約束を破れない日本人

韓国が「約束を守れない国」だとすると、日本は「約束を破れない国」である。これには歴史的な原因がある。日本は江戸時代まで対外的な戦争を経験しなかったので、平和の中で安定した中間集団(社団)ができ、血縁集団を超える約束ができるようになった。これを「封建制」と呼ぶのは正確ではないが、東アジアの他の国とは明らかに違い、ヨーロッパのfeudalismに似ている。

堂島の米市場では米の現物は取引されず、「米切手」の売買で先物取引まで行われた。米商人は互いに血縁も地縁もなかったが、米市場の中で商人の評判を共有する評判メカニズムの完成度が高かったためだ。約束を守るレントが大きく、それを破ったときは商人の仲間から追放される損失が大きいと、約束は自発的に守られる。

このような約束を守るメカニズムができた原因は、長い平和の中で「家」という親族を超える社団が根づいたことだが、もう一つは日本語が全国で通じたことだ。これは自明ではなく、中国で漢字の読める人は歴史的に人口の1割程度で、今でも北京語と広東語の発音はまったく違うので、漢字が読めないと通じない。

日本語の均質性のおかげで、血縁集団を超えて約束を守る社団が機能した。家はもともと武士と農民の地縁集団だったが、そのうち商人にも広がって地縁にも拘束されなくなった。この点で、日本の家はヨーロッパのギルドのような職能集団に近いが、個人と家族を組織に「丸抱え」で拘束するシステムなので息苦しい。

続きは8月26日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで。

日韓基本条約は破棄できるか

韓国のGSOMIA破棄は常識では理解できないが、日本の経済制裁に経済で報復できないので、約束を破っていやがらせするぐらいしかないのだろう。日韓請求権協定は韓国大法院の「徴用工」判決で空文化したので、次に考えられるのは日韓基本条約の破棄である。



そういう声は、韓国の与党にも出てきた。朝鮮日報(韓国語版)によると今月、韓国の元統一相、李在禎氏はこう述べて「65年韓日協定体制の清算」を求めた。
今日も私たち国民が日本の侵略と植民支配が残した傷に対してどの謝罪も受けられずにいる最大の理由は、維新独裁政権[朴正熙政権]の屈辱的拙速な韓日基本条約と請求権協定で、最初のボタンを掛け違えたためだ。

続きはアゴラで。

韓国人は日本人の同胞だった

韓国がGSOMIA(軍事情報包括保護協定)の破棄を決めたことで、朝鮮半島をめぐる対立は新たな局面を迎えた。これを海外メディアも報じているが、BBCの記事には大きな事実誤認がある。
第2次世界大戦では、アジア各地の数万人とも20万人ともいわれる女性が、日本軍向けの売春婦として連行された。「慰安婦」と呼ばれるこの女性たちの多くは朝鮮人だった。また日韓併合の後、多くの朝鮮人男性が日本軍に強制的に徴兵された
慰安婦をめぐる誤りはありふれたものだが、「多くの朝鮮人が徴兵された」とは何を根拠にしているのか。朝鮮半島に徴兵制はなく、1944年4月に徴兵令が施行されたが、訓練中に終戦になったので一人も出征しなかった。

続きはアゴラで。

韓国人はなぜ約束を守れないのか

「統一朝鮮」は日本の災難
日本人が韓国人を理解するのはむずかしいが、中国を介して考えると少しは理解できるかもしれない。その歴史を通じて朝鮮半島は中国の属国であり、その文化は中国の亜流だからである。その共通点は、親族を超える中間集団のない古代的な社会が最近まで続いたことだ。李氏朝鮮は、日本でいえば平安時代が19世紀まで続いたようなものだ、と著者はいう。

日本の中世以降は、財産にからむ問題を地域の中間集団(家)で分権的に解決するしくみができたので、市場経済が発展した。中国では国家が財産権を守らなかったので、宗族という擬似親族集団で財産を守った。これは地域を越える数万人の集団で、財産をめぐる紛争を解決する司法機能もあった。

しかし朝鮮には親族を超える中間集団がまったくなかったので、約束を守るメカニズムが育たず、市場経済ができなかった。李朝末期には人口のほぼ半分が両班(公務員)になり、経済力は極端に衰えた。それが北朝鮮では今も続いているが、韓国も本質的には変わらない。日韓基本条約や請求権協定をくつがえす決定を韓国大法院が下すのも、こういう約束を守らない伝統の中では驚くべきことではない。

続きは8月26日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで。

中国という多民族国家

世界史とつなげて学ぶ 中国全史
香港の問題は混迷を深めているが、これは他人事ではない。中国のGDPは2030年代にアメリカを抜いて世界最大になると予想され、今後は中国との関係が日本の最大の問題になるが、これはアメリカよりはるかに厄介な隣人である。

それが古代から統一された専制国家だったと考えるのは錯覚で、古代国家は城壁で囲まれた都市だった。王朝はローマ帝国のような都市国家連合で、人口のごくわずかしか支配できない「超小さな政府」だった。財産権を守る法律もなかったので、人々は親族集団(宗族)で自分の財産を守った。

