憲法第9条という「国体」

今国会の審議は、1930年代の帝国議会の「国体」をめぐる論争とよく似ている。美濃部達吉の天皇機関説は一種の解釈改憲で、井上毅が神格化した天皇大権を立憲主義に組み込むものだった。これに対して「国体明徴」なる意味不明のスローガンを振り回した右翼は、皇を不可侵の神とすることによってみずからの道徳的優位性を誇示しようとした。

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黒田総裁は撤退に成功するか「シャハト」になるか

Hitler20Schacht最近は「アベノミクス」とか「リフレ」という言葉も、あまり聞かなくなった。日銀の決定会合では「コアコアを見る」とか「帰属家賃を除く」とかいろいろな話が出て、「そもそもインフレ目標というのは期限を切るもんじゃない」という逃げ口上が出てきた。

その通りである。私を含むほとんどの経済学者が指摘してきたように、もともとインフレ目標というのは長期の目安であり、必達の目的ではない。最近ちょっと話題になった帰属家賃を除いても、下の図のように最近はほとんど変わらない。むしろ原油価格の影響を受けないコアコアCPI(食料及びエネルギーを除く総合)がコアを上回るようになったので、最近は日銀はこれを愛用しているようだ。

帰属家賃
消費者物価上昇率(前年比・消費税のぞく)出所:総務省

しかし黒田総裁の作戦は、なかば成功したと思う。おそらく彼の本来のねらいだった円安は予想以上に進み、心理的な偽薬効果は十分あった。問題はこれからだ。戦争は撤退の決断が一番むずかしいが、「3%成長で財政を再建する」と夢見る安倍首相との間に微妙なずれが出ている。これをヒトラーとシャハトの関係になぞらえる関係者もいるが、大丈夫だろうか。

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「第2次世界大戦」は必要だったのか

ルーズベルトの死の秘密: 日本が戦った男の死に方
本書はルーズベルトの病歴を洗い直し、彼が1930年代から皮膚癌にかかっており、40年代にはそれが脳に転移していた疑いを調査したものだ。今となっては決定的な証拠はないが、有馬哲夫氏も「ヤルタ会談のルーズベルトは正常な判断力を失っていた疑いがある」と推定している。

このとき南樺太や北方領土をソ連に与えたばかりでなく、ポーランドや東ドイツをソ連に与えたことは、その後の冷戦において力のバランスに重大な影響を与えた。さらにさかのぼれば、1940年から近衛文麿の重ねて求めた和平会談を拒否し、日本を挑発する最後通牒(ハル・ノート)を出したことは、ヨーロッパと中国で局地的に行なわれていた戦争を「世界大戦」に拡大したが、それは必要だったのだろうか。

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国会にお笑い芸人はいらない


29日の参議院平和安全法制特別委員会で、山本太郎議員がこんなバカな質問をして、Togetterで物笑いのたねになっている。おもしろいので、その一部を紹介しておこう。

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「脱亜入欧」をめぐる大沼保昭氏の誤解

「歴史認識」とは何か - 対立の構図を超えて (中公新書 2332)
これは書評ではなく、事実誤認の指摘である。本書の175ページの大沼氏の話は、歴史的に明白な誤りである。
明治以来一貫する「脱亜入欧」(停滞した旧弊なアジアの一員であることをやめて、「進んだ」「強い」ヨーロッパの一員になろうという、日本の政策と意識)の一環としてのアジア、アフリカの人々への差別意識です。
彼は出典を何も示していないが、「脱亜入欧」は福沢諭吉の言葉といわれることが多い。これは事実誤認であり、福沢は『時事新報』の論説に「脱亜論」と題したが、「入欧」という言葉はなく、その内容も大沼氏のいうような差別意識とは逆だ。これについては丸山眞男も何度も「誤解だ」と訂正し、私もブログで紹介した。

大沼氏は90年代から朝日新聞の慰安婦デマを擁護してこの問題を混乱させてきたが、それについては今さらいわない。少なくとも上の部分は重大な誤解であり、福沢に対する侮辱である。重版では訂正されたい。

優秀な現場が無能な経営者を生む

イギリス人アナリストだからわかった日本の「強み」「弱み」 (講談社+α新書)
著者は前にも書いたが、90年代の不良債権問題のときNHKの討論番組で「どうせ不動産業者の借金は返せないんだから、政府が徳政令を出せ」と大蔵省の長野証券局長に迫り、銀行業界に出入り禁止になった元ゴールドマンのアナリストだ。

でも彼はオクスフォード大学の日本学科を出ていて、25年も日本に住んでいる。日本が大好きなのだ。本書でも「労働者がまじめで優秀なのが日本の最大の強みだ」と絶賛している。20年前にも、邦銀の銀行員は英米より優秀だとほめていた。

