中国は「漢字文化」ではない

中国文明の歴史 (講談社現代新書)
中国を語るとき「漢字文化」とか「漢民族の伝統」という言葉で語るが、そういう文化が 2000年前からあったわけではない。漢字は中国にもともとあった言葉ではなく、古代に中国大陸に集まった多くの民族は、それぞれの口語を使っていた。

漢字はそれとはまったく違う、商人の人工的な共通語だった。もとは取引に使う符号だったので単純で、時制も接続語もなく、感情を表わす言葉がほとんどなかった。複雑な概念を表現するため、漢字を組み合わせて新しい漢字をつくったので、どんどん増えて発音もバラバラになった。

その読み方を統一したのが601年に書かれた『切韻』で、これが科挙の試験に採用された。民族にも身分にも関係なく、すべての男子から官僚を登用する科挙は、教育に大きな影響を与えた。初期の科挙は詩をつくる能力を試すだけだったので、漢字を教える学校がたくさんでき、人々は競って漢字を学んだ。

口語も漢字の文法に合わせて再編され、その組み合わせで表現できるようになった。多くの民族の雑多な言語が漢字で統一され、今の中国語の原型となった。漢民族という概念も、漢字によって生まれた。「中国」という概念はもっと新しく、19世紀にできたものだ。

アゴラ読書塾「東アジアを疑う」では、中国や韓国への先入観を見直し、日本人が彼らを理解できるのかどうかを考えたい。

続きは9月23日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで。

小泉進次郎氏は原発処理水の問題を打開できる

大阪市の松井市長が「福島の原発処理水を大阪に運んで流してもいい」と提案した。首長がこういう提案するのはいいが、福島第一原発にあるトリチウム(と結合した水)は57ミリリットル。それを海に流すために100万トンの水を大阪湾までタンカーで運ぶのは、膨大な無駄である。

国や自治体がカネを出す気なら、もっと効果的な方法がある。今や障害は福島県漁連しか残っていない。彼らは福島第一原発の沖では操業していないが、今も「風評被害」を理由にして海洋放出に反対している。

彼らが(暗に)求めているのは漁業補償の上積みだが、それを誰も言い出せない。東電はすでに休業補償を出したので、2度カネを出すことができない。だから漁業補償とは違う形で、カネを出すしくみを作ればいいのだ。



続きはアゴラで。

「正社員」という言葉が一掃される時代

日本社会のしくみ 雇用・教育・福祉の歴史社会学 (講談社現代新書)
小熊英二氏の本はいつも冗漫だ。本書も新書なのに600ページもある。「日本社会のしくみ」と銘打っているが、中身は日本的雇用慣行の話で、ほとんどは経済学の文献サーベイだ。おさらいとしては便利だが、経済学を学んだ人が読む価値はない。

終身雇用・年功序列などと呼ばれる日本的雇用慣行は、普遍的なものではない。日本の労働政策は大企業の正社員を理想としているが、こういう「大企業型」の雇用形態は労働者全体の25%程度で、それ以外の「地元型」(中小企業)が35%、「残余型」(非正規)が40%である。

その待遇の差は大きく、大企業型以外の労働者は雇用を保障されていない。正社員と非正社員の賃金格差は(時給ベースで)ほぼ2倍というのが、戦後の定型的事実である。 これが「二重構造」として多くの労働経済学者が批判してきた問題だが、正社員はメンバーシップなので、社員が会社に人的投資するには、レント(競争的な水準を超える賃金)が必要だ。

こういう本書の労働観は、もう一昔前の話だ。グローバル化やITで正社員の価値は下がり、大企業型の必要な仕事はもう労働人口の1割もないだろう。それでも厚労省は正社員を理想とし、安倍首相は「非正規という言葉を一掃する」という。この言葉は逆の意味で実現するだろう。雇用規制をきらう大企業は海外に出て行き、非正社員はコンピュータに置き換えられ、正社員を抱える中小企業は消えてゆくからだ。

続きは9月23日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで。

無限に説明を求めるマスコミが政治を劣化させる

福島の「処理水」の問題は「決められない日本」を象徴する病理現象である。福島第一原発にある100万トンの水のほとんどは飲料水の水質基準を満たすので、そのまま流してもかまわない。トリチウムは技術的に除去できないので、薄めて流すしかない。一部に環境基準を上回る水があるが、それは二次処理して流せばよい。

