「天皇」は輸入品である

産経新聞におもしろい記事が出ている。安本寿久という編集委員は講演でこう語ったという。
天皇がいることで日本人がまとまれるという価値観をつくったのは、日本最古の書物「古事記」だった。正成がこれだけ天皇に忠節を尽くしたのも、この国の形が一番だと思ったからだろう。古事記の価値観によって、「大化の改新」も「建武の新政」も「明治維新」も、そして昭和20年のときも、中心には天皇がいた。日本人にとって「公」とは、天皇という存在ではないか、とも考えられる。
ここには古事記から昭和20年まで一貫して、日本は「万世一系の天皇」が支配してきたというイデオロギーがある。これは今でも自民党の右派に信じられているが、明白な誤りである。明治時代以降の天皇は(古代とは名前以外に共通点のない)ヨーロッパからの輸入品なのだ。

そもそも江戸時代まで「天皇」という言葉は使われていない。19世紀初めの光格天皇まで、死後も「**天皇」という謚はなかったのだ。一般庶民はその存在さえ知らなかった。それを長州藩が「幕府」を倒すためのシンボリックな記号として利用した。

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年齢不問の「新しい科挙」の提案



アベノミクスの次の政策として、何らかの形で教育をネタにした財政支出が出てくる見通しが強まってきたが、「大学無償化」はナンセンスだ。今の大学は研究者を養うために学生を食い物にするシステムであり、公的投資は正当化できない。

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バカでもできるデフレ脱却

日銀の「出口戦略」は時間の問題だと思うが、黒田総裁は粘っている。それはここでテーパリングすると、彼の掲げた2%のインフレ目標をあきらめたことを世界に示す敗北宣言になるからだが、まだ量的緩和が足りないと思っている可能性もある。これは昔ちょっと話題になったスヴェンソン(元スウェーデン中央銀行副総裁)のフールプルーフ理論とも解釈できる。

これは「デフレ脱却はバカでもできる」という意味で、物価水準ターゲティング為替レート・ペッグの組み合わせだ。日銀が、たとえば「物価水準を2%上げるために1ドル=120円まで量的緩和する」と宣言して為替介入し、円を切り下げればよい。日銀法では為替介入の権限はないが、日銀が財務省と協調して「非不胎化介入」すれば、理論的には可能である。

黒田総裁の掲げた「インフレ目標」は、実は円安誘導だったのではないか、と私は指摘したことがあるが、元日銀理事の早川英男氏の意見も同じだった。ではなぜバカでもできるはずのインフレ目標が失敗したのだろうか?

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大学は教授の生活を学生が支える集金装置

大学とは何か (岩波新書)
このごろ政治で「次は教育だ」という話がよく出てくるが、今の大学をそのまま無償化するのは、税金をドブに捨てるようなものだ。その本来の目的は教育ではなく、研究者の養成だったからだ。19世紀初めにドイツで生まれたフンボルト型大学は、中世のuniversityとは似て非なるものだ。初期のuniversityは職業訓練校であり、アメリカでは神学校だったが、キリスト教会の衰退で行き詰まった。

他方ナポレオン戦争に敗れたドイツでは、国力を高めるために研究の水準を上げることが急務だった。フィヒテやフンボルトの創立した大学の目的は教育ではなく、世界最先端の研究者を養成することだったが、その資金は税金だけでは足りなかった。そこで学費という形で研究資金を集める、ベルリン大学などのビジネスモデルができた。

実験や演習を中心として研究室を単位とする大学は、職業の役には立たないが、学生の払う授業料で資金は回る。20世紀前半まで世界をリードする科学的成果がドイツで生まれたのは、この大学のおかげだった。それは教授の研究費を授業料として集金するシステムなので、学生にはメリットがなかったが、アメリカに輸入されて意外な副産物を生んだ。

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JKビジネスが「人身売買」だという米国務省



ほとんどの日本人は知らないしマスコミも相手にしていないが、一部のアメリカ人が真に受けて「日本は人身売買国家だ」と私にからんでくるので、事実をチェックしておこう。

2016年の米国務省の人身取引報告書は、日本を「人身取引撲滅のための最低基準を十分に満たしていない」国と評価し、ナイジェリアやバングラデシュなどと同じ「第2段階」とした。このレベルにランクされているのはG7諸国では日本だけで、「第3段階」に落ちると開発援助を制限される。

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クジャクの羽という「シグナリング」


クジャクの羽は美しいが、何かの役に立つのだろうか。生物学のハンディキャップ理論によれば、羽は目立つので敵に襲われやすく、長い尾は逃げるときじゃまになるが、それゆえに意味がある。それを維持するにはコストがかかるので、派手な羽や長い尾をもつオスは、自分の生殖能力を羽でシグナルしているのだ。

