「内閣改造」という悪習が無能な長期政権を生む

北村誠吾地方創生担当相(72)の答弁をめぐって、国会が紛糾している。野党は新型肺炎もそっちのけで彼の失言を引き出すことに熱中し、答弁を補助する官僚の「政府参考人」にも反対している。

こういう騒ぎは珍しいことではない。55年体制では野党が「爆弾質問」を出し、閣僚がそれに答えられないと審議を止めることは日常茶飯事だった。その対策として、局長級の官僚が政府委員として国会に出席する慣例ができた。

これが政治家の官僚依存をまねき、「それは大事な問題ですから政府委員に答弁させます」という閣僚も出てきたため、2001年に政府委員は廃止された。これは政治主導という理念からは当然だが、北村大臣のように当事者能力のない閣僚が多いため、官僚が答弁を準備して「大臣レク」する負担が増えた。

続きはアゴラで。

「ステイクホルダー資本主義」の幻想

企業所有論:組織の所有アプローチ
CSR(企業の社会的責任)とかESG(環境・社会・ガバナンス)など、株主以外の利益を投資の指標にするステイクホルダー資本主義は昔からある話だが、うまく行った例は少ない。かつてその手本とされた日本の「労働者管理企業」も幻想だった。

本書は企業だけでなくNPOまで含めた経営形態を比較し、どういうガバナンスが望ましいかを「法と経済学」の立場から論じた古典である。その結論は、ボトルネックになる生産要素をもつステイクホルダーだけにコントロール権を与えることが効率的だということだ。企業の最大のボトルネックは資本設備なので、株主が企業をコントロールし、他の生産要素は契約で調達することが望ましい。

もう一つのボトルネックは人的投資だが、労働組合にもコントロール権を与えて労使交渉で投資を決定する労働者管理企業は失敗することが多い。投資が失敗しても労働組合は責任を負わないので、労働者の利益を優先して資本を浪費するからだ。

こういう無責任なステイクホルダーは、ESGのように「公益」を主張することが多いが、それが本当に公益になるかどうかはわからない。少なくとも日本では、企業がCO2を削減するコストはその利益より大きいので、ESG投資は企業価値を毀損するおそれが強い。将来それがわかったとき投資ファンドは責任を取るのだろうか。

続きは2月10日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで(初月無料)。

CO2は地球を緑化する

昨年発表されたIPCCの土地利用に関する報告書では、大気中のCO2が増えると、温暖化で地球が砂漠化して食糧生産は低下し、穀物価格は2050年までに中央値で7.6%(最大23%)上昇すると予想しているが、これはおかしい。炭素は光合成で植物の生長を促進するので、CO2が増えることは肥料と同じ効果(施肥効果)があるからだ。

この効果はIPCCも認めている。次の図は国立環境研究所の増冨祐司氏がIPPCの第4次評価報告書をもとに描いたものだ。温帯・寒帯(中・高緯度域)では産業革命前から3℃上昇までは小麦の収量は増加するが、熱帯(低緯度域)では減少する。これは熱帯の気温がもともと小麦には高すぎるためだ。

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地球温暖化による農業生産の変化

他方でCO2の施肥効果は、濃度が今の400ppmの2.5倍になっても単調に増加する。ここでC3作物と書かれているのが、米や小麦などの穀物である。こういう効果を考えると、温帯や寒帯では、CO2の増加や温暖化で農業生産が低下することは考えられない。カナダやシベリアは穀倉地帯になり、日本でも北海道の農業生産は増えるだろう。

問題は熱帯である。IPCCは次のように予測している。
土地が劣化すれば生産性が下がり、栽培できる作物が制約を受けて、土壌の炭素吸収能力も低下します。そうなれば、気候変動が激しくなるばかりか、気候変動自体がさまざまな形で土地劣化を助長することになります。

砂漠化が起きている区域には、およそ5億人が暮らしています。乾燥地や砂漠化区域は気候変動や、干ばつ、熱波、砂塵嵐などの異常気象の影響を受けやすく、世界人口の増加がさらに圧力を加えています。
これは本当だろうか。

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新型肺炎よりインフルエンザのほうが危険



新型コロナウイルスの感染が拡大し、患者は3万人、死者は600人を超えたが、死者は今のところほぼ中国に限られている。日本では25人の患者が確認され、クルーズ船では61人(うち日本人は21人)の感染が確認されたが、死者は1人も出ていない。

続きはアゴラで。

アベノミクスは「左派」の経済政策

安倍晋三と社会主義 アベノミクスは日本に何をもたらしたか (朝日新書)
安倍首相の政策は、祖父である岸信介の政策によく似ている。その根底に戦前の国家総動員体制があることは、私も何度か指摘したことがある。 この意味で安倍首相の政策を社会主義と呼ぶのは新しい話ではないが、彼が三輪寿壮に強い関心をもっていることは本書で初めて知った。

三輪は岸の大学時代の同窓で、戦前には無産政党の指導者だった。戦後は右派社会党を指導して、左右社会党を統一した。他方で岸は保守合同を実現し、自民党と社会党は政権交代できる二大政党になるはずだったが、三輪は統一直後に死去した。岸はその社会党葬で弔辞を読み、「これで政権を渡す相手がいなくなった」と嘆いたという。

岸の経済政策は、産業政策や社会保障を重視する「大きな政府」だった。国民年金や国民健康保険を国民皆保険にしたのも岸内閣である。安倍首相もそういう社会主義の遺伝子を受け継いでおり、財政・金融を拡大するアベノミクスは、世界的にみると「反緊縮」を主張する左派の経済政策だ。それが長期政権になった原因だが、日本経済の長期停滞の原因でもある。

