エネルギー問題に民主主義は有効か

デモクラシーの歴史は長くない。それを古代ギリシャのような特権階級の自治制度と考えれば古くからあるが、普通選挙にもとづく民主政治が世界の主流になったのは20世紀後半であり、それによって正しい意思決定ができる保証もない。特に長期的な意思決定には適していない。



この図は1956年にハバートの描いた「長い夜に燃やす1本のマッチ」で、化石燃料があと数百年で枯渇することを示している。彼の「ピークオイル」論は間違っており、化石燃料の生産はあと100年ぐらいは枯渇しないと思われるが、非在来型を含めてもあと1000年続くことはない。

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野党と知識人の求めた「安保改正」

安保法制をめぐる議論は憲法解釈ばかりで、日本の安全をいかに守るかという話がないが、1960年の安保改正も何が問題だったのかよくわからない。1951年に結ばれた旧安保条約と日米行政協定は、米軍が日本国内に基地を自由に置ける不平等条約で、これを岸首相が対等な条約に改正しようとしたのは当然だった。

それは当初は野党も同じだった。砂川基地で衝突事件の起こった1957年に、清水幾太郎などの進歩的知識人は「基地問題の根源的な原因は安保条約と行政協定にある」として、その「根本的な再検討」を求める声明を出した。これに対して岸は国会で「文化人が健全な世論を建設する場合には、これを尊重してゆく。安保条約、行政協定は再調整する時期になっている」と答弁した(清水『わが人生の断片』)。

知識人の声明が図らずも安保改正の露払いの役割を果たしたので、彼らはあわてて「これは憲法を改正せよという意味ではない」という補足声明を出したが、安保改正の流れは止まらなかった。安保条約を廃止して米軍を撤退させるには、憲法を改正して再軍備するしかないが、野党がこれをごまかして倒閣運動に利用したため、安全保障と無関係な混乱が始まった。

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世界の共同主観的存在構造

世界の共同主観的存在構造 (岩波文庫)
戦後日本の古典といってよい廣松渉の代表作が、やっと岩波文庫に入った。彼の世間的な主著は『存在と意味』だろうが、その内容は本書の表題作に尽きている。これは東大文学部哲学科の卒業論文だが、彼の哲学はそこで完成しており、よくも悪くも晩年まで変わらなかった。

彼の難解な論文が左翼の熱狂的な支持を集めた一つの原因は、生産性がなくなったと思われていたマルクス主義を思想的によみがえらせたことだろう。マルクスの唯物論はレーニン的な素朴実在論ではなく、むしろ彼が敵視したマッハの「経験批判論」に近いというのは重要な発見だった。

60年代には『経済学・哲学草稿』を中心とする「疎外論」的なマルクス理解が流行したが、それを「人間主義」として批判したのがアルチュセールだった。これは当時「構造主義」として流行したが、それよりはるかに精密なマルクス読解にもとづいて、フッサールやメルロ=ポンティの「相互主観性」の概念を取り入れたのが廣松の理論だった。彼の「共同主観性」はそれと似ているが、微妙に違う。

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受信料の「支払い義務化」はなぜできなかったのか



6日の最高裁判決では、NHK受信料制度は合憲とされたが、契約が成立するためにはNHKが個々に民事訴訟を起こして確定判決をとる必要があるという判決になった。300万世帯以上の不払い者に対して、いつ受信機を設置したか日付を確認して訴訟を起こすことは不可能であり、この点ではNHKの敗訴ともいえるが、実務的には大した影響はないだろう。

奇妙なのは「契約の義務があるが支払い義務がない」という明らかな弱点をもつ放送法がなぜでき、戦後ずっとから続いてきたのかということだ。1950年に今の放送法ができるまでには、逓信省が何度も法案を作成し、それがGHQに却下されて作り直した。この経緯はよくわからなかったが、最近、逓信省の内部文書が分析され、解明されてきた。

村上聖一論文によると、1948年1月の法案では(戦前の制度を踏襲して)受信機を設置する際に逓信省への届け出が必要で、それによって受信料の支払い義務が発生するという規定だったが、GHQがこれを「受信契約は自由でなければならない」として拒否した。

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島桂次の見果てぬ夢

シマゲジ風雲録―放送と権力・40年
受信料制度についての最高裁判決は「この変な制度は変えたほうがいい」という勧告かもしれないが、これは昔から政治的イジメの材料だった。国営でも民営でもない中途半端な経営形態は、本多勝一のような左翼からは「国策放送だから受信料を払わない」という不払い運動で攻撃される一方、自民党からは「国営なんだから政権を批判するな」という暗黙の圧力がかかった。

こういう状況では、自民党に顔がきいて毎年2月にNHK予算を全会一致で乗り切る政治部記者の手腕に経営の命運がかかってしまう。島桂次はそういう「国会担当」のボスだったが、海老沢勝二のような単なる派閥記者ではなかった。NC9やNHK特集をつくり、BSを独自放送にして、本書に書かれているような「風雲」を巻き起こした。

彼は1980年代後半にマードックの向こうを張ってNHKを民営化してグローバル企業にしようとし、住友銀行の磯田一郎と一緒にMICOという新会社をつくった。多くの企業が新会社に出資し、島は1991年に「NHKを拠点にして日本から世界にニュースを発信する」というGNN(Global News Network)構想を発表したが、その直後に失脚した。それはNHKのバブル崩壊だった。

