山本太郎議員の「反緊縮」はなぜ正しいか

新田編集長によれば、れいわ新選組代表の山本太郎参議院議員は、今年7月の参議院東京選挙区では当選確実だそうである。私も最初はまさかと思ったが、最近出てくる各メディアの票読みも同じだ。



続きはアゴラで。

年金財政の赤字は減らすべきか

日本の年金 (岩波新書)
年金制度はわかりにくい。どこの国でも年金は政治的な「爆弾」だから、わざとわかりにくくしているのだ。たとえば「マクロ経済スライド」は「年金給付率の自動削減」だが、削減という言葉は使わない。厚生年金の「事業主負担」も会社が半分負担してくれると思う人が多いが、会社からみると保険料は人件費の一部なので、それは賃金の支払い延期として労働者が負担しているのだ。

専門家にも多いのは「高齢社会では賦課方式を積立方式に転換すべきだ」という意見だが、本書はこれに疑問を呈する。積立方式は貯蓄と同じなので、高齢化による不公平は少ないが、所得再分配の効果はない。今から積立方式に転換すると、これまでの賦課方式による保険料がパーになり、新たに積立が必要になるという二重の負担の問題が生じるので、政治的には不可能だ。

積立方式によって資本蓄積で成長率が高まるという効果も、今の日本のように企業が貯蓄過剰の状態では考えられない。賦課方式の年金は国債と同じなので、政府がマイナス金利で民間から金を借り、それを低所得の老人に再分配していることが、現在の景気を下支えしているともいえる(この点では日銀の財政ファイナンスが機能している)。

年金給付を削減することは、世代間の公平という点では必要だが、マクロ経済的にいいとは限らない。影の金利がマイナス8%以上という世界史上にも類を見ない状況で政府債務を減らすと、さらにマイナスがひどくなって銀行業は壊滅し、日本経済が大きなダメージを受けるおそれがある。

続きは6月27日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで。

「年金返せデモ」の参加者には年金保険料を返してあげよう

きのう東京で「年金返せデモ」が行われ、主催者発表で2000人が参加したようですが、このデモは何をしろというのでしょうか。ポスターを見ると「今まで払った年金保険料をすべて返せ」と主張しているようですが、これは政府にとってありがたい話です。年金財政は大幅な赤字だからです。



続きはアゴラで。

年金問題を解決する理想の方法

年金問題を解決するファースト・ベストの答は、60年前にフリードマンが出している。つまり公的年金という制度が間違っているので、年齢に依存しない負の所得税に一元化することが合理的だ。これは一部の国で行われている勤労所得税額控除(EITC)と原理的には同じで、日本では「給付つき税額控除」と呼ばれている。これで現在の社会保障をすべて置き換えると、所得分配はたとえば次のようになる。

これをベンチマークにして年金制度を考えると、いちばん大事なのは最低保障の機能である。国民年金(月額6万5000円)と同じ水準を保障すると、年収80万円支給しなければならない。これをベーシック・インカムのように全国民一律に支給すると、約100兆円の財源が必要になる。政治的には、EITCのように既存の社会保障の一部を置き換えるのが現実的だろう。

それ以上は所得比例の部分で、この設計はいろいろ考えられる。今の社会保障120兆円をすべて負の所得税に置き換えるのは政治的に不可能だが、これを既存の社会保障にまるまる上乗せすると、一般会計予算は2倍になって激しいインフレが起こり、実質給付は今と変わらない水準に落ち着くだろう。

続きは6月17日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで。

「ブログ経済学」が政治を変えた

アメリカでもMMTは人気があり、民主党のサンダースは「雇用保障」(MMTのスローガン)を公約に掲げている。主流派の経済学者は全面否定に近いが、Cochraneはおもしろい考察をしている。彼がMMTについて調べると、査読つき学術誌ばかりか、NBERのワーキングペーパーにさえMMTの論文は1本もないのだ。ネットで検索しても、ブログ記事しか出てこない。

リフレ派も同じだ。世界中の学術誌に"reflation"についての学術論文はなく、Google Scholarで検索してもブログ記事しかない。リフレもMMTと同じような「ブログ経済学」だが、経済学は純粋科学ではない。物理学では学界で認められることがすべてだが、経済理論は政策を実行する政治家や官僚に認められないと意味がないのだ。

この点で主流派のマクロ経済学(DSGE)には、致命的な欠陥がある。それはむずかしすぎて、政治家には理解できないのだ。彼らにわかるのは大学1年レベルの「どマクロ」経済学や、素朴な貨幣数量説までだった。リフレ派やネトウヨは、そういう情報弱者にターゲットを絞って宣伝した。

この作戦は成功だった。日本では主流派は政策にほとんど影響を与えなかったが、リフレ派は安倍政権に入り込み、日銀の金融政策を変えてしまった。それが空振りで窮地に陥っているのを見て主流派は笑っているが、こうなった責任は主流派にもある。政治家に魅力的な経済理論が正しいとは限らないが、彼らに魅力のない経済理論は意味がない。政策として実現できないからだ。

続きは6月17日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで。

アゴラ経済塾「長期停滞の時代」第2部

アメリカ経済 成長の終焉 上大好評で受講生がアゴラセミナー史上最多になった、アゴラ経済塾「長期停滞の時代」の第2部です。世の中の関心が短期的な景気から年金などの長期の問題に移り、「年金が2000万円足りない」という問題が騒がれています。団塊の世代が社会保障を「食い逃げ」すると、現役世代には高負担・低福祉が残されます。

