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンでどうぞ。

日本にはなぜポピュリズムが生まれないのか

NYタイムズに船橋洋一氏が、「なぜ日本にポピュリズムが生まれないのか」という記事を書いている。テーマはおもしろいが中身は的外れで、朝日新聞的なリベラルがポピュリズムを理解できないことを示している。

トランプのようなカリスマが日本に生まれないのは、社会がそういうふうに周到に仕組まれているからだ。歴史上でカリスマ的な権力者といえるのは後醍醐天皇と織田信長ぐらいで、どっちも挫折した。1930年代にファシズムが流行したときも、日本では近衛文麿のような「みこし」しか出てこなかった。そして安倍首相は、近衛型リーダーなのだ。

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大統領と議会と裁判所のエッシャー的循環



きのうのVlogでは「大統領令の差し止め訴訟は、連邦最高裁で連邦政府が負けるだろう」と予想したが、予想より早く連邦政府が上訴をあきらめ、政府の敗北が確定した。この大統領令は一種の「お試し」で、トランプは別の大統領令を考えているようだ。

ただ大統領令が司法で差し止められたという事実は重い。合衆国憲法では大統領の権限は弱く、法案提出権は連邦議会にしかないが、大統領はその例外として大統領令を出すことができる。これに議会が同意しない場合は訴訟で決着をつけるが、その最終決着をつける連邦最高裁の判事は大統領が指名する。つまり

 大統領<連邦議会<連邦最高裁<大統領…

というエッシャー的な無限ループになっている。本場の「立憲主義」は、ガラパゴス憲法学者や朝日新聞の考えているほど単純ではないのだ。本当の最高権力はどこにあるのだろうか?

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世界経済は「アナーキーという均衡」に向かう

安倍首相が、トランプ大統領と日米首脳会談を行う。TPPが焦点だが、もうトランプが正式に破棄したので、日米FTAで仕切り直すしかないだろう。。世界が1930年代のようなブロック経済に向かうことは、一時的には避けられない。これで世界は大混乱の不均衡状態になると思っている人が多いが、逆である。世界はナッシュ均衡に向かうのだ。
pd


続きはアゴラで。






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