フリードマンの提案した「累進消費税」

アメリカ議会では国境調整税が成立する可能性が出てきたようだが、法人税の廃止にはいつも「金持ち優遇だ」という類の批判が出る。これは誤りで、高い法人税を避けるために企業が海外移転すると雇用が失われ、その損失は労働者が負担するのだ。

こういうバイアスは、グローバル化で生産要素が流動化すればするほど大きくなる。それを減らすには、場所の動かしにくい消費国で課税することが合理的だ。それがキャッシュフロー課税の発想で、ロバート・フランクなどのリベラル派の提案する累進消費税も、中身はほとんど同じだ。それはフリードマンが提案したことでもわかる。

そう。あのミルトン・フリードマンである。彼はフランクが1997年に累進消費税の論文を発表したとき、封筒を送ってきたという。手紙には「政府がもっと金を集めてもっと使うべきだというあなたの意見には同意しない」と断った上で、「もし政府に本当の追加の税収が必要になったら、累進消費税は何より有効な手段だろう」と書かれていた。

そこに同封されていたのは、フリードマンが1943年にAERに発表した"The Spendings Tax as a Wartime Fiscal Measure"という論文だった。そこには「戦費調達の方法として最適なのは消費税だ」と書かれていたのだ。

続きは7月3日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンでどうぞ。

「国境調整税」でドル高がやってくる

死んだと思っていたアメリカ共和党の国境調整税が、民主党との取り引きで生き返る可能性が出てきたようだ。これは共和党の主流派が推進しているが、トランプ大統領がそのコンセプトを理解していないので、どうなるかはまだわからない。

他方、マンキューやフェルドシュタインなどの提唱した炭素税の国境調整に、エクソンモービルやBPに続いてサマーズが賛成した。彼は「国境調整」という考え方にも「合理的で、合衆国憲法より古い」と賛成している。彼もいうように関税は昔からあるが、国内にも関税をかけるのが画期的だ。

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『葉隠』は元祖サラリーマンの処世術

葉隠 上 (岩波文庫 青 8-1)
丸山眞男の講義録を読んだとき、『葉隠』が高く評価されているのに最初は違和感があった。有名な「武士道といふことは、即ち死ぬ事と見附けたり」という言葉が「死の美学」として軍部に利用され、戦後は禁書になった本だから、彼はそれを否定するのかと思うと逆なのだ。

といっても丸山の文献考証は、三島由紀夫のような主観的な読み込みではない。特におもしろいのは「釈迦も孔子も楠木も信玄も鍋島に被官しなかったから当家の家風に合わない」という山本常朝の言葉だ。鍋島家(佐賀藩)への忠義が仏教や儒教などの普遍的な原理より上に位置づけられるのは、丸山のいう「日本的特殊主義」の極致である。

山本にとって世界=鍋島家であり、それは「七生迄も鍋島侍に生れ出で、国を治め申す」という強烈な愛着の対象だった。彼はその心情を「恋の心入れの様なる事なり」という。ここで恋する対象になっているのは主君ではなく、鍋島家である。

これは丸山も指摘するように、戦場から離れてサラリーマン化した武士の心情を見事に表現している。「鍋島家」を「会社」や「役所」に置き換えれば、現代の日本社会で出世する心がけとしても読める。サラリーマンに何より求められるのは「会社に恋する」忠誠心だ。前川喜平氏は、現代の山本常朝ともいうべき存在である。

続きは6月26日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンでどうぞ。

リベラルな安倍首相に対抗する「保守革命」が必要だ



今週のVlogで、民進党を離党した長島昭久氏が「安倍首相が安保法制の審議で民進党を左へ追い詰めたので、共産党と区別がつかなくなった」と嘆いていた。首相の政策は世界的にみると左派で、アイケンベリーはこう書いている。
リベラルな国際秩序を存続させるには、この秩序をいまも支持する世界の指導者と有権者たちが、その試みを強化する必要があり、その多くは、日本の安倍晋三とドイツのアンゲラ・メルケルという、リベラルな戦後秩序を支持する2人の指導者の肩にかかっている。

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地下経済が地上の経済を狂わせる

現金の呪いーー紙幣をいつ廃止するか?
タイトルは奇妙だが、オカルト本ではない。著者はハーバード大学教授だが、金融理論の本ではない。地下経済という厄介なテーマを実証データで論じている。これはJBpressにも書いたように意外に深刻な問題で、その規模は主要国の平均でGDPの14.2%、日本は9.2%だという。

しかし定義によって、地下経済の正確な規模はわからない。世界全体の総資産、約100兆ドルの8%以上がタックスヘイブンにあるというのがピケティの推定だが、本書の推定もほぼ同じだ。その大部分は高額紙幣で、日本で流通している通貨の(金額で)90%以上が1万円札だという。