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NHKの受信料制度は合憲だが時代遅れ

NHKが受信料をめぐって視聴者に対して起こしていた訴訟の初の憲法判断として注目されていた最高裁判決は、双方の上告棄却という形で終わった。これを「合憲判決」と考えることは法的には間違っていないが、NHKの敗訴という面もある。判決要旨によると、最高裁はこう述べている。
放送法は、受信料の支払義務を、受信設備を設置することのみによって発生させたり、NHKから受信設備設置者への一方的な申込みによって発生させたりするのではなく、受信契約の締結(NHKと受信設備設置者との間の合意)によって発生させることとしたものであることは明らかといえる。

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EVで化石燃料の時代は終わるか

石油がまもなく枯渇するという「ピークオイル」をとなえたアメリカの地質学者ハバートは、1956年に人類のエネルギー消費を「長い夜に燃やす1本のマッチ」にたとえた。人類が化石燃料を使い始めたのは産業革命以降の200年ぐらいで、現在の消費量が史上最大である。化石燃料の埋蔵量は物理的には有限なので、向こう数百年を考えると、このマッチがいつか燃え尽きることは自明だ。

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原子力のコストは民主主義のコスト

小池・小泉「脱原発」のウソ
本書は専門家が書いたエネルギー問題の入門書だが、こんなキワモノ的なタイトルで「右派」の出版社からしか出せないところに日本の深刻な状況がある。著者もなげくように、出版業界でも「原発推進派」の本は企画として成り立たない。

民主党政権は「原発ゼロ」という間違った戦いを始めてしまったが、自民党政権もそれを止められない。マスコミが原子力に莫大な恐怖のコストを上乗せしたからだ。たとえば福島第一原発の「汚染水」は薄めて流せばいいが、安倍首相がOKしないので100万トン以上タンクに貯水したままだ。こういう政治的コストを「廃炉費用」に算入したら、原子力のコストは際限なくふくらむ。

本書はそういう政治的コストを除き、原子力の技術的コストだけを考えると、核燃料サイクルも実用化できるという。たしかに中国もロシアも、核燃料サイクルを続けている。独裁国家は政治的コストを考えなくてもいいからだ。これは民主主義のコストともいえるが、その有権者に将来世代は入っていない。100年後の世代は、安倍政権の選択をどう考えるだろうか。

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UHF帯は無線インターネットで使える

規制改革推進会議の答申は、電波オークションを導入する方向で決着したようだ。
新たに割り当てる周波数帯について、その経済的価値を踏まえた金額(周波数移行、周波数共用及び混信対策等に要する費用を含む。)を競願手続にて申請し、これを含む複数の項目(人口カバー率、技術的能力等)を総合的に評価することで、価格競争の要素を含め周波数割当を決定する方式を導入する(平成30年度中に法案提出して法整備)こととし、そのための検討の場を設ける。
というのは「オークションの方式を2018年度中に決める」という意味だ。これは当然だが、問題は競売にかける帯域があいているのかということだ。その最大の目玉はテレビ局の占有しているUHF帯だが、答申は
地上デジタル放送において割り当てられている周波数帯については、時間的・地理的条件などにより生じる空き周波数を動的に割り当てるような新技術の活用等により、帯域の更なる有効利用が可能との指摘がある。
と書いている。この「空き周波数を動的に割り当てるような新技術」とは、SFNやオーバーレイ(共用)のようなものを想定していると思われる。テレビのチャンネルを変更してクリーンに200MHzあけることがベストだが、民放連は抵抗しているので、今のまま「動的に割り当てる」ことも可能だ。ホワイトスペースを使う公衆無線LAN技術もある。

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UHF帯のホワイトスペースをこういうオーバーレイ技術で活用すれば、日本は無線インターネットで世界のトップになれる。電波が開放されれば、大きなビジネスチャンスが開けるのだ。12月19日には緊急シンポジウムを開催する予定だ。

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核拡散防止条約の「隠れた目的」

北朝鮮がまたICBMを発射し、日本も核武装すべきだという議論が再燃しているが、いま核拡散防止条約(NPT)を脱退することは日米同盟を脱退するに等しいので不可能だ。しかし栗山元外務次官によると、1960年代には日本政府はそういう選択肢を真剣に考えていたらしい。

1968年にNPTができたのは1964年の中国の核実験がきっかけだが、そのとき米ソの「隠れた目的」は、日本と西ドイツの核武装を封じ込めることだったという。NPTを強制する機関としてできたのがIAEAだが、その主な対象も日本だった。今でも六ヶ所村の再処理工場では、IAEAの査察官が24時間勤務でプルトニウムの量を監視している。

当時の日本政府はNPTのそういう不平等性を知っていたので、これに抵抗した。条約に署名したのは発効直前の1970年2月、批准は1976年6月だった。自民党内で6年ももめたのは党内タカ派の反対が原因だが、「非核三原則」を唱えた佐藤栄作もNPTに最初は反対だった。こういう自民党の迷走が、その後の混乱の原因になった。

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