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小泉進次郎氏の悩みを解決するたった一つの方法

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小泉環境相が悩んでいる。COP25で「日本が石炭火力を増やすのはおかしい」と批判され、政府内でも「石炭を減らせないか」と根回ししたが、相手にされなかったようだ。

彼の目標は正しい。石炭は大気汚染でもCO2排出でも最悪の燃料であり、今後22基も建設計画がある日本は先進国では突出している。それを減らそうという理想は正しいのだ。

続きはアゴラで。

人為的温暖化説は「世紀の大ウソ」か

地球温暖化 「CO2犯人説」は世紀の大ウソ
最近は「温暖化懐疑派」を悪の代名詞のように使う人がいるが、科学に懐疑は必要である。特にIPCCのシミュレーションには不確実性が大きく、科学的な疑問も多い。本書はそれを批判する専門家の論文集で、中身はまじめなのだが、きわもの的なタイトルでぶち壊しだ。

丸山茂徳氏が強調するのは「地球の平均気温は1945年ごろから1975年ごろにかけてやや下がった」という事実だが、これはIPCCも認め、第5次評価報告書で「戦後の工業化で大気汚染によるエアロゾルが増えた結果だ」と説明している。次の表で寒冷化をもたらした「他の人為起源強制力」の最大の要因が大気汚染である。

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丸山氏が温暖化の原因だと主張するのは宇宙線による雲の影響だが、これは最近のデータでは逆相関になっている。ただ戎崎俊一氏が指摘するように、雲の寒冷化効果はCO2の温室効果の5倍なので、雲を減らす要因があれば温暖化を説明できる可能性はある。こういう点でIPCCのデータはまだ不十分である。

本書には有馬純氏の「環境原理主義」批判など、もっともな議論もあるのだが、人為的温暖化説を「世紀の大ウソ」と断定するには、肝心の科学的データが弱すぎる。原理主義に対する懐疑派の批判は必要だが、もっと慎重に議論を進めるべきだ。続きを読む

脱・ 私有財産の世紀

ラディカル・マーケット 脱・私有財産の世紀: 公正な社会への資本主義と民主主義改革
マルクスが指摘したように私有財産は資本主義の必要条件だが、社会的な浪費と不平等をもたらす。それは財産を所有する者に、利用する権利と同時に独占する権利を認めるからだ。たとえば東京都心に広大な空き地があっても、地主が同意しないと売却できない。

この問題についての答は、論理的には存在する。地主に土地の評価額を自己申告させ、それに応じて資産課税するのだ。たとえば自分の土地の正しい価値を1000万円と評価する人は、売りたくなければ1000万円以上の評価額を申告すればいいが、税は高くなる。評価額を1000万円以下と申告すれば税は低くなるが、正しい価値以下で売らなければならない…と考えると、正しい価値を申告することが合理的になる。

こういう「自己申告土地税」の発想は孫文の時代からあったらしいが、一度も実施されたことはない。政治的に不可能だからである。こういう制度は日本の固定資産税のように税率が低いと機能しないので、高い税率が必要だ。本書は年7%の資産課税を提案しているが、これだと15年で土地が没収されることになる。

続きは2月3日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで(初月無料)。

地球温暖化は先進国では大した問題ではない

The Uninhabitable Earth: Life After Warming (English Edition)
アゴラで紹介したIEAのレポートは、色々な反響を呼んでいる。従来0.6℃から6℃まで大きな隔たりのあった温暖化予測(産業革命以降)が、最大でも3℃上昇に縮まったことは、各国の政策協調にとっても望ましい、とWSJは歓迎している。

だがベストセラー”Uninhabitable Earth”の著者Wallace-Wellsは困惑している。それでは「地球はもう住めなくなる」という彼の本が売れなくなるからだ。

これまで地球温暖化に悲観的だったIEAの予測が大きく変わった最大の原因は、再エネ(特に太陽光発電)の爆発的な普及だが、もう一つの原因は天然ガスの急成長である。2000年代から始まった「シェール革命」で天然ガスの生産量は倍増した。

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IEAの予想した1次エネルギー構成比(Carbon Brief

今後のエネルギー消費の増加の49%を再エネが占め、30%を天然ガスが供給するだろう。石炭の消費量は2014年をピークとして下がり始め、2030年には天然ガスが石炭を抜く、とIEAは予測している。同じころ再エネが原子力を抜いて非化石電源の主役になる。

これは人類にとってはグッドニュースだが、「このままでは人類は滅亡する」と騒いできたWallace-Wellsのようなアラーミスト(警告派)にとってはそうではない。今後2℃ぐらいの温暖化は、先進国では大した問題ではないからだ。

続きは2月3日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで(初月無料)。

地球温暖化のスピードは減速する

昨年11月に発表されたIEA(国際エネルギー機関)のWorld Energy Outlookが、ちょっと話題を呼んでいる。このレポートの地球温暖化についての分析は、来年発表されるIPCC(気候変動に関する政府間パネル)第6次評価報告書に使われるデータベースにもとづいているので、その先行リリースともいえるものだが、これまで悲観的になる一方だった推定が楽観的になっているのだ。

2013年に発表されたIPCCの第5次評価報告書の最悪のRCP8.5シナリオ(温暖化対策なし)では、2100年の地球平均気温は2000年から2.6~4.8℃上昇すると推定されていた。この4.8℃がマスコミによく出てくる数字だが、今回のIEAの推定では、これが大幅に下方修正されている。

IEAの推定は2040年までだが、このCO2増加率がそのまま2100年まで続くと想定したHausfather-Ritchieの推定によると、図1のようにCO2の実質排出量はIPCCの”No Policy”シナリオ(RCP8.5)の半分以下になる。


図1 IEAのCO2予測を2100年まで延長した推定

続きはアゴラで。






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