アベノミクスは「ゼロ金利に賭けるギャンブル」

萩生田発言で始まった「消費税の増税延期」の波が収まらないが、財務省は財政制度審議会の資料で反論している。「名目成長率(g)と金利(r)の関係」に3ページも費やしているのは(名指しで批判していないが)サマーズやブランシャールの長期停滞論に対する反論だと思われるが、このデータは弱い。

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日本でもG7でもr>gだというデータは1981年からの相関係数だけで、時系列データがない。これは時系列で描くと、長期的にr<gとなる傾向が強まっていることがわかるからだろう。r>gになると、政府債務比率が発散する。「名目成長率が名目金利を上回る状況が持続する保証はない」という財務省のコメントは正しいが、今のところそれが逆転する兆候はない。

安倍首相が増税を2度も延期し、黒田総裁が「量的緩和でインフレ期待を起こす」と公言したアベノミクスは、放漫財政と超金融緩和という異常なポリシーミックスであり、財政赤字で金利を上昇させ、金余りでコントロールのきかないインフレと財政破綻をもたらすリスクが大きい――と多くの経済学者が警告した。

ところがインフレは起こらなかったが、財政破綻も起こらなかった。アベノミクスはゼロ金利に賭けるギャンブルだったが、今のところ安倍首相はこのギャンブルに勝ったのだ。しかしなぜ勝ったのかは、彼にもわからない。それは単なるまぐれ当たりだから、問題は金利が上がり始めたとき、どうするのかということだ。

続きは4月29日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで。

原発のテロ対策工事で運転を停止する必要はない

原子力規制委員会は24日、原発の「特定重大事故等対処施設」(特重)について、工事計画の認可から5年以内に設置を義務づける経過措置を延長しないことを決めた。これは航空機によるテロ対策などのため予備の制御室などを設置する工事だが、予定より大幅に遅れ、5年の期限内に工事が終わらない見通しだ。



続きはアゴラで。

NHKはなぜ地上波にスクランブルをかけないのか

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きのうのアベマプライムでは「NHKの地上波にもスクランブルをかけろ」という私の意見にまったく反対は出なかった。見てない人も払わされる受信料制度がNHKへの不信感のもとになり、「NHKから国民を守る党」などという泡沫政党が(地方議会とはいえ)26人も当選する原因になっている。

この問題の解決は技術的には簡単だ。BSにはB-CASでスクランブルをかけているのだから、地上波にもかければいい。2007年には当時の橋本会長が「地上波にもスクランブルをかけたい」と発言したことがあるが、結局できなかった。その後も、この問題はずっとタブーになっている。NHKの経営形態の問題に発展するからだ。

スクランブルをかけると、見ない人は払わなくてもいい視聴料になり、NHKはWOWOWやスカパーと同じ民間の有料放送になる。受信料制度はなくなるので放送法は改正され、NHKは完全民営化される。これによって経営は効率化し、政治の介入からも解放され、インターネットにも自由に参入できるようになるが、それは政治家と民放連には都合が悪いのだ。

続きは4月29日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで。

87歳に自家用車は必要か

池袋の暴走事故については、まだ87歳の加害者の話が出てこないので一般化はできないが、高齢者の交通事故が多いことは事実だ。警察庁の調べによると、80歳以上の高齢者による死亡事故は免許人口10万人あたり11.1件で、75歳未満の約3倍である。



続きはアゴラで。

平成の名著ベスト10

ブラック・スワン[上]―不確実性とリスクの本質平成もあと1週間で終わりなので、この30年に私が書評した本のベスト10を選んでみた。
  1. タレブ『ブラック・スワン』
  2. ウィルソン『人類はどこから来て、どこへ行くのか』
  3. フクヤマ『政治の起源』
  4. ネグリ&ハート『<帝国>』
  5. ノース&ウォリス&ワインガスト『暴力と社会秩序』
  6. 篠田英朗『集団的自衛権の思想史』
  7. ポメランツ『グローバル経済の誕生』
  8. 白川方明『中央銀行』
  9. デリダ『マルクスの亡霊たち』
  10. ミルグロム&ロバーツ『組織の経済学』
続きはアゴラで。

不換紙幣は資本主義を維持する巨大なバブル



社会保障はネズミ講だ
というと「不道徳だ」とか「いずれ行き詰まる」という批判が来るが、あなたもネズミ講に入っている。買い物で払う1万円札は、製造原価20円の紙切れだ。不換紙幣は金とのリンクが切れているので、店が受け取りを拒否すると行き詰まる。不換紙幣は、取引相手に政府債務のリスクを先送りするネズミ講なのだ。

