社会保険から「福祉サービスの市場」へ

脱ポピュリズム国家 改革を先送りしない真の経済成長戦略へ
日本の財政危機の本質は、社会保障の危機である。ゼロ金利が続く限りハイパーインフレのような形で「財政破綻」することは考えられないが、現役世代から高齢者への所得移転は確実に増える。特に日本で世代間の不公平がひどくなるのは、日本の社会保障の9割が年金・医療などの社会保険で占められているからだ(ヨーロッパは3割)。

社会保障の本来の目的は貧しい人に最低所得を保障することだから、生活保護のような所得再分配でいいのだが、これは受益者が限られるので政治的には人気がない。社会保険はすべての人が受益者になるので、ポピュリズムに結びつきやすい。その結果、大富豪でも年金を受給できる「老人国家」になった。

年金は2030年代前半に年金基金が枯渇するので、支給開始年齢の引き上げは避けられないが、医療と介護は複雑だ。これ以上のコスト増を防ぐには、基礎的な生活保障と高度サービスをわけるしかない。たとえば高度医療を受けたい人も、今は制約のある保険診療か高価な自由診療かの選択を迫られる。両方を組み合わせる混合診療には、医師会が反対している。こういう規制を緩和して、所得の高い人は高いサービスを受けられる「福祉サービスの市場」を創造する必要がある。

続きは8月13日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで。

温室効果ガスの削減では足りない

国際的な科学者グループによる地球温暖化についての調査結果が発表された。中身はIPCCの第5次報告書(2013)と基本的に同じで、地球の平均気温は長期的には産業革命前より4~5℃高くなるというものだが、今までと違うのは「温室効果ガスの排出削減だけでそれを止めることはできない」と警告していることだ。

パリ協定では産業革命の前より2℃上昇に抑制することを目標にしているが、その実現は従来の方法では不可能だという。2℃上昇を超えると、地球上のいろいろな要因が相互作用し、人間がコントロールできなくなるかもしれない。ではどうすればいいのか。この論文はそれを具体的には書いていないが、CO2の削減以外の方法を考えるしかない。

それを気候工学と総称するが、費用対効果がいいのは大気中に雲をつくって太陽光をさえぎる技術だ。その方法もいろいろあるが、一つは図のように海上に巨大なヨットを浮かべて海水をくみ上げ、高い塔から蒸気を噴出して雲をつくる「人工降雨」システムである。

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続きは8月13日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで。

サマータイムでエネルギー消費は増える

森喜朗氏が安倍首相に提案したサマータイム(夏時間)の導入が、本気で検討されているようだ。産経新聞によると、議員立法で東京オリンピック対策として2019年と2020年だけ導入するというが、こんな変則的な夏時間は混乱のもとになる。

森氏は「夏時間で2時間早めたら、午前7時スタートのマラソンが午前5時スタートとなり、日が高くなる前にレースを終えることができる」というが、5時スタートにすればいいだけの話だ。他の仕事も、勤務シフトを変えればいい。時計を変える必要はない。

続きはアゴラで。

ニューディールを生んだ人種差別主義者

Fear Itself: The New Deal and the Origins of Our Time
日本でいう「リベラル」のイメージのもとは「大きな政府を求める平等主義」というアメリカ民主党だが、その原型は1930年代のニューディールである。それはルーズベルトがつくったものと思われているが、必ずしもそうではなく、平等主義でもなかったと本書は論じている。

1930年代のアメリカを支配したのは恐怖だった。大恐慌で資本主義は危機に瀕し、ヨーロッパではファシストが政権を掌握していた。デモクラシーの時代は終わり、独裁的な指導者が経済に介入することが世界の潮流だと思われた。しかし合衆国憲法では、立法は議会の役目であり、彼らは大統領権限の強化に抵抗した。

ルーズベルトはこれに対抗するため、議会と取引した。民主党が圧勝した議会の多数派は、南部の白人だった。彼らは黒人の投票権を制限し、南部を支配していた。大恐慌による農業不況で窮地に陥った彼らは、連邦政府の救済を求めた。ルーズベルトは彼らと組んで社会保障法や最低賃金法を成立させたが、その対象から農業労働者(黒人)を除外し、労働者キャンプでは黒人を分離した。ニューディール立法の中心になった議員は、KKKのメンバーだった。

外交的にもヒトラーと戦うために、ルーズベルトはスターリンと組んだ。そういう「ファウスト的な取引」によって政府が経済に介入し、国民を戦争に動員した結果、ニューディールは大成功を収め、戦後の政治の方向を決めてしまった。

続きは8月6日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで。

あなたがソロスだったら確実にもうかる方法

Zerohedgeは、金融業界では有名なブログである。いつも悲観的なので、その予言が当たることは少ないが、「なぜ日本が次の危機の発火点になるかもしれないか」という記事で、おもしろい指摘をしている。



この図は日本国債の金利のボラティリティを示したものだ。最近、急に値動きが激しくなったのは、投機筋が入ってきたことを示唆している。Zerohedgeは「日銀が長期金利の上昇を容認したことは、いま国債を保有している投資家が確実に損することを意味する。彼らが売るのは当然だ」と書いている。

