水素とアンモニアは「夢のエネルギー」か



日本経済新聞は、このところ毎日のように水素やアンモニアが「夢の燃料」だという記事を掲載している。宇宙にもっとも多く存在し、発熱効率は炭素より高く、燃えてもCO2を出さない。そんな夢のようなエネルギーが、なぜ今まで発見されなかったのだろうか?

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大インフレ時代は再来するか

バイデン政権の大規模な財政支出は、1.9兆ドルのコロナ対策法案が議会を通ったあと、さらに8年間で3兆~4兆ドルのインフラ整備法案を検討している。この手の問題については、だいたい民主党系は大きな政府に賛成で、共和党系は反対だが、今回は必ずしもそうではない。INSIDERの整理によると、1.9兆ドルの案に対して

 反対:サマーズ・ブランシャール・マンキュー
 賛成:パウエル・クルーグマン・スティグリッツ

となっている。特に注目されるのは、長期停滞論を主張していたサマーズが、1.9兆ドルの財政支出に反対したことだ。彼はこう書いている。
リーマン破綻後のオバマ政権の財政支出(月間400億ドル)は需給ギャップ(月間800億ドル)の半分で少なすぎたが、今回は需給ギャップが月間500億ドルなのに対して、財政支出が月間1500億ドルと3倍になる。

FRBのパウエル議長は「インフレ目標は2%をオーバーシュートしてもいい」という方針だ。FRBはインフレ率は今年末に2.4%でピークアウトし、2022年に2%に戻ると予想しているが、予想インフレ率(BEI)は、次の図のように直近では2.4%まで上昇している。

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戦前の日本はなぜ成長できなかったのか

イエの問題は奥が深い。これは日本が明治時代に非西洋圏で唯一、自力で近代化できた原因であり、その成長に限界があった原因でもある。梅棹忠夫や村上泰亮が指摘したように、日本社会の構造は中国とは異なり、西欧に似ている。どちらも「封建社会」(最近では社団国家)と呼ばれる分権的な社会が成熟し、その集合体として国家ができた。

しかし戦前の日本の成長率はそれほど高くなかった。図のように一人あたりGDPは明治以来、70年かかってアメリカの4割(対数目盛)ぐらいになっただけで、それにキャッチアップした高度成長は戦後の現象である。なぜ戦後これほど成長したのか、という問題には多くの答があるが、なぜ戦前これほど成長しなかったのか、についてはほとんど答がない。

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その数少ない答が、Hayashi-Prescott(2006)である。彼らの答は単純だ。次の図のように日本の農業人口が1940年まで約1400万人で変わらず、生産性の高い都市への人口移動が起こらなかったからだ。これは近代化とともに人口の都市集中が起こる発展途上国とは異なる日本の特徴だが、なぜ人口移動が起こらなかったのだろうか?

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戸籍を廃止して「イエ社会」を卒業するとき

選択的夫婦別姓は、法的には大した問題ではない。1996年に法制審で別姓の選択を認める民法改正案が答申されたが、閣議決定に至らなかっただけだ。菅内閣が閣議決定して法案を国会に提出すれば、自民党の一部議員を除いて公明党も野党も賛成するので、改正できるだろう。

これは「家族の絆」とは無関係だ。日本以外に夫婦別姓を禁止している国はないが、そういう国で家族の絆がなくなったという話は聞かない。「戸籍制度がなくなる」というのも誤解で、100%夫婦別姓の台湾にも(日本以外で唯一)戸籍がある。これは日本統治時代の遺物で、韓国では廃止された。

問題は、こんな当たり前の話が、なぜ25年ももめ続けているのかということだ。かつては「日本古来の伝統だ」という説もあったが、これは保守派の歴史学者も認める通り、学問的には問題にならない。日本古来の伝統にのっとるなら、夫婦別姓を義務づけるべきだ。

自民党右派が反対している(隠れた)理由は、旧民法の「戸主」を中心とする「家」制度を守るためだが、これにも誤解がある。戸主は明治31年(1898)に初めて定められたもので、このとき夫婦同姓(実質的には妻の同姓義務化)が定められたが、これは日本の伝統に反する制度だったのだ。

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文明としてのイエ社会

村上泰亮著作集 (4)
夫婦別姓をめぐる論争は、無知な保守派が旧民法の家制度を日本古来の伝統と取り違えただけで、学問的には論じるに値しない。何度も書いたように、日本の伝統は夫婦別姓である。というより律令制度の戸籍では、成年男子以外に姓はなかった。北条政子も日野富子も、同時代には単なる「政子」や「富子」だった。

苗字(氏)は姓とは別である。現代では姓=氏なので混同しやすいが、姓が先祖代々の家系(親族集団)の称号で変えられないのに対して、苗字は日本独特のイエをあらわす通称で、勝手につけてよかった。

イエは親族集団ではなく、村上泰亮の表現によれば「平安末期に東国で発生した超血縁的な社団」である。その第一義的な機能は農地を守る武装集団なので、一族郎党には血縁が必ずしもなく、婿取りも普通だった。イエは基本的には能力主義的な機能集団だったが、その正統性には血統を使う擬似親族集団だった。

親族集団が大規模化するとき、擬似親族集団ができることはよくある。その一つが同姓を一族とみなす中国の宗族で、数万人という規模になる。それに対して日本のイエは数百人の社団で、共同で農作業や戦争をすることが重要だった。互いに名前を覚えられる規模を超えると分家し、別の苗字を名乗ることも多かった。国も大名家というイエの擬制で統治された。

