本百姓の共同体から「百姓成り立ち」へ

徳川社会の底力
近世の百姓は「生かさぬよう殺さぬよう」領主にいじめられていたというイメージがあるが、最近の研究では江戸時代の前期と後期でかなり違うようだ。18世紀前半までは土地が開墾されて人口も増え、本百姓(自作農)を中心とする村請による村落共同体の自治が確立した。

初期の徳川幕府は軍事政権の性格を残していたが、人口増加で災害の被害が増え、餓死や逃散が増えた。特に1780年代の「天明の大飢饉」では、東北地方の人口の2割近くが死亡したという。こうした災害で本百姓が没落する一方、豪農が広域的な土地を支配する地主になり、階層分化が進んだ。

飢饉で年貢が減ったので、領主は百姓を救済して税収を確保した。それが百姓成り立ちという制度だった。その方法には「夫食貸」と呼ばれる生活補助や「種貸」と呼ばれる生産補助などがあったが、公的補助の分配を決めたのは、領主支配を代行する「取締役」と呼ばれる地主だった。領主の仕事の中心は、戦争から「御救い」と呼ばれる社会保障に移ったのだ。

続きは9月25日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンでどうぞ。

「政治空白」をつくっているのは野党だ

臨時国会の冒頭解散で、10月22日投票というスケジュールになりそうだ。野党は例によって「解散の大義名分がない」とか「北朝鮮の脅威が強まっているとき政治空白をつくるべきではない」などと批判しているが、私はそうは思わない。安倍首相の意図は政権の延命かもしれないが、政治は結果がすべてだ。

続きはアゴラで。

EVは「車のインターネット」である

世耕経産相は「EV(電気自動車)の潮流は拡大してきているが、いきなりEVにいけるわけでもない」と述べ、プラグインハイブリッド車(PHV)、燃料電池車(FCV)などいろいろな次世代自動車がある中で「戦略的によく考えて中長期的な視野で臨みたい」と語った。これは一般論としては間違っていないが、政府の戦略としては疑問がある。

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丸山眞男という巨象をなでる群盲

丸山眞男の憂鬱 (講談社選書メチエ)
かれこれ2年半ぐらい丸山眞男論を書いているのだが、なかなか先に進まない。彼の書いた学術論文は少ないが、講演や座談会が膨大で、いまだにそれが出版されるからだ。丸山を論じた新刊も出るので、先行研究を踏まえるアリバイとして読まざるをえない。本書もその一つだが、アリバイ以上の意味はなかった。一般読者にはおすすめできない。

丸山論のほとんどは弟子がありがたがる讃辞で読む価値はないが、たまに批判する本は文献を読む手間を省き、一部をつまみ食いして「群盲象をなでる」になってしまう。本書は「闇斎学と闇斎学派」を読んで(同じく闇斎学派を論じた)山本七平の『現人神の創作者たち』と比較するが、これは私の『「空気」の構造』と同じで、誰でも思いつく発想だ。

ところがこの比較だけで、本書はいきなり「私は丸山は、近代主義者ではないと思う。なぜなら、近代とはなにか、丸山はわかっていないから」(p.205、強調は原文)と断定する。それ以外に引用しているのは、丸山が20代に書いた『日本政治思想史研究』だけだ。これはまるで巨象の鼻をなでて「象とは筒のようなものだ」という盲人みたいなものである。私もこうならないようにしようと自戒した。

続きは9月18日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンでどうぞ。

私はなぜマスコミに出入り禁止になったか



私は20年近く前から電波オークションを提案してきたが、こんな当たり前の制度の実施がここまで遅れた原因は複雑である。アメリカで1992年にPCSオークションが行われたころは「落札価格が暴騰して通話料金が上がる」といった批判があったが、結果はその逆になった。ベンチャー企業が参入して、携帯電話の爆発的な普及が始まったのだ。

続きはアゴラで。

電波オークションをしても地デジは続けられる

JBpressの記事は技術的な話をはしょったので、わかりにくいかもしれない。特に最後のページの「放送の中継局は整理して周波数を統一すればよい」という話はむずかしいので、補足しておく。テレビ局には「オークションをすると既存局が立ち退きを迫られる」という誤解があるが、この問題は地デジではSFN(単一周波数ネットワーク)という技術で解決している。次の図は、いま稼働しているRKB毎日のSFNの一例である。

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SFNによる局間伝送(日立情報通信ネットワーク

現在の地デジは、図の上のように放送波で局間伝送する放送波中継なので、中継と放送の電波が干渉しないように複数の周波数が必要だが、地デジのOFDMという変調方式では干渉が防げる。そこで放送波中継をやめ、局間は光ファイバーのIP網(UM6000Rは日立の伝送装置)で伝送し、放送の周波数をエリア内で同一にする技術がSFNである。

キー局と系列局の間はすでにIP網なので、たとえばTBS系の周波数は全国1波でよい(このシステムはバックアップだが、通常と同じ放送ができることは実証ずみだ)。つまりテレビ局がSFNで運用すれば、オークションで空いた電波を売っても地デジの放送を今まで通り続けることができるのだ