それを最初に指摘したのはマルクスである。彼は『資本論』で「商品の物神性」を明らかにし、貨幣の価値の根底に資本主義の本質的な不安定性があると書いたが、彼が貨幣を廃止しようと考えたのは間違いだった。資金需要と供給の一致しない(動学的に非効率な)世界では、人々が紙幣を使うことで資金が循環し、物々交換の世界より豊かになるのだ。

しかし貨幣の不安定性が恐慌(景気循環)の原因になると考えたマルクスの恐慌論は、今も本質的な洞察である。貨幣はみんながその価値を信じるから自分も信じるバブルなので、ジンバブエのようにみんなが政権を信じなくなるとバブルが崩壊し、ハイパーインフレが起こる。しかし日本のように政府が過剰に信頼されていると金利がマイナスになり、将来世代から借金しても将来世代の負担が増えないフリーランチが可能になる。

続きは4月22日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで。

社会保障の「国営ネズミ講」は維持できるか

萩生田発言は波紋を呼んでいるが、麻生財務相のように「増税しないと財政が不安定になり、社会保障が維持できなくなる」という批判が多い。しかし萩生田氏もいうように「プライマリーバランス(PB)は目的ではない」。政府の目的は財政黒字ではなく経済の安定と成長なので、PBを黒字化して長期停滞が悪化するのは本末転倒だ。しかし増税しないで社会保障は大丈夫なのだろうか?

続きはアゴラで。

消費増税延期の判断基準は「日銀短観」ではない


自民党の萩生田幹事長代行は、10月の消費増税について「6月の日銀短観の結果次第で延期もありうる」と発言した。これは7月1日に発表される日銀短観のことだと思われるが、こんな短期的な指標で増税を延期することはありえない。延期する理由として意味があるのは、ゼロ金利がいつまで続くのかという基準だ。

続きはアゴラで。

ヘリコプターマネーで将来世代の負担は減る

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日本では増税する必要がないという記事に「それでも財務省は増税すると思って若い世代は消費しないのでは?」という質問が来たが、これはもっともだ。減税しても将来の増税を恐れて消費しない現象は、経済学ではリカードの中立命題(等価定理)としてよく知られている。

現実には永遠の未来の子孫の増税を恐れて消費を控える人はほとんどいないが、日本のように政府債務が大きくなって、マスコミが「財政が破綻する」とか「将来世代の負担が重くなる」と宣伝すると、そういう心理的なマイナスの効果が大きくなる。これには(理論的には)解決策がある。政府が国民に一律に現金(あるいは商品券)を配ればいいのだ。

これはフリードマンが(冗談で)ヘリコプターマネーとして提案した思考実験で、荒唐無稽のようにみえるが、意外に合理的だ。現金は政府が返済する必要がないので、政府紙幣と同じく政府債務は増えない。インフレになるが、徐々に増やせばコントロールできる。将来の増税の心配がないので消費は増え、いま生まれていない世代の負担も減る、とBuiterは論じている。消費増税のポイント還元は、電子マネーのヘリマネでやってはどうだろうか。

続きは4月22日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで。

国債の「合理的バブル」はどこまで続くのか

金利がマイナスになるとはどういうことだろうか。そもそも銀行はマイナス金利の国債をなぜ買うのか――こんな疑問をもつ人は多いだろう。その答は簡単だ。もうかるからである。国債の金利は下がり続けているので、価格は上がり続けているのだ。

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これはきょう13時現在の日本国債先物の価格だが、152.45円。10年前の140円に比べると、10年で8.5%も値上がりした。リスクゼロで、これだけキャピタルゲインの出る金融商品は他にない。その一つの原因は日銀が国債を大量に買ったからだが、企業が貯蓄超過になって資金需要が足りないことが根本的な原因だ。

このように金利<成長率(r<g)になる動学的に非効率な経済では、慢性的に金余りなので安全資産に資金が集中してバブルが発生する。その対象は、1980年代には(安全資産と思われていた)土地だったが、90年代から国債に変わった。これは余った資金を回転させて資金配分の効率を高める合理的バブル(Tirole)で、理論的にはr=gとなるまで続く。

日本のバブルが崩壊したのは、不動産投資に資金が集中してr>gとなってからも公定歩合の引き上げが遅れ、資本収益率をはるかに上回る価格で投資が行われたためだった。しかし90年代から資金の集中した国債の金利は上がらず、r<gが20年以上続いている。これは日銀が買い支えているためだからバブルはそのうち崩壊する、と警告した人は(私を含めて)多いが、今までは崩壊しなかった。では今後、崩壊する可能性はあるのだろうか?

続きは4月22日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで。






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