「グリーン成長」という幻想

資本主義の新しい形 (シリーズ現代経済の展望)
本書は資本主義が21世紀に「非物質化」し、エネルギー集約型の製造業から情報産業やサービス産業に比重が移っているという。それ自体はよくある話だが、著者はこれを「脱炭素化」と結びつけ、CO2削減で成長できるという。これは政府の「グリーン成長戦略」もいうが、本当だろうか。

たとえば化石燃料を再生可能エネルギーに変えたとき、再エネのコストが化石燃料より安ければ収益が上がるので成長できるが、再エネ投資の収益率は大幅なマイナスである。それを埋めているのがFIT(固定価格買い取り)で、その賦課金(再エネ-化石燃料コスト)の総額は2030年には44兆円、2050年には69兆円にのぼる(電力中研)。

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この69兆円は再エネ業者の利益になるが、消費者にとっては電気代の超過負担である。その社会的なメリットは、地球の平均気温が30年後に0.01℃下がるかもしれないというだけだ。脱炭素化の私的収益率はゼロに近いので、民間企業には適していない。これはFITのような国民負担でやる公共投資である。

本書は脱炭素化とエネルギー節約を混同して「脱炭素化で収益が上がる」というが、収益の上がる省エネ投資はすでにやっている。これから政府が規制や補助金で民間にやらせるのは採算のあわない脱炭素化投資であり、経済的には純損失になって成長率は下がる。「グリーン成長」は幻想なのだ。



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厚労省はなぜ人口動態統計を隠すのか

厚生労働省は、2020年の人口動態統計の年間推計を発表しないことを決めた。厚労省ホームページによるとその理由は、死亡数が1~10月の累計で減少したことなどから、「年間推計を機械的に算出した場合には、算出した推計値が実態と乖離することが想定されるため」だという。

昨年10月までの死亡数は約113万人で、2019年より約1万4000人(1.2%)少なく、このペースだと通年の死亡数は1万6000人以上減ったと推定される。このため人口動態でみても、毎年減っていた人口が下げ止まった。



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「ファクターX」の正体は何か

新型コロナ 7つの謎 最新免疫学からわかった病原体の正体 (ブルーバックス)
新型コロナについての菅政権の方針が迷走している一つの原因は、有識者会議のメンバーの主流が疫学の専門家で占められていることだと思う。彼らは感染を防ぐことが専門なので、感染をゼロにしろと提言する。それは気象学者が気候変動のリスクをゼロにしろというのと同じだ。

その共通点は、複雑なマクロ的現象を単純なモデルで予測することだが、本書は免疫学というミクロの立場から、西浦モデルのような単純化は「大きな誤解」だと批判する。そのモデルが正しければ、感染が起こると指数関数的に拡大して、人口の6割ぐらい感染して集団免疫になるまで止まらないはずだ。

しかし日本では2割ぐらいしか感染していないと推定される。感染が途中で収束するのは、人間の免疫機能に大きな個人差があるからだ。最初に感染する人の感受性は高く、次第に低い人に感染する。人々は社会的距離をとるようになる。それは「再生産数」という定数ではなく、時間とともに変わる変数なのだ。

また感受性は、地域によっても大きく違う。日本ではコロナ死亡率がヨーロッパに比べて大幅に低いが、これは生活習慣などでは説明できない。このファクターXの正体は何かが本書の最大のテーマである。

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「コロナ専門病院」と一般病院を行政が分担させるべきだ


きのうの緊急事態宣言の記者会見での菅首相の発言が話題になっているが、「国民皆保険」の部分は単なる言い間違いで、それを見直すなどとは言っていない。

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プラットフォームは近代国家を超える

ツイッターのトランプ大統領アカウント事件では、保守派が「言論の自由」を主張する一方、朝日新聞は凍結容認論で、いつもとは立場が逆転している。世界的にもリベラルには容認論が多い中で、ドイツのメルケル首相が「ツイッター社のアカウント永久停止は言論の自由を侵害する問題のある行為だ」とコメントした。

これをトランプ擁護とみる向きがあるが、逆である。FTが正確に報道しているように、彼女は「アメリカ政府はプラットフォームに自主規制ルールを作成させるのではなく、ドイツのように法律でオンラインの煽動を制限すべきだ」というのだ。

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いびつな電力自由化が電力危機を招いた

電力需給が逼迫している。各地の電力使用率は95%~99%という綱渡りになり、大手電力会社が新電力に卸し売りする日本卸電力取引所(JEPX)のシステム価格は、11日には200円/kWhを超えた。小売料金は20円/kWh前後だから、新電力はその10倍以上の価格で電力を仕入れていることになる。


JEPXの卸売価格(1月11日)

