財政拡大で「成長による財政再建」はできるか

先週のJBpressでも紹介したが、OECDは先進国で財政デフレが起こっていると警告している。リーマンショック以降の金融機関に対する財政支援の巻き戻しで、世界的に財政赤字が減少して総需要を抑制する「逆ケインズ政策」が起こっている。異常な低金利はそれが原因なので、各国は協調して財政支出を拡大すべきだという。

これは安倍政権にとっては朗報である。日本が財政を拡大できる財政余地はGDP比で2.2%あるので、「アベノミクス2.0」で公共事業を拡大すれば、日本経済は成長して財政再建でき、一石二鳥…だろうか?

続きはアゴラで。

「戦争のできない国」は危険である

日本を「戦争のできる国」にするなという話がよくあるが、これをゲーム理論で考えてみよう。戦争はチキンゲームと考えることが多いが、同時に両国から起こる戦争はないので、これを次のようなフローチャートで表現する(図の数字は各国の利益)。このように時間的な順序を織り込んだゲームの表現を展開形ゲームと呼ぶ。

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北朝鮮が攻撃してきたとき、日本が反撃すると全面戦争になって両方の利益が-10になるが、日本が譲歩すると休戦になって北の利益が1になるとする。北朝鮮も日本も何もしない状態(0,0)がベストだが、日本が攻撃すると北朝鮮は損する(-1, 1)。この問題を戦略的に考えるというのは、相手の立場になって考えることだ。

金正恩からみると、日本が憲法を守って「戦争のできない国」になると、彼がどんな行動をとっても日本はつねに譲歩する(図の青線)ので、利益は1(北が攻撃して日本が譲歩)か0(北が譲歩して日本も譲歩)になる。攻撃の利益のほうが大きいので、日本が手の内を明かすと、彼の攻撃するインセンティブを強めてしまうのだ。

続きは4月24日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンでどうぞ。

安倍「一強」は民主党の掲げた「政治主導」の実現

二つの政権交代: 政策は変わったのか
「一強」を批判する朝日の政治部は、安倍首相が特異なファシストだといいたいのだろうが、それはお門違いだ。本書も指摘するように、2000年代に日本で政治の集権化が起こったことは政治学の常識である。具体的には
  • 首相および首相周辺の政治家・官僚の役割が強まった
  • 各官庁の内閣からの独立性が弱まった
  • 政府外の与党議員や利益集団の政治力が低下した
これは多くの分野で共通に観察される傾向で、最初に実現したのが小泉政権だったが、その後は揺り戻しがあった。それを空想的な形で実現しようとしたのが、民主党政権の掲げた政治主導だった。これは民主党にそれを実現する組織がなかったので散々な失敗に終わったが、政治主導が消えたわけではない。

本書は外交・安全保障だけでなく、農業、電力、税制など多くの分野で政治主導が強まったと分析している。その原因は1990年代の選挙制度改革と「橋本行革」以来の内閣の権限強化、そして最近の内閣人事局による政治任用の拡大だ。この点で民主党政権と安倍政権は連続している。つまり「一強」は、民主党の夢見た「政治主導」の実現なのだ。

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「一強」の何が悪いのか

「強すぎる自民党」の病理 老人支配と日本型ポピュリズム (PHP新書 1058)
朝日新聞の「パノプティコン」シリーズは、ますます意味不明になってきた。けさの記事では経産省が執務室に施錠したことを「息苦しい」と批判しているが、この記者はアメリカ連邦政府に行ってみればいい。各階ごとに空港のようなボディチェックがあり、記者が政府内をうろつくことなんかできない。

この連載は持って回った表現で、安倍首相の「一強」状態をファシズムとダブらせ、「安倍はヒトラーだ」とほのめかしている。シリーズの名づけ親である、元革マルの石田英敬氏は「安倍政権はファシズムだ」と攻撃している。

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男性の自殺率は失業率で決まる



きのうのVlogで紹介したように、失業率と自殺率には強い相関がある。自殺者数は1998年に一挙に34.7%も増えて3万人を超えたが、このとき完全失業率も3.4%から4.1%に上がった。その後も失業率は上がり続け、2003年にピークを打った。

実は、この相関は男性に限られる。1953年からの男性の完全失業率と自殺率の相関係数は0.891だが、女性の自殺率は無関係だ(相関係数-0.223)。これは会社という「家」を失ったショックが、自殺の最大の原因であることを示唆している。世界的にみると、日本の自殺率は旧社会主義国に次いで高い。


そして失業率が下がるとともに自殺者も減り、2016年の速報値では2万1764人と1997年を下回った。これを「アベノミクスのおかげだ」という人がいるが、図のように失業率も自殺率も民主党政権の2009年から減り始めたので、それは間違いである。

