都知事選が「古い政治」を葬る


きのう音喜多さんと話したが、都知事選の情勢は鳥越事件で大きく変わり、トップは小池百合子氏で増田寛也との戦いになってきたようだ。小池氏は自民党員ではあるが、東京都連などは増田支持で組織を固めているので、「無党派vs組織選挙」になっている。これで無党派が勝てば、今後の都市型選挙にも大きな影響を与えるだろう。

今回の選挙は、その意味で古い政治と新しい政治の戦いだ。街頭演説でも、都政はそっちのけで「憲法を守れ・安保反対」しかいわない鳥越氏は60年安保以来の古い政治の典型である。JBpressにも書いたことだが、もうそんなアジェンダ設定には意味がないのだ。

東京では青島幸男氏や石原慎太郎氏が当選して以来、無党派が圧倒的な第一党だ。全国も同じ傾向になっているが、彼らの支持を得る党がないため棄権が半分近くにのぼり、民主政治が機能しなくなっている。今日からのアゴラ夏の合宿では、そういう問題を考えたい。

続きは7月25日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンでどうぞ。

【追記あり】鳥越俊太郎のスラップ訴訟

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鳥越俊太郎が刑事告訴した、話題の週刊文春の記事を読んでみた。話は2002年夏で、強姦未遂事件とすれば時効になっているが、証言しているのは被害者の夫で、事実関係も詳細で具体的で、事実無根とは考えられない。これが事実なら、選挙妨害も成立しない。週刊誌もバカじゃないから、事実無根の話を告示後に出したりしない。
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無血の二・二六事件

戦争責任は何処に誰にあるか ―昭和天皇・憲法・軍部
本書は山本七平の未発表原稿を集めたものだが、戦争責任を論じているのがおもしろい。彼の意見は明快だ。もちろん最大の責任は軍にあるが、それを止める権限は天皇には実質的になかった。開戦を止められなかった責任は、軍事予算を承認した内閣と議会にある

これはイギリスでは明確に意識されており、シビリアン・コントロールとはその意味だ。高橋是清はこれを認識して軍事費の膨張を止めようとしたが暗殺され、不拡大方針の宇垣一成が1937年に組閣に失敗したため、内閣が軍をコントロールできなくなった。

この意味で日米開戦への決定的な分水嶺は、二・二六事件による高橋財政の挫折だった。今の日銀の財政ファイナンスは、これと同じだ。黒田総裁は高橋のように安倍政権をコントロールするつもりだったのだろうが、残念ながら無血の二・二六事件は起こってしまった。

日銀という「打ち出の小槌」があると思っている首相は増税を再延期し、「アベノミクスのエンジンを最大限にふかす」と称して、大規模な補正予算を組もうとしている。その先に待っているのは、財政ファイナンスの行き詰まりによる金利上昇だ。歴史は繰り返す。一度目は悲劇として、二度目は愚かな政治家による笑劇として。

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革新自治体は野党の無能さのショーケース

革新自治体 - 熱狂と挫折に何を学ぶか (中公新書 2385)
かつて全国に革新自治体ができ、国政も革新政党がとることは時間の問題だと思われた時期があった。そのハイライトは、1967年の美濃部都知事の誕生だった。

その政策の一つの柱は公害対策だったが、彼の「一人でも反対する人がいる限り公共施設はつくらない」という方針で、ゴミ処理場の建設はできなくなった。もう一つの柱は、バラマキ福祉や賃上げだった。都職員の賃金は国家公務員より18%も高くなって都の財政は莫大な赤字となり、財政再建団体になった。

本書はこのような失敗は革新自治体の必然ではなく、その母体となった社会党に指導力がなく、「全野党共闘」をめざして社共共闘になり、路線が混乱したことが大きな原因だという。社公民で現実的な野党をつくれば政権交代の可能性もあったが、社会党は派閥抗争で右派を追放し、革新自治体も崩壊してしまった。

今回の鳥越氏も「全野党共闘」と称する共産党主導の左派候補だ。そこにはかつての革新都政のような政策すらない。もともと国政で万年野党だった社会党が、地方政治で与党になるのが無理だったのだ。その意味では、革新自治体は野党の無能さのショーケースだった。

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「長い60年安保」の終わり


今回の都知事選は、ある意味で参院選より重要だ。それはこの半世紀以上も変わらない「戦争法案・憲法改悪反対」という類のアジェンダ設定を変える選挙だからである。都政について何も語らず、憲法や安保しか関心のない鳥越氏は、いわば60年安保の化石である。彼は当時20歳だから、青春の思い出なのだろう。

