日本の新型コロナ感染は止まったのか

専門家会議の新型コロナについての状況分析と提言が発表された。特に注目されるのは、実効再生産数Rが全国で1以下になったと推定していることだ。Rは1人の感染者が何人に感染させるかを示す値で、これが1以下になったということは次のように感染者が減っていることを示す。

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右端で新規感染者数がゼロになったように見えるのは感染日が報告日より2週間前になるためだが、3月5日までのデータを見ても感染者数が大きく減り、Rは1以下になっている。つまり感染がそれ以上拡大しない集団免疫がすでに実現したことになる。

問題はそれが今後も維持できるのかどうかだが、専門家会議は慎重な見方をとっている。ヨーロッパでは、2月下旬にイタリアでオーバーシュート(感染爆発)が起こり、3月上旬にフランス・ドイツ・スペインでも起こったが、それより早くから感染の始まった日本の感染速度は小さい。

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これをどう見るかについては専門家会議でも意見がわかれたようだが、日本でも感染に気づかないスプレッダーが都市部で集まると、オーバーシュートが起こるかもしれないと警告している。もし日本の基本再生産数R0がヨーロッパ並みの2.5だとすると、集団免疫が成立するのは人口の60%が感染したときだから、潜在的な感染が広がっている可能性もある。

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新型コロナ「日本の奇蹟」はなぜ起こったのか



言論アリーナでは、松村むつみさんに新型コロナについて話を聞いたが、そのときも話題になったのは「世界的にみて日本だけ感染者が異常に少ないように見えるのはなぜか」ということだ。よくいわれるのは「PCR検査が少ないから陽性も少なく出る」ということだが、検査が増えても患者はほとんど増えていない。

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新型コロナウイルスを永久に封じ込めることはできない

インペリアル・カレッジのCOVID-19に関する報告書が16日に発表された。これはイギリス政府の集団免疫政策の根拠になったものだが、日本人にも必読なので、私の理解できた範囲で荒っぽく紹介する。この報告書は次のように要約されている。
2つの基本的な戦略が可能である。
  1. 流行の拡大を遅らせるが必ずしも停止しないことに焦点を当てた緩和(集団免疫):ピークの医療需要を減らしながら重篤な疾患のリスクが最も高い人々を感染から保護する。
  2. 感染の拡大を逆転させる抑制(封じ込め):患者数を低レベルに減らし、その状況を無期限に維持する
各政策には大きな課題がある。最適な緩和政策(疑わしいケースの自宅隔離、疑いのあるケースと同じ世帯に住んでいる人の自宅検疫、および重度の病気のリスクが最も高い高齢者などの社会的隔離を組み合わせること)は、医療需要のピークを2/3に減らし、死者を半分に減らせる

しかし結果として生じる緩和された伝染病は、数十万人の死と健康システム(特に集中治療室)が何度も圧倒される結果となる可能性がある。抑制を達成できる国にとっては、それは政策オプションとして残る。

これが報告書のコアである。緩和と抑制の違いは、抑制が実効再生産数Rをなるべく早く1以下にするために最大限のコストをかけるのに対し、緩和はR=1となる集団免疫状態を長期的にめざし、感染の拡大をコントロールすることだ(何もしないことではない)。

この報告書のシミュレーションでは、基本再生産数を2.4とした場合、感染の拡大は図1のようになる。縦軸はコロナの重症患者に必要なICU(集中治療室)のベッド数で、何もしない場合には、患者数は赤い直線で描かれたベッド数(人口10万人あたり8)の最大30倍になる。これを高齢者の隔離などで軽減すると、青い曲線のように8倍まで下げることができる。

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図1 「緩和」政策をとった場合の重症患者数とICUベッド数

それに対して全面的な社会的隔離などの規制で封じ込めると、図2のように一時的には感染の拡大を抑え込めるが、5ヶ月で封じ込めをやめると冬に感染爆発が起こり、患者数は緩和した場合より多くなる。つまりゆるやかに感染させてピークを夏にもってきたほうが死者は減らせるのだ。