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日本に「財政余地」はあるか

JBpressで紹介したように、片岡剛士審議委員の人事はかなり意味深長である。日銀の事務方はリフレ派なんかバカにしているので、これは(黒田総裁を含めて)内部から出てきた人事ではなく、首相官邸の意向と考えられる。

特に注目されるのは、片岡氏の最近のレポートで「アベノミクスを貫徹するために財政支出拡大を」というメッセージを明確に打ち出していることだ。官邸がこれに注目して彼を起用したとすると、ゆるやかに出口をめざしていている黒田総裁の再任も危うくなり、出口なき財政拡大と金融緩和がアベノミクス第2幕になる可能性がある。

そこに使われているのが、財政余地(fiscal space)という概念だ。これはもとはBlanchard et al.(1990)に始まる「財政が維持可能な政府債務と現実の債務の差」という考え方で、最近IMFやOECDも提言している。政府債務をゼロにする必要はなく、それが維持可能であればよい。その条件を政府債務が発散しないこととすると、日本のように金利がマイナスになっている場合は財政拡大の余地がある。OECDによれば、次の図のように日本の財政余地は主要国で最大で、GDPの2.2%ぐらいある。
図2
中期の財政余地(GDP比%)出所:OECD

この図だけみると、理論的にありそうな政策はGDP比2%の減税である。これはリフレ派のようにナンセンスな話ではなく、「国債は返し過ぎだ」という安倍首相のコンセプトに合うが、そこには落とし穴がある。

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石田英敬氏は革マル派の活動家だった

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昔の話だが、個人の名誉にかかわることなので事実関係を整理しておく。朝日新聞の「パノプティコン」記事にコメントした石田英敬氏(東大情報学環教授)は、私がそれを揶揄したのに反論(?)して、次のように書いている。
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朝日新聞の笑える「パノプティコン」

C9p-cJXUIAAU2mD朝日新聞が「(1強)第2部・パノプティコンの住人」という連載を1面で始めた。何かの冗談かと思ったが、どうやら本気で安倍政権が「パノプティコン」だといいたいらしい。この記事では、こう解説している。
もともとは監視者がいてもいなくても囚人が監視を意識する監獄施設のこと。転じて20世紀にフランスの哲学者フーコーが、権力による社会の管理・統制システムの概念として用いた。
これは三重に誤っている。第一に、パノプティコンは国家のメタファーだから、この中央で監視しているのは「1強」ではなく、国家権力である。囚人が逃げようとしたら拘束されるので、彼らは多くの看守に暴力で支配されているのであって、権力を「忖度」しているのではない。

第二に、パノプティコンは実際には建設されていない。これはフーコーが『監獄の誕生』で使った概念だが、ベンサムが描いた設計図にすぎない。このタイトルを思いついた記者はフーコーの本の帯ぐらいしか読んでいないのだろうが、デスクもチェックできなかったのか。

第三に本質的な問題は、パノプティコンはフーコーがのちに撤回したことだ。これは晩年の講義では「統治性」や「生政治」という概念に置き換えられ、その後も転々と名前が変わり、結局は著書になっていない。そこにはフーコーのアポリアがあった。

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日米の「核密約」をめぐるねじれ


朝鮮半島に「有事」の現実性が高まったが、国会の議論はあい変わらず憲法論争だ。憲法違反だろうとなかろうと、弾道ミサイルが日本国内に落ちたらどうするのか。米軍が北朝鮮を攻撃するとき、日本政府はそれを承認するのか――日米安保条約には、こうした問題について明確な規定がない。空母カール・ビンソンが北朝鮮を攻撃するときは事前協議するように日本政府は求めたが、これは協議するだけで拒否権はない。

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日本企業の戦略は出世競争に従う

組織は戦略に従う(Structure follows strategy)というのはチャンドラーの有名な言葉だが、実際の組織はその逆になることが多い。組織を変えるにはコストと時間がかかるが、戦略を変えるコストはそれより低いからだ。特に日本の大企業では長期的関係が強いので、戦略は出世競争に従う傾向が強い。

日本のサラリーマンの賃金は年功序列で競争がないといわれるが、出世競争は激しい。総合職は全国に転勤するので、「本流」ポストにつくかどうかが人生を左右する。「傍流」に入ると下流に行くに従って差が大きくなり、入社10~15年で回復不可能な差がつく。異動は学生でいうと成績評価のようなものだが、サラリーマンの通信簿は社内の全員に公開されているわけだから残酷である。

35歳ぐらいで「自分は本流をはずれたな」ということはわかるが、そのころはつぶしがきかない。ハローワークに行っても、大企業の年収1000万円のサラリーマンよりいい仕事はまずない。このようなタコ部屋で競争することが、よくも悪くも日本のサラリーマンのインセンティブを特徴づけ、企業戦略を決めている。

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