続きはアゴラで。

野党は人命より党利党略が大事なのか

共産党の書記局長(医師免許をもっている)が、鳥越俊太郎氏の癌は「完治」したと断定しているが、これは本当だろうか。

続きはアゴラで。

日本の左翼はなぜここまで劣化したのか

定本 丸山眞男回顧談(上) (岩波現代文庫)
鳥越俊太郎氏のひどい演説を聞いて、日本の左翼(自称リベラル)はなぜここまで劣化したのか、と考えていたら、本屋に丸山眞男の回顧談の文庫版が出ていた。思えば戦後のリベラルは丸山に始まり、丸山に終わったと思う。

下巻(文庫は未刊)を読むとわかるが、丸山の話は60年安保からいきなり退官の時期に飛び、60年代に自分の思想がどう変化したのかという問題を避けている。彼は自分が間違えたことに気づいたが、それを弟子に伝えないまま世を去ってしまったのだ。

出版を想定しない座談会では「一国平和主義じゃだめだ」とか「社会党はバカだ」などと言っているが、公式の論文では過去の政治活動を自己批判しなかった。それは彼の立場としてはわかるが、彼が正直に総括しなかったことが、鳥越氏のように60年安保のまま化石化した劣化左翼を生んだ責任はまぬがれない。

丸山の晩年の研究は、鳥越氏のように論理のない「心情の純粋性」がなぜ日本では広く支持されるのか、あるいは軽い「みこし」をかつぐ日本の政治システムはなぜかくも長く続いたのか、といった日本人論に傾斜していった。それはリベラルの挫折についての、彼なりの学問的な総括だったのだろう。

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鳥越俊太郎氏は出馬を辞退すべきだ


鳥越俊太郎氏の街頭演説の全文書き起こしがあるが、正味20分で「舛添は無駄遣いした」という周知の事実を批判して「都民の税金は大事にしろ」とか「住んでよし、働いてよし、環境によし」というスローガンを繰り返すだけで、具体的な政策は何もない。

続きはアゴラで。

日銀は「名誉ある撤退」ができるか


きのうは今や「黒田ウォッチャー」として名高い早川英男氏(元日銀理事)と話した。いま日経新聞などは「ヘリコプターマネー」で騒いでいるが、バラマキ財政を日銀がファイナンスするという意味のヘリマネはすでに始まっており、今さら騒ぐことではない。ただそれがフリーランチだというのは誤解で、金利が上昇すると莫大な損失が日銀に発生する。

金利上昇やインフレが今すぐ来るという情勢ではないが、2020年代になると財政的な要因で金利が上がるおそれが強い。特に団塊の世代が後期高齢者になる2025年ごろ医療費は4倍になると予想され、国債発行額が激増する。他方で日銀の財政ファイナンスは限界に来ており、長期金利の上昇は避けられない。

ところが安倍首相は「日銀がいくらでも国債を買うから財源は心配ない」と思い始め、増税を延期した上に大型補正という話まで出てきた。これは財政ファイナンスの最大の副作用である財政規律のゆるみが出てきたものと思われる。このままでは戦前の高橋是清のような悲劇をまねきかねないので撤退が必要だが、これはきわめて困難だ。

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憲法論争で忘れられた安全保障

安保論争 (ちくま新書)
本書のテーマとする「安保論争」は、日本の政治には存在しない。あるのは「憲法第9条を守れば戦争は起こらない」という思い込みだけだ。これは「道路交通法を守れば交通事故は起こらない」というのに等しい。ルールを維持するには、それを監視する警察・司法機関が必要だという常識さえ野党には共有されていない。

これに対して本書の説くように、世界の地政学的な情勢は大きく変わりつつある。アメリカの世界戦略の中心はヨーロッパから太平洋に移り、中国を中心とする新興国との新しいパワー・ゲームが始まっている。かつての東西対立の焦点が東西ベルリンだったとすれば、今の焦点は尖閣諸島だ。

かつて圧倒的なプレゼンスで太平洋の秩序を守っていたアメリカに対して、中国が挑戦しようとしている。こういう状況で平和を守るために必要なのは憲法論議ではなく、日本がどのようにアメリカと連携して現在の秩序の「力による変更」を許さないかという戦略だ。集団的自衛権はその一環であり、憲法学者が決める問題ではないのだ。

こうした安全保障についての認識は、著者だけでなくアメリカ政府から日本政府に至る世界の常識だが、野党やマスコミには共有されていない。都知事候補まで「改憲の流れを東京から戻す」という現状は狂っている。

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池田信夫の「オフレコ政経ゼミ」
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