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図2 「抑制」政策をとった場合の重症患者数とICUベッド数

封じ込めを永久に続けることはできない。集団免疫が成立するまで、感染拡大は止まらない。規制を解除すると患者数が増えるが、それが冬になると最悪なので、ゆるやかに感染を増やして医療の負担を軽減し、死者を最小化するのがイギリス政府の戦略である。

追記:このレポートは今週になって修正され、最後の部分に「当面は抑制が有効な戦略だ」と付け足している。これは先週、ジョンソン首相が発表した集団免疫戦略に多くの批判が集まったため、彼が書き換えを命じたものと思われる。それ以外の科学的記述はほとんど変わっていない。

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新型コロナの「封じ込め」から「集団免疫」へ

国の専門家会議は2月24日に「これから1-2週間が急速な拡大に進むか、収束できるかの瀬戸際となります」と述べたが、3月9日の見解ではこう書いている。
これまでに国内で感染が確認された方のうち重症・軽症に関わらず約8 0%の方は、他の人に感染させていません。また、実効再生産数(感染症の流行が進行中の集団のあ る時点における、1人の感染者から二次感染させた平均の数)は日によって変動はあるものの概ね1程度で推移しています

これは重要なデータである。実効再生産数は感染力を示す指標で、これが「おおむね1」ということは、新型コロナの感染がピークアウトした可能性を示唆するからだ。新規患者数も死者も、先週で頭打ちになっている。これは検査キットの不足などの原因も考えられるが、感染が飽和した可能性もある。

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日本で「集団免疫」戦略は成り立つか

新型コロナについてイギリスの採用した集団免疫戦略が論議を呼んでいる。これは簡単にいうと国内で十分多くの人が感染したら流行が終わるという理論である。これを批判したブログが話題になっているが、これは間違っている。私は日本で集団免疫戦略は成り立つと思う。

感染力は、生物学的には基本再生産数R0で決まる。 これは1人の感染者が何人にウイルスをうつすかという指標で、R0=2だとすると2人。その2人がさらに2人にうつすと2nで感染者が増える。

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現実の感染速度を決めるのは基本再生産数ではなく、実効再生産数Rである。これはR0と集団の中で免疫のない人の比率xの積で、

 R=R0・x

と定義する。上の図でいうと、最初だれにも免疫のない状態ではR=2だが、感染が広がって集団の半分が免疫をもつとR=1になって感染が止まる。疫学の教科書によると、集団免疫が成り立つ免疫比率Hは、次のように決まる。

 H=1-1/R0 (*)

この関係はこう考えればわかる:あるウイルスがR0=3だとすると、その集団の3人に1人に免疫があれば2人しか感染しない。2人が免疫を獲得すれば、感染するのは1人になって感染の拡大は終わる。したがってHが1-1/3=2/3のとき、集団免疫が成り立つ。

コロナの集団免疫を論じるとき、多くの人が「国民の60%が感染するまで集団免疫は成立しない」というのは、(*)式でR0=2.5と想定しているからだ。このとき

 H=1-0.4=0.6

となるが、Rは下げることができる。わかりやすいのはワクチンで免疫を増やしてxを下げることだが、コロナのようにワクチンのない感染症でも、感染が拡大すると免疫が増えてxが下がり、Rは下がる。また日本のように清潔な国では感染確率が低いのでR0が下がり、Rは下がる。

実効再生産数は指数関数できいてくるので、これを下げる効果は大きい。(*)式でR0をRに置き換え、たとえば(日本で観測されている値に近い)R=1.1とすると、H=0.1となる。これは人口の10%(1200万人)が感染すると流行が終わるということで、インフルエンザに近い。

