どうやって「減らない年金」にするの?

参議院選挙で年金問題がよく話題になりますが、肝心の年金制度をどう改革するのかという政策がはっきりしません。ただ一つ「年金を減らさない」と明確に公約に掲げているのが共産党です。どうやって減らない年金にするんでしょうか?

それは簡単です。年金を減らすマクロ経済スライドという制度を廃止するのです。これによって「年金が7兆円減るのを防げる」と共産党は主張しています。マクロ経済スライドという言葉は何のことやらわからないと思いますが、日本年金機構の説明によると次のような制度です。
賃金や物価による改定率から、現役の被保険者の減少と平均余命の伸びに応じて算出した「スライド調整率」を差し引くことによって、年金の給付水準を調整します。
これでもよくわかりませんね。簡単にいうと、これは共産党のいうように年金を減らし続けるしくみです。図1のように、本来は上がるはずの年金支給額(実質)を減らすのがマクロ経済スライドですが、役所が「減らす」という言葉を使わないのでややこしいのです。

図1

続きはアゴラで。

誰も負担しない「見えない賃金税」

今度の参議院選挙の最大の争点は年金問題だが、公約で「マクロ経済スライド廃止」という方針を明確に打ち出している共産党以外は、どう改革するのか(あるいはしないのか)わからない。自民党に至っては、金融審議会の「年金が2000万円足りない」という報告書の受け取りを拒否して、事実も認めない。

その一つの原因は、今の公的年金の負担感が少ないためだろう。国民年金は税で補填されるので年金保険料より給付のほうが多いが、厚生年金にはトリックがある。その保険料は2017年に18.3%で打ち止めになったが、サラリーマンの源泉徴収票に出てくる数字はその半分、つまり9.15%である。

ところがサラリーマンの実際の負担はそれより大きい。次の図は鈴木亘氏の試算だが、ざっくり言って今の50歳以下は年金の払い損になる。これは保険料というより賃金税と考えたほうがいいが、その負担感は実際より小さい。

s

このトリックのタネは単純だ。社会保険料の半分を事業主負担としてサラリーマンを雇う会社が負担しているからである。しかし会社からみると事業主負担も人件費なので、そのほとんどは労働者に転嫁される。つまり社会保険料の分だけ手取り賃金が下がるのだが、その負担の半分は見えない。

続きは7月15日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで。

日本には「よいバブル」が必要だ

バブルは事前にわからないといわれるが、そんなことはない。1980年代後半の地価は収益還元価格(理論地価)の数倍になっていた。不動産業者も賃料で回収できないことはわかっていたが、高値で転売できればいいと割り切っていた。バブルは自己実現的な均衡であり、それが実体経済と一致する必要はないのだ。

tika
バブル期の地価(日本不動産研究所の推定)

1990年代末のITバブルでも、ドットコム企業の株価が将来の収益で正当化できない水準に上がり、そのほとんどは消滅した。しかしアマゾンもヤフーもグーグルも、ITバブルがなかったら生まれなかった。日本の楽天もソフトバンクも、ITバブルで成長した企業である。アップルもマイクロソフトも、1970年代のPCバブルで生まれた。

アゴラにも書いたようにバブルは悪ではない。借金ができるのは「貸したカネが金利をつけて返ってくる」とみんなが信じるバブルのおかげで、誰もそう信じないと企業は現金だけで経営しなければならない。企業が萎縮して銀行は国債を買う悪いバブルが、この20年の日本経済である。

どんなバブルでもいいわけではない。PCバブルやITバブルで生き残った(ごく少数の)新企業は、急成長してグローバル企業になったが、日本の不動産バブルは銀行の不良債権を残しただけだった。今の国債バブルも、非効率な社会保障や公共投資を残すだけに終わるおそれが強い。