ハイテク化しているのに、現金の流通は増えている。それは金利が低下してマイナスになったためで、「タンス預金」はマイナス金利より得だ。これが金融緩和のきかない一つの原因になっている。足のつかない現金は脱税や犯罪の温床なので、高額紙幣を廃止すべきだというのが本書の提案である。

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「ひとり勝ち社会」で生き残る方法

週刊東洋経済 2017年6/24号 [雑誌](アマゾン膨張)
ホールフーズ買収で、アマゾンは生鮮食品まで進出する。アメリカの電子商取引ではアマゾン、検索ではグーグルのシェアが50%を超え、「ひとり勝ち」の様相が強まっている。こういう現象は一時「収穫逓増」といわれてコンサルがかつぎ回ったが、100年前から経済学の教科書に載っている「規模の経済」だ。

たとえばスマホの工場の建設費が100億円かかり、その材料費が1個1万円だとすると、最初の1個のコストは100億円だが、2個つくると50億円…と安くなり、100万個つくると1個2万円(固定費1万円+変動費1万円)になる。それは当たり前だが、経済学では困ったことになる。つくればつくるほど安くなるので、最適規模が無限大になってしまうのだ。

もちろん実際の企業規模は無限大ではないので何かが間違っているが、どこが間違っているのだろうか。これは簡単なようで、むずかしい問題である。「いいものを安くつくれば勝てる」という市場経済のルールは、ここでは通用しないのだ。日本のIT企業が負けたのも「ひとり勝ち社会」のルールを知らなかったからだ。

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東芝が開けた原子力産業の「パンドラの箱」

東芝 大裏面史
いま東芝をたたくのは簡単だ。『東芝解体』のように正義漢を気取って、結果論で東芝を批判するのは誰でもできる。本書のタイトルはそういうきわものに見えるが、中身は10年近い取材の蓄積をもとにしている。テーマは経営陣の派閥抗争なので、ほとんどは憶測だが、私の聞いたインサイダーの話とおおむね一致している。

特に重要な指摘は、ウェスティングハウス(WH)の破綻処理が単なる東芝の経営問題ではなく、安全保障にからんでいるということだ。原子力が軍事技術であることは明らかだが、問題はそれだけではない。中国は2030年までに140基の原子炉を建設する予定の大口顧客であり、そこにライセンス供与しているのはアメリカ企業WHであって東芝ではない。アメリカとしては、核兵器を管理する上でもWHをつぶすわけに行かないのだ。

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「国のために死ぬ」というパラドックス



篠田英朗氏の記事に書かれている朝日新聞の記事を読んで、私も気分が悪くなった。長谷部恭男氏が批判しているのは、安倍首相のビデオメッセージの次の部分だろう。
命懸けで24時間、365日、領土、領海、領空、日本人の命を守り抜く、その任務を果たしている自衛隊の姿に対して、国民の信頼は9割を超えています。しかし、多くの憲法学者や政党の中には、自衛隊を違憲とする議論が、今なお存在しています。自衛隊は違憲かもしれないけれども、何かあれば、命を張って守ってくれというのは、あまりにも無責任です。

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東芝の西田厚聡氏は「だめなワンマン社長」だったのか

東芝解体 電機メーカーが消える日 (講談社現代新書)
本書はよくある東芝バッシングで、その理由も簡単だ:経産省と原子力村の陰謀が3・11で破綻した。日本をダメにしているのは、電力会社とNTTにぶら下がる電機メーカーの「ゼネコン体質」だという。それでは本書が槍玉にあげているソニーとパナとシャープはどうなるのか。

私もITゼネコンを批判する点では人後に落ちないつもりだが、そんな勧善懲悪で説明できるほど、製造業の問題は単純ではない。東芝の問題をすべて西田厚聡氏の「でたらめなワンマン経営」の責任にするのは、誰でもいえる結果論だ。

西田氏のグローバル経営には、見るべきものがあった。もちろん結果的には3・11で大失敗に終わったが、それは東芝の原子力技術の欠陥ではなく、民主党政権を中心とする感情的な東電バッシングのおかげだ。福島事故がなければ、東芝は日本の製造業の成功モデルになった可能性もある。それが『失敗の法則』の一つのテーマである。

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安倍政権の終わりの始まり

各社の世論調査で内閣支持率が急落し、4割前後になった。この原因は明らかに加計学園で官房長官の説明が二転三転したことで、一過性の現象だと思うが、そろそろ安倍政権の寿命も見えてきたので、この4年を振り返ってみよう。



続きはアゴラで。






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