1990年代から世界経済に起こった最大の変化は、情報革命グローバル化でした。インターネットは情報を民主化しましたが、それが生み出したのはグローバル独占でした。これによって資本主義は大きく変質し、グローバルな水平分業と規模の経済が極大化したのです。

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年金のための国債増発で「財政インフレ」は起こるか

「2000万円の赤字」報告書で年金問題に火がついた。この問題は短期的な景気しか眼中にない安倍政権の弱点だった。それが報告書の受け取りを拒否するという異常な対応の原因だろう。マクロ経済スライドをしないで給付額を維持したまま、年金保険料も消費税も上げないとなると、残る財源は国債の増発しかない。

国債を大量発行するには、今の「2025年プライマリー赤字ゼロ」という中期財政計画を修正しないといけないが、これは金利上昇とインフレをもたらすおそれがある。それをコントロールできるかどうかが、安倍政権の勝負所だろう。これによって起こる問題は2種類ある。一つは資金需給の逼迫による金利上昇、もう一つは財政不安による財政インフレである。

このうち前者は金融市場の問題なので、日銀が国債を買い支えればコントロールできるが、後者はわからない。年金会計の隠れ債務は800兆円ある。もし日本政府が年金財政を支えるために今後も数百兆円の赤字を出すと債券市場の多数派が予想すると、国債が暴落して財政インフレが起こるかもしれない。それをインフレ目標2%以内にコントロールするのは、ガラスを2%割るぐらいむずかしい。

外為市場で円売りが激増すると、日銀が国債を買い支えても、海外の投機筋が先物で空売りをかけるだろう。今までもヘッジファンドが、国債の空売りをかけたことがあった。アメリカの住宅バブル崩壊を的中させて大もうけしたカイル・バスは、2012年1月に「日本国債バブルは18ヶ月以内に崩壊する」と予言した。

続きは6月17日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで。

安倍政権は「年金財政検証」を公表して参院選で民意を問え

金融庁の報告書の「年金が2000万円足りない」という試算をめぐって国会が荒れ、麻生財務相(金融担当相)が報告書の受け取りを拒否する異例の事態に発展した。しかしこれは4月に金融審議会の市場ワーキンググループに提出された厚労省の資料に書かれている2017年の総務省「家計調査」のモデルケースで、今ごろ財務相が拒否してもしょうがない。



注目されるのは、厚労省が「社会保障給付が19万1880円」と想定している点だ。この数字は、厚労省が検討中の年金財政検証の標準的なケースの計算結果に近いと思われる。財政検証は5年に1度おこなわれるもので、前回は2014年6月3日に発表されたが、それからちょうど5年たっても発表の予定が決まっていない。

続きはアゴラで。

「一応の目的」だったインフレ目標は終わった

ブルームバーグによると、きょうの参議院予算委員会で、安倍首相は次のように答弁した。
2%の物価安定ということが一応目的だが、本当の目的は例えば雇用に働き掛けをして完全雇用を目指していく、そういう意味においては金融政策も含め、目標については達成している。それ以上の出口戦略うんぬんについては日銀にお任せしたい。
アベノミクスの旗印だったデフレ脱却やインフレ目標は「一応の目的」で、本当の目的は「完全雇用」だったのか。これで日銀はハシゴをはずされ、安倍政権は財政政策に舵を切ったわけだ。それは政治的には正しい。雇用に関心をもつ人は多いが、インフレ率なんてほとんどの人は知らないからだ。

続きはアゴラで。

「財政支配」の時代の経済政策のルール

財政バラマキのMMTが世界的な広がりをみせている背景には、ゼロ金利で金融政策がきかなくなった行き詰まりがある。これはシムズが指摘したことで、国債の残高が大きくなった時代には、貨幣(無利子の政府債務)だけを調節してもマクロ経済はコントロールできない。国債とマネタリーベースをあわせた統合政府の債務管理が必要だ。

今まで政府の債務ルールは単純な均衡財政主義しかなかったが、これには理論的根拠がない。渡辺努氏の整理によると、中央銀行と政府の役割は次のようになる。「能動的な金融政策」はインフレを抑制する中央銀行、「受動的な金融政策」は財政に従属する中央銀行の政策である。「能動的な財政政策」は積極財政、「受動的な財政政策」は均衡財政を示す。

watanabe

1990年代以降の先進国のマクロ経済政策は、能動的な中央銀行と受動的な財政を組み合わるCの金融支配だったが、金融政策がきかなくなってDに移行しつつある。これは受動的な中央銀行と受動的な財政の組み合わせなので、経済がコントロールできなくなって不況とデフレが続く。それよりBの財政支配のほうがましだ、というのがシムズの主張である。

Bは受動的な中央銀行と能動的な財政の組み合わせなので、中央銀行の独立性には意味がなく、財政を規律するルールが必要になる。憲法では国会が予算を決めることになっているが、政治家はつねにインフレを好むので、財政支配になるとインフレに歯止めがきかなくなるというのが、1970年代のスタグフレーションの経験だ。しかし今はインフレを心配する時期ではない、とシムズはいう。

続きは6月10日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで。






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