続きは7月15日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで。

アメリカ資本主義の黄金時代は終わった

大分断:格差と停滞を生んだ「現状満足階級」の実像
労働者が転職しなくなり、起業が減り、大企業のシェアが増えて経済に活気がなくなっている――これは日本のことではない。アメリカの現状である。州を超えた移住は50年前の半分になり、起業率も40%減り、生産性上昇率は1%を下回った。

その原因はアメリカ資本主義の成長期が終わって成熟段階に入り、「現状に満足する階級」が増えてきたからだ(原題は"The Complacent Class")。起業や新規参入が減る一方で企業の集中が進み、4割の業界で上位4社のシェアが半分を超えるようになった。

つまり日本で起こっている長期停滞は、世界的な現象なのだ。今週のVOXにも、次の図のようなデータが紹介されている。企業の新規参入は、1980年代の14%から2010年には9%に減った。大企業の利潤率は上がっているが企業間の格差が拡大し、労働者の格差も拡大している。労働者の所得の中央値は、1969年より低い。

ufuk4julyfig1a

続きは7月15日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで。

史上最大の「国債バブル」をゆるやかに崩壊させる方法

バブル崩壊は10年ごとにやってくるというが、今のところ2008年のリーマンのような大型のバブル崩壊(金融危機)の兆候はない。日本国債のマイナス金利は20世紀の常識で考えるとバブルだが、それが崩壊する兆候もみえない。それどころか、国債を長期保有している邦銀は大もうけしたはずだ。


10年物国債先物の価格(右軸)JPX調べ

これは10年物国債先物の価格だが、1990年に87.08円だった価格が2015年には148.68円。バブル崩壊直後から70%ぐらい値上がりした。日本国債は世界史上最大のバブルといわれる所以である。

続きはアゴラで。

慰安婦問題の知られざる主役

半導体報復でまた日韓問題がもめているが、1990年までほとんど存在しなかった慰安婦問題を日韓の外交問題にしたのは朝日新聞である。これについては、いまだに第一報を書いた植村隆記者が主役のように取り上げられるが、彼は当時33歳の駆け出しで、デスクに命じられて2本の署名記事を書いたに過ぎない。大部分の記事は無署名で、そのキャンペーンの責任者は大阪社会部デスク(次長)の鈴木規雄(故人)だった。

鈴木は千葉支局デスクだった1988年に初めて日本人慰安婦の「証言」を記事にし、大阪社会部デスクに異動して、1991年8月に慰安婦の記事を書かせた。その翌年1月の宮沢訪韓の直前に「軍関与示す資料」という1面トップの記事が出たときの東京社会部デスクも鈴木だった。これは偶然ではありえない。大阪から東京に拠点を移してキャンペーンを続け、慰安婦問題を日韓の政治問題に仕立てたのは朝日新聞社会部だったのだ。

ところが慰安婦の強制連行についての唯一の情報源だった吉田清治の証言の信憑性があやしくなって批判が強まり、朝日は1997年3月の特集で吉田証言の「真偽は確認できない」と曖昧な総括をした。この記事を書いた「検証取材班」の人選をしたのも、当時名古屋社会部長だった鈴木である。

続きは7月8日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで。

インフレ目標から名目成長率目標へ

安倍首相が党首討論会で、消費税の10%を超える増税について「安倍政権でこれ以上引き上げるとはまったく考えていない」と明言し、「責任を持てるのは安倍政権(の間)だが、例えば今後10年間ぐらいの間は上げる必要はないと思う」とのべた。これは当たり前のようだが、大事な約束である。10月の増税のとき、税法に明記してはどうだろうか。

ただ今までの消費増税のように法律を改正すれば変更できるので、その条件をつけるのだ。たとえば2028年までにプライマリーバランス(PB)を黒字化するという今の中期財政計画を変更し、「名目成長率が4%を超えるまでPBの赤字を減らさない」という名目成長率目標を設けてはどうだろうか。

