間接税のトラウマ

安倍首相が消費税の10%への増税を2019年10月まで再延期する意向を党内に伝えた。麻生財務相や谷垣幹事長は反対し、公明党も反対の意向なので、容易に実現するとは思えない。サミットで突然出てきた「リーマンショック以来の危機の前兆」という奇怪な話も、再延期の理由として「リーマン」という言葉を使おうとしたのだろうが、世界の笑い物になっただけだ。

内閣支持率が50%近い安倍首相が、たった2%の増税を忌避するのは不可解だが、これまで間接税を引き上げようとした内閣はすべて倒れたという歴史がトラウマになっているのかもしれない。

財政法では赤字国債(特例公債)は禁止されており、国会の議決が必要だ。それを最初に大規模に発行したのは1975年で、石油危機による歳入欠陥が原因だったが、それから毎年、赤字国債が発行されるようになった。

そこで大平首相は日本でも間接税を増税して財政を健全化しようと、1979年の総選挙で一般消費税の導入を選挙公約にした。しかしこれは党内でも不評だったため途中で公約を撤回し、自民党は過半数を失う敗北を喫した。これに対して福田赳夫が大平の退陣を要求して「四十日抗争」が始まった。

続きは5月30日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンでどうぞ。

日本のメディアに欠落しているリアリズム


ゆうべの朝まで生テレビは「オバマとトランプとメディア」というテーマだったが、例によって時間配分が大幅に変わってメディアの話は最後の30分ぐらいで、寝た人も多かったと思うので、ちょっと補足しておきたい。

オバマの広島演説について「8年前にプラハで約束したような具体的な政策がなかった」といった批判が多かったが、あと半年しか任期のない大統領がそんな約束をするのは無理だ。今回の訪問の意義は、歴史の区切りをつけたことだと思う。

今回の番組では「トランプが大統領になったら日米関係は維持できるのか」という地政学的リアリズムにもとづく議論が多かったが、日本のメディアは沖縄の殺人事件(地位協定とは無関係)に騒ぎ、沖縄県議会も海兵隊の撤兵を決議するなど、トランプのような感情論に終始している。

孫崎享氏が「核の傘は存在しない」と主張して失笑を買っていたが、こういう「日米同盟がなくても憲法で平和は守れる」という類の幼稚な精神論が、いまだにメディアの大部分を占めている。トランプの頭がおかしいというが、あれぐらいおかしい指導者は世界中にいる。憲法の理想だけで、平和を守ることはできないのだ。

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伝統主義と文明社会

伝統主義と文明社会: エドマンド・バークの政治経済哲学
エドマンド・バークは、一般にはフランス革命を批判した保守主義の元祖として知られているが、他方ではホイッグ党の幹部として経済的自由を擁護する政治家でもあった。一般には、こういう彼の矛盾する態度は、封建的道徳を守る「旧ホイッグの限界」といわれる。

本書はバークの保守主義と自由主義を、一貫した思想と考える。国民主権を「一般意志」として絶対化するフランス革命の「民主主義」が生んだのは、独裁と流血だった。自由な文明社会は、イギリスのように長い時間かけて蓄積されたコモンロー的な封建的伝統から生まれたのだ。

政治に多くの大衆が参加するほど暴走のリスクは高まるので、バークは普通選挙に反対した。ドナルド・トランプが代表しているのは、バークの恐れた「大衆政治」だ。合衆国憲法には、このようなデマゴーグの出現を防ぐために何重にもチェック機構が設けられているのだが、彼はそれをくぐり抜けてきた現代のロベスピエールである。

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リーマンショック以来の危機の前兆?

伊勢志摩サミットで安倍首相は、「エネルギー・食料・素材など商品価格がリーマン・ショック前後での下落幅である55%と同じ」で「リーマン級の経済危機再燃を警戒する」と次のような図で説明したが、各国首脳は首をかしげた。

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続きはアゴラで。

原爆投下の目的は日本の降伏ではなかった

オバマの広島訪問を前に世界の反核グループが、続々と来日している。彼らの目的はオバマに原爆投下を謝罪させて反核運動に利用することがだが、原爆は日本を早く降伏させて犠牲者を減らしたという意見も多い。知日派のCucek教授でさえこう書いている:玉音放送で降伏の理由として原爆があげられていることは事実だが、それは原爆投下がなかったら降伏しなかったという根拠にはならない。日本の降伏は時間の問題であり、米軍はそれを(暗号解読で)知っていながら、原爆を投下したのだ。