「中国」という概念は20世紀にできたもので、それが「漢民族」の国だというのも神話である。古代から中国は、農耕民と遊牧民の戦う多民族国家だった。文明をつくったのは農耕民だが、遊牧民は戦争に強かったので、歴代の王朝には「征服王朝」が多く、農耕民の国家は宋と明ぐらいだった。

日本人にとってヨーロッパがわかりやすいのは、どちらも広い意味の封建社会(中間集団の強い分権的な社会)を通過したからだが、これは世界史の中では例外である。中国では中間集団が宗族しかなく、清代まで古代社会が続いたともいえる。そこにいたのは皇帝と官僚からなるごく少数の「士」と圧倒的多数の「庶」だった。

続きは8月26日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで。

日本はなぜ慰安婦問題で韓国に敗北したのか

ヤフー個人の「日韓関係の悪化は長期的には日本の敗北で終わる」という記事が炎上している。筆者はアメリカの大学院生、内容はステレオタイプの「歴史修正主義」批判で論評に値しないが、問題はこういう議論が世界の常識になってしまったことだ。

たとえばNYタイムズは、日本と韓国の対立について長文の解説記事を載せているが、強制労働(forced labor)を性奴隷(sexual slavery)と同列に論じ、性奴隷は説明なしに使われている。徴用工問題は日本の植民地支配から発生したが、安倍首相がその責任を否定してナショナリズムをあおっているという論調だ。

続きはアゴラで。

日韓の対立をあおったのは誰か

吉見義明氏が毎日新聞のインタビューで、慰安婦問題について語っている。この記事は見出しで「『従軍慰安婦はデマ』というデマ」と書き、本文では「慰安婦問題はデマ」と書くなど混乱している。この問題を風化させないためにも、話を整理しておこう。

続きはアゴラで。

国際法を超える文在寅大統領の「義兵思想」

韓国が日本に対する輸出優遇措置の解除を発表し、日韓の対立はますます悪化してきたが、両国政府の問題設定が違うので議論が空回りしている。 この問題は三つのレベルを区別する必要がある。
  1. 貿易管理:日本が半導体材料の一部の韓国に対する輸出優遇措置を解除し、韓国もそれに対して同じ措置で報復した。
  2. 国際法:2018年の韓国大法院判決で戦時中に日本で働いた労働者の慰謝料請求が認められ、韓国内の日本企業の資産が差し押さえられた。
  3. 歴史問題:大法院判決は、日韓併合は日本の「不法な侵略」であり、その支配下における労働はすべて「強制動員」だと主張している。
続きはアゴラで。

貨幣はなぜ存在するのか

21世紀の貨幣論
お金はなぜ存在するのか。そんなこと当たり前じゃないか、と思う人が多いだろう。お金がなかったら、ものが買えない。物々交換でいちいち売り手が買い手をさがしていたら、市場経済は成り立たないので、買い手と売り手の「欲望の二重の一致」を実現する交換媒体としてお金が生まれたのだ――これが経済学の普通の説明だ。

だとすると未開社会では物々交換が見つかってもいいはずだが、グレーバーの実証研究では、物々交換で成り立つ社会は世界中どこにもない。本書の紹介する太平洋のヤップ島の経済は非常に単純だが、大きな石でできた通貨をもっている。しかもその一部は海に沈んで、誰も見たことがない。これは明らかに交換媒体にはなりえない。

貨幣は物々交換から生まれたのではなく、逆に貨幣があって初めて取引が始まったのだ。貨幣は交換媒体ではなく、売り手と買い手が取引を決済するための契約書なので、具体的な商品である必要はない。本質的なのは契約が本当に実行されるのかという信用だから、そういう信用のある国家が通貨を発行する。

ところが貨幣価値が安定すると、貨幣は必要なくなる。すべての商品の価格がわかっているなら、それをいちいち貨幣に交換しなくても、価格は「実質ベース」で考え、貨幣はすべての商品の価格を合成したニューメレール(基準財)でよい――それがワルラスの一般均衡理論だった。それ以来、現代のDSGEに至るまで、新古典派経済学には貨幣が存在しない。

続きは8月12日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで。

原子力規制委員会は大幅な増員が必要だ

原発のテロ対策などを定める特重(特定重大事故等対処施設)をめぐる混乱が続いている。九州電力の川内原発1号機は、今のままでは2020年3月17日に運転停止となる見通しだ。

原子力規制委員会の更田委員長は「特重の完成が期限内に間に合わない場合、期限の翌日から運転停止を命じる」というが、原子炉等規制法では規制委員会が「停止命令」を出すことができるのは重大な違法行為があった場合に限られる。いま適法に運転している原発が、来年3月18日から急に違法になるわけではない。

続きはアゴラで。






Twitter
記事検索
月別アーカイブ
QRコード
QRコード
Creative Commons