 名目成長率=実質成長率+インフレ率

だから、今のようにインフレ率が1%未満だったら、実質成長率が3%を超えるまでPBは黒字化しない。インフレ率が2%になっても成長率が2%未満だったら、金融引き締めをしない。したがって日銀のインフレ目標は廃止する。これは政治的には論議を呼ぶだろうが、Woodfordの提案している名目GDP目標と同じような考え方だ。

ただ金融政策で長期の成長率を動かすことはできないので、この目標を実行するには統合政府のバランスシートを一体としてコントロールする制度が必要だ。財政政策は財務省の権限だが、これには政治的バイアスが強いので、財政を監視する独立行政委員会をつくって統合政府のB/Sをコントロールする必要がある。

続きは7月8日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで。

日本はなぜ人権問題で韓国に負け続けるのか

今回の韓国に対する半導体材料の輸出規制は、政府見解としては「安全保障上の措置」だが、世耕経産相が正直にツイートしたように「旧朝鮮半島出身労働者問題について満足する解決策が示されなかった」ことが本当の理由だろう。

続きはアゴラで。

長期停滞は本当に長期の問題なのか

長期停滞の現象はゼロ金利とか低成長とか低インフレとかいろいろあるが、本質的な問題は一つしかない:それが一時的な循環か構造的な停滞かということだ。それは誰にも断定できないが、確実に予想できるのは人口減少である。次の図は今後の生産年齢人口増加率の予測だが、2040年まで下がり続け、マイナス2%に近づく。これが長期停滞の最大の原因である。

lab18j02f
2060年までの生産年齢人口増加率の予測(出所:国立社会保障・人口問題研究所)

「マイナス金利になるのは日銀が国債を爆買いしているからだ」という人がいる。そういう面はあるが、現実の実質金利が(実体経済で決まる)自然利子率とそれほど大きく乖離しているとは思えない。金利が人為的に自然利子率より低く設定されたらインフレになるはずだが、インフレ率は1%に満たないので、自然利子率も実質金利に見合う水準(マイナス)だと思われる。現に日銀の資産買い入れは減っているが、長期金利は上がらない。

自然利子率はおおむね潜在成長率に等しいので、生産性が上がると自然利子率も上がる。生産性上昇率は予測がむずかしいが、これを技術進歩率で近似すると、日銀の予測では、自然利子率はベースラインで2060年までに0.5%程度だが、現実の自然利子率はマイナスで、次の図の緑の点線に近い。サマーズの「自然利子率は今後50年マイナスが続く」という予測も荒唐無稽とはいえない。

lab18j02j
2060年までの自然利子率の予測(出所:日銀)

つまり日本の超低金利は、かなり遠い将来まで続くと予想される。それは停滞というマイナス面だけでなく、財政赤字が増えても金利が上昇しないというプラス面もある。アゴラ経済塾「長期停滞の時代」第2部では、日本の長期停滞が今後どうなるのか、どうすればそれを脱却できるのかを歴史的な視野から考える(教室受講の申し込みは木曜午前中まで)。

続きは7月8日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで。

電力自由化は「将来世代へのツケ回し」

MMTの上陸で、国債の負担という古い問題がまた蒸し返されているが、国債が将来世代へのツケ回しだという話は、ゼロ金利で永久に借り換えられれば問題ない。政府債務の負担は、国民がそれをどの程度、自分の問題と考えるかに依存する主観的な問題なのだ(重要ではないという意味ではない)。

これに対して将来世代のエネルギーコスト負担は、主観的な判断にかかわらず確実に発生する。日本を含む各国で進められてきた電力自由化の目的は、電力業界を自由にすることではなくコストを下げることだから、自由化の成果は電気料金で判断できる。

総合資源エネルギー調査会の電力・ガス基本政策小委員会の報告書によれば、2017年の電気料金は電力自由化を開始した1994年度からの25年間で、再エネ賦課金と燃料費を除いて31%下がったが、全体としては2010年度に比べて19%上がり、今は1994年度とほぼ同じだ。



続きはアゴラで。






Twitter
記事検索
月別アーカイブ
QRコード
QRコード
Creative Commons