30年代の事件は「青年将校の暴走」だったのか

丸山真男研究: その学問と時代 (植手通有集)
著者は丸山眞男のもっとも信頼した弟子で、著作集の編集や回顧談の相手をした。しかし本書は丸山論によくある権威にひれ伏すような本ではなく、具体的に恩師の限界を指摘している。ただ著者の失明など健康上の理由で未完に終わっており、研究者以外にはおすすめできない。

重要なのは、丸山のファシズム論の批判だ。彼の「無責任の体系」という規定は印象的で、その後の常識になったが、1930年代の軍部の突出した行動を「青年将校の無責任な暴走」と一括するのは正しくない。最近の研究でわかってきたのは、背後に責任ある幹部の計画があったことだ。

もちろん丸山の時代にそういう史料は利用できなかったのでやむをえないが、五・一五事件や二・二六事件も無法者の暴走ではなく、当事者としては合理的な意思決定の積み重ねとして理解できる。そう理解しなければ、戦前の歴史から正しい教訓を学ぶことができない。

続きは10月3日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンでどうぞ。

経営学はなぜだめな学問なのか

組織の経済学
本書を私がFacebookで紹介したら、アマゾンで「経済学」の第1位になって驚いた。原著は1993年、訳本は1997年だが、いまだにビジネススクールの世界標準で、残念ながらこれをしのぐ経営学の教科書は私の知る限り出ていない。それほどむずかしくないが分厚いので、これを日本向けにアレンジしたのが拙著である。

最近は社会学者や憲法学者がバカの代名詞になったが、経営学者は昔から(経済学者の)物笑いのタネだ。本書の著者もスタンフォード・ビジネススクールの教授だが、二人とも経済学者である。数多い経営学者の書いた教科書を押しのけて本書が20年以上もスタンダードなのは、やはり経済学に「科学」としての競争があったからだろう。

続きは10月3日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンでどうぞ。

蓮舫代表は国会で「説明責任」を果たせ

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臨時国会が始まり、日本維新の会はきょう「外国籍を有する日本国民の衆参両院議員選挙への立候補を認めない公選法改正案」、通称「蓮舫法案」を提出する。10月9日までに彼女を議員辞職に追い込めば、参議院東京選挙区で田中康夫氏が繰り上げ当選するので、維新としてはあと2週間が正念場だ。

続きはアゴラで。

日本軍の「短期的合理性」

旧日本陸海軍の生態学 - 組織・戦闘・事件 (中公選書)
経営者にとって意思決定の合理性は必要だが、十分ではない。意思決定の前提にバイアスがあると、いくら合理的に決めても間違った答が出る。10月7日からのアゴラ経済塾「日本的意思決定のバイアス」では、日本人に特有の間違え方の法則を分析する。

そのバイアスが鮮明に観察できるのは、日本軍である。一般的には「勝てるはずのない無謀な戦争に突っ込んで負けたバカな軍隊」と思われているが、実際の陸海軍はそれなりに合理的だった。太平洋戦争が「目的のない戦争」とか「終戦のあてのない戦争」といわれるのも正確ではない。

本書で分析している「対米英蘭蒋戦争終末促進に関する腹案」は1941年11月に泥縄で書かれた戦争終結の計画だが、当時の日本軍のコンセンサスを文書化したものだ。その基本方針は「独伊と連携して先づ英の屈服を図り米の継戦意思を喪失せしむる」ことだった。

長期戦になったら補給が足りなくなることは陸海軍ともにわかっていたから、敵を短期決戦で戦意喪失させることが目的だった。当時はまだドイツがヨーロッパ戦線で破竹の快進撃を続けており、アメリカの戦力はまだ構築途上だったので、早めにたたかないと勝機がない(開戦が遅れたら勝てない)という判断はそれなりに合理的だったのだ。

続きは10月3日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンでどうぞ。

財政危機とは社会保障の危機である


きのうのアゴラ政治塾では、鈴木亘氏(学習院大学)をゲストに招いて社会保障について話し合った。これについては「言論アリーナ」でも何度もテーマにしたので経済学的な問題は省略したが、政治塾で出てきた(既知の)話を補足しておこう。