長谷川毅『暗闘』は、この経緯を1次資料で詳細に検討している。原爆投下は、ポツダム宣言の発表された1945年7月26日の前に決まっていた。7月25日付の命令書には「最初の特別爆弾を、8月3日以降に広島、小倉、新潟、長崎のうちの一つの標的に投下する」と明記されている。ポツダム宣言は、既定方針だった原爆投下を正当化するために発表されたのだ。

ポツダム宣言の原案には日本の立憲君主制を維持するという条項が含まれていたが、アメリカ統合参謀本部はそれを削除して無条件降伏に変え、日本が受諾することを困難にした。これは原爆投下までの時間を稼ぐためだった。目的は日本の降伏ではなく、ソ連に原爆の威力を見せることだったのだ。

続きはオフレコ政経ゼミで。

原爆投下を許すが忘れない

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オバマ大統領がハノイで「戦争はどんな意図があろうとも、苦しみや悲劇をもたらすということを我々は学んだ」と演説したそうだが、これは欺瞞である。300万のベトナム人を殺したのは米軍であり、非戦闘員を大量虐殺した北爆は国際法違反だったが、アメリカは決して謝罪しない。

続きはアゴラで。

「神道」という宗教は存在しない

「日本人の神」入門 神道の歴史を読み解く (講談社現代新書)
Economistの記事は噴飯物だが、日本会議などが安倍政権に便乗してナショナリズムを振り回していることが誤解をまねいているのだろう。根本には「神道」をキリスト教をモデルにして考える誤解があると思われる。

神道は、キリスト教やイスラム教のような「宗教」ではない。Religionを宗教と訳したのは明治時代で、それ以前は仏教という言葉もなかった。神道という言葉はあったが、それは全国に20万以上あった神社の総称で、ほとんど何も意味していなかった。

その御神体は天照大神から道祖神までさまざまであり、もとは社殿さえなかったが、仏教が輸入されてから寺をまねて神社ができた。「神仏習合」というより、日本人の土着信仰が仏教と結びついて初めて宗教らしい形になったのだ。

これを天皇制のイデオロギーとして利用したのが、明治政府だった。国が伊勢神宮や靖国神社を保護し、全国の神社が国の管理のもとに置かれた。明治政府は一神教がないと国家が統合できないと考え、天皇家の中にあった仏教の要素を排除し、天皇制=国家神道という人工的な「国教」をつくったが、国民にはほとんど浸透しなかった。

続きは5月30日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンでどうぞ。

安倍首相は「神道の国教化」を図っている?

伊勢志摩サミットが近づいて、また日本についてのステレオタイプな報道が増えてきた。特に伊勢神宮=国家神道=ナショナリズムと短絡して「極右の安倍政権」を批判する記事が多い。これを書いたのはロンドンにいるアジア担当エディターだと思われるが、例によってJapan Timesなどの2次情報に依存しているので、基本的な間違いが多い。

続きはアゴラで。

骨抜きになった「骨太の方針」

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5月18日に発表された「骨太の方針」は、今までにないものだった。これは小泉政権で始まり、8月の概算要求に先立って内閣が予算編成の骨格を示して財政の見通しを立てるものだ。去年までは曲がりなりにもプライマリーバランスを黒字化するシミュレーションがあったのだが、今年の骨太ではプライマリーバランスという言葉さえ消え、財政再建が骨抜きになってしまった。

その代わり書かれているのは、2021年までに「名目GDP600兆円」を実現すると称する夢のような「成長戦略」だ。その内容はご覧のように、「第4次産業革命」やらIoTやらビッグデータやらAIやら、ビジネス雑誌に毎週出ているバズワードがあふれているが、この手のターゲティング政策はこの40年、成功したことがない。

続きは5月23日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンでどうぞ。

政府は「国連ゴロ」に警戒せよ

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FACTAによると、4月に来日して無内容な会見をした「国連特別報告者」デビッド・ケイ氏について世耕内閣官房副長官が、彼にからむ「女性弁護士」らについて内閣情報調査室などに監視するよう指示したという。

続きはアゴラで。






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池田信夫の「オフレコ政経ゼミ」
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