科学的には、これで終わりである。ところが「リスクをゼロにしろ」と騒ぐマスコミが、問題の処理を遅らせてきた。きのうのアベマプライムでは、テレビ朝日の足立政治部長がこんなことをいっている。
原田さんは大臣を1年やって、事情を分かった上で"これが最善の選択肢だ"と、捨て石になってもいいという覚悟でおっしゃったのは理解できる。しかし、やはりちょっと唐突ではあった。海洋に放出した方がましだ、ということも含めて説明がないので、漁業関係者はびっくりしてしまったと思う。経産省も含め、こういう状況だということを国民に説明した上で"こうするのがベストな選択肢だが、どうか"と言わないといけなかったと思う。

続きはアゴラで。

ネットメディアの間違いだらけの「在日ネタ」

このごろネットメディアの劣化が目立つ。ヤフーやハフィントンポストやバズフィードはもともと左翼的だったが、最近は現代ビジネスまで、間違いだらけの在日ネタを載せるようになった。次の文章は、根本的に矛盾している。
たしかに、日本の領土の一部であった朝鮮半島の出身者の多くには、植民地支配における負の遺産が引き継がれている。彼らは、戦争で受けた苦しみを、戦後も引き続き受け続けているのも事実である。
「日本の領土」だった朝鮮半島の出身者が「戦争で受けた苦しみ」とは何か。この戦争は、まさか日清・日露戦争ではあるまい。第二次大戦では朝鮮半島は日本の領土だったので、戦場にならなかった。日本兵として出征した朝鮮人は、アジアに対する加害者だったのに、この記事は朝鮮人を戦争で苦しみを受けた被害者として書いている。

徴兵されて南方で死んだという筆者(在日コリアン3世)の大伯父の遺族が、遺族年金を受給できなかったのは当たり前だ。この記事も書いているように「補償の対象は日本国籍を有する者に限定されていた」のだから、遺族が日本国籍を取ればよかったのだ。

ところが帰化しないで年金を受け取る特権を「在日コリアンだけに認めろ」という運動が、戦後ずっと続いてきた。それが日本人の韓国人に対する感情の悪化する一つの原因だが、筆者はその自覚もなく、戦争と植民地支配を混同して、具体的内容のない「不公平感」をいいつのる。

続きは9月16日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで。

小泉進次郎氏でよみがえる民主党政権の悪夢



原田前環境相が議論のきっかけをつくった福島第一原発の「処理水」の問題は、小泉環境相が就任早々に福島県漁連に謝罪して混乱してきた。ここで問題を整理しておこう。放射性物質の処理の原則は、次の二つだ:

 ・環境に放出しないようにできるだけ除去する
 ・放出せざるをえないものは環境基準以下に薄める

世界の原発では、プルトニウムなど危険な核種を除去し、他の放射性物質は薄めて流している。福島第一原発でも事故の前はそうしていたので、事故後も同じ処理をすればよかったのだが、地元に配慮して多くの放射性物質を取り除く多核種除去設備(ALPS)を導入した。

これでトリチウム以外の放射性物質は除去できたはずだが、去年8月の公聴会で、トリチウム以外の核種もタンクの中に残っていることが問題になった。これはタンク内の濃度管理を説明していなかった東電のミスだった。

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アゴラ読書塾「東アジアを疑う」

興亡の世界史 大清帝国と中華の混迷 (講談社学術文庫)日韓関係は戦後最悪といわれていますが、この背景には歴史認識についての大きなギャップがあります。韓国の教科書では日本が韓国を侵略して1910年に不法に併合したことになっていますが、日本人(を含む他の国の人々)には理解できない歴史です。

日本を超える経済大国になった中国も、一党独裁という政治システムばかりでなく、文化的にもまったく違う国です。北朝鮮についてはいうまでもなく、広くアジアを見渡すと、むしろ日本が例外的に西欧圏に近い国です。

日本は東アジアなのか――日韓問題はこの疑問を改めて問いかけています。福沢諭吉は日本が清や朝鮮とは違うと考えて「脱亜論」を書きましたが、その後の日本は東アジアを「同文同種」の漢字文化圏として一体化しようとし、「大東亜共栄圏」で大失敗しました。

戦後は「戦争の謝罪」で和解しようとしましたが、かえって歴史問題が蒸し返されて紛争が続いています。「東アジア共同体」という構想には、EUのような現実性はありません。中韓と日本に共有できる文化が、あまりにも少ないからです。