続きはアゴラで。

蓮舫代表は国籍離脱の書類を公開せよ

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民進党の蓮舫代表は、きょう定例記者会見で「台湾籍離脱の手続きが完了した」ことを明らかにしたが、まだ疑問が残る。
台湾籍離脱手続きに関して、さきほど台湾当局から手続き完了したとの報告と証明書を頂いた。それを区役所に届けに行っている。私の発言や私自身の認識、法的な認識、評価が混同し、ご迷惑をおかけしたことはおわびさせていただく。私は日本人です。

今回の籍離脱をお願いする時に、当局から言われた申請書類は全て提出しているが、その中に子供だった頃のパスポートもあった。提出しています。
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黒田総裁の「真珠湾」はなぜ失敗したのか

JBpressにも書いたが、日銀は非常にわかりにくい表現で、ようやく撤退に向けて舵を切った。日経は「負けを認めた」と論評しているが、負けを認めることは恥ではない。むしろ負けを認めて撤退できなかったことが、日本軍の壊滅した最大の原因だった。

黒田総裁は山本五十六に例えられることがある。「2年で2倍で2%」の奇襲作戦で一挙にデフレ脱却しようという「真珠湾攻撃」は、資産市場を動かすインパクトはあった。彼の主たる攻撃目標は為替と株であり、資産価格の上昇が実体経済に波及して日本経済が回復するという理論も一部の経済学者にはあったが、それはしょせん一時的な偽薬効果だった。

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潜在成長率の推移(出所:日銀「総括的な検証」)

図のように潜在成長率がゼロに近づいているとき、持続的なインフレ(超過需要)が起こることはありえない。現状が潜在成長率から大きく下振れしているなら、定常成長経路に戻せば「自己実現的な成長」が起こる可能性もあるが、あいにく今が定常状態なのだ。

続きは9月26日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンでどうぞ。

もんじゅの死刑宣告



高速増殖炉「もんじゅ」の廃炉がやっと決まった。私も昔から言ってきたように、今までいくら投資したかはサンクコストで、考えるべきではない。しかしこの番組で澤田さんも言っているように、研究開発拠点としてのもんじゅには意味がある。もんじゅが問題を起こすのは運転しているためで(広義の)高速炉の研究開発に純化すればよい。

ただ核燃料サイクル全体をやめるかどうかは別の問題だ。サンクコストを忘れて今後のキャッシュフローだけ考えても、化石燃料の消費をこれから増やすべきかどうかは疑問がある。たとえば炭素税を5000円/トンぐらいにすれば、原発のほうが火力発電より安い。

続きは9月26日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンでどうぞ。

日銀の「ミッドウェーとガダルカナルの間」

きょうの日銀の金融政策決定会合の結論は、おおむね予想どおりだった。完全に失敗した「量的・質的緩和」(QQE)から撤退し、金融調節の指標としてマネタリーベースを事実上放棄するという、ほとんどの経済学者と同じ結論を出しただけだ。

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マネタリーベース(青)とマネーストック(赤)の前年比増加率(%)

続きはアゴラで。

青年将校はなぜ暴走したか

陸軍士官学校事件 - 二・二六事件の原点 (中公選書)
暴走する蓮舫代表と彼女を止められない民進党執行部を見て、30年代の青年将校を思い出した。本書のテーマは、陸軍士官学校事件と呼ばれる1934年に起こったクーデタ未遂事件である。これは陸士の候補生(学生)が辻政信(当時は陸士の教官)のスパイになって青年将校の「クーデタ計画」を密告し、磯部浅一・村中孝次などの青年将校が逮捕されて免職になったといわれる怪事件だが、謎が多い。

本書は最近発掘された軍法会議の記録にもとづいて通説をくつがえし、このクーデタ計画が永田鉄山軍務局長と辻の謀略だったことを明らかにする。この事件の不公正な処理が陸軍統制派と皇道派の対立を決定的にし、翌年の永田暗殺事件や翌々年の二・二六事件(磯部と村中が首謀者)の原因になった、というのが著者の見立てだ。それは当事者の誰も予想しなかった結果だが、日本の組織で起こりがちな「競合脱線」だった。

続きは9月26日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンでどうぞ。






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