続きはアゴラで。

米ソの「短い春」のストップモーション

戦後史の解放II 自主独立とは何か 前編: 敗戦から日本国憲法制定まで (新潮選書)
終戦直後、多くの国民はマッカーサーを解放者として歓迎し、丸山眞男を初めとする知識人は、GHQのつくった憲法を守ることが任務だと考えた。これに対して「押しつけ憲法」を批判する人々は、GHQの検閲で片寄った歴史観が植えつけられたという被害者意識をもっている。本書は国際的な視野から史実を見直し、こういう不毛な対立から戦後史を解放しようという試みだ。

1945年は、国際的な座標軸が大きく転換した過渡期だった。終戦直後にGHQの主導権を握ったGS(民政局)のリベラルは、第2次大戦でともに戦ったソ連を同盟国と考え、社会党を中心とする中道左派内閣で日本を復興させようとしたが、失敗に終わった。スターリンを信用していたルーズベルトの死後、アメリカはソ連を最大の敵とみなすようになり、国務省とマッカーサーの対立が始まった。

この時期にソ連は東ヨーロッパを軍事的に制圧し、チャーチルは1946年3月に「鉄のカーテン」演説で冷戦の開始を宣告した。GHQの中でも保守派のG2(参謀第2部)が主流になったが、日本の知識人は周回遅れで米ソの「平和共存」を夢見ていた。そして旧敵国たる日本を無力化して連合国が共同統治する日本国憲法が起草されたのも、まさに1946年3月である。それは米ソの「短い春」のストップモーション写真のように今も残っている。

続きは8月6日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで。

出口戦略は総力戦

日銀が金融政策決定会合で長期金利の上限を引き上げたことを受けて、きのうは長期金利が0.12%まで上がり、きょうの寄り付きは0.145%で始まった。日銀が長期金利の変動幅を「経済・物価情勢等に応じて上下にある程度変動しうるもの」とし、0.2%程度まで容認したと市場が見たためだ。

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2016年から始まった「イールドカーブ・コントロール」で、日銀は長短金利をコントロールする方針を打ち出した。普通の金融政策では短期金利(政策金利)をコントロールするが、長期金利まで中央銀行がコントロールするのは異例である。今回の措置は、それを緩和して「出口」をさぐったものだろう。

しかし長期金利をコントロールできるというのは錯覚だ。日銀が無理に相場を支えると、変化のマグマが貯まって、投機筋が売り崩すチャンスになる。そのうち相場が暴落すると、日銀にも市中銀行にも評価損が出る。もし日銀が債務超過になると、一般会計からの支出が必要だ。政府と日銀のバランスシートを統合して「総力戦」でのぞまないと、危機は乗り切れない。

続きは8月6日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで。

なぜ大学教師はサラリーマンより生産性が低いのか

文部科学省は2019年度から、国立大学の教員に年俸制を導入し、業績給を拡大する方針だ。これに対して大学教師から反発の声が上がっているが、年俸制なんて普通の会社では当たり前だ。「業績の意味がわからない」という声もあるが、論文の引用数による業績の算定方法は(理系では)確立している。



続きはアゴラで。

中小企業が多すぎる

移民に消極的だった安倍政権が、新しい在留資格による外国人労働者の受け入れ拡大に舵を切った背景には、深刻な人手不足がある。経済界から自民党に突き上げがあり、参議院選挙をにらんで来年4月スタートという急な話になったのだろう。

人手不足の原因は複雑だが、ある意味では明らかだ。賃金が低すぎるからである。労働市場で需給が一致する賃金を経営者が払わないから、いつまでも超過需要が続くのだ。こういう現象は地方の中小企業に片寄っている。その解決策も明らかだ。需給が一致するまで賃金を上げれば、中国やベトナムから募集しなくても、国内から労働者が集まるだろう。

逆にいうと賃上げできないのは、適正な水準まで賃上げしたら利益が出ないからで、それは中小企業の生産性が低いからだ、というのがアトキンソンの見立てである。日本の企業の平均社員数は、高度成長期に半減した。1975~95年に企業は170万社増えたが、その88%が社員10人以下の中小企業だった。

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続きは8月6日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで。

移民の受け入れには社会保障の改革が必要だ


ドイツの移民暴行事件(YouTubeより)

日本でも、移民問題が議論になってきた。安倍首相は先週の関係閣僚会議で、来年4月から「新在留資格」を認める方向で、制度を整備するよう指示した。従来は専門知識をもつ労働者に限定していた移民を単純労働者にも認め、技能実習のあと5年まで在留を認める方針だ。業種もこれまで検討していた介護・農業・建設・宿泊・造船の5業種から拡大する。

こういう政策には経済界だけでなく、マスコミも「開かれた日本」や「多文化の共生」などといって賛成し、それに反対する人は「閉鎖的だ」と批判されることが多い。しかし日本より先に移民が大量に流入したヨーロッパでは、各国で移民排斥を求める極右政党が台頭し、イギリスはEU離脱を決めた。トランプ大統領を生んだのも移民問題である。日本もそうなる前に、冷静に費用対効果を考える必要がある。

続きはアゴラで。






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