日本の民放はなぜ世界一優秀なのか

総務省解体論
総務省の接待疑惑は、竜頭蛇尾に終わりそうだ。総務省は職員32人による延べ78件の接待を確認し、32人を同日付で処分した。相手はほとんどNTTグループと東北新社で、これが全貌だとは誰も信じていないが、マスコミは追及しない。本丸は民放だからである。

今回の事件でもわかったように、NTTの政治力はテレビ局にはかなわない。NTTグループの売り上げは連結で12兆円と、民放連207社の合計2.2兆円の6倍だが、民放は政治部の波取り記者という最強のロビイストを抱えているからだ。70年近く倒産も買収もなしに既得権を守ってきた日本の民放は、世界一優秀である。

テレビ局が電波オークションを拒否しているのも、「既存の電波がオークションにかけられる」などというネトウヨの妄想ではなく、新規参入を妨害するためだ。本書でも紹介している私のホワイトスペース区画整理案は、NHKも民放も技術的に可能だと認めたが、総務省は拒否した。

その代わり総務省は、楽天のプラチナバンド分割案を飲んだ。これは通信各社も飲んだということだが、既存の基地局が使っている電波を分割して別の業者に割り当てるのは、世界にも類を見ない珍無類な話である。

このように民放が新規参入を妨害するのは、インターネットで無限のチャンネルが見られる時代には時代遅れだ、と私は批判したが、私が間違っていた。視聴者のテレビ視聴時間は2012年には1日184分だったが、2019年には161分と、20分しか減っていない。日本人は毎日平均2時間40分もテレビを見ているのだ。

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総務省「情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」

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カーボンニュートラルは21世紀の三国同盟



きのうの言論アリーナの山地憲治さん(RITE副理事長)の話で印象に残ったのは「カーボンニュートラルは本当に世界の潮流なのか」という話だ。地球温暖化が起こっていることは事実であり、何もしないと海面上昇や異常気象などの災害が増える可能性はあるが、それは世界のすべての国が何より優先すべきアジェンダなのか。

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アゴラ経済塾「超高齢化時代の財政と社会保障」

昨年度の国の一般会計予算は、コロナ対策で激増して170兆円を超え、政府債務の残高は1100兆円を超えましたが、物価も金利も上がりません。これをみて「もっとバラマキを追加しろ」とか「消費税をゼロにしろ」という声が高まっています。MMTなどの「反緊縮」理論が、政治家にも広がってきました。

安倍政権で日銀がマネタリーベースを4倍以上にしてもインフレにならず、政府債務がGDPの2倍を超えても金利が上がらないのだから、財政赤字を気にしないで巨額の財政出動すべきだという議論には、一定の説得力があります。世界的にゼロ金利が続く中で、最近は元IMF理事ブランシャールなどの主流派からも、積極的な財政政策をとるべきだという意見が出てきました。

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MMTは金利の決まらない「劣化版FTPL」

財政赤字の神話 MMTと国民のための経済の誕生
経済学者がMMTを相手にしない原因は、理論として数学的に定式化されていないためだが、それが(数式の読めない)素人に受ける原因だろう。「日銀が国債を買えば政府債務は消える」といった話で「目から鱗が落ちた」という政治家もいるが、これは彼らが無知なだけだ。MMTは本質的に新しい理論ではない。

本書でも「政府と中央銀行のバランスシートは一体だ」とか「国債と通貨は同じだ」といった議論が、いかにも画期的な理論であるかのように書かれているが、こういう話は主流派でも、1990年代からFTPL(物価水準の財政理論)として論じられている。

国債も通貨も、政府の債務という意味では同じである。今は国債が900兆円あるのに対して、マネタリーベースは600兆円なのに、金融理論ではマネタリーベースばかり論じているが、これはゼロ金利になったら役に立たない。通貨をゼロ金利の国債と考え、政府債務全体をコントロールする理論がFTPLである。

ケルトンも「国債の役割は金利を決めることだ」というが、それがどう決まるかは何も書いてない。MMTでは通貨と国債は同じなので(ゼロ以外の)金利はつかないからだ。これがゼロ金利の時代にもてはやされる原因だが、金利が上がったらどうなるかは何もいえない。MMTは数学的に定式化されていないので、その欠陥がわからないが、金利決定式の欠けた劣化版FTPLなのだ。

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国債は将来世代の負担にならない?

