ゴーンの不法出国は「主権侵害」か

カルロス・ゴーンの出国について、かなりくわしいことがわかってきた。12月29日に住居を出たまま帰宅せず、そのまま出国したようだ。このとき日産のつけていた監視に対して弁護団が「告訴する」と警告して尾行をやめさせ、その日の夜にチャーター機で関西国際空港を離陸した。

まず不思議なのは、この手際のよさである。このチャーター機はトルコの航空会社のもので、ドバイから関空に到着し、尾行が解けるまで空港で待たせていたものと思われる。弁護団が尾行を解除させたことが、結果的に不法出国を幇助したことになる。

最大の謎は、どうやって出国審査を通ったかである。出国記録にはゴーンの名前はないので、別人のパスポートで出国したか、それとも貨物として出国したかである。WSJによると、ゴーンは「音響機器の運搬に使う大型の箱」の中に隠れて搭乗したという。

続きはアゴラで。

「条件つきベーシックインカム」は可能か



前澤友作氏が100万円を1000人に配る実験が話題になっているが、これはベーシックインカムの実験にはならない。Universal Basic Income(UBI)は、すべての人に同じ金額を配る普遍性に意味があるので、1000人だけに配ってもしょうがない。

これはフィンランドの実験をまねたものだと思うが、あれはUBIではなく、失業者の中から抽選で2000人に毎月560ユーロ支給する失業給付の一種であり、財源がなくなって2018年に中止された。

UBIの最大の特長は複雑で不公平な社会保障を廃止してシンプルな定額給付に置き換えることだから、給付の対象を限定したら意味がない。たとえば「生活保護を受けている214万人だけに年100万円配る」と決めると、財源は214万×100万=2兆1400億円ですむが、それ以外の社会保障は今のままだ。

他方すべての国民にUBIとして100万円を配るには、1億2000万×100万=120兆円が必要になり、これは現在の社会保障給付の総額とほぼ同じだ。今の社会保障を廃止することは政治的に不可能であり、これがUBIの最大の障害となっている。

つまりBIは部分的に実施すると効果がなく、全面的に実施すると巨額の財源が必要になる。その中間の解はないだろうか。

続きはアゴラで。

「有罪率99%」という誤解

カルロス・ゴーンが日本の司法制度を「推定有罪だ」批判しているが、保釈条件を破って国外逃亡した犯罪者が司法を批判するのはお門違いである。こういうときよく引き合いに出されるのが「日本は有罪率99%」という数字だが、これには誤解がある。

たしかに2018年に日本の地方裁判所で無罪になったのは105件。刑事訴訟の総数(併合を除く)49811件の中では、有罪率は99.8%である(司法統計年報)。だがこれは「逮捕されたらすべて有罪になる」という意味ではない。

続きはアゴラで。

グローバル時代の正義

RTS2WMSU明けましておめでとうございます。今年も年賀状は出さないので、ブログでごあいさつ。

年末に起こったカルロス・ゴーンの海外逃亡は、日本がよくも悪くもグローバル化したことを象徴する事件でした。彼は「楽器の箱」に入ってチャーター便に乗ったとも伝えられていますが、普通は出国審査のとき手荷物のX線検査で見つかってしまいます。

それを逃れる方法は、外交特権しかありません。外交官は代理人が出国審査を受けることが認められ、手荷物も外交機密としてフリーパスです。ゴーンがレバノン大使館のスーツケース(あるいは楽器の箱)に入って出国することは可能です。

レバノン政府は入国の翌日に「ゴーンの入国は合法だ」と表明しており、今回の出国に協力した疑いが強い。レバノン大使館が違法な出国に加担したとすれば、日本との外交問題が生じるでしょうが、レバノン政府がそれを覚悟すれば不可能ではない。

ゴーンは今後、日本の司法制度を批判するでしょう。それは彼の正義であり、レバノン政府の正義かもしれない。彼のやったことは日本の正義ではないが、どっちが正しいかはわかりません。主権国家を超える司法権力は存在しないからです。

国際社会は本質的にアナーキーであり、国際法もヨーロッパ圏のローカルな正義にすぎない。ゴーンはそれを超える「グローバル人類」になるのでしょうか。

日本共産党は今や「普通の政党」である

日本共産党が普通の政党であるかどうかについて、アゴラで議論が盛り上がっているが、その答は「普通の政党」をどう定義するかに依存する。それを「合法的な政党」と定義するなら、政党として国会議員を出している共産党は普通の政党である。

1950年代には暴力革命をめざした時期もあり、破防法では今も調査対象団体に指定されているが、これは公安の雇用維持のためだろう。今の共産党綱領には、こう明記されているからだ。
社会主義的変革は、短期間に一挙におこなわれるものではなく、国民の合意のもと、一歩一歩の段階的な前進を必要とする長期の過程である。その出発点となるのは、社会主義・共産主義への前進を支持する国民多数の合意の形成であり、国会の安定した過半数を基礎として、社会主義をめざす権力がつくられることである。

続きはアゴラで。

文化がヒトを進化させた

文化がヒトを進化させた―人類の繁栄と〈文化-遺伝子革命〉
「地球温暖化で人類が滅亡する」というのは錯覚である。人類は産業革命以降の200年で爆発的に増加し、地球の人口は今世紀中に100億人に達すると予想されている。人類以外の動物は大量絶滅の危機に瀕しているが、人類は繁殖しすぎて困るのだ(地球の気温はほとんど影響しない)。

