治安維持法は何を守ったのか

治安維持法 - なぜ政党政治は「悪法」を生んだか (中公新書)
今どき新聞社に「死ね」などという国会議員が出てくるのは、メディアに対して国家権力が手を出せないと思っているからだろうが、刑法77条の「内乱罪」の最高刑は死刑である。破防法の最高刑は懲役3年だが、治安維持法と趣旨は似ている。

1925年に治安維持法ができたときも、それは世界的には珍しい法律ではなかった。アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、イタリアなどで共産党を規制する法律が制定されており、日本でも日ソ国交樹立で、コミンテルンが天皇制を打倒する方針を打ち出すことへの対策が必要だった。

ただ他国の法律が「暴力革命」を禁止するものだったのに対して、治安維持法は「國体を變革し又は私有財産制度を否認することを目的として結社を組織し又は情を知りて之に加入したる者は十年以下の懲役又は禁錮に處す」という漠然とした規定になっており、結社を禁じることが特色だった。

最高刑はのちに死刑に引き上げられたが、死刑に処せされた者はいない。これについて清水幾太郎は、1978年に「治安維持法はそれほどの悪法ではなかった」と書いた。戦時中もマルクス主義の文献は出版でき、弾圧されたのは日本共産党とそのシンパだけだったというのだが、それは本当だろうか。

続きは11月20日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンでどうぞ。

足立康史氏の誤解している電波オークション

足立康史議員の「朝日新聞、死ね」というツイートが話題になっている。アゴラでも本人が弁明しているが、これは一般人が保育所について「日本死ね」という話とは違う。国権の最高機関たる国会は、立法によって朝日新聞を殺すことができるからだ。放送法には今もそういう規定がある。放送法第4条では「編集準則」を定め、放送に次の要件を求めている。
  1. 公安及び善良な風俗を害しないこと。
  2. 政治的に公平であること。
  3. 報道は事実をまげないですること。
  4. 意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること。
続きはアゴラで。

冷戦で資本主義が負けたら

1950年代の歴史を調べていると、冷戦初期に人々がどう考えていたかわかっておもしろい。日米安保をめぐるねじれの一つの原因は、知識人の多くが冷戦でソ連が勝つと思っていたことだ。

これは日本だけではなく、1960年代のサミュエルソンの教科書では、図のように21世紀にソ連のGNPがアメリカを抜くと予想していた。1960年の共同通信の正月座談会で、大内兵衛、美濃部亮吉、丸山眞男は次のように語っている。
大内 ソ連と中国の発達のしかた、進歩のしかたがどうもほかよりは早いということで、それが世界に承認された。また軍事のほうからでもロケットの実験でダレス政策というものを変えなくちゃいかんところにまで来た。

美濃部 その勢力関係がはっきりしたときに、いいかえれば資本主義がとても負けだということがはっきりしても、やっぱり平和は続きますか?

丸山 政治的自由ということは、結局計画性と、個人の自由な選択をどこで調和させてゆくかという問題に当面せざるをえない。したがって私は、アメリカ的なデモクラシーとソビエトのデモクラシーの将来というのは、必ずしも全部ソビエト型のデモクラシーになってゆく形で世界が変化してゆくとは考えられない。
大内のいう「ロケットの実験」とは、スプートニクのことである。このころ多くの知識人は「冷戦で資本主義が負ける」ことを前提にして国防を語っていたのだ。

続きは11月20日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンでどうぞ。

テレビ局の政治力はなぜ強いのか

電波オークションの話をすると、ネトウヨが応援してくれる。彼らはオークションで脅せば、テレビ局の「偏向報道」を撲滅できると思っているらしいが、残念ながらオークションにそんな政治的効果はない。UHF帯のホワイトスペースを区画整理すると、約200MHzの帯域をあけることができるが、そこに入ってくるのは通信キャリアだから、テレビ局の脅威にはならない。これはインフラ(無線局)の問題で、コンテンツ(偏向報道)とは無関係だ。

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たとえば神奈川県のNHK総合テレビの中継局は、すべて図のように東京スカイツリーと同じ27chでカバーできる。今はアナログ放送のなごりでバラバラにチャンネルを割り当てているが、東京から横浜に飛ばした27chの電波を藤沢、平塚、小田原などの中継局に同じチャンネルで飛ばし、そこから山間部や海岸の中継局に飛ばせばよい。民放も同じだ。

これは2008年にも私が指摘したことだ。当時は総務省も民放連も「SFNは理論的にはできるが実用化できない」といったが、今は神奈川県の中継局の97%でSFNが使われている。こんな簡単な事実がまったく知られていないのは、テレビ業界の政治力が大きいからだ。特に日本ではテレビと新聞が系列化されているので、この事実が隠されてきたのだが、状況は変わった。