10月からのアゴラ読書塾では、東アジアについての最近の研究を学んで、日本は中韓とどこが違うのか、日本人はアジアを理解できるのかを考えます。 授業はすべてインターネット中継するので、全国の(あるいは海外の)みなさんも視聴できます。録画をあとから見ることもできます。

お申し込みはアゴラで。

反日主義は韓国の「戦後の国体」だった

韓国「反日主義」の起源
近代の日本史に抜けているのは、朝鮮半島の歴史である。朝鮮は日本の一部だったのだから、その歴史は日本に含めるべきだが、教科書では「日本軍のアジア進出」として大陸と一緒になっているので、日本軍が朝鮮で戦争したと思っている人も多い。実際には朝鮮半島は平和で、朝鮮人は 内地以上に「皇国」に同化していた。
諸君の犠牲は決して無駄にはならないと、ここに宣言しよう。それは諸君に生を与えた朝鮮半島のための犠牲であり、その犠牲によって朝鮮半島は皇国の一員となる資格が与えられるのだ。まさに朝鮮の未来は諸君の今後の行動にかかっていると言っても過言ではない。
これは1943年に金性洙(のちの韓国副大統領)が、学徒出陣する志願兵に対するはなむけの言葉として朝鮮の新聞に書いたものだ。これは例外ではなく、こういう戦時中の戦争協力者が戦後は韓国の指導者になった。その最たるものが朴正熙大統領である。 彼は高木正雄という日本名で陸軍士官学校を卒業し、満州国軍で中尉となった。

それが戦後、韓国軍の将校になったのは、日本でいえばBC級戦犯が自衛隊の幹部になったようなものだが、彼に親日派としての戦争責任を問う人はいなかった。戦後の韓国政府の首脳は、ほとんどが戦争に協力した親日派だったからだ。朴はその過去を隠すために日本の映画やレコードの輸入を禁じ、安重根記念館をつくり、国定教科書に「韓国史観」を書かせた。

これは日本で、戦犯容疑者だった岸信介が首相になったのと似ている。岸の経歴は誰もが知っていたが、その戦争責任を問う人は少なかった。そんなことをいったら、多くの日本人が(共産党員を除いて)戦争に協力した責任があったからだ。憲法の平和主義は、そういう日本人の罪の意識を隠す戦後の国体だったが、朴のつくった「反日主義」は韓国の戦後の国体だった。

続きは9月16日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで。

「原発ゼロ」は小泉進次郎氏の裏切りだ


小泉進次郎環境相(原子力防災担当相)は、就任後の記者会見で「どうやったら(原発を)残せるかではなく、どうやったらなくせるかを考えたい」と語った。小泉純一郎元首相が反原発運動の先頭に立っているのに対して、今まで進次郎氏は慎重に言葉を選んでいたが、「原発ゼロ」に舵を切ったわけだ。

続きはアゴラで。

平家・海軍・外務省

河野太郎外相が、ブルームバーグなどに日本語と英語で寄稿し、日韓問題についての日本の立場を説明している。英語圏の人々にとって英語以外の情報は存在しないので、こういう情報発信は重要だが、今まで外務省はほとんどやってこなかった。2015年度予算からは総額約500億円もの「対外広報戦略費」がついたが、使い道がわからないので「ジャパンハウス」などのハコモノに使われている。

その原因は、英語ができないからではない。外務省には語学バカといわれるぐらい語学のできる人は多いが、問題は発信すべき情報がないことだ。「平家・海軍・外務省」といわれるように、日本の官庁も企業も意思決定が内向きで、国際派は華やかだが力がない。外務省は対米追従で独自の外交路線がないので、情報発信しても他国が関心をもたなかった。

ところが慰安婦問題では、韓国が情報戦で日本を逆転した。この時期に国際世論の動向を左右したのは、ネット上の英語情報だったが、外務省は無力だった。たとえば英語版のWikipediaでは、今もComfort womenはこう説明されている。
Comfort women were women and girls forced into sexual slavery by the Imperial Japanese Army in occupied territories before and during World War II.
これを訂正すると30分ぐらいで編集合戦が始まり、韓国系と思われるユーザーによってすべて元に戻されてしまう(試しにやってみるとわかる)。

続きは9月16日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで。






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