不良債権は「自己責任」論で金融危機に発展した

日銀の白川前総裁が、朝日新聞のインタビューに答えている。内容は近著『中央銀行』の要約になっているが、興味深いのは1990年代の不良債権処理の話だ。
――リーマン・ブラザーズを救済すれば、あれほど危機は深刻にならなかったのではないですか。

「難しいところです。たしかに危機が深刻化した直接の引き金は(米国の中銀である)FRBがリーマン救済の融資をしなかったことでした。FRBは担保不足を理由にしましたが、実は議会や国民の反発の声が非常に強かったからではないかと想像します」

「対照的なのが97年、日銀が山一証券の自主廃業の際、無制限の特別融資をしたケースです。[…]政府・日銀は日本発の世界金融危機を防ぐことを優先し、日本経済の落ち込みはリーマンの時と比べ小さくできた。だがそれゆえに抜本策の採用は遅れ、問題先送りだと批判されました」

続きはアゴラで。

「新しい冷戦」が始まるのか

中国を攻撃するトランプ大統領の方針は単なる保護主義ではなく、アメリカ政府の中で孤立しているわけでもない。それを示すのが、共和党の本流を代表するペンス副大統領が10月に行った、中国を激しく批判する演説である。Economist誌もこれを特集し、ペンス演説は「新しい冷戦の不吉な進軍ラッパのように聞こえる」と評した。

チャーチル首相は、1946年に「バルト海からアドリア海までヨーロッパ大陸に鉄のカーテンが降ろされた」と演説し、冷戦の開始を宣告した。だがその後も西側には「平和共存」を信じる人が多く、日本でも「全面講和」や「安保反対」を唱えた人々は、西側が社会民主主義になる一方、東側は市場経済を取り入れて「東西の収斂」が起こると予想していた。

その後の歴史はそれが幻想であることを示したが、冷戦の終了後、今度こそ収斂が起こると多くの人が考えた。特に市場経済化で成長した中国が政治的にも民主国家になるという期待が大きく、アメリカは中国のWTO(世界貿易機関)加盟を容認するなど、中国と和解する関与(エンゲージメント)政策を取った。しかしその後も中国の民主化は進まず、むしろ異質な文明としての性格を強めている。ペンス演説は第二の「鉄のカーテン」演説になるのだろうか。

続きは11月5日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで。

携帯料金を4割下げる方法

携帯電話に参入する予定だった楽天が、KDDIと業務提携すると発表した。これで来年秋からのサービス開始では、楽天の通信網だけではなく、KDDIとのローミングでやることになる。その代わり楽天は、ネット通販のインフラをKDDIに提供するという。

楽天は携帯に参入すると発表したとき、設備投資額を「2025年までに6000億円」と述べたが、3大キャリアの設備投資は昨年だけで合計1兆3000億円。この投資では、全国にネットワークを張りめぐらすのは困難だ。いずれ既存キャリアとの提携は避けられないとみられていたが、最初からインフラを借りるのでは、KDDIの顧客を奪うような低料金を出すことはできないだろう。

菅官房長官が「携帯料金は4割下げられる」という発言は大きな反響を呼んでいるが、今のスマホの処理能力は1990年の大型コンピュータを上回る。PCの価格は90年代の1割以下になっているのだから、通信料金を4割下げるというのは控えめな目標だ。コンピュータと同じように競争が働けば不可能ではない。

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江戸時代化する日本

文明としての江戸システム 日本の歴史19 (講談社学術文庫)
21世紀の日本は、よくも悪くも「江戸時代化」している。これは與那覇潤氏が「中国化」と対比した特徴だが、少なくとも次の3点で現代は江戸時代と似ている。

 ・平和が長く続く
 ・人口が増えない
 ・経済が停滞する

これは江戸時代全般ではなく、18世紀以降の特徴だ。江戸時代前期は経済が成長し、人口も急増した。著者の推定によれば、1600年の人口は1500~1600万人だったが、1700年には3100~3200万人ぐらいになったと思われる。100年で2倍の急成長だが、その最大の原因は平和になって農業が発展し、市場経済が拡大したことだ。

それはわかりやすいのだが、人口増加は1700年ごろぴたっと止まり、幕末までほとんど増えていない。150年間で90万人ぐらいしか増えなかった。その原因は気候の寒冷化による飢饉だとか出生抑制(間引き)だとかいわれるが、決定的な理由はわからない。はっきりしているのは、その結果、経済が停滞し、大名の財政が悪化して武士が貧しくなったことだ。

続きは11月5日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで。

韓国の「戦勝国史観」が日韓関係をゆがめる

韓国大法院の元徴用工判決が大きな反響を呼んでいる。これは外務省も指摘するように、日韓の請求権問題は日韓基本条約で「完全かつ最終的に解決」されたという合意に違反し、日韓関係を1965年の国交正常化の前に戻すものだ。

中央日報によると判決は11対2で、少数意見は「日本企業でなく韓国政府が強制徴用被害者に正当な補償をすべき」として請求を棄却すべきとしたという。これが日韓条約の正しい解釈である。