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タダで仕入れた個人情報を売るおいしいビジネス

邪悪に堕ちたGAFA ビッグテックは素晴らしい理念と私たちを裏切った
ツイッターがトランプ大統領のアカウントを停止した事件は、世界中に反響を呼んでいる。問題が「リベラルのトランプたたき」に矮小化され、党派的な対立になっているが、この背景には本書の描いているプラットフォーム独占の問題がある。

こういう状況は、20年前にグーグルやアマゾンが登場したころは想像もできなかった。インターネットは国境を超えて世界のユーザーが情報を共有するツールで、それを規制しようとする政府からネットを守ることが正義だった。通信品位法230条はそういう時代のなごりだが、状況は大きく変わった。

今やネット企業は政府が保護すべき弱小スタートアップではなく、国家権力を脅かす存在である。昨年アメリカの独禁当局がグーグルとフェイスブックを提訴したことは潮目の変化を示すが、これは従来の独禁政策の枠組に収まらない。独占の指標として使われるのは価格の高止まりだが、プラットフォームは無料だからである。

製造業ではカネは「消費者→小売店→メーカー」と動くが、ネットでは個人情報が「ユーザー→プラットフォーム→広告主」と動き、カネはその逆方向に動く。その顧客は広告主であり、ユーザーは広告を売るための「商材」だが、グーグルはその原価をユーザーに払わない。タダで仕入れた個人情報を売るプラットフォームの収益率が高くなるのは当たり前である。

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ツイッターがトランプのアカウントを凍結した複雑な理由

ツイッターがトランプ大統領のアカウント@realDonaldTrumpを永久に凍結した。これに対してトランプは大統領の公式アカウント@POTUSで反論したが、これも削除されたようだ(今は表示されない)。これが世界中で大論争を呼んでいるが、この問題には複雑な背景がある。

まず今回の措置は、合衆国憲法修正第1条に定める「言論の自由」の侵害にはあたらない。この規定の主語は「連邦議会」つまりアメリカ合衆国の公権力であり、私企業であるツイッター社とは無関係である。したがって刑事訴追もできない。

ではこれが民事上の賠償の対象になるかというと、おそらくならないだろう。ツイッター社はこれまでもたびたび凍結の可能性を警告しており、それを無視したのはトランプである。ウェブサイトが規定に違反したアカウントを停止するのは日常的なことで、大統領に特別の権利があるわけではない。

ではツイッターの公共的なプラットフォームとしての責任はどうだろうか。このトランプの削除されたツイートに「第230条という政府の贈り物がなければ[ツイッター社は]ながく存続できない」と書いているのがポイントである。



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地球環境は資本主義のイノベーションで改善する

MORE from LESS(モア・フロム・レス) 資本主義は脱物質化する (日本経済新聞出版)
地球の資源は有限だが、資本主義はその制約を考えないので、その「無政府性」で地球は滅びるという予言は、マルクスからローマクラブに至るまで多い。最近は役所までそれを信じて「グリーン成長戦略」をとなえているが、それは本当だろうか。

もちろん資源は無限ではないが、石油や天然ガスの確認埋蔵量は増えている。これはシェールオイル・シェールガスなどの非在来型資源が開発されたためだ。図のように金属の確認埋蔵量も増えており、見通せる将来に枯渇する可能性はない。

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世界の銅と亜鉛と鉛の確認埋蔵量(Sverdrup et al.

その原因は、新しい採掘技術の開発だけではない。資源価格が上がると、資源節約的イノベーションが起こるからだ。自動車の燃費は、この30年で半分になった。石炭の消費量は2014年にピークアウトし、CO2排出量も2019年がピークだった。「ピークオイル」という言葉の意味も変わり、石油の需要は2028年にピークアウトすると予想されている。

社会主義は冷戦に敗れたが、環境問題に政府の介入を求める左翼の活動家は、それを復活させようとしている。しかし環境問題でも、資本主義は脱物質化して社会主義に勝利したのだ。きょうから始まるアゴラ経済塾「デジタル資本主義の未来」では、こういう問題も考えたい(ネット受講は受け付け中)。

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「医療崩壊」の原因は非効率的な病院経営

7日に政府が緊急事態宣言を出す理由は「医療崩壊を防ぐ」ということになっているが、多くの人が指摘しているように、医療資源は全国的には余裕がある。一都三県で医療が逼迫しているのは絶対的な不足ではなく、医療資源の配分のミスマッチである。これを放置して飲食店をスケープゴートにしても、問題は解決しない。

日本の病床数は人口1000人あたり13.7床で世界一だ。なぜ欧米よりはるかに少ないコロナ患者で医療が崩壊するのか――という問いは逆である。分母と分子を逆にすると病床あたり人口が世界一少ないので、病院経営の効率が悪いのだ。病院の7割は赤字である。

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