昔も今も、彼の指摘する日本企業の弱みはたった一つ――経営者が無能だということである。

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左翼はいつから平和ボケになったのか

NANBARA_Shigeru安保法案デモは「平和を願えば平和になる」という新興宗教だが、昔の左翼はこんな平和ボケではなかった。先日の記事でも書いたように、南原繁は憲法制定の帝国議会で、憲法第9条で自衛権を否定する吉田首相を次のように批判したのだ。
戦争はあってはならぬ、是は誠に普遍的なる政治道徳の原理でありますけれど、遺憾ながら人類種族が絶えない限り戦争があると云うのは歴史の現実であります。従って私共は此の歴史の現実を直視しして、少なくとも国家としての自衛権と、それに必要なる最小限度の兵備を考えると云うことは、是は当然のことでございます
南原の理想は国連による集団安全保障だったが、その基礎となるのも各国の自衛権であり、日本が丸腰で国連に守ってもらうわけには行かない。「自分の国民を防衛すると云うのは、又其の設備を持つと云うことは、是は普遍的な原理である。之を憲法に於て抛棄して無抵抗主義を採用する何等の道徳的義務はないのであります」(同上)。

ところが1950年代の「全面講和」をめぐる論争では立場は逆になり、南原は「非武装中立」をとなえる平和ボケの元祖のように思われているが、そうではなかった。彼は武装中立を主張したのだ。

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自衛隊を「合憲化」すべきだ

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「炎のランナー」という有名な映画に、オリンピックの優勝候補である主人公がユダヤ教徒で、100m競争の決勝の日が安息日(日曜)であることを知らされる場面がある。結局、彼は出場を断念するのだが、これは実話である。ユダヤ人にとって律法とは、それぐらいきびしいものだ。

それに比べて、JBpressでも紹介したように、朝日新聞のアンケートに実名で「自衛隊は憲法違反だ」と断定した憲法学者42人のうち、それを改正する必要があると答えた人はゼロだ。自衛隊を解散しろという人もいないので、全員が自衛隊は違憲のままでいいと考えているわけだ。これはユダヤ人ならずとも、普通の法治国家ではありえない無法状態である。

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幕藩体制というアンシャン・レジーム

フランス史10講 (岩波新書)
ろくな政策もなく、憲法改正という党是さえ実現できない自民党が60年も生き残っているのは、何が原因なのか疑問に思っていたのだが、そのヒントが思いがけずフランス史の本に見つかった。

最近の研究では、フランス革命は「絶対王制を倒した市民革命」とは考えられていない。ルイ王朝の支配権はそれほど絶対的ではなく、各地の貴族や教会を通じて間接的に徴税し、その代わりに国王が彼らの支配権を「社団」として公認する間接支配だったので、最近はアンシャン・レジームのことを社団国家と呼ぶ。

そして本書によれば、世界史上にはもう一つ社団国家があった。日本の幕藩体制である。藩は地域を統治する典型的な社団であり、それを公認して平和を守った徳川家はブルボン家のようなものだった。日本ではフランス革命のような大戦争が起こらなかったので、明治以降も藩主が政治家などに形を変えて社団国家が残った。

だから自民党は近代的な意味での政党(政治結社)ではなく、地元利益をまとめて中央に公認してもらう社団と考えたほうがいい。社団国家を英語で表現するとcorporatismだから、自民党は中小企業(後援会)の経営者の集合体のようなものだ。日本にはまだアンシャン・レジームが残っているのである。

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歴史認識とは何か

戦後史の解放I 歴史認識とは何か: 日露戦争からアジア太平洋戦争まで (新潮選書 戦後史の解放 1)
かつての戦争について、いまだに「侵略」とか「謝罪」などの道徳を語る傾向が強いが、あれはホロコーストのような大規模な戦争犯罪だったわけではない。本書もいうように、第2次大戦の日本は第1次大戦のドイツに似ており、明確な目標も戦略もなく、ズルズルと戦争に突入して失敗したという程度の話だろう。

だから大事なのは、戦争に道徳をもちこんで「平和主義」を叫ぶことではなく、同じ過ちを繰り返さないことだ。そのためには、失敗の原因を客観的に整理する必要がある。本書は最近の歴史学の成果のおさらいで、新しい話はないが、ヒステリックに日本の「戦争犯罪」を語るのではなく、失敗の原因をたどっている。

著者のみる「失敗の本質」は、日本政府も軍部も意思決定が内向きで、世界が日本をどう見ているかを理解していなかったことだ。「欧米の植民地主義に対抗する善意があればアジアは団結できる」という感覚で戦線をなし崩しに拡大し、国際的な政治力学に無関心で同盟関係でも失敗を繰り返した。

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