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日本が韓国に「賠償」する理由はない

韓国の大法院が戦時中の徴用工について新日鉄住金に賠償を求めた判決が話題になっているが、「賠償は日韓基本条約で終わった」というコメントは事実誤認だ。日韓条約と請求権協定は賠償ではない。外務省の大臣談話にもあるように、
日韓請求権協定は,日本から韓国に対して,無償3億ドル,有償2億ドルの資金協力を約束する(第1条)とともに,両締約国及びその国民(法人を含む。)の財産,権利及び利益並びに両締約国及びその国民の間の請求権に関する問題は「完全かつ最終的に解決」されており,いかなる主張もすることはできない(第2条)ことを定めており,これまでの日韓関係の基礎となってきました。
日韓条約は「資金協力」であって「賠償」ではない。1910年の日韓併合条約は国際法にもとづき、当時の国際社会でも広く認められた条約だから、日本に賠償の義務はない。これは普遍的な原則で、植民地支配について賠償した旧宗主国はない。日本政府も一貫して、賠償も謝罪もしないという立場だ。これに対して韓国は「日韓併合は武力で強要されたものだ」と主張して賠償を求めたため、サンフランシスコ条約で国交が結べなかった。

しかし1960年代に韓国経済が行き詰まったため朴正熙大統領が妥協し、日本が賠償ではなく5億ドルの「資金協力」を行う協定が1965年に結ばれた。これは当時も根拠不明の「つかみ金」と批判されたので「完全かつ最終的に解決」されるという文言が明記されたが、これをくつがえしたのが1990年代に出てきた慰安婦問題だった。

続きは11月5日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで。

ビールの「消費税率」74%は外税表示に

来年の消費税引き上げで「複数税率」が導入される見通しだが、これは「軽減税率」だけではない。酒税・タバコ税・揮発油税などの個別消費税は今すでに複数税率であり、今回の税法改正で「重課税」になる。たとえばビールの税率は、アサヒの「スーパードライ」の場合、本体価格132円に酒税77円かかり、その合計価格209円に8%の消費税が課税されている。これが消費税10%になると230円、本体価格に対して74%課税される。

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血縁淘汰から「マルチレベル淘汰」へ

人類はどこから来て,どこへ行くのか
本書はアゴラ読書塾のテキストに使っているのだが、私は原著しか読んでいなかった。訳本を読んで気づいたのは、解説で巌佐庸氏(生物学者)が「ウィルソンの血縁淘汰批判は間違いだ」と批判していることだ。これはテクニカルな話だが、進化論にとっては重要な問題である。

血縁淘汰というのは、一般にはドーキンスの「利己的な遺伝子」として知られているが、オリジナルはハミルトンの理論である。これはたとえば蜂の巣を守るために働き蜂が外敵に対して自殺攻撃をするような「利他的」な行動を説明する理論で、ある遺伝子を集団の中で残す利益をB、そのために個体が犠牲になるコストをCとし、遺伝子を共有している確率(血縁度)をrとすると、

 rB>C

となるとき、利他的な行動が進化するという。これは1964年に提唱され、いろいろな生物で実証されて、ほぼ確立した法則と考えられている。ところがその元祖だったウィルソンが、それが当てはまらない例が多いとして、マルチレベル淘汰という理論をとなえている。これは個体レベルの利益Bkとは別に、集団レベルの利益Beを考え、

 rBk+Be>C

となるとき、利他的な行動が進化すると考える。これはBe=0のときは血縁淘汰と同じになるので、ハミルトンの法則の一般化だが、生物学者の批判を呼び、今も論争が続いている。

続きは10月29日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで。

人質はビジネスである



安田純平事件はいろいろな波紋を呼んでいるが、こういう人質事件は世界的にみると珍しくない。岡本行夫氏の国会証言によると、ホルムズ海峡では2000年以降にソマリア海賊の襲撃は1000回を超え、4000人を超える人質が取られたという。

海賊やテロリストの目的は、第一義的にはカネである。過去の人質事件では自衛隊の撤退や囚人の解放を求めたりしたので「彼らの話を聞いてやれ」などという平和ボケもいるが、いくらテロリストの話を聞いても、カネを払うまで人質は解放しない。ときには他のグループに転売することもある。今回はカタール政府が身代金を払ったともいわれるが、それは最終的には日本政府が負担することになろう。

この種の事件は、今後も起こる可能性がある。そのとき大事なのは、アドホックに対応しないことだ。事前にルールを決め、それに違反した者にはペナルティを課す。今回のように政府が渡航禁止した国に入国した場合は救出費用を請求し、パスポートを没収して出国を永久に禁止する。これは旅券法の運用でできると思うが、施行規則として明文化してはどうだろうか。

続きは10月29日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで。

身の安全は「自己責任」では守れない

シリアでテロリストの人質になっていたフリージャーナリストの安田純平氏が解放されたが、マスコミは妙に甘い。たとえば日本人拘束、繰り返される「自己責任論」という朝日新聞の記事は、ネトウヨが「自己責任」を主張して彼を「バッシング」しているという印象操作をしているが、これは逆である。自己責任を主張したのは彼なのだ。



続きはアゴラで。






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