このように短期間に人類が繁殖した原因は、遺伝子ではない。人類の遺伝形質は、ここ1万年ほとんど変わっていない。その最大の原因は文化だというのが、最近の人類学の通説になりつつある。

もちろん文化(獲得形質)が遺伝するわけではないが、言語習得能力は遺伝的にそなわっているので、文化は子供に伝えることができる。これは遺伝的な進化とはまったく違うメカニズムである。遺伝的な突然変異はランダムだから、環境が変化したとき、それに適応できない個体が淘汰されるという盲目的な形でしか進化は起こらない。

それに対してホモ・サピエンスは、生存に適した行動様式を親が子に教育し、習慣や道徳として継承した。文化的な進化は柔軟で変化の幅が広く、特定の目的にあう形質を選んで残すことができる。それを可能にしたのは脳の発達だが、このときもっとも重要な能力は理性ではなかった。

続きは12月30日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで。

韓国は「政権を超える約束のできない国」

韓国の憲法裁判所は27日、2015年の日韓慰安婦合意が憲法違反だと確認するよう求めた訴訟で訴えを却下した。これについて混乱した論評が散見されるが、この決定は慰安婦合意を憲法裁が合憲と認めたものではない。

この訴訟は「民主化のための弁護士の会」が、慰安婦合意は元慰安婦の権利を侵害するものだとして起こしたものだが、これに対して韓国外交部は答弁書で「合意は法的拘束力のない政治的合意なので憲法上の権利は侵害しない」と主張した。

今回の決定はそれを認め、憲法裁は「合意は国家間の公式の約束だが法的拘束力をもつ条約ではない」ので、被害者の賠償請求権を侵害する可能性があるとはみなしがたいとした。つまり慰安婦合意は国会同意もへていない口約束にすぎないので、被害者の権利を侵害する効果もないというのだ。

続きはアゴラで。

地球温暖化の不都合な真実

「地球温暖化」の不都合な真実
地球温暖化が人類最大の問題かどうかは議論の余地があるが、それが人類の直面する最も複雑な問題であることは間違いない。そもそも温暖化が起こっているかどうかという根本的な科学的事実が確認されていない。

それを疑う人を温暖化懐疑派と呼ぶとすれば、著者はその一人だが、彼は科学者ではないので、IPCCの報告書を反証するデータをもっているわけではなく、それに代わる理論を提示するわけでもない。多くの疑惑を示すだけだ。

国際機関に集まった数百人の科学者が20年以上にわたって嘘をつき続けることは考えにくいが、そのインセンティブはある。地球温暖化が起こるという研究には多額の研究費がつくが、起こらないという研究にはつかないからだ。ホッケースティック曲線をめぐるスキャンダルは、IPCCが疑惑のデータを撤回することで決着した。

そういうバイアスを割り引いて考えても、次の図のようにここ50年ほど地球の平均気温が上がり続けているトレンドは否定できない(2015年以降は下がっているが)。問題はその原因が何かということだ。

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日米地位協定はなぜ改正できないのか

日米地位協定-在日米軍と「同盟」の70年 (中公新書)
独立国の中に外国の軍隊の基地が置かれているのは、異常な事態である。第二次大戦までは、外国の軍隊が駐留しているのは植民地か保護国だった。したがって「日本は今も軍事的にはアメリカの植民地だ」という共産党などの批判は正しい。

その根拠になっているのは日米地位協定(当初の行政協定)だが、これは終戦直後の東アジアで戦争の危機が切迫していた時期に、日本が再軍備するまでの暫定的な「駐軍協定」としてはやむをえない面もあった。問題はそれが本質的に改正されないまま、今日に至っているのはなぜかということだ。

最大の原因は、ほんらい暫定的なものだった憲法が改正できないことだが、問題はそれだけではない。その条文は米軍に治外法権を認めるような異例の規定だが、日米政府はこれを日米合同委員会の合意議事録という密約で「解釈改正」 してきたからだ。

たとえばいまだに沖縄で問題になる米軍の軍人・軍属の犯罪についての刑事裁判権は、日米行政協定では日本政府にあることになっていたが、1953年の合意議事録で日本側が「実質的に重要」な事件を除いて裁判権を行使しない方針を口頭で表明した。この議事録は2000年代に公開されたが、この密約は今も有効である。

続きは12月30日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで。

自己欺瞞としての反日感情

反日種族主義 日韓危機の根源
今年、出版界で大きな話題になったのは『反日種族主義』がベストセラーになったことだろう。内容は必ずしも一般向けとは言えないが、韓国では11万部、日本では25万部も売れた。韓国人が自国の歴史観をここまで批判的に見ることができるようになったのは、大きな進歩である。

しかし木村幹氏も指摘するように、この本は李承晩学堂の出版物であり、明確な党派性をもっている(その点は編者の李栄薫氏が冒頭で断っている)。いいかえると、これは韓国左派の歴史観に対する右派の批判であり、その目線は韓国の国内政治にある。

したがって文在寅政権のあと右派政権に交代したとしても、韓国の反日感情が大きく変わることは考えられない。日韓請求権協定を否定する徴用工判決のような極端な歴史観はなくなるかもしれないが、日韓併合を否定することは李承晩以来の国是であり、それを否定する勢力は韓国内には存在しない。

つまり日韓の本質的な問題は文政権のような左派イデオロギーではなく、日本の朝鮮支配のおかげで韓国の戦後の発展があったという歴史を隠蔽する自己欺瞞なのだ。

続きは12月23日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで。





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