このごろMMTの人気が異常に高まっているので、今週アゴラ特別セミナーをやることにした。MMTをもてはやしているのはアマチュアだけで、プロの経済学者はみんなバカにしているが、それほどナンセンスな理論ではない。MMTは独特の言葉を使うのでわかりにくいが、標準的な経済理論で整理できる。そのコアは二つある。

一つは「預金は銀行が融資で企業の口座に金額を書き込んだとき生まれる」という内生的貨幣供給理論(万年筆マネー)で、これは主流派の「銀行預金の乗数効果で信用創造が行われる」という理論とはまったく違うが、「資金需要がないときマネタリーベースをいくら増やしてもインフレにはならない」というMMTの予言はリフレ派より正しかった。

もう一つは財政についての理論で、国債発行も銀行の保有する日銀当座預金を政府口座に振り替えたとき行われるので、預金の制約を受けない。ビル・ミッチェルも明言するように「政府の購入能力は金融的に無限である」。不換紙幣はいくらでも発行できるので、政府には予算制約がないのだ。

国債は資金を国債保有者から政府に移すだけで、利用可能な資源の総量は(内国債では)変わらない。将来、国債を償還するときはその逆が起こり、政府から国債の保有者に資金が移されるが、このときも利用可能な資源の量は変わらないので、国債は将来世代の負担にはならない。

これがラーナーの機能的財政論で、私の学生のころまで大学で教えていた。ここでは財政の役割は失業やインフレをコントロールすることであって、財源を調達することではない。税は財源ではないのだ。これは荒唐無稽な話のようにみえるが、反論するのは意外にむずかしい。

続きは6月14日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンでどうぞ。

アゴラ特別セミナー「MMTとBIの疑問に答える」

アゴラ経済塾では、今週と来週、MMTとBI(ベーシックインカム)の講義をする予定ですが、多くの方から問い合わせがあるので、この2回だけ公開セミナー(有料)にします。経済塾の受講生以外の方も、オンラインで講義を聞いて質問できます。

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国の借金は返さなくてもいいの?

このごろ日本ではMMTという経済理論が人気を集めています。その最大の売り物は「国はいくら借金してもいい」という話です。国の借金は返さなくてもいいというので、政治家のみなさんには大人気ですが、これは本当でしょうか。

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デジタル時代に必要なのは課税カルテルではなく法人税の廃止だ

G7の財務相会合共同声明で、「15%以上のグローバル・ミニマム課税にコミットする」と表明した。これは法人税を引き下げる「租税競争」をやめ、15%以下には下げないという課税カルテルだが、その有効性は疑わしい。

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図のように世界の法人税率は、この40年、一貫して下がっている。特にG7の共同声明と無関係なアイルランドの法人税率は12.5%であり、グローバル企業のペーパーカンパニーが集まっている。

たとえばアイルランドにあるGoogle Ireland Holdingsはアルファベットグループの広告・検索技術に関する知的財産権を保有しているが、同社の資産管理会社はバミューダ(法人税ゼロ)にあるため、法人税は払っていない。同じくアイルランドにあるMicrosoft Round Island Oneは、昨年3150億ドルの売り上げがあったが、バミューダの「税務上の居住者」なので納税額はゼロだった。

無形資産が企業の最大の資産になった時代には、法人税の低い国に企業が登記上の本社を置くことは容易になった。これを課税カルテルで逆転させるのは無理である。アイルランドが税率を上げても、バミューダに本社を移転すればいい。国内規制で海外投資を規制することはできるが、そんな国からグローバル企業は出て行くだろう。続きを読む

消費税の呪われた歴史

消費税減税を批判すると、いまだにたくさんクソリプが飛んでくるが、そこにはステレオタイプがある。こんな感じだ。
  • 消費税が上がった分だけ法人税が下がった
  • 消費税は逆進的で不公平だ
  • 消費税は社会保障の財源ではない
要するに「消費税は社会保障のためにできたのではなく、金持ちの財界が法人税の負担を貧しい庶民に押しつけるためにできた」というのが(おそらく共産党やれいわ新選組が教え込んだ)ストーリーだろう。


これは問題のすりかえである。この図からいえるのは、消費税が増えたのと同じぐらい所得税・法人税が減ったという事実だけだ。1989年に消費税を創設したときから、大蔵省は「税収中立」を原則にしたので、間接税を増税した分だけ直接税が減るのは当たり前だ。

その意図が「大企業減税と富裕層減税」だったというのも逆だ。大型間接税は、大平内閣のころから何度も提案されてはつぶされてきた。所得税や法人税の捕捉率が悪いため、VATのような外形標準税で徴税効率を上げたい大蔵省の工作を、所得を把握されたくない富裕層や政治家がつぶしたからだ。

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財政ファイナンスで実現する「2階建てベーシックインカム」

マクロ経済が話題になるとき、人気があるのがベーシックインカム(BI)だ。日本維新の会の「日本大改革」でもBIが柱になっているが、基礎年金をBIの財源に充当するという案は昔からあり、政治的には不可能である。

社会保障の総額は126.8兆円(2020年度予算ベース)で、日本最大の既得権のかたまりである。BIの問題は、その既得権を侵害しないでどれだけ財源を出せるかにつきる。

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