米中戦争のシミュレーション

War with China: Thinking Through the Unthinkable
日本では漫才師や憲法学者が「憲法を改正したら戦争に巻き込まれる」とのんきな話をしているが、米中戦争のリスクは(憲法とは無関係に)高まっている。本書は米軍の委託によるランド研究所のシミュレーションで、PDFファイルでも読める。主要な結論は次の通り:
  • 米中両国が交戦すると、双方に莫大な軍事的損害が発生するが、2015年の段階では米軍の損害は中国(GDPの25~35%)に比べると小さい。
  • 米中の損害のギャップは、中国のA2AD(接近阻止・領域拒否)戦略が改善されるにつれて縮まり、2025年にはかなり接近する。
  • 米中戦争が起こると中国の貿易は大幅に縮小し、特にエネルギー供給が大きな打撃を受ける。
  • 日本の軍事力の増加が、日米共同作戦に大きな影響を及ぼす。
米中が開戦する可能性として5つのシナリオを例示しているが、日本に関係が深いのは尖閣諸島から(偶発的に)戦争が始まるシナリオと、北朝鮮の政権が崩壊するシナリオである。現代戦の主役はミサイルであり、早ければ数日で決着する。「巻き込まれるか否か」などという選択の余地はないのだ。

続きは8月21日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンでどうぞ。

革命的な変化は「ガソリン車からEVへ」ではない

JBpressの記事は、今のところ入手可能な資料でざっとEV(電気自動車)の見通しを整理したものだが、バランスの取れているのはEconomistの予想だと思う。タイトルは「内燃機関の死」だが、中身はそれほど断定的ではない。特に重要なのは、次の部分である。
Electric propulsion, along with ride-hailing and self-driving technology, could mean that ownership is largely replaced by “transport as a service”, in which fleets of cars offer rides on demand. On the most extreme estimates, that could shrink the industry by as much as 90%.

続きはアゴラで。

文系の真理は「学問政治」で決まる



いまだに2014年の閣議決定が「クーデター」だと言い張る石川健治氏は、東大法学部の学問政治の代表である。法学部の講座は、師匠に忠実な(師匠ほど頭のよくない)弟子が継承し、学説も継承する。そういう「通説」と違うことをいうと司法試験にも公務員試験にも受からないので、彼らが学界の「本流」になり、真理を独占する。

これは珍しいことではなく、真理はすべて政治的に決定されるのだ。実証主義も、学問政治の一種である。あなたが中世の天文学者だとすると、学会で地動説を唱えても他の全員が天動説を支持すると、天動説が「通説」なので、あなたはどこの大学にも職を得られない。それによって真理が決まると、それに反する説を唱える人はいなくなり、すべての人が天動説を信じる。

このように真理は学問政治(パラダイム)で決まるので、素朴なポパー理論のように事実で反証できない。経済学でも、マル経は同じだった。私の世代までは、東大経済学部の大学院入試で宇野理論と少しでも違う答案を書くと落ちたので、宇野派だけが教授になって真理を独占した。この学問政治のループを壊したのは「反証」ではなかった。

続きは8月21日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンでどうぞ。

石川健治東大教授は「憲法の漫才師」

8月15日に、このツイートがちょっと話題になった。ネット上では「なぜ左派の人たちは『戦場へ行く』の発想になるのか。なぜ今住んでいる街、今いる場所が戦場になると思わないのか」という批判が出ているが、村本の話は東大法学部の憲法学講座を担当する石川健治教授と同じである。

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「8月革命」という欺瞞の終焉

8月15日に起こった革命で日本国民が主権者になったという「8月革命」を丸山眞男の説という人が多いが、彼の著作にも座談にも(生涯を通じて)この言葉は一度も出てこない。その典拠とされるのは「超国家主義の論理と心理」(『世界』1946年4月)の結びの言葉だが、ここでも8月革命という言葉は使っていない。
日本軍国主義に終止符が打たれた八・一五の日はまた同時に、超国家主義の全体系の基盤たる国体がその絶対性を喪失し今や始めて自由なる主体となった日本国民にその運命を委ねた日でもあったのである。
宮沢俊義が「八月革命と国民主権主義」(『世界文化』1946年5月)でこの言葉を使ったのは丸山の後で、これはマッカーサー草案についてのコメントだった。宮沢は東京帝大の憲法研究調査委員会の委員長で、その書記だった丸山がこの言葉を使い、それを彼の了承を得て論文に使ったと述べたが、議事録には残っていない。