この世界に類をみないイエが、中世以来の日本社会の根底にあり、現代の政治にも企業にも生きている。それが丸山眞男の指摘したタコツボの構造である。国を「国家」と呼ぶ和製漢語は、まさに国=家という日本の伝統を示している。

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プラチナバンドは既存キャリアの帯域をけずらなくても空けられる

きょう開かれた総務省の有識者会議が、楽天モバイルの出したプラチナバンドの再配分案をめぐって紛糾したようだ。この案は次のように既存3社の帯域から5~10MHzずつけずって新規事業者(楽天)に割り当てろという話で、既存業者が反対するのは当たり前だ。



しかし既存キャリアも損しないで楽天が新しい電波を得る方法がある。プラチナバンドにはテレビ局の占有している電波が約200MHzもあいているのだ

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コロナ対策の政府債務に「徳政令」を出すべきか

ここ1年のコロナ対策で、ECBやヨーロッパ各国の中央銀行では3兆ユーロの政府債務が積み上がっている。これを帳消しにする徳政令を出すべきだ、とピケティなど100人以上の経済学者や政治家が2月5日に提言し、論議を呼んでいる。

もちろんECBのラガルド総裁は「考えられない」と一蹴したが、これは理論的には、それほど荒唐無稽な話ではない。統合政府で考えると、政府の債務は中央銀行の債権なので、帳消しにしても連結の政府債務は変わらない。徳政令でECBは債務超過になるが、ユーロを印刷すればいい。MMTの信じているのとは異なり、自国通貨建てでなくても(関係国が合意すれば)政府債務は帳消しにできるのだ。

日本でも日銀は500兆円以上の国債を保有しているが、それを日銀が売却することはありえない。国債金利も日銀納付金として国庫に納めるので無利子である。償還期限が来てもすべて借り替えに応じれば、徳政令と同じだ。理論的には問題がないようにみえるが、ここには落とし穴がある。続きを読む

小泉進次郎氏は「プラスチック容器の絶滅」をめざす

小泉進次郎環境相の発言が話題になっている。あちこちのテレビ局のインタビューに応じてプラスチック新法をPRしている。彼によると、そのねらいは「すべての使い捨てプラスチックをなくす」ことだという。



(フジテレビ)今回の国会でもう1つの目玉なのが、プラスチック資源循環促進法案ですね。プラスチック使用量を削減し脱プラ社会を目指すものですが、プラスチックスプーンやフォークの有料化に国民の関心が集まっています。

(小泉)日本では年間約1000万トンのプラスチック生産があって、そのうち排出、つまりゴミになるのは約900万トンです。そのうち使い捨てプラと呼ばれる容器包装が約400万トンで、その中にはペットボトル約60万トン、レジ袋約20万トンが含まれます。さらに使い捨てプラにはスプーンやフォークなどが約10万トンあります。

「なぜスプーンが狙い撃ちされるんだ」という批判に対しては、答えは明確です。スプーン狙い撃ちではありません。プラスチック全部です。スプーンは一つの例で、プラスチック製品全部が[有料化の]対象だと、説明を理解を広げていきます。

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第2回電波シンポジウム「電波改革の扉を開けよう」

電波行政がゆれています。長いあいだ「密室行政だ」とか「官民癒着だ」などと批判されてきましたが、電波行政はマスコミの報道管制に守られ、批判から扉を閉ざしてきました。

しかし東北新社の接待問題がNTTに延焼し、内閣広報官や総務審議官や総務省の局長が次々に更迭される大スキャンダルに発展しました。この背景には通信・放送行政の閉鎖的な体質がありますが、この問題はマスコミでは報じられません。

第1回の電波シンポジウムでは放送改革について議論しましたが、今回はこの電波行政の問題を取り上げ、独立行政委員会や電波オークションについて議論します。SNSとも連携して、今度こそ電波行政の「開かずの扉」を開け、オープンな議論を始めたいと思います。

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「ジェンダーギャップ」という錯覚

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きのうアベマプライムで「ジェンダーギャップ」の話をした。今年も日本が120位だったというが、こんな指数に客観性はない。政治・経済・教育・医療の4分野で、男女比を出しているだけだ。政治分野が突出して悪い(147位)のは女性の国会議員が少ないからで、その原因は「ジェンダー差別」ではなく、女性にはドブ板選挙ができないという政治の質の問題である。

経済分野が悪い(117位)原因は、大企業の幹部に女性が少ないからだが、その原因は終身雇用・年功序列の雇用慣行である。日本の大企業では、15年以上勤続している女性社員の比率は男性の半分以下だ。年功序列では勤続15年未満の社員が役員になることはありえないので、幹部に女性が少ないのは当たり前なのだ。

ところがスタジオのコメンテーターには、このしくみがわからない。「日本人の意識が遅れている」という精神論を繰り返し、「大企業の管理職の男女比を同じにしろ」などと結果の平等を求めるが、結果を変えて原因を変えることはできない。そのとき思い出したのが、この絵である。

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Angus Maguire

これはequalityとequityの違いを示しているが、近代社会で保障されているのは、equalityであってequityではない。フランス革命の「自由・平等・博愛」の平等はegaliteで、日本語でいうと機会均等なのだ。

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