地上波のチャンネルは最大でも関東地方の12局しかないので、1チャンネルに6MHz使っても72MHzあれば全国に放送できる。SFNで圧縮したチャンネルを470~542MHzに割り当てれば、残りの168MHzをオークションにかけることができるので、逆オークションは必要ない(この点でSFNのできないアメリカより楽)。

この帯域は概算で100億円/MHzとすると、1兆6000億円。これを落札できるのは通信キャリアしかないので、テレビ局の新規参入を心配する必要はない。テレビ受像機の周波数変更は自動的にできるので、移行期間は1年もあれば十分だろう。

続きは9月18日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンでどうぞ。

アゴラ経済塾「資本主義が足りない」

資本主義と自由 (日経BPクラシックス)電波オークションが話題を呼んでいます。これは国有地を競売にかけるのと同じ当たり前のことですが、OECD諸国の中で日本だけがいまだに「社会主義」で周波数を割り当てています。日本人が市場原理や資本主義をきらうのは深い理由がありますが、ここを変えないで「アベノミクス」のような景気対策でカネをばらまいても何も変わりません。

ミルトン・フリードマンは半世紀以上前に、変動相場制、教育バウチャー、負の所得税、公的年金の廃止、職業免許の廃止などを提案しました。このうち変動相場制は実施されて世界経済を大きく変えましたが、他の提案はほとんど実施されていません。日本では今ごろ、大学教育を丸ごと「無償化」するという愚かな提案が出ています。

オークションのような価格メカニズムを利用することは、いつもきらわれます。それは経済学の教科書ではうまく行くはずですが、市場原理にはどんな欠陥があるのでしょうか? 所得分配や社会保障はどうするのでしょうか? 特に日本人は資本主義がきらいですが、なぜでしょうか?

10月からのアゴラ経済塾では市場原理を電波や教育などの具体的な問題に応用し、価格メカニズムとは何か、資本主義で経済はどう変わるのか、そして日本で資本主義が機能するにはどうすればいいのかを考えます。ゲストとして村上ファンドで話題になった安延申さんをお招きして話をうかがいます。

続きはアゴラで。

「八月革命」を発案したのは丸山眞男ではない

また細かい文献学で恐縮だが、「丸山眞男学」業界にとってはちょっとおもしろい話。「八月革命」という言葉を発案したのは丸山だというのが通説だが、文献的な証拠がない。『丸山眞男集』の年譜には、東京帝大の憲法研究委員会で「丸山が提示した八月革命説を、宮沢[俊義]は丸山の承諾をえて」論文に発表したと書かれているが、この出典がはっきりしない。ところが最近、彼の座談の中に次のような話が見つかった。
ポツダム宣言を受諾したことが国体変更になるという南原先生の説が正しい。そうすると、天皇が主権者でないということを、ポツダム宣言を受諾した瞬間に日本国政府が受け入れたことになっちゃう。宮沢先生の八月革命説はそこから起こっているんだ。八月革命説がいいかどうかは別として、国体の不連続というのは明白なんだ。(『丸山眞男話文集』続4、p.128)
これは1989年7月の座談会の記録で、2015年に初めて公刊された。「八月革命説がいいかどうかは別として」という表現は、明らかにそれを発案した人の言葉ではない。これを素直に読むと、「八月革命」は宮沢の発案した言葉だと解釈するしかない。

続きは9月18日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンでどうぞ。

電波利用料はオークションの代わりにはならない

入門 オークション:市場をデザインする経済学産経が噂の段階で書いていた「電波オークション」は、規制改革推進会議の決定には入らなかった。「官民の電波利用状況に関する情報開示の充実、電波利用料体系の再設計など、より有効に電波を利用する者に対し機動的に再配分するためのルールづくり」という表現で電波利用料に重点が置かれているが、これはナンセンスである。

1990年代にアメリカでオークションが始まったのを受けて日本でも検討が始まったが、「時期尚早」という理由で見送られた。その代わりに1993年に電波利用料が創設されたが、これはオークションとは目的が違う。

続きはアゴラで。

田母神俊雄氏の危ない核武装論

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週刊ポストで田母神俊雄氏が、かねてからの持論である核武装論をとなえているが、これは政治的にナンセンスだ。日本が「自主防衛」で核武装する可能性はないが、彼はネトウヨに崇拝されているようなので、その誤りを検証しておこう。

田母神氏が「日本が持つのは原子炉級プルトニウムであり、そのままでは核兵器になりません。核濃縮で純度93%以上に高めて兵器級プルトニウムにする必要があります」というのは正しいが、「核濃縮のためにはその専用施設が必要ですが、この施設を造るのに期間は10か月程度。費用は数十億~数百億円程度で建設できます」というのは、何を根拠にいっているのか。

日本にはウラン濃縮施設(写真)はあるが、プルトニウムの濃縮施設も技術もない。使用ずみ核燃料からプルトニウムを「濃縮」するのが再処理工場だが、ここでできた原子炉級プルトニウムを兵器級にするには、核兵器の製造施設が必要だ(それ以外の用途はありえない)。これはプルトニウムの用途を平和利用に限定した日米原子力協定違反であり、さらに重大な問題を引き起こす。

続きは9月18日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンでどうぞ。






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