続きは11月13日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンでどうぞ。

オークションで売却する電波は残っているのか



総務省の「電波有効利用成長戦略懇談会」の議論が始まった。規制改革推進会議でも議論が行われているが、重要なのはオークションの是非ではない。電波を売却してキャリアの独占する「財産」にするよりもWi-Fiのような形で共有することが合理的だが、問題はそこではない。

続きはアゴラで。

オークションは電波の有効利用に不可欠ではない

マスコミは報じないが、規制改革推進会議で電波の問題が進捗している。この話は「オークション対既得権」という図式になりがちだが、電波の有効利用とオークションは同義ではない。電波は共用できる公共財なので、オークションで免許を売却して特定の業者が帯域を独占するより、免許なしで無線LAN(Wi-Fi)に割り当てるほうがはるかに効率がいいのだ。

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これは私が昔使った図だが、高価な基地局を使う携帯電話より、カード1枚数千円の無線LANのほうがはるかに高速な通信を実現できる。携帯電話は通信が始まってから終わるまで1つのチャンネルを占有するので、図1のように道路(帯域)の1つの車線(チャンネル)をドライバーに「貸し切り」にするようなものだ。1つ1つの車線は狭くなるので、自転車ぐらいしか走れない。

これに対して無線LANは図2のように車線は一般に開放し、車(データ)は空いている車線を走る。この方式だと、同じ道路の幅でも、空いていればどんな大きな車がどんなスピードで走ってもかまわない。Wi-Fiは広い帯域を多くの無線機で共有することによって、携帯電話よりはるかに効率の高い通信を可能にしたのだ。

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沖縄は「戦後日本の国体」の矛盾の集約

米国と日米安保条約改定ーー沖縄・基地・同盟
1950年代までの左翼の影響力は、今では想像もつかないほど大きかった。特に知識人の中では、講和条約から安保改正までの論争では左翼が優勢で、自民党政権にもアメリカにも影響を与えた。本書はその歴史をアメリカ側からみたものだ。

吉田茂は再軍備を棚上げして講和条約を結び、結果的には戦後の日米関係を決めてしまったが、その「ボタンの掛け違え」を直そうとしたのが保守合同だった。自民党政権はたびたびアメリカに安保改正を働きかけたが、アメリカは拒否した。米軍基地は大きな既得権だったからだ。続きを読む

大串博志氏は希望の党を離党して立民党に入党せよ

希望の党の共同代表に、玉木雄一郎氏と大串博志氏が立候補した。いつまでも加計学園に粘着する玉木氏を応援する気はないが、大串氏にはもっと問題が多い。産経新聞によると、彼はこう主張している。
日本の立憲主義を守る観点からやはり集団的自衛権を含む安保法制は容認しないという立場を明確にしながら、現実的な外交安保政策をとっていく
これは公然たる公約違反である。

続きはアゴラで。

国交省が作り出す「EVのジレンマ」

トヨタ自動車が、ようやく電気自動車(EV)に本腰を入れ始めた。今までも試作車はつくっており、技術は十分あるが、「トヨタ車として十分な品質が保証できない」という理由で消極的だった。それが今年の東京モーターショーでは次世代の技術「全固体電池」の開発に力を入れていると強調し、「EV企画室」を社内カンパニーに移管すると発表した。

続きはアゴラで。

幻の「日米相互防衛条約」

きのうのアゴラこども版はあまりこども向けではないので、補足しておこう。ガラパゴス左翼は今ごろ「日米同盟は対米従属だ」などと騒いでいるが、そんなことは誰でも知っている。それがこの60年間、保守勢力の懸念していたことだ。自民党の結成された最大の目的は、憲法を改正して安保条約を「相互防衛条約」にし、米軍を撤退させることだった。

『歴史としての日米安保条約』によると、1955年8月に鳩山一郎内閣の重光葵外相は訪米し、ダレス国務長官に「日米相互防衛条約」の日本案を見せた。その第4条まではNATOなどと同じ共同防衛の規定だが、第5条には「日本国内に配備されたアメリカ合衆国の軍隊は、この条約の効力発生とともに、撤退を開始するものとする」と書かれていた。

これに対してダレスは「現憲法下において相互防衛条約が可能であるか。日本は米国を守ることができるのか。たとえばグワムが攻撃された場合はどうか」と質問した。重光は「自衛である限り協議が出来るとの我々の解釈である」と答えたが、ダレスは「それは全く新しい話である。日本が協議に依って海外派兵できると云う事は知らなかった」と驚いてみせた。

続きは11月13日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンでどうぞ。






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