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消費者の財布に届く「国民の量的緩和」が必要だ



新型コロナはアメリカ経済を直撃し、株価がリーマンショック以来の暴落を記録した。トランプ大統領は国家非常事態宣言を出し、最大500億ドルの「支援金」を約束した。 これは感染症対策だけでは使い切れないので、今後もっと広い範囲の財政支出が行われるだろう。

日本では政府税調が消費税の減税を検討しているらしいが、これは焼け石に水だ。すべての商品に軽減税率を適用しても消費の2%で、いま瞬間的に生まれていると思われるGDPの10%以上の需給ギャップをとても埋められない。短期に大量の資金を供給する必要があるのだ。

日銀も平時に量的緩和をやりすぎて弾薬が尽きた。追加緩和でこれ以上マイナス金利を深くしたら、銀行の経営が破綻する。株の買い支えも、日経平均が1万9000円を割って日銀が評価損を抱えている状態で、これ以上はできないだろう。

いま緊急にできるのは日銀の財政政策しかない。それも単に国債を買うのではなく、個人の銀行口座に直接入金する国民の量的緩和をやるのだ。これはそう奇抜な話ではない。去年の消費増増税のときの5%ポイント還元と同じ、非裁量的なバラマキである。1人10万円とすると12兆円。日銀のオペレーションとしては多くない。

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アゴラ経済塾「リスクと危機」

ブラック・スワン[上]―不確実性とリスクの本質いま世界は、危機の渦中にあります。新型コロナウイルスの感染は中国から世界に広がり、世界中の株価もリーマンショック以来の暴落を記録して「中国発の世界経済危機」が始まったようにみえます。

新型コロナの感染力はインフルエンザ程度で、致死率は1%以下。ペストやコレラのように大量に人を殺す疫病ではないのですが、そのもたらす経済危機は大きい。それは危機が客観的なリスクではなく、心理的な不確実性によって起こるからです。

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日本だけ新型コロナの感染者が少ないのはなぜか

新型コロナの感染者は世界に広がっているが、日本だけはその例外になっているようにみえる。次の図はジョンズ・ホプキンス大学のCSSEデータベースから人口1000万人あたりのCOVID-19の感染者(陽性と確認された症例)の数を国別に時系列でみたもの(対数グラフ)だが、多くの国で指数関数的に感染者が増えているのに対して日本の増加率は低く、感染率はアメリカとカナダに次いで少ない。



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孫正義氏の「100万人無償PCR検査」提案は医療を崩壊させる


今夜ツイッターは、この3年ぶりの孫正義氏のツイートで大騒ぎだ。これはワイドショーの「人々の不安を解消するためにPCR検査を増やせ」という要求に答えたものだろうが、逆効果である。

続きはアゴラで。

世界の新型コロナ対策は日本に学べ

国の専門家会議が「あと1~2週間が瀬戸際だ」と警告してから、きのうで2週間がたったが、日本では感染爆発は起こっていない。ところがイタリアの感染者も死者も中国に次いで世界第2位になり、人口比では韓国を抜いてトップになった。コンテ首相はイタリア全土に移動制限を出した。

この原因はイタリア人がキスやハグが好きなためとか、院内感染で医療が崩壊したためとかいわれているが、単なるタイムラグかもしれない。次の図のように各国の感染者の数を対数グラフで見ると、イタリアは韓国より2.5日遅れて増え、ドイツやフランスはそこからさらに9日遅れている。これからヨーロッパ各国も、イタリアの後を追うかもしれない。

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新型コロナの感染者数(Mark Handleyのツイートより)

それに対して当初は多かった日本の感染者は、顕著に少ない。この一つの原因はPCR検査が少なかったことで、当初は「患者を少なく見せようとする厚労省の陰謀だ」という話もあったが、3月になって検査が3倍以上に増えても感染者の増加率はほぼ一定で、重症患者や死者の比率は下がっている。

公平に見て日本だけが、新型コロナの感染をコントロールできたようにみえる。それはなぜだろうか。

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