「8月革命」は、自分の書いた明治憲法修正案(いわゆる松本案)をGHQに否定された宮沢が、それを正当化する欺瞞だったが、彼に丸山がヒントを与えたことは考えられる。国民が「自由なる主体」として新たな憲法を制定したというのはフィクションだが、そう考えない限り天皇主権の国家が主権者を否定することはできないからだ。ここでは第9条は付随的な問題だったが、次第に丸山の問題意識は見失われ、憲法はもっぱら「平和憲法」として理解されるようになった。

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ユニバースからマルチバースへ

マルチバース宇宙論入門 私たちはなぜ〈この宇宙〉にいるのか (星海社新書)
一時ポストモダン業界で流行した新実在論は「ヒュームの問題」を解こうとするものだが、その答は物理学で30年前に提唱された人間原理と同じだ:世界がどういう形で存在するかは(論理的には)偶然だが、こういう形で存在することは(現実的には)必然である。そうでなければ、人間が生存できないからだ。

これは多くの人が指摘しており、そういう論文集も出たが、メイヤスーは批判に答えていない。彼の議論は物理的実在を「ガリレオ的な数学的整合性」で基礎づけようとするトートロジーである。物理学ではそんな幼稚な段階はとっくに過ぎ、宇宙は10500以上あるというマルチバース(多宇宙)仮説を観察データで実証する試みが行われている。

著者はカリフォルニア大学バークレーでそういう研究を指導する立場にあるが、ここ10年ぐらいでマルチバースに対する学界の見方は大きく変わったという。昔はランチタイムの茶飲み話だったが、最近は学会発表で多くの状況証拠が出され、少なくとも真空のエネルギー(宇宙定数)が10-120になる事実はマルチバース以外では説明できないらしい。

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日銀の「財政ファイナンス」はフリーランチか

内閣府の発表した今年4~6月期の実質成長率(速報値)は、1%(年率4%)と高い伸びを示したが、GDPデフレーターは前年比-0.4%だった。これは先週の個人ブログでも書いたように、リフレは失敗したが財政ファイナンスは(今のところ)成功したことを示す。財政ファイナンスとは政府債務を無制限に中央銀行がファイナンスすることで、財政節度を失わせるため禁忌とされる。


日銀の保有資産(青・億円)と国債残高(赤)と企業物価指数(緑・右軸)


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日本には資本主義が必要だ

生涯投資家著者は、いわずと知れた「村上ファンド」の元オーナー。最近は久々に黒田電気に安延取締役を送り込んだことで話題になったが、いまだに日本では企業買収に「乗っ取り」のイメージがつきまとう。これが日本経済が低迷している最大の原因だ。

東芝に典型的にみられるように、日本の大企業は1970年代までのアメリカのコングロマリットと同じ、非効率な多角経営をしている。半導体部門が高い利益を上げても、他の部門の赤字を補填するので、全体としては東証1部上場企業のROE(株主資本利益率)は8%で、アメリカの12%に遠く及ばない。

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なぜリフレは失敗したのに「アベノミクス」は成功したのか

今週は夏休みだが、アゴラの久保田さんの記事が気になったので、ひとことコメント。「アベノミクスの4年半を振り返ると、景気回復と脱デフレという面では相当の成果を上げた」という「大機小機」の評価が正しいかどうかは「アベノミクス」の定義による。それをリフレ(人為的インフレ)政策と定義すると、リフレが失敗したことは明白だ

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電気自動車は「エコ」か「エコノミー」か

テスラが新車を発表し、電気自動車(EV)が関心を集めている。フランスのマクロン大統領は「2040年までにガソリン・ディーゼル車の販売を停止する」という目標を発表した。つまり自動車はEVとハイブリッド車に限るということだが、それは可能だろうか。そして「エコ」なのだろうか?

続きはアゴラで。






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