学歴も、クジャクの羽のようなものだ。それ自体は無駄だが、みんなが派手な羽をもつと、もたないオスは生存競争に敗れる。昔は大学に行くことが知識人のシグナルだったが、今はアメリカではMBAでないと一流企業に入れない。それが「大学バブル」だということに誰もが気づいているが、自分だけ降りることができない。

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「高等教育無償化」で大学の価値は下がる

教育には、人的資本を高める効果とシグナリングの機能がある。小・中学校の教育は人的資本を高める効果が高いが、高校教育の効果は疑問だ。大学(特に文系)が人的資本を高める効果はほとんどないが、一流大学の私的収益率は高い。それは「私の能力は高い」と示すシグナリングの効果が大きいからだ。

これを簡単な図で考えよう。2人の労働者AとBがいて、生涯賃金も勉強のコストも教育年数の増加関数だが、Aの勉強コストはBより高いとする。企業がAとBのどちらを雇うか判断するとき、どちらも「私の能力は高い」といっても、Aが高卒でBが大卒だと、Bのほうが勉強のコストが低いことがわかる。Bの生涯賃金よりコストが高くなる教育レベルが高いからだ。

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勉強のコストが能力の減少関数だとすると、企業は2人の能力を知らなくても、学歴というシグナルを見ればよい。だから大学で人的資本が高まる効果がゼロだとしても、大学の存在価値はある。学歴というシグナルで、企業が有能な労働者を選別するコストを節約できるからだ。

ここで大学(高等教育)を無償化すると、Aの勉強コストが下がってBと同じになるとしよう。そうすると両方とも大卒になるから、企業はどっちが有能かわからないので、2人をランダムに採用して同じ賃金を払う。有能な労働者はそんな企業には行かないので、無能な労働者だけが来る逆淘汰が起こってしまう。つまり高等教育を全面的に無償化すると、大学のほとんど唯一の効果である情報節約機能がなくなるのだ。

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武士道の精神史

武士道の精神史 (ちくま新書1257)
新渡戸稲造の『武士道』は、アメリカ滞在中に日本語の文献を参照しないで英文で書かれた日本文化論で、「武士道」は彼の造語である。江戸時代以前に武士道という言葉を使った文献はほとんどなく、その元祖とされる『甲陽軍鑑』ではまったく違う意味である。

16世紀に成立した『甲陽軍鑑』は兵法の書であり、武田信玄とその家臣の戦いを記述してその敗因をさぐり、武士の心得を書いたものだ。ここには新渡戸のような精神論はなく、戦争においてどう戦うべきかという具体的な戦時訓が書かれている。

ここでは武士道とは、勇猛果敢に戦う武術のことで、武士をささえるエートスは御恩と奉公だった。これは在地領主として出てきた武士が、主君を中心に戦って領地を守り、戦い取った領地を臣下に与える契約で、一方的な主従関係ではない。戦場では主君が命令するが、平時には臣下が主君に「諫言」することが奨励された。

江戸時代には武士は実務官僚になり、兵法としての武士道は不要になった。「武士道とは死ぬことと見つけたり」で有名な『葉隠』は「死の美学」ではなく、18世紀に書かれた「治者」としての武士の心得だ。著者の山本常朝は一度も戦争に出たことがなく、『葉隠』のテーマも佐賀藩・鍋島家の家訓のようなものだった。

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「世代間格差」は問題ではない

ネットでちょっと話題になっている厚生労働省の年金マンガを読んでみた。厚労省の「100年安心」という公式見解をマンガにしたもので、「世代間格差」の章では「受け取る年金に差があったとしても、それだけで若者が損とは言えない」という。

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世代会計でみると、今のゼロ歳児の(税・社会保険料の)正味の負担は、今の60歳の世代より生涯所得で約1億円多い。この計算は厚労省も認めるが、年金は金銭の損得ではないという。親の世代が稼いで相続財産やインフラを残すので、若者は損していないというのだ。このマンガのように若者が納得したら、年金問題はすべて解決である。

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国債が下落してもリフレ派は困らない

ニューズウィークで、リフレ派の野口旭氏が「国債が下落しても誰も困らない」という。確かに金利が上がって日銀が損しても、得した売り手が必ずいる。私が野口氏から1億円借金して踏み倒しても、社会全体で合計すると、彼が1億円損して私が1億円得するゼロサムの所得移転にすぎない。

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